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九話「騎士は王子様の愛玩犬になりたかった」
しおりを挟む―ドミニク視点―
オレの名前はドミニク=ビアホフ。
王太弟であらせられるレヴィン・ギュンター=イオニアス様にお仕えしている。
ごく普通の家に生まれたオレが、剣士として高貴なご身分のレヴィン様に仕えているのには理由がある。
十三歳のとき家が火事になり、オレは両親を一度に亡くした。オレだけは近所の人に助けられ命拾いした。
だが両親を失ったオレに世間は冷たく、行くあてもなく、食うものもなく、町を野良犬のようにさ迷った。
一週間飲まず食わずだったオレは、ついに力つき道ばたに倒れた。
何人もの大人が、道端に倒れた薄汚い格好のオレを見て顔をしかめ通りすぎていく。
死を覚悟したオレを助けてくれたのが、偶然馬車で通りかかったレヴィン様だった。レヴィン様は当時は王太弟ではなく、王子様だった。
今は亡き前王の正妻であらせられたエミリー様と馬車に乗り町を散策しているとき、馬車の中からオレを見つけ「母上、あれが欲しい~~!」と王妃様におねだりしたらしい。
倒れているオレを死体だと思った王妃様はとても驚かれた。
オレに息があるのが分かると従者に命じ助けてくださった。
普通の王子様は道端に倒れている薄汚い孤児なんか拾わない。
当時のレヴィン王子はわがままで、そして珍しいものが好きだった。
レヴィン王子は「欲しい! 欲しい! 拾って! ボクが責任を持って飼うから!」と駄々をこねたらしい。
王子様を溺愛していた王妃様が折れ、オレはお二人に拾われた。
後で聞いた話だが、レヴィン王子が昔飼っていた犬にオレの髪の色が似ていたらしい。
オレはレヴィン王子が昔飼っていた犬の代用品だった。
犬の代わりだろうが、猫の代わりだろうが関係ない。
オレの命を助けてくださったのはレヴィン王子、それだけでその方のために命をかける理由になる。
飼い犬になりきり、レヴィン王子にそい寝したり、レヴィン王子の端正なお顔をペロペロしていたら、お付きの兵にボッコボコにされて雨の中に放り出され、死にかけた。
幼い頃のレヴィン王子は、わがままなところはあったが、天使のように愛らしかった。
あんな可愛らしい生き物を、愛でるなという方がムリだ。
でもまあ死んだら意味がないので、愛玩犬としてのポジションは早々にあきらめ、番犬のポジションにつくことにした。
レヴィン王子のお役に立とうと死ぬ気で剣術を学んだ。
自分で思っていた以上に剣の才があり(剣聖という才があった)、レヴィン王子の護衛をまかされるようになった。
レヴィン王子は十八歳になられたいまでも、わがままだし、世間知らずだし、考え方の甘いお子様だ。だけどそこが可愛い。
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