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私は絶対ヤンデレじゃない
しおりを挟む私は絶対ヤンデレじゃない。好きな女の子を目で追いかけてしまうけど絶対にヤンデレじゃない。これは彼女のことが大好きで見守っているだけなのだ。だけど私は臆病で、彼女と目が合うと恥ずかしくなり咄嗟に目をそらしてしまう。
「リョーちゃん!おはよ!」
「おはよう」
私に声をかけてくれる彼女は、私の親友だ。ゆくゆくは恋人に昇格したいと思っている。親友のキョーコちゃんは歩くたびに、ダークブラウンの髪が遊ぶように揺れて、とても可愛らしい。
「リョーちゃんは今日も可愛くていいなあ」
「そう?」
「そうだよ!女の私よりも可愛いなんて、ズルい!」
キョーコちゃんは『可愛いもの』好きだから、私も『可愛いもの』になった。私は絶対にヤンデレではない。彼女にいつまでも自分を見てもらいたいという一心なのだ。彼女の羨望の眼差しがくすぐったくも、心地よい。
「あ、ねえねえキョーコちゃん。今度ショッピング行かない?キョーコちゃんに似合いそうなワンピース見つけたんだ」
「ほんと?行きたい行きたい!リョーちゃんはセンスいいから楽しみ!いつ行く?」
「今週の土曜日は?」
「土曜日かあ……」
「何か用事でもあるの?」
キョーコちゃんは困ったように眉を下げた。私は訳を知っているけれど、あえて理由を尋ねる。
「うん。彼氏とね、デートなの」
キョーコちゃんには最近彼氏が出来た。彼女が部屋であの男と電話しているのを聴いていたから、知っている。私は彼女の通学鞄や彼女の家の至る所に盗聴器を設置しているけれど決してヤンデレではない。自分の知らない彼女の姿があるのだと思うと居ても立っても居られなくなるだけだ。
キョーコちゃんの彼氏は同級生で、サッカー部の陽キャ男。あの男のどこにキョーコちゃんが惚れたのか、全く分からない。
……ああ、そうか。私はその理由に合点がいった。
「キョーコちゃん、もしかしてその男に脅されてる?」
「え?」
「キョーコちゃん優しいから、男に逆らえずに付き合い始めたんでしょ?」
「え、えっと。いや、違うよ。私が好きで、告白したの」
嘘だ。キョーコちゃんは『可愛いもの』が好きなんだ。あの男には可愛さの欠片もない。キョーコちゃんは優しいから、私にまで迷惑がいかないように嘘を吐いて私を守ってくれているんだ。私はキョーコちゃんの優しさに胸を打たれる。やっぱり、キョーコちゃんは最高の女の子だ。とっても好き。愛してる。
「うん、分かったよ。キョーコちゃんは優しいね」
キョーコちゃんはほっと胸を撫で下ろした様子だった。大丈夫だよ、キョーコちゃん。私がなんとかするからね。キョーコちゃんを困らせる奴は私がやっつけてあげるから。だから安心して。
私は絶対ヤンデレじゃない。キョーコちゃんが大切で、守りたいだけだ。これは純度の高い純愛であり、異論は認めない。
ねえキョーコちゃん。今週の土曜日のショッピング、楽しみだね。
Fin.
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