どすぇー

鴨葱

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1、東京で家を買う。

6、トリートメントは美味?

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 水月は、料理が得意だった。家族の為に料理を振る舞うことは、水月にとっては朝飯前。今日もせっせと家族の為に、料理を作っていた。
 しかし、子供達の為に作っているのは、困難ではないのだが、自分の父親為五郎の為に作ったことは一度もなかった。水月と為五郎は犬猿の仲、水月は正直この父親と暮らすこと自体、不満があった。水月は、3人兄弟の末っ子で、長男と長女が為五郎と暮らすことを拒否した為、仕方なく同居することになった。しかし、この為五郎は、根っからのギャンブラー。定年後はパチンコ三昧の日々だった。勿論、自分のお金で楽しむ分には水月は不満がないが、娘を騙して金をせびりって、パチンコに使うことがとても許せなかった。

 同居して、すぐに為五郎のギャンブル癖が出現した。当初は、長男・長女の家にいついたが直ぐに追い出され、不憫に思った水月であったが、その同情心が間違っていたことに、気が付いたのであった。
 ある日、水月が仕事の為子供達が寝ていたので、静かに家を出ようとした時、長男の太陽に授業料を渡すのを思い出し、たまたま家の前でラジオ体操していた為五郎に太陽の授業料を渡してしまった。
 その時は何も思わず渡したのだが、やっぱりそこは為五郎。太陽に渡す授業料をパチンコ代として使ってしまったのであった。勿論その日の成績は惨敗。(やばい、どうしよう)と考えた為五郎、じっくりと考え閃いた。(そうだ、黙っておこう)そう為五郎は、常人では思いつかなような名案を思いついてしまった。普通の人なら、黙っていてもいずれバレるからどうしようと考えるのに、為五郎は孫の授業料を預かっておきながら、シラを切ろうとしていた。暫くして、太陽が水月に授業料の請求をした。
 太陽「かあちゃん、授業料早く頂戴よ、俺
    だけ払ってないんだよ」。
 水月「え、授業料?この間渡したでしょ、
    何言ってんの?」。
 陽太「もらってないよ、早く頂戴よ、明日
    学校に持っていくから」。
 水月「え?」「はっ?」。
 水月「あのクソジジイ」。
水月は、為五郎の部屋に向かい詰め寄った。
 水月「やい、クソジジイ、太陽の授業料ど
    こやった」。
 為五郎「はて、何のことかな?わしゃ知ら
     んよ」。
 水月「ふざけんじゃねー、太陽に渡してと
    言ったろうが」。
 為五郎「だから言っておるじゃろ、わしゃ
     知らん」。
 水月「オメー、殺してやる」。
水月が為五郎の胸ぐらを掴み、渾身の勢いで殴ろうとした瞬間。
 為五郎「あ、思い出した」。
 水月「なんだどうした」。
 為五郎「パチンコで使ったんだった」。
水月は、呆れ果てて殴る気力を失ってしまった。それを見た為五郎は不憫に思ったのか、水月に声をかけた。
 為五郎「水月よ、すまんかった、わしに名
     案がある」。
 水月「何だジジイ言ってみろ」。
 為五郎「わしがパチンコに行って、取り返
      してやる」。
 水月「しね」。
水月は、呆れ果ててしまったのである。
 そんなこんながあり、水月と為五郎はやや犬猿の中になった。いや、為五郎は何とも思っていないので、水月だけが一方的に嫌い始めたのであった。

 そして、月日は流れて為五郎はすっかりそのことを忘れていた。
勿論水月は、覚えているがいつまでも為五郎を責める訳にもいかず諦めていた。
 ある日、夕食の準備をしていて、ひょっこりと為五郎がつまみ食いをしに台所に現れた。
 水月「おい、ジジイ勝手につまみ食いする
    んじゃねー」。
 為五郎「何を言っているのかわからんが、
     わしゃ味見をして要るんじゃ」。
そんなことを言いながら、為五郎は空腹を満たすため、水月の料理を他の家族より先に食べ始めた。サラダを見た為五郎は、テーブルのドレッシングに手を伸ばしサラダに振りかけた。為五郎は思った(何じゃこりゃ、味がよくわからん)。ふと、為五郎の様子を見た水月が仰天した。なぜかトリートメントがテーブルに置いてあるではないか。
 水月「ジジイ、もしかしてコレ使っ
    た?」。
 為五郎「わしゃ知らん、しかしうまい」。

 為五郎は、尋常ではない味覚音痴であったらしい。サラダにトリートメントを振りかけて美味しそうに食べていたのであった。めでたし、めでたし。



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