エロゲの豚野郎に転生してなるべく怒りを買わないようにしたらヒロインたちの好感度がカンストした

竜頭蛇

文字の大きさ
10 / 48

真の王じゃないから

しおりを挟む


『真の王とは。優しさから人々に関心を持ち、人々の穢れを知っても包み込めるような強さを兼ね備えたものだ』

 亡き先王──シアの祖父の言葉だった。
 現王である父の行動はその言葉とは真逆と言っても過言ではなかった。
 現王であるシアの父は王位を教会の力を使って一領地ごと他の兄弟を亡きものにして継承し、国の武力の要である精霊鎧を教会に明け渡し、継承権一位の第一王子を教会に出向かせている。
 利己心に溺れ、自分可愛さに強いものに媚びへつらう、どう見ても教会の回し者の売国奴の行動である。
 それだというのに教会の発表した預言通りにことを進めているため、批判の声さえ上がらないどころか、敬虔たる信徒としての務めを果たすために尽力する偉大な王と讃えられていた。
 さらにこの頃になっては現王であるシアの父は賞賛に酔ったのか、魔族との争いが終わったあと、教会に王国を献上しようと言い始めた。
 賞賛をされたいという自らの欲のため、自らのみが報われたいがために全てを犠牲にしようしていた。
 他の者を慮る優しさも、自分一人を支える程の強さもなかった王の末路だった。
 真の王とは逆を行くものがどういうものなのかとまざまざと見せられているようだった。
 それでも民が幸せであるというのならそれでよかったが、自分たちの利益のために一つの領地を滅ぼす教会が王に成り代わった世界で民が安寧を得られるとはとても思えなかった。
 もはや何者かが真の王になり国を立て直すしかないようにシアには思えてならなかった。
 預言を信望することによって危機感などなくなったこの王国に置いて誰かが。
 真の王たる資格を満たした誰かが。
 シアの考えうる中でその条件を満たすのは、真の王に必要とされるものを知り、王族として強大な力を持つシア自身しか存在しなかった。

「息子はお眼鏡に適いましたかな。陛下」

「適いましたよ。彼はこの国の民でありながら、教会を否定してくれました。同じ景色を見ている者を否定することはありません」

「その割には酷く厄介な命令をお出しになりましたな」

「不服ですか。危険ですが、救世主たちを確保するためにはああするしかないのです。彼らは教会の息のかかった最先鋒で説得は見込めない上、実力を伴っていない今しか倒して身柄を拘束することはできないのですから」

「育ち切ってないとはいえ、神の生まれ変わりと目される者たち。一撃で領地一つを沈めるものたちです。たとえ極大魔法が使えるとしても荷が勝ちすぎていますな」

「今日はよく刺しますね。子が心配なのはわかりますが」

「主のあなた様が危険を顧みずに立ち上がっているのにそのようなことはありません。ただもう少し機を窺い状況を見定めてよろしいのではないかと申し上げたいのです」

 先王の祖父を慕い自分に忠を尽くしてくれているリックが珍しく反対し始めたことはわからないことではない。
 自分に協力を始めた時から息子の英才教育をやめ、できるだけ危険のある場所から子を離すようにしていた。
 だからこそ子を大切に思っているのは言わなくともよくわかっていた。
 だが現実的に一番目がある方法だということもそうだが、どうにも絶望的な状況から村を救った一件が優しさと強さを兼ね備えた真の王のあり方をなぞっているようで期待を持たざるを得なかった。
 内心でできてしまって欲しいと思ってしまっていた。

「これ以上様子見をしたところでもはや意味はありません。早急に手を打たねばならないのです。全てが終わった先にはあなたの家族が安らかに生きられる世界を作ることを約束します。ですので今は力を貸してください」

「元より私の全ては陛下のためにあります。陛下の覚悟があるのでしたら全てを差し出します」

 再び言葉を募ると、もう避けられないことと覚悟を決めたようで目を閉じてそう返事をした。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【完結済】悪役令嬢の妹様

ファンタジー
 星守 真珠深(ほしもり ますみ)は社畜お局様街道をひた走る日本人女性。  そんな彼女が現在嵌っているのが『マジカルナイト・ミラクルドリーム』というベタな乙女ゲームに悪役令嬢として登場するアイシア・フォン・ラステリノーア公爵令嬢。  ぶっちゃけて言うと、ヒロイン、攻略対象共にどちらかと言えば嫌悪感しかない。しかし、何とかアイシアの断罪回避ルートはないものかと、探しに探してとうとう全ルート開き終えたのだが、全ては無駄な努力に終わってしまった。  やり場のない気持ちを抱え、気分転換にコンビニに行こうとしたら、気づけば悪楽令嬢アイシアの妹として転生していた。  ―――アイシアお姉様は私が守る!  最推し悪役令嬢、アイシアお姉様の断罪回避転生ライフを今ここに開始する! ※長編版をご希望下さり、本当にありがとうございます<(_ _)>  既に書き終えた物な為、激しく拙いですが特に手直し他はしていません。 ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※小説家になろう様にも掲載させていただいています。 ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100
ファンタジー
国立大学に通っていた理系大学生カナは、あることがきっかけで乙女ゲーム「Amour Tale(アムール テイル)」のヒロインとして転生する。 自由に生きようと決めたカナは、あえて本来のゲームのシナリオを無視し、実践的な魔法や剣が学べる魔術学院への入学を決意する。 魔術学院には、騎士団長の息子ジーク、王国の第2王子ラクア、クラスメイト唯一の女子マリー、剣術道場の息子アランなど、個性的な面々が在籍しており、楽しい日々を送っていた。 しかしそんな中、カナや友人たちの周りで不穏な事件が起こるようになる。 前世から持つ頭脳や科学の知識と、今世で手にした水属性・極闇傾向の魔法適性を駆使し、自身の過去と向き合うため、そして友人の未来を守るために奮闘する。 「今世では、自分の思うように生きよう。前世の二の舞にならないように。」

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...