幼なじみの彼女に裏切られ、親友と付き合っていたことを知ってしまったので、親友の婚約者であり幼なじみの天敵の悪役令嬢と組みたいと思います

竜頭蛇

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粛清に巻き込まれる元婚約者

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「どうやら元理事長は花園家の怒りを買ったようね」

 麻黒さんは壇上に上がった、珠子さんの姿を見るとそう見解を言う。
 確かに今まで目撃した事実を統合すれば、それが妥当か。
 でなければ天弦学園を管理する学園長の地位に珠子さんが現在君臨していることと学園長が脅迫されて屈辱的な行為をさせられていることが説明できないし。

「一体何をやったら、珠子さんがあそこまであからさまなことをせざる負えない状況になるのかはわからないけど、それしか考えられないね」

「できればまだ怒りが冷めてなくてこちらまで飛び火してくるのは避けて欲しいところね」

「だね」

 ヤクザの親分がこんな生徒たちがいる場所で大暴れするなど大惨事以外の何者でもない。
 想像するだけで身の毛のよだつ事態だ。

 ーーー

 コンテストは新理事長である珠子さん含めて、妙に青白い顔をした社長たち四人で始まった。
 裏側がわからないのでなんとも言えないが、開始前に幾枚か用紙を渡されているのが見えたので、おおよそ短い間に選別されただろうものを壇上で審査していることが伺える。
 社長たちは珠子さんに付和雷同しているようで、珠子さんが良い評価を下せば、大袈裟に褒め称え、そこまで振るわなければ同じようにそこそこの評価を下していた。
 もはや珠子さんの独壇場と言っても過言ではない。

「続いては佐藤秋也君のアイデア。AIを活用したデジタルのマネキンね。これは便利ね。衣装合わせがすぐできる上に、AIによって客観的な評価や要望を入力することで、それに答えてくれるなんて。間違いなくコンテスト最高のものね」

 ついに俺が提出したアイデアの番がきて、珠子さんが露骨な褒め方をしながら紹介する。
 それに対して会場にいる社長たちは必死な形相をしながら「素晴らしい」、「最高のアイデアだ!」などと褒め称えていく。
 俺のアイデアと似たようなアイデアが他の分野ではあったがあったと言うのにである。

「秋也を優勝させるつもりみたいね。理事長が秋也を冬夜に敗北させようとしていたことを考えると、明らかに理事長に対する粛清ね。花園家がこうまであからさまなことをするのは初めてね。本当に理事長は何をしたのかしらね」

 この粛清劇にうんざりしているのか、麻黒さんがそう呟くと俺の講評が終わり、次の講評に入った。

「次は金山冬夜君のアイデア。移動のための足に自転車の貸し出しサービスね。既存のアイデアだからルール違反、論外ね」

 論外。
 冬夜の評価に来て初めて、珠子さんが否定の言葉を口走った。
 それに対してすかさず必死の社長たちが「理性の退廃だ!」「パクリは犯罪ですぞ!」と酷評を述べる。

「く、くそ! 足手纏いさえ抱えなければ!」

 冬夜がその言葉を聞き、日中引き摺り回した摩耶に対する文句を言う。
 普通に違反をしているので、たとえ理事長のサポートがあったとしてもアウトだった可能性が高そうだ。
 冬夜は過去に不正をすることがあったが、追い込まれたことによって再びそれが表に出てきているかもしれない。

「学習しない人ね。しかも理事長に味方についた時に限って、理事長と揉める原因になった同じ不正に手を染めるなんて」

「理事長と冬夜はつくづく巡り合わせが悪いみたいだね」

「あの二人は両者共にあなたを恐るがゆえに歩調を合わせただけなのだから。消極的な理由でてを組んでいる人たちは脆いとは聞くけど、その典型といったところかしら」

 そうして冬夜の講評が終わると、数人を紹介してコンテストは終了した。

「秋也君、おめでとう。商品の関連企業の株のセットよ。社会情勢を敏感になるための教育セットみたいな色気のないものでごめんんさいね」

「いえいえ、庶民の学生である俺にとっては何千万するかわからないような株のセットなんて十分すぎるくらいですよ」

「あら殊勝な子ね。……秋也君、この後、10時くらいからこの部屋に来てもらっていいかしら。彼女との逢い引きがあるのなら後日でもいいけど」

「逢い引きするにしても日本ならいざ知らず見知らぬ異国の地で夜遅くまでは出歩きませんよ。昼間にも危険な人たちに遭遇しましたし」

「秋也君なら危険な目に遭っても大丈夫そうだと思うけど、心配症ね。まあこっちとしては早く話せるの方がいいからいいんだけど」

 珠子さんが俺に話したいことがあるというのはおそらく理事長と仲良くして欲しいと言っていた手前に珠子さん自身が決別してしまった弁解だろう。

「麻黒さん、ちょっとこの後いいかな」

「いいけど、今日のことで話があるといったところかしら」

 22時から約束はあるがひとまずのところ自由なので俺は早速、麻黒さんがあの子であるか、確認するために彼女に声をかけた。



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