バッドエンド・クレイジーナイト~Storia per dare a Giunone~

白井 雲

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序章

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……彼女が泣いていていた。
単純にそのときはどうして泣いているかはわからなかった。
誰かにいじめられたのか、
それとも単に悲しい出来事があって泣いていたのか?
まだ幼い僕にはその理由がわからなかった。
気の合う友人たちとついさっき別れたばかりである。
僕の明るい気持ちはその少女の涙を晴らすことが、
できるんじゃ無いかとその時はそう、
少なくとも子供ながらの発想でそう考えていた。
誰かが僕の隣にいたなら、
間違いなく僕が不自然に泣いている少女に声をかけようと、そうしようとするのを止めたろう。
でも、不幸にもそれは居なかった。
だから、自分が今できるのを最低限出来る状況は作り出されている。


僕は、彼女に尋ねた。


「どうしたの?」

だが、彼女は僕の問いに答える素振りなんか見せないで只管に泣きじゃくって居る。
こうなるとこちらとしたらどうすれば良いかわからない。

「何かあったの?僕で良かったら話を聞いてあげるよ」

我ながらベストな問いかけだと思った。
実際、その言葉に感化されたのか彼女は泣くのを止め、一旦こちらを振り向いた。

端正で、整った顔立ちをした可愛らしい少女だった。
だが、僕自身の記憶が曖昧だったからか彼女のことを何処かで見たような記憶げ全くなかった。
そのため「見ない顔だけど、引っ越して来たの?」といったような極めてつまらない問いかけをしてしまった。
けれども、彼女は僕の問いに対して首を縦に振った。
「お母さんの仕事でこっちまで来たの。だけど、みんな私に冷たいから友達ができなくて…」
聞いてみれば至って簡単な事だったようだ。
僕は彼女にニッコリと微笑んだ。
それは自分が敵意なんて一つも無い事を表したかったからだ。

「なら、僕が君の最初の友達になるよ。」
「本当?」
「うん、約束する。またここで会おうよ。同じ時間で、待ってるから。」

途端に彼女の表情がさっきまでの悲しい顔から明るい顔に変わった。
僕はそれを見て堪らなく嬉しくなったのを覚えている。
ようやく、彼女の涙を消す事ができたからかも知れない。

それから彼女とは何度も会って色んな遊びをして、
その日の1日に何があったかを話したり、
時にはそれで励ましあったり、笑ったり、
僕にとっては忘れられないひと時になった。
けれど、或る日を境に。
彼女は姿を消してしまった。
親の都合でまた何処かへ引っ越したと聞いた事があったが定かでは無い。
けれど、僕にしてみれば別れの言葉もなく突然去った彼女に対して心底から寂しい思いが湧き出した。
今までどんなことがあっても泣きはしなかったが、
その時ばかりはかなり泣いたのをよく覚えていた。

それから月日が経ち僕は現在、高校生になった。
僕の地元では、かなり生徒数も多く大きい高校だった。
そして、僕はそこで運命的な出会いを果たすんだ。
生徒会に書記として立候補した少女。
それはかつて僕の記憶の中にいたあの少女だった。
自分の周りの世界が一転する様な気がした。
また、あの春がくるーーーーーーー。
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