記憶喪失

バブルガム

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第4話

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 あの後少し気持ち悪くなって座り込んで休んでいた。
 回復してすぐに食堂へ向かう事にする。とにかく情報の交換からだ。
 私が食堂に着いた時には全員揃っていた。
 城田、峯田は二人がかりだから早く済むだろうし山田は他の人間よりも早く起きていた分一通り調べていたのだろう。
 「何かわかった事、あった」
 城田が誰にともなく聞く。返ってきたのは重い沈黙だった。皆何も見つけられなかったという事か。
 それは正直予測出来た答えだった。そもそも何かを残すような人間がこの状況を作れるとは思わない。
 生徒手帳の話をしようか迷ったが、やめた。そもそも他人の空似かも知れないし、ここで言うのもまずい気がする。
 ノートに関しては謎が多すぎて今話せる状況にはない。
 今話せるのは教卓の中の紙だろうか。一応話しておこう。
 「これがあった」
 皆の前にA4の紙を出す。そこには大量の思い出せの文字。
 それを見て山田の顔色が変わった。
 「これ、どこにあった」
 「最初にいた部屋。教卓の中」
 城田と峯田も顔色が変わった。
 「なんなのこれ......」
 何を思い出せと言っているのか全く分からない。これは一体何を示しているのだろうか。
 山田が気をとりなおして他はどうだと聞くと峯田がおずおずと一枚の写真を出してきた。
 そこに写っていたのはの笑顔。私、山田、城田、峯田。そしてもう一人の男の子。年齢は皆同じくらいに見える。
 その写真を見て何かを思い出しそうになる。酷い頭痛が襲ってくる。
 途切れそうな意識を必死に繋ぎ止め、思い出そうとするが思い出せず、私は意識を手放した。
 意識を失った翔を見下ろして峯田が言った。
 「やっぱりまだ無理だよ......翔ちゃんがかわいそう」
 それに対して少し苛立った様子の山田が反応した。
 「仕方ないだろ......俺達にも時間が無いんだ。少し荒療治にはなるかも知れないけどこれしかない」
 黙ってその様子を見ていた城田が言った。
 「じゃあさ、次は。写真程度でも意識が飛んじゃうみたいだし本人を入れたらどうなるかは分からないけど」
 「もう時間が無いしそれしか無いかもな......」
 苦渋の顔で山田が言う。
 「わかった。次は達也を入れる。城田は翔を最初の教室へ連れて行ってくれ。峯田、次はお前が最初に声をかけろ。俺は手がかりを置いてくるのと達也を連れてくる」
 山田の指示で皆動き出す。少し焦りの見える表情でもあった。
 「次はうまく行ってくれよ」
 祈りにも取れる呟きだった。
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