復讐の慰術師

紅蓮の焔

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4章 資格取得試験

38話 生還

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「ぐふっ!」

ヒュッ! ドンッ!

風切り音が聞こえたと同時に壁に叩き付けられていた
「いてぇなぁ…」
揺らめく蛇の尾を見てレンゼは口から出てきた血を手で拭った
そしてそれで小さな魔術式を画き、片手で魔力を通した
暗示は風だ

ヒュウウゥゥゥゥウウ…

魔力を通すと風が吹いて、地面の砂やレンゼが叩き付けられて崩れた壁の破片等、軽い物が舞い上がった
(これでなんとか逃げる時間を作れれば良いんだが…)
そして風のせいで魔術式が乾いて、更にその上に土が被り、消えてしまった
(やっぱり風は無理か…)

ガリッ!

自分の掌の皮を噛み千切り血で魔術式を画く
(あいつにバレる前に!)
レンゼが魔術式を画き終わり魔力を通そうとすると蛇の尾に絡み付かれて拘束された
(くそっ! くそっ!)
暴れるが更にレンゼを締め付ける力が強くなり息が苦しくなってよだれが口から流れ出ていく
「離せよ! おい!」
尾に噛み付くがグリフォンは全く動じている気配は無い
それ所か、逆に締め付けられる力が強くなり思いっきり嘔吐した
「うっ…オボロロロエェェェェエェエェェェェエェエェェェェェェ! ……はあ…はあ…」
そして気が付くと目の前にグリフォンの顔があった
(どうする! どうするんだよ! 考えろよ! 噛んでもダメ! 暴れてもダメ! どうやってこいつを殺れば良いんだよ!)
レンゼは自分の頭をわしゃわしゃと掻いて考えるが全く良い考えが思い浮かばない
(ヤバい…意識が…早く降りないと…)
その時ふと目に入った嘔吐物を見た
(これで…魔術…式を…画け…るか?)
震える手付きで魔術式を書こうとする

ズシャッ!

突然振られて手が滑り、嘴の中に放り込まれる
(ここで…終わる…のかよ…)

ゴクンッ

そしてグリフォンの腹の中に入ってしまった
グリフォンはその場で丸まって眠りに着いた





「ゴハッ! ゴホッ! ゴホッ!」
肺に入った唾液を吐き出すとゆっくりと立ち上がった
「ここ…は?」
辺りを見渡すとそこは物凄く生々しい少し広い空間だった
(たしかグリフォンに飲み込まれて…って事はここはグリフォンの腹の中か…だったら別に大丈夫か)
レンゼは爪を立てて魔術式を画く

その頃のグリフォンは…
「ガァ!?」
突然の腹痛で踞っていた

「よし、画けた。後は…」
レンゼはそれに魔力を通した
(生物と言えどただの原子の塊だ。それを避けるようにすれば…)
魔術式を中心に壁に穴が空いた
それと同時に突然地震が起きて穴の外に放り出された
(ん? あれは食われて入った所だから胃の筈だ。たしか胃は1つしかない筈だよな?)
レンゼは落ちていく途中で先程穴を開けた所と同じ形の物を見て首を傾げた
(それより…どこに落ちていくんだ?)

グチャア…

レンゼは何かプヨプヨしている所に落ちて、それをつねった
すると突然地震が起きたので慌ててそれを掴むと余計に地震が激しくなる
そしてそれが終わる頃にはレンゼは自分がどこにいるか分からなくなった
(これは…どの辺りだ?)
試しにその場に魔術式を画いた
暗示は爆弾
(ゴー!)
時限式にして魔力を通すと直ぐ様離れた

ドンッ!

爆音が響いて振り返るとそこに穴が空いていた
(それにしても…この大きさはあれの体積的におかしい…広すぎる! 外見はもっと小さかった筈だ。確か大の大人が4、5人程度か? それでもこれは大きすぎる…でも出てみれば分かる…か? 一応出てみよう…)
そうして穴に向かって跳んだ
穴に落ちると体が熱く、痛み、骨がバキバキ鳴っている
「ぐわぁぁぁ…あれ?」
しかしそれは一瞬の事で気が付くと痛みは無くなっていてグリフォンの腹の前で立っていた
後ろの影に驚いて振り返るとそこには白目を向いて気絶して倒れているグリフォンがいた
その腹には直径3mm位の穴が空いていた
(…小さく…なっていたのか?)
目を瞬かせるとグリフォンはビクンッと痙攣した
「うわっ!」
驚いて尻餅を着きながら魔術式まで走っていくと魔術式に飛び付いた
魔力を練りつつ魔術式に触れて魔力を流すと直径2mm程の針がグリフォンの頭目掛けて勢いよく伸びていった

ズブッ!

「や、殺った…よな?」
そーっと足先をツンツンとグリフォンをつつくが全く反応が無い
「ま、マジか~…怖かった~…他の奴が来る前に逃げよ…」
視界の端にあった穴を見てすぐにそこから立ち去った





「遅くないか?」
「そうですね…まさか先輩の膜が破られたんですかね!?」
「そんな筈無いだろ? 俺の魔力障壁だぞ? ただでさえ創造属性を使えるのは俺とあの人位なのに…」

ガチャ


「あ! レンゼ!」
フラフラと壁を伝って戻ってきたレンゼに飛び付いた
「今は勘弁してくれ…疲れた…」
「大丈夫かい? 随分と遅かったけど中で何をしてたのかな?」
「はい? 試験してましたけど…」
先輩と呼ばれている男は首を傾げた
「それはおかしいな…今は正体不明の化物がいて試験を中止してるんだよ」
「…それじゃ、また来ます…シルビア、悪いけどおぶってくれ…寝るわ」
「う、うん、分かったわ…」
レンゼをおぶると男達にペコリとお辞儀をした
「それではまた来ます。今度は慰術師と錬金術師の資格を取りに…」
そうしてシルビアは家に帰っていった
「見てくるか…」
「…ですね」
「いや、ちょっと待て…」
男は手で女性の行く手を遮る
「どうしたんですか?」
「このまま軍が来るんだから待っていた方が安全じゃあないか?」
女性は嘆息した
「…腰抜け…ボソッ」
「何か言ったか?」
「いいえ…何も言ってません」





「そうだったのかい、それは残念だね…私はこのままレンゼくんがお金の事を忘れている事を願うよ」
ライズリックは苦笑をして窓から外を眺めた
「それはそうと…レンゼくんとはあの後上手く行ったのかい?」
「ぜ、全然よ! 何言ってるの! お父さんのバカ! アホ! 変態!」
シルビアはドアを勢いよく開けて出ていった
「ぐはっ! さ、最後のは傷付いたよ…?」
その場には娘から変態と呼ばれて致命的ダメージを喰らった男が机にうつ伏していた
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