復讐の慰術師

紅蓮の焔

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8章 計画前夜…月明かりの下で…

90話 グリード

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「今、ボスは俺の中で共に共存している。所謂…多重人格って奴だ…」
「で、でもそれじゃあ…あの時あの人と戦ってたボスは誰なんだよ!」
「ちょっと待て…」
クラークは1度深呼吸をして瞑目した
「アイシス、お前あれほど撃つなって言ったのに…挙げ句の果てに壊した? なんだ? お仕置きされたいのか? ん?」
見た目は全く変わってはいないが、突然口調が変わりアベルは動揺した
「は? え? なんだこいつ…頭おかしくなったのか?」
「確かお前…レンゼの友達だったな。俺の名前はグリード。訳あって部下の身体を使わせて貰ってる」
それを聞いて更に頭の中が混雑した
「? 何言ってんの? やっぱり頭がおかしくなったんじゃない?」
アベルがあからさまにアイシスに聞くと嘆息された
「ボスは所謂、超能力者? なんだよ。ボスはさっきの赤い球のお陰であの力があるって言ってるけど…」
「超…能力…者…? つまりあれか…グラトニー…! あいつと同じって事か?」
「あの変態を知ってるって事は話が早い…単刀直入に言えば…そいつらのボスの計画を阻止する。それが今回の目的だ」
「計画? あいつも言ってたけど…計画ってなんの事だ?」
それにグリードは首を傾げた
「簡単に言えば…反抗期の子供の馬鹿げた悪戯」
「は?」
「あの人…つまりあいつらのボス。あの女が今回の元凶。自分の親に逆らう為に考えた計画悪戯。何度も何度も計画の内容を綿密に日記に記してたな。それは…」
グリードは言葉を止めてアベルは首を傾げた
「それは?」
「人間を…滅ぼす事だ」
「なんでまた…」
「あいつの親父とお袋。会った事ぁ無いがどうにも面倒臭い性格らしい。まあ声は聞いた事あるんだが…親父の方は少し高い子供の様な声、お袋は人とは思えない程の高い声質。これしか分からないが…そいつらが帰った後らしい時、いっつもあいつは眠っている。その上軽く痣が服の袖から見えたから。何かされてるんだと…流石にそれはないと思いたい。まあそんな訳で俺らがするのは…名付けて『反抗期の子供を皆で虐めて人間に平和を作戦~』」
グリードがパチパチと拍手している最中、アイシス達は苦笑していた
「あの人…いつもあんな感じなのか?」
「いつもあんな感じだと思うんだよ。多分これも…」
アイシスが言葉を濁すとグリードは深呼吸をして拍手を止めた
「言って置くが、これは俺の為だ。人間に死なれると今までの地位や金が意味無くなるからな」
「ほら…こうやって悪く見せようとするんだよ…」
溜め息を吐くアイシスを尻目に、伸びをするグリードを見詰めてアベルは思った
(なぜに悪く見せる?)
「もう良い人だって事を認めたら良いんだよ…」
「俺は悪だぜ? 金も、地位も、この世の全てを奪って俺の物にする! これが俺だ!」
「もう分かったんだよ…」
アイシスは深い溜め息を吐いて小屋の中を見回した
「あれ? 叔父さんは?」
「誰もいなかった。多分あいつにやられたんだろう」
「グラトニーか…」
アベルが歯軋りして言うとコクりと頷いた
「あいつの『食』の能力は厄介だ。唯でさえ変態の領域だったあいつがあの能力を持ってから更におかしくなった…あの能力でこの街全体が喰われたんだろう。それ程の領域になれば1日位掛かる筈だ。そして人間を助けるには短くて1日、長くて1ヶ月であいつの『何か』を奪わなくちゃならない」
「つまり…明日までに…」
「ああそうだ。しかし、それは人1人としての話だ。だから計画では確実に皆殺しにする為に1度吐き出すだろう。だから「だからその時、それまでに奴からその『何か』ってヤツを奪えば良いんだな!」」
グリードはコクりと頷いた
「その通りだ…まあ話は長くなったがつまりは明日、今いる人数であいつら6人とこの街での全面戦争ガチ喧嘩だ」
「うっす!」
「後な…」
ギロッとアイシスを睨み付けた
「早く義肢、付けろ。あのオヤジ、一応予備は造ってたみたいだからな」
グリードが首を右に捻るとそこには布に巻かれている2本の太い棒があった。
布の端から僅かにはみ出している銀色の指にアベルは「おぉ…!」と感嘆の声を漏らしてしまっていた
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