復讐の慰術師

紅蓮の焔

文字の大きさ
97 / 315
8章 計画前夜…月明かりの下で…

93話 孤独感

しおりを挟む
「…生憎と目の前に可能性があるのに行かない程、俺はバカじゃ無いんでね」
そう呟くと金貨を全て、その民家の前に置いて少し先にある大きな建物を見据えた
(シンくん? には感謝だな…さて、行くか…)
レンゼは泣き喚こうとする腹の虫をなんとか抑えると渇く口の中を、唾液を飲み込んで少しでも潤す
(まだ…生きてる筈…! 絶対に…せめて…!)
拳を握り締めて大きな建物、軍の本部へ向かって走り出した


「はあ…はあ…」
しかし、数分後…
「くそがっ…!」
汗は余り出ていないが、疲労により、脚が震え始めている
「は…はは…」
膝を押さえて頭を上げた
目的地は後、数分程走れば着きそうな位置にあるが脚が震えて力が入り辛い
「その辺りで休憩を…」
息を荒くして近くの壁に凭れ掛かると大きく息を吐いた
「はあ…はあ…」
額を流れた汗を拭うと軍の本部を見据えた
それは全てを拒絶する様な断崖の絶壁に見え、一瞬、虚ろな目をして倒れるアリサ達の姿を想像してしまい、更に縮こまった
(ロゼも…アリサも…2人共…ごめん…本当にごめんなさい…)
小山座りで膝に顔をうずめ、ギュウッと二の腕を握り締めて吹いて来る冷たい風を凌ぎつつ、やるせない感情を溜め込んでいく
(何も出来なくて…ごめん…)
「ごめん…なさい…」
まるでこの世の全てに拒否されている様な感じがして更なる孤独感がレンゼの身を駆り立てる
軈て朝陽が昇り、それがレンゼの頭を照らした
それに顔を上げると、本部の後ろから日光が差し込み思わず目を細めた
「あ、あぁ…」
その揺らぎの無い日光がまるで嫌悪の表情を浮かべる母の様に見え、涙を流した
「ごめん…なさい…もう…悪い事…しないから…お願い…許して…」
前世と違い優しくしてくれた母に…楽しかったあの頃の記憶が次々と鮮明に思い出される。

家族で一緒に食べたご飯…

家族で一緒に遊んだ時間…

全てが走馬灯の様にレンゼの頭を駆け巡る。

そして…

最後には母が死んだ時に浮かべていたあの虚ろな目を思い出し、歯を鳴らして涙を流した
「ごめん、なさい…助けられなくて…」
そうして更に心が深く抉られた
「もう…良いのよ…」
「っ!」
突然頭に手を置かれて頭を上げると微笑む実の母リゼがいた
「な、なんで…?」
まるで幼児の様に目を腫らした顔で、無意識の内に微笑んでいた
「ふふふ…」
「母…さん…!」
じわりと滲み出してきた涙がポロポロと溢れだし、嬉しさに顔を歪め、涙を拭うが次々に溢れ出る
「もう…良いのよ…」
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
「もう…良いのよ…弱い弱い人間には興味は無いから…」
その言葉にピクッと反応し、恐る恐る頭を上げると、ニコッと笑った母がいた
「今…なんて…」
「なんでも無いわよ…」
「で、で「大好き…」」
ギュウッと抱き締められ、泣き出しそうになるが目を瞑ってギュッと堪えた

ドンッ

「な、何をするの?」
母が問う
「ありがとう…最後にその姿を見せてくれて…」
レンゼは涙を拭うと深呼吸をした
「だが、その姿は母さんの物なんだよ…だから止めろ」
「あら、今回は前よりはマシね。でも…もう遅いわ。貴方はここで死ぬの。私に…私達に殺されてね…」
そう言うと同時に赤い光に包まれて黒髪の艶かしい姿の女性へと容貌が変化した
「やってみやがれ…! お前ごときに負ける筈ねぇだろうが…!」
「私に負ける筈ない? なら、もう1人来てるんだけど…その娘ならどう?」
ラストはゆっくりと横に歩いて退いた
その後ろには茶髪に茶色の瞳、そしてまだ幼さが残り、可愛らしいレンゼと身長が同じ位の少女…ロゼが立っていた
「久しぶり、レンゼ」
ニコッと微笑むロゼの姿にホッと一息吐いたが、再び気を引き締めた
「ロゼ、こっちに来い。また…皆でく「皆で暮らす? バカ言わないで…お母さんはあの時死んだ。殺された。それに今までの時間は取り戻せない。例えそれがどんなに辛い事だとしても結果は変わらない。それになんで貴方の言う事を聞かなきゃならないの?」」
「そりゃ…きょ「兄妹だから? 例えそうだとしても兄妹らしい事何かしてくれたの? 私の事は幼馴染みアリサに任せっきりで己の復讐に身を費やした。そんな貴方に妹なんて呼ばれたくない」」
冷たい目で見詰める少女に寒気を催したが拳を握り締めて再び口を開いた
「だったら俺じゃ無く「貴方に何かを言われたくも無い。説得されるのも嫌。それに…もう貴方に用は無いの…ただ…私のこの人である記憶への戒めとして貴方は私が殺す…」」
「な、何を言ってんだよ…? そんな悪い冗談やめろよ…」
「悪い冗談? 殺すって言うのが? 人を何人も殺した貴方に言われたく無い。この記憶もいらない…貴方も彼女アリサも…貴方と関係ある人全員殺す。そうして私はこの世界への思い入れを断つ…」
そしてロゼはレンゼの眼前へ手を伸ばす
「死ね…」
ロゼが言葉を発した瞬間目の前に赤い魔術式が現れ、咄嗟に膝を折り曲げて後ろに倒れた
「っ!」
するとレンゼの顔の前を透明の何かが掠めていき、後ろの壁が大音量と共に弾け飛んできた
それに更に驚くと左側に転がって難を逃れた

こうして2人は対立し合う。

片や己の思いを断つため…

片やその思いを砕くため…

2人は互いの顔を見詰め合う。

少女は冷たい瞳で…

少年は罪悪感の籠った瞳で…

互いに一定の距離を保ち、見詰め合う。

殺そうとする者…

連れ戻そうとする者…

互いの思惑が交差し、明け方の光が互いを照らす。

少女の勝利を讃える様に…

少年の心を見透かす様に…

片や相見えるその瞳に一切の揺らぎ無し。

片や相見えるその瞳に揺らぎしか見当たらぬ。

少女と少年は交じり合う…

全ては我が理を突き通そうとするが故に。

そして少年は立ち上がる。

少女は手を伸ばす。

全ての思いをぶつけて相手を納得させる為…

冷たい風が2人の髪をなぜる。

沈黙が降りる。

そして…

それは赤い魔術式と共に開始された。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

コンバット

サクラ近衛将監
ファンタジー
 藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。  ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。  忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。  担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。  その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。  その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。  かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。  この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。  しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。  この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。  一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。

魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん
ファンタジー
 誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。  運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……  与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。  だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。  これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。  冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。  よろしくお願いします。  この作品は小説家になろう様にも掲載しています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

エレンディア王国記

火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、 「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。 導かれるように辿り着いたのは、 魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。 王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り―― だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。 「なんとかなるさ。生きてればな」 手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。 教師として、王子として、そして何者かとして。 これは、“教える者”が世界を変えていく物語。

処理中です...