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12章 放浪
196話 逃走と潜入
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ナイフを弾き返し、ナクリが少し怯んだ隙にカウンターを乗り越えてテーブルの前に立った
「どうし……何? これ?」
階段からシルビアが降りて来てレンゼとナクリを交互に見詰めた
「お嬢。あの子供……本当はお嬢の命を狙う他店の回し者だったのです」
「そ、そうなの? レンゼくん」
「違う! ほ「お嬢! 彼の言葉に耳を貸してはいけません! 子供でも命欲しさに嘘を吐きます!」」
ナクリはシルビアを庇うように前に出てナイフを振り下ろすとレンゼはそれを横に弾いて躱す
「これがあの子供の本性です。敵の懐に忍び込んで油断させ殺す。なんともあくどい限りです」
小さく首を左右に振って落胆を表現すると再びレンゼに斬り掛かった
「ッ!」
鍔迫り合いに転じ、両手でなんとか耐えているとナクリが耳元まで口を持ってきた
(退いて下さい。殺したくはありませんので)
と、小声で呟いた
(ここで退けばレインさんが殺されるんだぞ……!)
(そのつもりですしもし彼がこの国に滞在している事が知れ渡れば指名手配されるでしょう)
「お、お父さん!」
そう叫んで階段を登っていくシルビアを視界に入れると唇を噛んで力を抜くとナイフが床に落ちた
「諦めますか?」
「……」
拳を強く握り締め、俯いた
「はい……」
ナイフを拾って鞘に納めると、とぼとぼとその店を出て行った
「……」
いつも気付けば来ている噴水広場のベンチに座って大きな溜め息を吐いた
「どうすれば……くそっ!」
右足をダンダンと地面に叩き付けた
「でも……あの人なら……いや流石に不意打ちされたら……」
頭を抱え込んで考え込んでいるとベンチから転げ落ちて地面と頭に指を挟んで頭をぶつけた
「ッ~……つ~……!」
目尻に涙を浮かべて頭より痛む指に息を掛けていると前方で笑われた
「あははははは! おに~ちゃんおもしろ~い!」
「誰?」
「わたしはみしぇりゅ! ごしゃい!」
「へ、へぇ~……」
目の前で大型犬の上に乗って笑っている赤茶髪の少女を見て苦笑した
「おに~ちゃんは~?」
「俺は……レンゼ。所でお母さんやお父さんは一緒じゃないのかな?」
「うん! わんわんのおしゃんぽしてりゅの~!」
再び苦笑すると立ち上がった
「一人じゃ危ないから早く帰るんだよ~」
犬の頭を撫でると突然噛み付かれた
「……うん。痛いね」
手から血が流れ出てレンゼは激痛に耐えながら苦笑した
「うわぁ……! おに~ちゃん血がでてりゅ~!」
「大丈夫大丈夫。一杯怪我してるからこれだけじゃ泣かないよ」
と、言いつつも歯が更に食い込み痛みに耐えかねそうなので引き抜こうとしていた
「わんわんやめてあげよ? おに~ちゃんいたしょ~? だかりゃ」
ミシェルがそう言うと犬は噛み付くのをやめた
「痛かった~」
「だいじょ~ぶ~?」
「大丈夫だよ。ほら、早く帰りなさい。帰りが遅いとお母さん達が心配するよ」
「うん! ばいば~い!」
手を振って別れると手を思いっきり振って血を払い、鞄から手袋を取り出すとそれを着けて誤魔化した
「手袋も赤いから多分……気付かれない」
片手だけだと不自然なので両手に装着すると欠伸を掻いた
「早く行動しないとあの人に見付かったら殺されそう……」
噴水を見詰め、微笑むと二年前のうろ覚えの立地を頼りに軍本部を探し当てた
「おぉ~……! 我ながら流石……」
自画自賛していると人が来たので慌てて壁の影に隠れる
「そういやお前あの時何してた?」
「決まってるだろうが。命令なんだし。分かってて聞くなよ!」
「そうだったそうだった! あっはははは!」
男の声が二つ聞こえ、小さく睨むと二年前に見た地図の事を必死に思い出し、資料保管庫の位置を大まかに把握すると壁伝いに出来るだけ音を立てないように忍び足でこっそり歩いて行った
一度端まで来て曲がると再び壁伝いに歩いて行く
窓を二つほど越えた所で止まると鞄からチョークを持ち出し、左手で壁に魔術式を画いた
「バレないように素早く的確に……」
窓と窓の間に左右交互に一m半程の隙間を空けて三階の窓の下まで柱が伸びた
「まだバレてない……」
一番下の柱に登ると次の柱へ飛び移った……が滑り落ちそうになり慌てて手で柱を掴んで一命を取り留めた
「少し練習した方が良かったな……」
柱に逆さにぶら下がっているレンゼは左手で鞄を持って髪も逆さに立っていた
「一度降りてもう一回やろ」
こうして何度か繰り返しているとコツを掴んで漸く目的の窓の側まで来た
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