復讐の慰術師

紅蓮の焔

文字の大きさ
上 下
223 / 315
13章 前哨戦

217話 戦闘のその後

しおりを挟む
「レンゼ……くん……?」
青い顔をしたジョンがレンゼの背中を撫でた
「ジョンさん……どうしよう……皆が、人質に……」
顔を上げるとジョンはニコッと微笑んだ
「そんな格好で外に出ちゃマズイでしょ? リズさんの家がすぐそこで良かったね」
「そんな事より皆が「今は早くここから逃げる事が重要なんだよ。迷惑は……掛けたくないでしょ?」」
コクっと頷くとレンゼは立ち上がってジョンと手を繋ぎ、リズの部屋に戻った
その後すぐに湯を溜めて風呂に入る準備をし、待っている間、壊れたベッドのある部屋で椅子とテーブルだけ元に戻し、会話していた
「ジョンさん……アレって……俺が死んでれば助かった命なんでしょう? 俺があの時殺されてたらあの人達は……」
「たらればは良くないなぁ……俺はリズさんにフラレたからって『ああしたら』『こうすれば』なんて考えないよ。俺が考えるのは『次はこうしよう』だ」
未だ血の気の戻らない顔でニヤッと笑いながらレンゼを見るジョンに対して大きく溜め息を吐いた
「それは恋愛事でしょう? 俺が言ってるのは人の命の事なんです」
「それじゃあ、ちょっと生々しいけど……戦争で敵を殺した時、『俺のせいで相手が死んでしまった……俺が殺されてれば……』なんて考える軍人が居ると思う?」
それを聞いて黙り込んだ
「もし居たとしてもすぐに罪悪感に苛まれて軍を辞退するだろうね。だから、自分を殺した相手を殺して貰えたんだから感謝されると思うよ。『ありがとう。レンゼくん』ってね」
「……でも実質的に倒したのはジョンさんと……スペービァですよね?」
「そうだけど……俺は、ちょっと……ね」
ジョンが微笑むと少し安心したのか、レンゼも微笑んだ
「ロゼをどうすれば取り返せるか……ラストも取り込めれば戦力に……生きてる事は分かった……それにグルーム……憂鬱な気分……ってこれは何か意味があるのか? いや、それよりもロゼを取り返す方法……ヴァニティーが出て来れた所から考えてロゼも出て来れる……でも出て来ない所を見るに何かアッチにも策がある筈だ。それでも……危険なのは変わらない……」
「ニャ~……」
「ん? 確かに気持ち悪いけど我慢しててくれ。もうちょっとで洗ってあげるから」
頭に移動していた様で、レンゼが指で顎を撫でるとヒールゥは小さく喉を鳴らして再び戻った
「今のは?」
ジョンが顔をあげてレンゼを見るとレンゼは目を見開いて気まずそうな顔をした
「……あ、今のは……その……ペット……です……」
「へぇ~。なんて言う名前なんだい?」
「あっ……と……ヒールゥ……です」
「さっきの鳴き声からして猫とは思うんだけど小さくない?」
「……生まれつきの病気です」
顔を顰めて答えるとジョンはそれ以上追求しなかった
「さて……そろそろお湯も溜まっただろうしお風呂入ろっか」
「あ、一人で大丈夫です」
「良いじゃない。俺と君の仲じゃないか」
ニヒっと笑い、レンゼの手を引っ張ってお風呂に連れて行った
「タオルはそこです」
「お、本当だ」
洗濯かごに入った二枚のタオル。双方とも白いが大きさが違う
「それじゃあ脱いで」
「……一人で入ります……」
「そう言わずに早く早く」
服を脱ぎ始めるジョンはレンゼを急かした
「……男性に好色の目で見られる事もあるので抵抗あるんですけど……」
「ん? ああ。確かに女の子に見えるもんね~」
からかう様に笑うとレンゼに背を向けた
「こうやって着替えるから気にしなくて良いよ~」
「いえ……お先にどうぞ……」
「警戒心強いね……う~ん……でもその服、血まみれだから証拠隠滅したいんだけど……」
そう言いながら振り向いた
「その理由でいくと俺の唯一の男物の下着が消えちゃうじゃないですか……」
「後で買ってあげるから」
顔を顰めると溜め息を吐いた
「それじゃ、先に入るんで見るのやめてくれません?」
「分かった分かった」
ジョンが再びレンゼに背中を向けて両手を後頭部に置くと、服を脱ぎ下着を脱ぎ、風呂場へと駆け込んだ
しおりを挟む

処理中です...