復讐の慰術師

紅蓮の焔

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14章 帰郷

223話 お風呂

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「それにしてもレンゼくん料理上手かったんだな~! あん時は子供って言って悪かったよ!」
「いや~……俺よりアリサの方が良いですよ」
はにかんでそう言うと米神に中指が少し突き出た拳がセットされた
「……アリサ?」
顔を青くしてそう聞くと後ろから返事が返ってきた
「レンゼより私の何が良いのかしら?」
「ほら、料理の腕だッ! 痛っ! 痛い痛い!」
「何処からどう聞いても嫌味だよね? 今の」
「ち、違っ! 痛い!」
暫く米神に攻撃を喰らっていると涙を目尻に浮かせ始め、その辺りで漸く米神から拳を離した
「ふぅ……アリサ、結局見付かったの?」
「う~ん……それらしき物は……でもレンゼは立入禁止!」
「それは危なっかしいとかそんな理由で?」
力強く頷かれると男が大爆笑した
「男が姉ちゃんに危なっかしいからここ入るなって! ギャハハハハ! 俺が小さい頃でもそんな事言われなかったぞ!」
「うるせぇ! 後でボコボコにしてやるからな!」
「ほうほう……俺にはお前の攻撃がただ紙が当たった程度にしか感じないと思うけどなぁ」
「よし! 表に出ろ。ボコボコにしてその子供扱い止めさせてやる!」
「おお良いぜ」
そう言って二人は外に出た


「そう言えばまだ名乗ってなかったな。俺の名前はルートだ」
「単純そうな名前で良かったなぁ! 性格を似通ってるからな!」
「そんな事言ったらお前なんてただのお子ちゃまだろ?」
暫くその様に貶し合って喧嘩を開始した


「ふぁ~あ……」
「こんにゃろ!」
足で頭を押してレンゼの手がルートの体に届かず、今度は足を狙ってみるも普通に力負けで敵わなかったが、必死でルートの足をポカポカ殴り付けている様子は傍から見れば愛らしくも感じてしまう物だった
「フッ……子供っぽい……女は常に可愛い且つ大人っぽくなくちゃね!」
何処か勝ち誇った顔でリーザはレンゼを見た
「くっ……だったら!」
体を回転させて足を躱しながら男の懐に潜り込んだ
「ッ!」
「喰らえ!」
油断していたルートの金的を思いっきり蹴り上げる
「ッッ!」
ルートは余りの激痛に悶絶して辺りを転げ回った
「勝った……!」
ルートに背を向けて家に帰るとアリサ達にピースサインをした
「ハァ……それじゃあもう夜だしお風呂に案内しますね」
タオルをジョン達に手渡してお風呂に入れると、その間達は今後の指針に付いて話し合っていた
「……それよりなんで俺が男と風呂に入っちゃいけないんだよ……」
「レンゼ? 今の貴方のその髪、なんでサラサラか分かって言ってるよね? 私がお風呂の時も寝る前も起きた後も毎日毎日、櫛で梳いてあげたからそんなにサラサラなんだよ? やっと帰って来たのに今更それを断るって言うの?」
「そうじゃなくて……ほら、他に女の人も居るし……」
「大丈夫よ! 二週間も一緒にお風呂に入った仲じゃない!」
リズがウィンクしながら親指を立ててレンゼを見詰める
「そのせいで変な格好させられましたけどね!」
「まあ、レンゼが男達と一緒に入って欲しくない理由は幾つかあるわ。その中で一番の理由は……

レンゼが犯されないかどうかよ!」
「……はい?」
「だってレンゼ可愛いじゃない? その上か弱いのにどうやって武器も無いのに勝てるって言うのよ!」
「おいちょっと……流石にそれは無いんじゃない? ジョンさんは好きな人が居るし……」
そう言いながらリズを横目で見る
「ルートさんは……ハッ! 彼女にフラレたばっかりって……まさか! いや、あるはず無いな男色じゃ無さそうだし」
「ううん! 男色じゃなくてもレンゼは狙われるのよ! 見た目はか弱い乙女なんだから! 大半の人は口調かアレで判断してる筈よ……私やシルちゃん達の場合は口調で判断したけど!」
顔を近付けて真剣な瞳で説得しようとするアリサに一瞬黙り込んだ
「そこまで言っても俺、男だよ? そんな女の園みたいな所にいちゃ……その……分かるだろ?」
顔を赤らめ、目をテーブルに向けるがテーブルの下にアリサの足が映り、テーブルにうつ伏せた
「そんなのあんたが動けない時に何度も見たわよ。見た目通り小さいのも知ってるし!」
「大きさの問題じゃない! 性的な意味で問題なの!」
うつ伏せたまま話しているとアリサは大きく溜め息を吐いた
「あのね? 今まで一緒にお風呂に入ったりしてるんだから今更恥ずかしがる事じゃないじゃない」
「年を考えてくれ……」
「私は十六、貴方は十七。まあ、もうちょっとで私も誕生日だけど」
「もういい年頃なんだからもう少し羞恥心を持と?」
「ハァ? 知らない人に見られるならいざ知れず、レンゼに見られても何も感じないわよ。それに私の方が力強いし体力もあるし襲われる心配も無し! だからあんたは全くの無害。分かった?」
顔を上げてアリサを見ると、両手を腰に自慢げに胸を張っていた。それを見て再びテーブルにうつ伏せた
「……でもさ? コッチが大変なんだよ……抱き枕にされるのでも色々大変なのに……」
「え? 何? 今まで我慢してたの?」
「我慢と言うか……落ち着かないと言うか……」
「あぁ……そういう意味……でもそんな事言うんだったらあんただって私を一人にして出掛けてたりしてたわよね? だったら私だって欲求不満だし? わざわざ早く終わらしても意味ないから何かやりたい事が無い限り仕事も早く終わらせないし……そして暇だし」
「今凄い事言ってなかった!?」
「凄い? 別に何も凄くないじゃない。一人で暇で欲求不満って言っただけじゃない」
「もう少し考えて口にしようか。聞いてて俺も恥ずかしいから」
「やっぱり男の子ですね~! 幾ら女子力高かろうが男の子! その程度で恥ずかしがるなんて……」
横槍を入れてきたリーザを見ると、やれやれ。と言った感じで首を横に振っていた
「女子力高くないですよ!? 俺よりアリサや母さんの方が断然、上手い……ですし……」
俯くと、大きく深呼吸をした
「じゃ、じゃああれです! 体にタオルでも巻いて「苦しいじゃない」」
アリサの一言で見事拒否されると頭を抱え込んで再び考え込んだ
「……ハァ、つまりアレ? 女の子と入るのが恥ずかしいって事でしょ?」
リズがレンゼに聞くと二回、大きく頷いた
「でも私と入ってた時は別に普通だったよね?」
「あ、それは断ればまた変な服着せられる可能性が「変な服?」」
アリサが横槍を入れ、リズが笑いを堪えつつ懐からとある紙を取り出した
「ッ! まさかそれって!」
テーブルの上に飛び乗ってリズに飛び付きその紙を奪うと床に転げ落ちた。慌ててその紙を確認すると……

何も書かれていなかった
「引っ掛かったわね?」
「ッ!」
再び懐から紙を取り出し、アリサに見せた
「……何? これ」
「こっちがレンゼくんの寝顔とぬいぐるみ! こっちは女性用下着を着たレンゼくんの寝顔!」
興奮気味にその写真をアリサに見せるリズを睨み付けた
「やっぱり敵だろ!」
「いや~ね~! 私はれっきとした一般女性よ~!」
「ね、ねぇレンゼ? 試しに私の服着てみない?」
「絶対にお断り!」
顔の前で腕を交差させて拒否すると立ち上がった
「まあ、そんな事もあって普通に嫌なんだよ……」
「それじゃあ……あっ! レンゼ……」
「な、何……?」
「ある条件を出します……貴方がこれから一緒にお風呂に入るなら私はこの条件を守る事を約束するわ」
「それは……?」
真剣な眼差しでレンゼを見詰めるアリサを見て、固唾を飲むと、アリサは人差し指を立てた
「貴方を子供扱いしない事……」
「ッ!」
「さあどうする?」
「最終兵器出してきやがったな……」
勝ち誇った表情を浮かべるアリサを睨んで小さく頷いた
「言質取ったからな……」
「えぇ。これでお風呂の話はお・し・ま・い!」
アリサが手招きしているのにも気付かずにレンゼはとても嬉しそうに顔を紅潮させて、小さく呟いた
「よしっ……! これで子供扱いされなくなった……!」
小さくガッツポーズしているとジョン達が戻って来てガッツポーズしているレンゼと、手招きしているアリサとリズを見ると一瞬黙り込んだ
「何これ……」
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