復讐の慰術師

14章 帰郷

２４７話 仲直り

「どうしよ……」
ベッドの上でゴロゴロと転がり頭を掻き毟ると突然起き上がった
「行けば確かに勝てる確率は上がる……かもしれない。けどアリサを怒らせる、或いは悲しませる事になるし……行かなきゃ確率は上がらず負ければ危険な事に巻き込まれるかも……アリサに怒られず悲しませずあっちに行く方法……何かないのかぁ～！？」
頭を掻き毟って再びベッドの上に倒れた
「どうして分かってくれないかなぁ……」
そう呟くと溜め息を吐いた
「やらなきゃ……やらなきゃいけないのにやれない……クソッ！」
腕を横に振ってベッドを叩く
「でもここを直してくれたのも今まで世話焼いてくれたのもアリサだし……恩返し位しないとだし……ハァアア……」
大きく溜め息を吐くとベッドから降りて部屋から出た
「……アリサ？」
リビングでうつ伏せているアリサの肩を叩くと頭を突然掴まれギロリと睨んだ
「分かってる……行きたいんでしょ？　……でも条件を二つ付けて」
「条件？」
首を傾げるともう片方の手の指を二本上げた
「一つ目は私を連れて行く事」
そう言うと中指を下げた
「二つ目は一日以内に家に帰る事。この二つを守るなら良いよ」
次に人差し指を下ろして起き上がった
「これで手を打ってあげる。どう？」
「連れて行って……一日以内に帰って来れるなら良い。そういう事だな？」
「そう言ってるじゃない」
「それだとロゼも……って事になるよな？」
「そうなるわね」
少し考え、アリサの手を退けると小さく頷いた
「分かった……」
そう言うと、アリサはレンゼを抱き寄せた
「じゃあもう仲直りね？」
「あ、うん……そういやロゼは？」
「リズさん達と外で遊んでるよ」
ほら。と言って窓を指差すとそこからリズに追い駆け回されて必死の形相で逃げているロゼの姿が見えた
「あ！　朝ご飯作り忘れてた！」
レンゼから離れ慌ててキッチンへ向かって走って行った
「……とにかく仲直り出来たし行ける。って事になったんだよな？　後はリズさんがいつ戻るのかにかかってる訳だけど……多分早くて明日。遅くてもここ三日以内には行ける筈」
欠伸を掻いて部屋に戻るとベッドの上に倒れて眠りこけた

……

…………

……………………

「……寝てたのに」

おいおい、酷いなぁ

「もう早く用件言って？　早朝から起こされて眠いし寝たいから」
目の前に佇む『俺』を半目で見て溜め息を吐いた

分かったよ。ったく……

頭を掻くと『俺』はレンゼを指差した

とにかくお前、早く使いこなせ！　俺が出て行けねぇから！　まあ、あっちは……殺られたがまだ俺が居る。だから出来るだけ速く頼むぞ！

レンゼの肩を掴んで前後に揺らす『俺』の手を掴むとそれをやめさせた
「分かった分かった！　で？　使いこなすって何を？」

怒りをだ。ただ抑えるだけじゃ使い熟せているとは言わない。確かに怒りを抑える事も重要だが溜め込んで力に変換するんだ。方法は簡単だ。その時の怒りを抑えて記憶の奥に溜め込み使いたい時にその怒りを乗せて力を込めるんだ。そうすればお前の血と反応して飛躍的に身体能力が上がる筈だ

「血……？　どういう事だ？」

それは俺からは話せない。直接親から聞け

再びレンゼの後ろに巨大な扉が現れた
「一体、何を言いたかったんだよ……」
そう呟くと『俺』に背を向けて扉の中に入って行く

……さて、どうやって追い出すかな…………

ガコンッ！

「……クソッ、あいつのせいでロクに眠れなかった」
舌打ちしてベッドから降りると欠伸を掻いた。すると人差し指の上に何かが乗り、指を目の前まで下ろしてきた
「ナ～ァア……？」
「はいはい。……って！　さっきの夢の話なのになんで知ってんの！？」
「レンゼ～？　起きたの～？」
呼び掛ける様にドアの向こうから声が聞こえる
「ご飯出来たから早く来てね～」
「分かった～。今行く～」
ドアを開けるとその先には椅子に座った所のアリサがレンゼに気が付き手を振った
「ほら！　早く早く！」
「速くしなさいよ！　バカレンゼ！」
部屋から出るとドアを閉めて空いた椅子に座った
「戴きます」
「「「「戴きます」」」」