復讐の慰術師

14章 帰郷

２４９話 夜のお話し

かれこれ三日ほど経った日の夜
リズが突然、悲しげに語り出した
「実は私……あっちに戻らなくちゃいけないの！」
泣いたフリをしながらチラチラとレンゼ達を見ているリズを見ると、アリサとロゼは笑顔で手を振った
「「お元気で！」」
「えぇ！？　そこは悲しむ所じゃないの！？　戻っちゃうんだよ！？」
アリサは驚愕しているリズに指を指すとニヤッと笑った
「だってリズさんの事、そこまで好きじゃないし」
「私もこの人嫌い！」
女子から酷評を受け、テーブルにうつ伏せた
「うぅ……そこまで正直に言われると傷付いちゃう……」
少しぼやくとバッと顔を上げて期待を込めた瞳でレンゼを見る
「レンゼくんは！？」
すると目を逸らし微妙に口角を上げ、苦笑した
「あ～……好き、なんじゃないですかね？」
「その反応……絶対に嘘だぁ！　そんな反応じゃ逆に傷付いちゃう～！」
涙を流し、テーブルにうつ伏せると泣き疲れたのか、そのまま眠ってしまった
「ハァ……運んで来る」
リズを背負って自室に連れ込んだ
「そろそろ寝る～……」
「おやすみ。ロゼちゃん」
ジョンが手を振るとロゼもぎこちなく手を振って部屋に向かった
「……いよいよ明日だね」
「そう、ですね」
「あ、関係ないけど一つ聞きたい事があるんだ」
人指し指を立て、レンゼに顔を近付ける
「なんでしょうか？」
「ロゼちゃんのさっきの反応。絶対僕に気が「ふざけないで下さい。絶対に有り得ません。さっきのは嫌だけど仕方なくみたいな感じでしたよ」」
眉間にシワを寄せてジョンを睨み付けると、苦笑で返された
「分かったよ。……そう言えばアリサちゃん。本当に連れて行くのかい？　危険……だよ？」
「でも、こっちに残しておくと手の届かず、更に言えば……」
少し首を捻って考える様な素振りを見せると、ゆっくりと首を左右に振った
「いや、何も有りませんでした」
「そう？　だったら良いんだけど」
ジョンは首を傾げて立ち上がった
「それじゃ、僕もそろそろ寝るよ。ベッドは使わせてもらうね」
「ご自由に」
現在、レンゼとジョンは部屋を共有している。所謂相部屋だ
一応、レンゼも年頃の男子だと言う事を血眼になって説得し続けた結果、二日に一回だけと言う条件付きで相部屋が許されたのだ
「あれ？　アリサちゃん」
「ッ！？」
即座に首を回しジョンを見ると廊下に出た所で手を振ってレンゼの部屋へと入って行った
「……聞いてた？」
廊下の方を見て聞くと、アリサが右の二の腕を擦さすりながら俯いて出て来た
「聞いてた……」
アリサの言葉に黙り込み、二人を沈黙が支配した。少し経ち、その中でレンゼは隣の椅子を両手で引いて手招きした
小さく頷くとゆっくりと椅子に向かって歩いて行く
床が軋み、腕から手を離して椅子に座るとレンゼの方に向き直った
「あれは……その……」
顔を見れずに俯いて拳をギュッと握り締めた
「私が……邪魔なの？」
震える声でそう言ったアリサの顔を見上げ、声を出そうとするもその表情を見て、唇を噛み眉間にシワを寄せた顔を見て、再び……俯いた
「邪魔、じゃ、ない……」
音を立てて立ち上がりレンゼの肩を掴んでキッと見詰める
「だったらどうして目を見てくれないの！　なんであんたは俯いてるの！？　ねぇ！　答えてよ！　ねえ！」
「ごめん……」
レンゼの肩から手を離し、左頬に弱く掌を当てるともう片方の手で顎を上げ目を合わせる
「ごめんじゃないの！　ちゃんと目を見て！　会話をして！　ちゃんと答えてよ！」
一度、小さく息を吐いてアリサを睨んだ
「じゃあさ……アリサはお母さんが死んだ時、どう思った？　俺やロゼが死んだらどう思う？」
「な、なんでその話になるのよ！」
「良いから！　……答えて」
目を細め、ジッと見詰める
「そりゃあ悲しかったし……悲しい……」
「アリサが俺に言ってるのはそれだ。話を聞いてたなら……分かるだろ？」
手を払い、椅子を直した
「お休み。……明日、リズさんが行った後、すぐ出るから」
レンゼが部屋に戻ると、アリサは左胸に手を置いた
「それって……」