復讐の慰術師

紅蓮の焔

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16章 帰り道には危険がある

265話 強さとは……弱さとは……信じるとは……

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「はぁ……あんまり美味しくなかった……」
空になった缶詰を足元に置き、空を見上げる
「それに……レンゼも遊んでくれないし……お母さんが死んじゃって悲しいのは分かるけど……」
小山座りをして膝に顔を埋めると溜め息を吐いた
「早く帰りたい……皆が居て楽しいお家に…………でもお母さんも居ないし、優しかったレンゼも居ないし……帰って……来ないし……」
ギュッと縮こまると、突然発狂したように頭を掻き、首を横に振った
「だぁあああ! 落ち着け落ち着け落ち着けぇええ! 泣いたらダメ! 笑って楽しく生きて、いつかお母さんに色々なお話しするんだから!」
フンッと意気込むと立ち上がり伸びをする
「……ッ! ふふふ……さっきまで私の事からかったお返しに……にししし! 起きた時が楽しみね?」
寝息を立てるレンゼに微笑む
「じゃ、お・や・す・み……」





時を遡る事数時間前
「ジョンさん大変!」
列車の椅子に座って眠りこけているジョンの頬をペチペチと叩く。すると薄く目を開き、欠伸を掻いて目を擦る
「ん~? レンゼくんかロゼちゃんが怪我でもしちゃった~?」
「違います! さっきの駅でレンゼ達を降りちゃったみたいで探しても見付からないんですよ! ……まあ、男性用トイレは流石に探してませんけど……でもロゼも一緒だと思うからトイレには居ないと思うんですよ。となれば後は降りたとしか想像がつきません!」
「まず落ち着こうか。それで……今どの辺り?」
「後二つ駅を通れば降りる駅に着きます……一つ一つの距離が長いので結構な距離ですが……」
ジョンは溜め息を吐き窓の外に目を移した
「……今これを降りてもこれが最終便だから帰れないよ? どれだけ思っていても今日中に帰りたいなら降りれないんだよ。それにこの辺りはまだ治安が良い。何事も無いよ。きっとね」
「でもそれじゃあ見捨てろって聞こえます……」
眉間にシワを寄せて言うと、ジョンが微笑みながら振り向く
「僕はね。見捨てろって言ってる訳じゃ無いんだよ。ただ、信じてあげて。あの子も男の子だ。一人の女の子も守れない程弱くは無いよ」
「いいえ! 弱いです! 私でもレンゼに勝てるし負けた事は一度もありません!」
「そう? それは、……じゃないかな? 今まで助けられた事はない? 命の危険に瀕した時、悲しい時、等など……『私は人生これまでで一度も助けられていない。レンゼくんには私が居ないとダメだ』そうとでも思ってるのかな? もしそうだとしたら……考え直した方が良いよ。レンゼくんは君が思っている程弱くはない。その代わり、強くもないからその人の視線で相手と話す事も出来る。僕から見たらとっても強いと思うけどね……勝算が無い相手にも真っ向にぶつかるこの国の軍人とは違う。自分の置かれている状況を把握し出来る限りでアリサちゃん達に被害を齎さないよう考えて考えて考え尽くして、それでも無理だと分かれば自分の身を犠牲に……それでも無理なら諦める。そんな彼を僕は強いと思うよ……本当に」
歯を軋ませ、ギュッと拳を握り締めてジョンの向かいに座った
「……ただの……自己犠牲じゃないですか……」
「それもアリサちゃんが好きだから必死になって考えるんじゃないかな? 僕みたく……いや、とにかく、君を危険から遠ざけたいからこそ彼は……レンゼくんは君から離れようとしてるんじゃ……と、僕は思うよ」
「いやいやいや! レンゼが私の事を好き……ってそんな事ありえませんよ! だってあいつの趣味は大人っぽくて……胸が大きくてスラッて……あ! あれです! ぼっきゅっぼんってやつです!」
ははは……。ジョンはそう苦笑して窓の外を見詰め、落ちていく夕日を眺める
「それ多分ね。そういう目で見るとそうかもしれない。でもそれは性癖であって恋愛に対する好き嫌いとはまた別の話じゃないかな?」
「同じですよ! レンゼは「アリサちゃん」」
窓から目を離し、アリサの目を見詰め小さく息を吸う
「な、何?」
「……ちょっと、僕の初恋の話でもしようか?」
アリサは固唾を飲み、コクっと頷いた
「僕と彼女の出会いはね。自分達の母親が仲良くなった事がキッカケなんだよ。でも彼女とは馬が合わなくてね。いっつも喧嘩ばかりしてた。そんなある日、喧嘩の終わった後、彼女が呟いたんだ『私が強ければあんたなんかぐっちゃぐちゃのぐちゅぐちゅにしてやれるのになぁ……』って。その後、彼女が目を向けた先にとある軍人さんが居てね。彼女は思い付いたように『軍人さんになる~!』みたいな事言って僕も負けたく無い一心に軍人になったんだよ……でもやっぱり軍に入るって事は危険な仕事もあってね。何度か彼女に助けられながらも大佐官になり、僕の部下として彼女も配属されたんだ」
「あ! 分かりました! リーザさんですね!」
苦笑すると首を振り、哀しげに斜め下に目線を向ける
「ローラって言う人なんだけどね……僕が殺してしまったんだよ……」
微笑み、一度目を閉じ、顔を上げてアリサの方に顔を向けて目を開ける
「……どうして、笑っていられるんですか?」
眉間にシワを寄せ、顎を引き少し上目で聞く
「その人に恋心を抱いてたんですよね? だとしたら殺してしまったのに何故笑えるんですか? 貴方には! 罪悪感ってものが無いんですか!?」
「……軍人はね? 戦場で死ぬ事も多々ある。それは分かってくれるかな?」
「ええ。なんとなく分かります! ですがそれとこれとは別の話でしょ!」
立ち上がり目尻に青筋を浮かせる
「じゃあ聞くけど、戦場で友達、家族、なんでも良い。とにかく自分が好感を抱いている人が目の前で死んじゃったらどうする? 僕の場合は、悲しみよりも『殺してやる』や『次は僕だ』と言った感情が真っ先に頭の中を支配したよ……そうして戦場を生き抜いた後は人を殺した罪悪感に苛まれ、それが治まってくるともう昔の事でその人が死んだ事に涙を流せなくなるんだよ。分かるかい? この気持ち」
唇を少し噛み、目を逸らすと椅子に腰掛けた
「例え恋心を抱き、その人を信じても、失敗する時はある。でもね? ここは戦場でも無ければ危険も少ない地域、レンゼくんを信じてみよう? 君が彼を弱いと思うならそれも良い。だけどもし弱いと言うなら彼を強くする為に……と思えば良いんじゃないかな。どんな人でも、明日の深夜までには帰って来る。それに人はそれだけじゃ死なない。死ぬ危険はほぼ無いに等しい。だから、信じよ?」
「……分かり、ました……」
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