294 / 315
17章 もう、後戻りは出来ないから……
288話 逃げたくても……
しおりを挟むパタンッ
本を閉じると、ソラはベッドから起き上がる
「さっきからさ、一人で何話してるの? 気持ち悪いんだけど」
「あ、いや! 何でもないです!」
咄嗟に手を背後に回して苦笑を浮かべて振り返ると、ソラはどこか品定めするような眼でレンゼの周りをゆっくりと回りながら見詰める。しかしレンゼも負けずとソラに合わせてゆっくり回っていく
「ふ~ん……じゃあその話し方止めて? いきなり敬語使われても気持ち悪いだけだから」
「……分かった。そ、それより今って何時ぐらい? そろそろ夜になっても良い気がするけど」
レンゼに言われ、チラッと本の壁を見た
「もうすぐ夕方……あ、じゃあ夜ご飯も作ってよ? 私は材料買って来るから。今日の夜ご飯は……とにかく固形物。テキトーに買って来るから何か作ってね」
そう言ってベッドから起き上がり、ベッドの下を漁る。ソラはそこからアタッシュケースを取り出しパカリと開く。その中には少量のお金、下着、洋服等、生活必需品が入っていた
そこからお金を少しだけ取り出しアタッシュケースを閉めるとベッドの下に直す
「じゃ、行って来る」
ソラはお金を手に持って部屋を出て行く
バタンッ
「……サラさんが帰って来るとしても多分ここじゃ無い。奴に匿えって言ったのなら危険なことに首を突っ込もうとしている。それは吉報を待つとしよう。問題はサラさんが何故俺を匿うようにソラに命じたのか……。それだけが分からない……」
頭を掻いてみるも進展は無かったようでゴロゴロと転げ回ったり髪を弄ったりジッとするなど、色々とやってはいるものの、やはり進展は無かったようで仰向けに寝転がりながら嘆息する
「……夜、だったか。それにここがリズさんの所と同じ間取りだからまだあの集合住宅に居るはず。入り口に何を仕掛けられているか。それが分かればすぐにでも出て行くのに……。下手すればここでサヨナラ。って事にも成りかねない」
大きく溜め息を吐くと顎を上に上げてベッドを見詰めた
「はぁ……どうしたもんかなぁ……」
ゴロリとうつ伏せるとヒールゥが眠たそうに鳴く
「分かってる。早く出なくちゃならないのは分かってるんだけどさ……やっぱり仕掛けなんて簡単に作れるし下手すれば──」
そう言いながらあぐらを掻いて座る。すると親指を立てて自分の首に向け、左から右へ拳を素早く動かす
「ズバッと来るかもしれないだろ……?」
若しくは──。と繋げて今度はギュッと握って拳を作ると顔の横まで持ち上げる
「──ボンッ」
そう言いながら拳を大きく広げた
「ってなるかも……」
ん? と少しだけ瞳を上へ向けると小首を傾げて首を振り、ホッと溜め息を吐く
「あ、音が大きいからそれは無いか」
ん~……。と頭を掻くと大きく溜め息を吐く。そして手を下ろして脚の間に手を入れる
「……それでもズバッとは来るかもなぁ……あ~、くそっ。こういう時こそ自分の非力がつくづく嫌になる」
身体を前後に揺らすと同時に玄関のドアが開き、ゴソゴソと何か布が擦れるような音が鳴っている
「……帰って来たか」
膝に手を着いて立ち上がると玄関の方まで歩いて行く
そこには少し焦げた白髪の持ち主、サラがアチコチに煤を付けて服は所々破れたまま戻って来た
「……何が、あったんですか?」
「ソラは、どこに居ますか?」
「あの人なら夕飯の買い出しを──」
言い終わる前にサラは顔をしかめて外に出て行く。ドアを開けっ放しにして
「あ、よしゃ! これで外に出れる!」
玄関まで走って行き靴を履くとつま先を床にトントンッと当てて踵を合わせると固唾を飲んで一歩、外に踏み出す
左右を見回し、誰も居ないことを確認すると階段まで走って行く
「これで捜せる! 逃げられる!」
階段を半ばまで降りると跳んで階下に降りる
軽快な音と共に軽々と着地して踵を返し方向転換するともう一度階段を半ばまで降りて跳ぶ
スタッ
「……案外すぐだったな。次で一階か」
階段を降りる。そして同じように跳んだ
その瞬間──
──昇って来る影が階下の床に映る
「ちょ! わっ! 退いてくださッ──!」
両手と首を左右に振るが影が大きくなっていく
左側の死角から顔を出したのはソラだった
「──ぶあっぷ!」
顔面から落ちたレンゼは少しだけ滑って鼻を右手で押さえると顔を歪めて立ち上がる
「はぁ……これだからガキは嫌いなのよ……来なさい。治してあげるから」
ポタポタと鼻血を垂らすレンゼを勢い良く引っ張り、そのまま肩に乗せた
「なッつ~……! 降ろせっ! 降ろせッ!」
肩の上で鼻を押さえながら暴れるとソラはレンゼの腹を抓る
「少し黙って? 五月蝿いから」
歯軋りして大人しくなると抓るのを止め、部屋まで運んで行く
「やっぱり子供嫌い……」
露骨に嫌悪感を醸し出しながら階段を登って行く。元の階に戻るとソラは再びレンゼの横腹を抓った
「いだッ!」
「なんで開けっ放しなのよ……。何? そんなに痛い思いしないと分かんない?」
「ご、ごめんなさいッ! ホントごめんって! ちょ! やっ! だだだッ!」
ソラは溜め息を吐くとレンゼの横腹を抓ったまま部屋に戻る
「治してあげるけど速く作ってよ?」
「分かりました……」
ドアを閉める頃には空は紫に染まり始めていた
0
あなたにおすすめの小説
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
コンバット
サクラ近衛将監
ファンタジー
藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。
ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。
忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。
担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。
その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。
その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。
かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。
この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。
しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。
この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。
一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。
魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで
ひーにゃん
ファンタジー
誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。
運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……
与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。
だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。
これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。
冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。
よろしくお願いします。
この作品は小説家になろう様にも掲載しています。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
エレンディア王国記
火燈スズ
ファンタジー
不慮の事故で命を落とした小学校教師・大河は、
「選ばれた魂」として、奇妙な小部屋で目を覚ます。
導かれるように辿り着いたのは、
魔法と貴族が支配する、どこか現実とは異なる世界。
王家の十八男として生まれ、誰からも期待されず辺境送り――
だが、彼は諦めない。かつての教え子たちに向けて語った言葉を胸に。
「なんとかなるさ。生きてればな」
手にしたのは、心を視る目と、なかなか花開かぬ“器”。
教師として、王子として、そして何者かとして。
これは、“教える者”が世界を変えていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる