復讐の慰術師

紅蓮の焔

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17章 もう、後戻りは出来ないから……

288話 逃げたくても……

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パタンッ

本を閉じると、ソラはベッドから起き上がる
「さっきからさ、一人で何話してるの? 気持ち悪いんだけど」
「あ、いや! 何でもないです!」
咄嗟に手を背後に回して苦笑を浮かべて振り返ると、ソラはどこか品定めするような眼でレンゼの周りをゆっくりと回りながら見詰める。しかしレンゼも負けずとソラに合わせてゆっくり回っていく
「ふ~ん……じゃあその話し方めて? いきなり敬語使われても気持ち悪いだけだから」
「……分かった。そ、それより今って何時ぐらい? そろそろ夜になっても良い気がするけど」
レンゼに言われ、チラッと本の壁を見た
「もうすぐ夕方……あ、じゃあ夜ご飯も作ってよ? 私は材料買って来るから。今日の夜ご飯は……とにかく固形物。テキトーに買って来るから何か作ってね」
そう言ってベッドから起き上がり、ベッドの下を漁る。ソラはそこからアタッシュケースを取り出しパカリと開く。その中には少量のお金、下着、洋服等、生活必需品が入っていた
そこからお金を少しだけ取り出しアタッシュケースを閉めるとベッドの下に直す
「じゃ、行って来る」
ソラはお金を手に持って部屋を出て行く

バタンッ

「……サラさんが帰って来るとしても多分ここじゃ無い。奴に匿えって言ったのなら危険なことに首を突っ込もうとしている。それは吉報を待つとしよう。問題はサラさんが何故俺を匿うようにソラに命じたのか……。それだけが分からない……」
頭を掻いてみるも進展は無かったようでゴロゴロと転げ回ったり髪を弄ったりジッとするなど、色々とやってはいるものの、やはり進展は無かったようで仰向けに寝転がりながら嘆息する
「……夜、だったか。それにここがリズさんの所と同じ間取りだからまだあの集合住宅に居るはず。入り口に何を仕掛けられているか。それが分かればすぐにでも出て行くのに……。下手すればここでサヨナラ。って事にも成りかねない」
大きく溜め息を吐くと顎を上に上げてベッドを見詰めた
「はぁ……どうしたもんかなぁ……」
ゴロリとうつ伏せるとヒールゥが眠たそうに鳴く
「分かってる。早く出なくちゃならないのは分かってるんだけどさ……やっぱり仕掛けなんて簡単に作れるし下手すれば──」
そう言いながらあぐらを掻いて座る。すると親指を立てて自分の首に向け、左から右へ拳を素早く動かす
「ズバッと来るかもしれないだろ……?」
若しくは──。と繋げて今度はギュッと握って拳を作ると顔の横まで持ち上げる
「──ボンッ」
そう言いながら拳を大きく広げた
「ってなるかも……」
ん? と少しだけ瞳を上へ向けると小首を傾げて首を振り、ホッと溜め息を吐く
「あ、音が大きいからそれは無いか」
ん~……。と頭を掻くと大きく溜め息を吐く。そして手を下ろして脚の間に手を入れる
「……それでもズバッとは来るかもなぁ……あ~、くそっ。こういう時こそ自分の非力がつくづく嫌になる」
身体を前後に揺らすと同時に玄関のドアが開き、ゴソゴソと何か布が擦れるような音が鳴っている
「……帰って来たか」
膝に手を着いて立ち上がると玄関の方まで歩いて行く
そこには少し焦げた白髪はくはつの持ち主、サラがアチコチに煤を付けて服は所々破れたまま戻って来た
「……何が、あったんですか?」
「ソラは、どこに居ますか?」
「あの人なら夕飯の買い出しを──」
言い終わる前にサラは顔をしかめて外に出て行く。ドアを開けっ放しにして
「あ、よしゃ! これで外に出れる!」
玄関まで走って行き靴を履くとつま先を床にトントンッと当ててかかとを合わせると固唾を飲んで一歩、外に踏み出す
左右を見回し、誰も居ないことを確認すると階段まで走って行く
「これで捜せる! 逃げられる!」
階段を半ばまで降りると跳んで階下に降りる
軽快な音と共に軽々と着地して踵を返し方向転換するともう一度階段を半ばまで降りて跳ぶ

スタッ

「……案外すぐだったな。次で一階か」
階段を降りる。そして同じように跳んだ

その瞬間──

──昇って来る影が階下の床に映る
「ちょ! わっ! 退いてくださッ──!」
両手と首を左右に振るが影が大きくなっていく
左側の死角から顔を出したのはソラだった
「──ぶあっぷ!」
顔面から落ちたレンゼは少しだけ滑って鼻を右手で押さえると顔を歪めて立ち上がる
「はぁ……これだからガキは嫌いなのよ……来なさい。治してあげるから」
ポタポタと鼻血を垂らすレンゼを勢い良く引っ張り、そのまま肩に乗せた
「なッつ~……! 降ろせっ! 降ろせッ!」
肩の上で鼻を押さえながら暴れるとソラはレンゼの腹を抓る
「少し黙って? 五月蝿いから」
歯軋りして大人しくなると抓るのをめ、部屋まで運んで行く
「やっぱり子供嫌い……」
露骨に嫌悪感を醸し出しながら階段を登って行く。元の階に戻るとソラは再びレンゼの横腹を抓った
「いだッ!」
「なんで開けっ放しなのよ……。何? そんなに痛い思いしないと分かんない?」
「ご、ごめんなさいッ! ホントごめんって! ちょ! やっ! だだだッ!」
ソラは溜め息を吐くとレンゼの横腹を抓ったまま部屋に戻る
「治してあげるけど速く作ってよ?」
「分かりました……」
ドアを閉める頃には空は紫に染まり始めていた
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