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一章 泡沫の夢に
19話 『勉強』
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「レイくんレイくん。今日は正門の所で待っていて欲しいです」
「うん。分かった」
「一緒に帰って一緒に勉強するです」
「うん」
教室を出たレイをほうきを片手に、もう片方の手を振って、レイが階段を降りて見えなくなってから教室に戻った
あれ……? ミズキさんの家に、行くのかな……?
いや、でも、それは……ちょっと……。
まだ日も浅いから……。
だとしたら……あれ? 正門の所に居るのって……
レイ、カ、ちゃん……?
待ってる。
あっ、もしかしてレイカちゃんにも彼氏が……?
だとしたら一緒に居るのはその彼氏さんにも悪いよね。
……あっ、ここで待てばレイカちゃんとも接触しないしミズキさんが下りてきても分かる。
ここで待っていれば良いんだ……!
階段を降りた所でずっと止まっていたレイは階段の隣に移動して六時間目に受けた授業の事を、そこで覚えた単語とその意味を反芻する
六時間目は英語だ
二番目に苦手な教科だ
社会は一ケタ
英語は三十点ほど
残りは七十点台
これがレイのテストの大体の結果だ
だが、今回はいつもとは違う
テスト前だろうが関係なく襲ってくる少年が居ないのだ
それどころか、環境も変わって順風満帆な生活を送っている
イケる。レイはそう確信しているのだ
だから、こんな時間でも勉強をする
しかし、テストは明日だ
一日勉強した所でさほど変わらないだろう
それでも、信じているのだ
あるはずもない可能性に賭けて──、
取れもしない点数を夢に見ているのだ
特に社会は致命的だ
覚える単語が多過ぎるのだ
英語も同じ理由だ
理科はある程度理解出来れば問題は無い
理科は理解する事で五十点は取れる
あとはいくつか単語を覚えるだけだ
それも、そのまんまじゃねえか! と突っ込みたくなるような名前のものが多く覚えやすい
国語は文法を理解すれば大体は解ける
数学に至っては単純に計算するだけで良い
「少し良いかな?」
「ぇっ……」
誰、だろう……? この女の人……。ここの生徒……三年七組。
……教室が離れてるから見た事無いだけ……かな……?
「な、何か、ご用でしょうか……?」
「うん。ここじゃ人が多いし、ちょっとついて来てくれるかな……?」
「い、いえ……。人と待ち合わせしてるので……」
「大丈夫大丈夫! 五分もかからないから!」
五分……。
多分、途中で掃除が終わると思う。
だから、やっぱり断ろう。
「た、多分、もうすぐ下りてくるので……」
「あっ、じゃあ明日の放課後、すぐにここに来てくれるかな?」とカバンから紙を取り出して壁を下敷き代わりに地図と思しき図を書いてレイに手渡す「話したい事があるから! 決まり! それじゃあね!」
あっ……。
ぇっ……?
結局誰だろ……。
それに、明日……?
明日も勉強しようと思ってたのに……。
「レイくんレイくん」
突然、上から聞こえてきた声にビクッと背筋を伸ばして上を向く「あっ、ミズキさん」
っ……。
しまった。
慌てて後ろに隠してしまった。
「……? 何を隠したです?」
「えっと……実は……」
下りてきたミズキさんにその紙を見せてさっきの状況を説明した。
ミズキさんはすぐに思案顔になって「その女、怪しいです……。なぜレイくんに話しかけたです? おかしいです。何か…………っ! ああ……なんとなく分かったです」
ミズキさんは一つ息を吐いて「レイくん、これ、行かない方が良いです」
「ぇっ……それじゃあ相手の人にわる──」
「この件は帰ってからゆっくり話すです。今は、出来るだけ早く帰った方が良いです」
そう言ったミズキさんは、力強く僕を引っ張って、正門付近でレイカちゃんを拾ってからレイカちゃんの家に向かった。
まるで何かから逃げるように。
そして、多分、僕も分かった。と、思う。
実際は分からない。
けど、多分こうだ。みたいな事は分かる。
それだと僕が狙われた理由も納得出来るから。
※※※
「なんなのー? 二人共さー……ゲームしよっ! ゲームゲーム!」
「ぁ……ぃゃ……明日、テストだから……」
「そうです。特にレイカちゃんは頭が悪いですし」
「ああっ! 今バカにしたー!」
ブーブーと文句を言い続けるレイカの頬をつねって無理矢理黙らせたネネは再びテーブルに置いた水で喉を潤す
「じゃあレイくんは!?」
「レイくんは半分以上は取っています。私の記憶上、レイカちゃんはいつも十点くらいだったです」
「な、なぬー!?」
「それでも、レイくんは社会と英語です。特に社会はレイカちゃんと同じレベルです」
「やりぃ! さっすが! 私のお義兄ちゃん! 義兄妹揃って点数低い!」
「何を言ってるです? レイくんは勉強してなくてです。勉強してるレイカちゃんとは全然違うです」
「ぅぅぅ……」とテーブルにうつ伏せて「勉強きらーい。レイくーん……慰めてー……」
「えっ……? えっと……。こう……?」
頭を撫でてみたけど……あってたみたい。
「レイくんはこっちに集中です」
「は、はいっ!」
「まず、範囲は二年生の所からも出るので……恐らくここは出ると思います」
ここは……。
アレだ。
明治時代に出てきた『岩倉使節団』。
たしかあの人達って外国まで社会見学か何かしに行った人達だった、と記憶してる。
「特にこの二人は覚えておいて欲しいです」
えっと……西郷隆盛さんと……伊藤博文さん。
西郷さんはさつまいもの人で……伊藤博文さんは内閣総理大臣だったっけ……? たしか初代。
やっぱり……社会は難しい……。
「うん。分かった」
「一緒に帰って一緒に勉強するです」
「うん」
教室を出たレイをほうきを片手に、もう片方の手を振って、レイが階段を降りて見えなくなってから教室に戻った
あれ……? ミズキさんの家に、行くのかな……?
いや、でも、それは……ちょっと……。
まだ日も浅いから……。
だとしたら……あれ? 正門の所に居るのって……
レイ、カ、ちゃん……?
待ってる。
あっ、もしかしてレイカちゃんにも彼氏が……?
だとしたら一緒に居るのはその彼氏さんにも悪いよね。
……あっ、ここで待てばレイカちゃんとも接触しないしミズキさんが下りてきても分かる。
ここで待っていれば良いんだ……!
階段を降りた所でずっと止まっていたレイは階段の隣に移動して六時間目に受けた授業の事を、そこで覚えた単語とその意味を反芻する
六時間目は英語だ
二番目に苦手な教科だ
社会は一ケタ
英語は三十点ほど
残りは七十点台
これがレイのテストの大体の結果だ
だが、今回はいつもとは違う
テスト前だろうが関係なく襲ってくる少年が居ないのだ
それどころか、環境も変わって順風満帆な生活を送っている
イケる。レイはそう確信しているのだ
だから、こんな時間でも勉強をする
しかし、テストは明日だ
一日勉強した所でさほど変わらないだろう
それでも、信じているのだ
あるはずもない可能性に賭けて──、
取れもしない点数を夢に見ているのだ
特に社会は致命的だ
覚える単語が多過ぎるのだ
英語も同じ理由だ
理科はある程度理解出来れば問題は無い
理科は理解する事で五十点は取れる
あとはいくつか単語を覚えるだけだ
それも、そのまんまじゃねえか! と突っ込みたくなるような名前のものが多く覚えやすい
国語は文法を理解すれば大体は解ける
数学に至っては単純に計算するだけで良い
「少し良いかな?」
「ぇっ……」
誰、だろう……? この女の人……。ここの生徒……三年七組。
……教室が離れてるから見た事無いだけ……かな……?
「な、何か、ご用でしょうか……?」
「うん。ここじゃ人が多いし、ちょっとついて来てくれるかな……?」
「い、いえ……。人と待ち合わせしてるので……」
「大丈夫大丈夫! 五分もかからないから!」
五分……。
多分、途中で掃除が終わると思う。
だから、やっぱり断ろう。
「た、多分、もうすぐ下りてくるので……」
「あっ、じゃあ明日の放課後、すぐにここに来てくれるかな?」とカバンから紙を取り出して壁を下敷き代わりに地図と思しき図を書いてレイに手渡す「話したい事があるから! 決まり! それじゃあね!」
あっ……。
ぇっ……?
結局誰だろ……。
それに、明日……?
明日も勉強しようと思ってたのに……。
「レイくんレイくん」
突然、上から聞こえてきた声にビクッと背筋を伸ばして上を向く「あっ、ミズキさん」
っ……。
しまった。
慌てて後ろに隠してしまった。
「……? 何を隠したです?」
「えっと……実は……」
下りてきたミズキさんにその紙を見せてさっきの状況を説明した。
ミズキさんはすぐに思案顔になって「その女、怪しいです……。なぜレイくんに話しかけたです? おかしいです。何か…………っ! ああ……なんとなく分かったです」
ミズキさんは一つ息を吐いて「レイくん、これ、行かない方が良いです」
「ぇっ……それじゃあ相手の人にわる──」
「この件は帰ってからゆっくり話すです。今は、出来るだけ早く帰った方が良いです」
そう言ったミズキさんは、力強く僕を引っ張って、正門付近でレイカちゃんを拾ってからレイカちゃんの家に向かった。
まるで何かから逃げるように。
そして、多分、僕も分かった。と、思う。
実際は分からない。
けど、多分こうだ。みたいな事は分かる。
それだと僕が狙われた理由も納得出来るから。
※※※
「なんなのー? 二人共さー……ゲームしよっ! ゲームゲーム!」
「ぁ……ぃゃ……明日、テストだから……」
「そうです。特にレイカちゃんは頭が悪いですし」
「ああっ! 今バカにしたー!」
ブーブーと文句を言い続けるレイカの頬をつねって無理矢理黙らせたネネは再びテーブルに置いた水で喉を潤す
「じゃあレイくんは!?」
「レイくんは半分以上は取っています。私の記憶上、レイカちゃんはいつも十点くらいだったです」
「な、なぬー!?」
「それでも、レイくんは社会と英語です。特に社会はレイカちゃんと同じレベルです」
「やりぃ! さっすが! 私のお義兄ちゃん! 義兄妹揃って点数低い!」
「何を言ってるです? レイくんは勉強してなくてです。勉強してるレイカちゃんとは全然違うです」
「ぅぅぅ……」とテーブルにうつ伏せて「勉強きらーい。レイくーん……慰めてー……」
「えっ……? えっと……。こう……?」
頭を撫でてみたけど……あってたみたい。
「レイくんはこっちに集中です」
「は、はいっ!」
「まず、範囲は二年生の所からも出るので……恐らくここは出ると思います」
ここは……。
アレだ。
明治時代に出てきた『岩倉使節団』。
たしかあの人達って外国まで社会見学か何かしに行った人達だった、と記憶してる。
「特にこの二人は覚えておいて欲しいです」
えっと……西郷隆盛さんと……伊藤博文さん。
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やっぱり……社会は難しい……。
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