当たり前の幸せを

紅蓮の焔

文字の大きさ
24 / 263
一章 泡沫の夢に

20話 『計算』

しおりを挟む

「少し休憩にしよっか!」
「やたー! ゲームゲーム!」
「ゲームはダメよー? だってゲームしたらさっきの事頭から抜けちゃうでしょ?」
「うにゃー! 疲れたよー! ゲームしたいー!」

 椅子の上でジタバタ暴れる少女に苦笑しながらキッチンへ向かい、「ゲームはダメだけど、お菓子なら出すわよ?」とレイ達を伺う

「うん! 欲しい欲しい! ミッちゃんとレイくんは!?」
「じゃ、じゃあ……僕も……」と、小さく挙手する
「それじゃあ私もです」ミズキもレイと同様に挙手した


 ※※※


 皿に乗ったクッキーを片手に宿題優先でワークを進めている
 レイは社会
 ミズキも社会
 レイカは数学だ
 この子は全然勉強が出来ていないのだ
 かと言って運動がそこまで得意な訳でもない
 本当に何も出来ない子とはこの子の事を言うんじゃないだろうかと言いたいほど知恵も体力も無い
 だからまだ覚えやすい数学や国語から始めている

「レイカちゃん、だからXは小学校で使ってた□や△と同じだから、X×七=三十五の答えは……?」
「……? どういう事?」
「はあ……。良いです? 何かに七をかけると三十五になります。では、『何か』に入る数字はなんですか? 分かるです?」

 分かりやすくXは使わず、□を使ってレイカのワークの隅の方に式を書いてあげている

「えーと……。何かって何?」
「この『何か』は□の事を言ってるんです。□に入るのは数字です。何が入るです?」
「……? どうやってここに入る数字を見付けるの?」
「……小学校の頃、『確かめ算』を習ったです?」
「たしかめざん……? ……ぅん? 分からない」
「確かめ算と言うのはその言葉の通り『答えを確かめる計算』です」
「答え? 求めよ。って書いてあるよ?」
「だから、その『確かめ算』の応用です。
 レイカちゃんでも分かるような簡単な例を挙げると七ー二=五を確かめ算で確認すると……、
 七ー五=二。もしくは五+二=七です。
 この数字の前に付いている記号を入れ替えて答えと足す事で残りの数字を求める事が出来るです。
 それが問題と合っていたら正解です」
「……? じゃあ三十五+七?」

 これを真剣な表情で言うものだから凄い
 ある意味天才とも言えるこの所業はレイカの知恵を振り絞って出た答えなのだ
 小学校で何をしていたと質問してしまいたい程だ
 答えは『寝てました』だが……

「違うです。
 元の式が引き算の場合、足し算にするです。
 例えば……五ー一=四で確かめ算を使う時、四と一を足すです。
 すると五になるです。
 何故かと言うと五から一引いた数が四でその四に一を足すからです。
 そうですね……例えば、レイカちゃんがその場から五歩あるいたとするです。その後、後ろに一歩下がったら何歩進んだ事になるです?」
「えっと……ちょっと待ってて!」

 指で計算を始めたレイカ
 少しは進歩したようでレイは隣で安堵の息を漏らした
 流石に足し算引き算を出来なかったらこの世では生きていけない
 算数はどんな仕事に置いても
 出来て当たり前の事なのだ

「四歩!」
「ならその確かめ算の応用でこの問題も解くです。X×七=三十五のXの値は?」
「ぅぅぅ……分かんないよー……」

 再びうつ伏せてしまったレイカに嘆息しながらも見捨てないミズキは顔を無理矢理挙げさせて「分かんないで済ましてたら高校いけないです」と脅しをかける

「いいもーん。ずっとここで暮らすもん」
「ホントにです? 例えばレイカちゃんのお父さんが死んでしまっても、ネネさんが死んでしまっても、皆が周りに居なくなってしまってもです?」
「うん」
「なら算数は最低でも出来ないとダメです。
 だって、算数が出来ないとお金が使えないです」
「お金? 大丈夫大丈夫。それならネネさんがやってくれるもん」
「さっき言ったです。って。その皆の中にはネネさんも入ってるです」
「だったらレイくんに──」
「み・ん・な、です。レイくんも皆に入ってるです」
「だったらどうすれば良いの! 全く!」
「怒っても関係ないです。勉強するです」

 この後レイカは夕方までみっちりミズキに勉強させられ、ミズキが帰った後もネネに勉強させられ続けた
 もう心身ともに疲労困憊している
 これが俗に言う『糸の切れた人形』だと見てすぐに分かる
 椅子にぐったりと凭れて項垂れ、寝息を立てている
 そんなレイカを起こして食事させると、お風呂に入れ、服を着せてそのまま就寝した

「……頑張らないと……」

 あれだけ頑張ったレイカちゃんはもう寝てしまった。
 僕もあれだけ頑張らないといけないのかな……?
 とにかく、頑張ろう。
 目指せ三百点……!

「おー……!」と、小声でガッツポーズを取った


※※※


 そして、次の朝──
 戦いの火蓋は切って落とされた
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん
ファンタジー
 戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。  3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。  家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。  そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。  こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。  身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主

雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。 荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。 十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、 ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。 ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、 領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。 魔物被害、経済不安、流通の断絶── 没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。 新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

金の羊亭へようこそ! 〝元〟聖女様の宿屋経営物語

紗々置 遼嘉
ファンタジー
アルシャインは真面目な聖女だった。 しかし、神聖力が枯渇して〝偽聖女〟と罵られて国を追い出された。 郊外に館を貰ったアルシャインは、護衛騎士を付けられた。  そして、そこが酒場兼宿屋だと分かると、復活させようと決意した。 そこには戦争孤児もいて、アルシャインはその子達を養うと決める。 アルシャインの食事処兼、宿屋経営の夢がどんどん形になっていく。 そして、孤児達の成長と日常、たまに恋愛がある物語である。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...