当たり前の幸せを

紅蓮の焔

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一章 泡沫の夢に

25話 『力』

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「ぅ、ぅぁぁ……?」
「ん? 起きたの?」
「ぇ……? な、なんでこんな事になってんの!? それに……。……っ! も、もしかして、あれって……」と、少女の奥の方に転がっている身体を指さす
「あれは岩倉瑞樹だけど? もう死んでるけど」
「っ……! な、なんで!? 先輩は、先輩は何が目的で……!」
「殺すためよ」
「な、なんで殺すの……?」
「だって、気になったんだもん。殺した時ってどんな気持ちか。結構あっさりしてるよ? 気持ち悪いとかもないし。人を殺してからだと小説や漫画で人を殺した時に吐いてたり気持ち悪いって言ってる奴見るとバカらしく感じるようになるけど。でも、経験は詰めた」
「レイカちゃん! くそっ! なんで!」

 その声を聞いて、体をよじり動かし始めた

「無駄よ。アナタ程度の力じゃ絶対に解けないから」
「レイカちゃんに手を出さないで!」
 金槌を両手で振り上げて「嫌よ」冷たく言い放ったその声にレイの顔は真っ青になった

「ぁっ……つっ……!」
「レ、レイカちゃん!?」
「ちょ! 危なっ!」と叫びながら何歩か後ずさって尻餅をつき、金槌を離した

 っ……!
 ヤれる……!

 体全体を使って這いつくばって近付いていく

「レイくん……!」
「だ、大丈夫……! 今、こ、殺す……から……!」
「ダメだよ! 殺しちゃ!」
 左腕を止めて、レイカを見詰める「な、なんで……!」
「そりゃダメだよ! ミっ…………ミッちゃんは、レイくんを人殺しにしたかったと思う!? なんで私がこうなってるのか、分かんないけどさ……! それだけはないよ! レイくんには幸せになって欲しかったはずだよ!」
「そんなの……もう、分からないよ……」
「分からないよ! だって! 私はエスパーじゃないもん!」
「だあああ! 話はそこまでよ!」
「っ……!」

 金槌を拾って来ていた少女がレイの頭目掛けて鈍器を振り下ろした
 まず、甲高い金属音が鳴り響き、そこからレイの剣を擦るようにして地面が叩かれた
 その理由はいとも簡単だ
 振り下ろされた金槌に対し、レイは右腕を振り上げた
 しかし、レイの肘が上を向くような形になってしまい、刃の先がたまたま地面だったわけだ
 運が良かった
 ただ、それだけだ

「レイカちゃん……!」と、声を上げて右腕を振り上げる
「っ……!」

 少女はすぐに金槌を離して後ろに後ずさった
 そのお陰か、腕が斬れるような事は無かったが武器を失ってしまう
 同時に、レイカを縛っていたロープが斬られた

「ぃっ……!」腹を掠めていたようでレイカは一瞬だけ顔を歪めた
「ご、ごめん……!」
「大じょブッ……!」

 背後に回り込みレイカの首を右腕でしっかりと絞めた少女はレイカの足に自らの足を絡めて動きを封じた

「動くと、殺すよ?」
「っ……!」
「よしよしよし。危なかったなぁー。もうすぐで殺されちゃう所だったよ」
「レイカちゃんを……離せ……!」
「あっれぇー? 君って私に指図出来る立場ぁ? いい加減にしないとこの子の首の骨、折るよ?」

 レイカに腕をつねられて血が出ているにも関わらず首から腕を離さない少女はケタケタと笑い出した

「うーん。君達を生かすも殺すも私次第だよねー? この子、殺しても良いかなぁー?」

 どうする……!?
 レイカちゃんの後ろに居る彼女には、ここからじゃ手出し出来ない……!

「動いたらこの子の首の骨、折るからね?」
「どうすれば……レイカちゃんを離してくれる……?」
「そうねぇー……じゃあ君、死んでよ」
「ぇ……?」
「そうしたらこの子の事、離してあげる」

 マズい……耳鳴りが激しくなってきた……。
 早く決着を着けないと……。
 あああ……鼓動が五月蝿い。
 早く、早く!

「どうやって……」
「それで自分を刺してよ」

 それ……。これ……?
 この、剣で……?
 僕を……?
 でも、このまま持ち上げればレイカちゃんに当たってしまう……。
 どうやって……。

「それに、そろそろ体力切れかけてるでしょ?」
「っ……!」
「君よりも君の事を知ってると思うよ? 私は」

 本当に、どうすれば……。

「ブッ!?」

 いきなり、頭が木にぶつかるような鈍い音が鳴って顔を上げると、レイカちゃんが頭の上に落ちてきた。

「っ……!」
「ぎゃっ!」

 あの女の子は……木の下で鼻を押さえて悶えている……! 今しかない!

「レイカちゃん……! 立てる!?」
「う、うん……!」
「走って!」
「分かったよ!」

 そう言うと同時に右足を引き摺りながら校庭の方へと向かって行く

「あっ! ま、まっ──」と、片手で鼻を押さえてもう片手でレイカへ手を伸ばす
 その上で、レイの右腕が少女に迫り──「ぅぁぁぁぁぁあああああああ!!」
「っ……!」

 ブチッ
 そう、鳴った気がした。
 振り下ろした剣は、女の子の肩辺りから鎖骨辺りまでめり込んで──違う。めり込んだんじゃなくて、斬ったんだ。
 僕が……斬った……。

 勝った……。

 急に、周りが、くら、く……。
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