当たり前の幸せを

紅蓮の焔

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二章 無意味の象徴

66話 『信頼』

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[まえがき]
 寝てて更新忘れてました。すみません。

 ※※※


「ミノリちゃん……!」

 ミノリは小さく頷くと、忍者に向かって再び攻撃を再開した。蹴って殴って叩いて躱してまた蹴って──、

「セイタくん……! だいじょうぶ!?」
「ァァアアア! ィ、イダイ、イダイ! イダイダイダイダイダイダイダイダイダイィィィィイイイイイイイッ!」
「え、えっと……ミ、ミノリちゃんはすこしたえて! セイタくんをたすけてからいくから!」

 頷きを返されたイツキは木を見上げてよじ登って行く。と、駄目だった。よじ登る事すら出来ず、ただただぴょんぴょんと木の前で跳ねていただけだ

「ミノリちゃん! やっぱりミノリちゃんがこっちして! ぼく、がんばるから!」

 一瞬、迷った。どうしよう。……任せても良いのだろうか。さくらさんや、ナナセさん。……私は、言われた事だけを全うしよう。

 頷き、忍者の短剣をしゃがんで避けて──骨のような羽根を背中から生やす
 背中から生えたそれで忍者の腹部を薙ぎ払い、セイタの元へ跳躍し、「ミノリザァァン……!」枝を叩き折った。セイタが落ちて行く所を襟を掴んだ。その背には既に羽根の面影は無い

「ニンジャ……だよね……」

 忍者は木に叩きつけられていた。立ち上がるが、動かず、ジッとミノリの事を見上げている。ミノリはそれに気付いたのか、すぐさま地面に下りるとセイタを木に凭れさせて忍者を見詰める

「ミノリちゃん……たたかえる……?」と、忍者を睨み付けながら言っているイツキは震えている。ミノリは自分の手を確認した。

 右の掌に裂傷。背中が痛い。頭が痛い。それに、けっこう疲れている。眠たい。……戦える……かどうか……分からない。

「……ボクは……ムリみたい。たってるのも、やっとなんだ……これでも……いたくて……」

 忍者はジッと見ている。待っている。ただただジッと──、最期だ。最期に戦って、倒す。下手をすれば──、いや、考えなくていい……。言われた事を……。

「──逃げて」
「ぇ……?」

 充血していた。目から血涙が流れ、身体中が震えて、歯が鳴っている。背中、肩胛骨の辺りから骨が突き出していて、地面を蹴って前方に跳躍。忍者は顔の前に短剣を構えて左足を下げた
 忍者の前で着地すると足を横に薙ぎ払う。これを軽く跳んで躱した忍者は短剣をミノリの頭蓋目掛けて投げる。それを羽根で防御したミノリは空中で前転し、忍者の顎に一撃を加える
 木に背中を打ち付けられた忍者はすぐさま立ち上がり、懐に手を入れて「ミノリ、ちゃん……!」近づいて行き、硬質な羽根を忍者の胸に突き刺した

 瞬間──世界が白くなった。……見える。母さん……父さん……。「ぁ……」気が付けば、倒れていた。周りには、火が立っている。……どうなってるの……? ……イツキ、は……。セイタくん……、ミムラ、さん……。痛い……母さん、助けて……父さん、どこ……? ねえ、ねえ、ねぇ……っ!


 ※※※


 頬が焦げたような感じがして、目が覚めた。最初に感じたのは……「あつっ」背中が熱くて、見てみると服の端が燃えていた。慌てて消したは良いけど、正直まだ眠たい。
 そうだ、ミノリさん。あの稲継などと言う鬼畜に殺されていないんでしょうか……? 少し、心配です。
 周りには誰もいない。……ただ、血溜まりを見付けた。大きな怪我だったんだと思うと……ホント……イヤになる。
 ……私情は挟まず、出来るだけ客観的に観ましょう。……あそこ、少し離れた所から木の倒れる方向が変わっています。恐らく爆発か何か、あったのでしょう。
 血溜まり。爆発があった頃にはまだ死んでいなかったのでしょうか。
 あとは……セイタくん、……ごめんなさい。

「チィさんは、本当に逃げたのでしょうか……」

 既に空が赤いです。……この戦いはどうなったのでしょうか。……私は、耐える事しか……、誰も……助け「君は……」

 顔を上げると「大丈夫?」女の人が居た。──違う……? でも、女の人みたいです。髪は少し乱れていて、服には血も付いている。髪の端が少し白いような……。「君は、たしか……イツキくんと一緒だった人だよね。他の人は?」
「え……えっと……アナタは……」
「ああ、自己紹介がまだだったね。ボクはレイ。君は?」
「わ、たし、は……そ、それより! た、戦いは……!? 皆さんは!? 勝ったんですか!?」
「……あぁ……それなら、ね……」少し言いづらそうにしている。……負けたのですか……。「まだ、続いてるよ」
「え……?」
「だから、まだ、続いてる。……でも、最初からボクたちが戦う必要は無かったんだ。だから、逃げよう? 今いる人は、ボクが守るから」

 遠くから、誰かが来ている気配がした。……それより、……? じゃあ、死んだ人たちは……? セイタくんや、あの四人だって……。

「おーい。オイッ。聞いてんのかよ!」
「ごめんね、コーイチくん」
「おうっ。ったく……こんな面倒な事、オレじゃなけりゃあなぁ、こんなの、ぜってぇ動けねぇからな! ……ん? てか、コイツ誰よ?」
「イツキくんと一緒だった人。コーイチくん、皆は?」
「そりゃあピンピンとはいかねーけどなぁ、まあ、動けんじゃねーの?」
「それは良かった」
「あの、私……」
「ああ、痛いよね。痛いのに無理させてごめんね。大丈夫。もう安心して。君も、皆も、ボクが守るから……ね?」

 少し、怖いです。なんなんですか、この人……。「ったく、レイ! テメェはそーやって人の話を聞かずにぺちゃくちゃぺちゃくちゃ……! 先ずは人の話聞けって言ったばっかだろーが!」
「ああ、うん。そうだったね。うん。ごめんね、コーイチくん。……それで、君は?」
「私は……三村、丹生にう……です」
「そう。三村さん、逃げよう。ボクたちと」
「それは……その……」

 なんて……返せば良いのか……。私だけが助かっても……違う。かと言って……はい。も違う。……動けないので……これも違う。……じゃあ、逃げても……それはダメ。逃げちゃ、ダメな気がする。……ああ、そうか。私は、信じていたいんだ。チィさんの事。他人ヒトの事。

「私、待ってます」
「……レイ、行こーぜ。こー言ってる奴はな、動かねーよ」
「そう……」悲しそう……。「ごめんね。時間取らせちゃって。……三村さん」
「なんですか?」
「最期に一つ」
「はい?」
「……イツキくん達は、どこにいますか?」
「それは……分かりません」
「そうですか。では、またいつかどこかで……」

 去って行く。……ああ、チィさん。早く、戻って来て下さいね……。私、そろそろ……。
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