73 / 263
二章 無意味の象徴
69話 『死誕』
しおりを挟む「──ああああああああっ!」
チィは落ちていた木の棒を拾って振り回していた
忍者のような奴は、突然止まった挙句にいきなり動いて二度目の戦闘を繰り広げていた
か細い生命線を必死で紡ぎ、ナツメと出会って更に線が張り、これ以上はもう張らない。千切れるのみだ。それでもなんとか生きている。が、それが太くなる事も無ければ緩む事もない。忍者のような奴は、二人でなんとか凌いでいた。チィが忍者を棒であちこちを叩いているが今のところ全て躱されている
「よくも──ッ!」
ナツメが脛を蹴りつけるが軽く跳ばれて避けられ──「きッ!」逆に背中を蹴られてチィにぶつかった
「ぁぅ──ッ!」
鳩尾に少女の頭がめり込んだチィは堪えきれずに勢いのまま後ろに倒れてしまい、お腹を押さえて蹲る
「あぁぁあああぁあぁぁぁ……いっづぁぁぁ……」
痛いぃ~……。……あれ? ──ッ。そうだ、なんで来てないんだろ。
腹痛に堪えながら、ふと見上げれば──止まっていた。倒れているチィを一心に見詰めていてまるで幾年もの間、そこにいたかの様な雰囲気すら漂わせている
「ハッ──!? た、たスッ、かった……?」
助かった……のは良いけど……やばい。お腹がヤバい。痛い。もしかしたら死ぬかも……。いや、死なないけど。それくらい痛い。マジで。それに早くお腹の上から退いてくれないかな。軽いって言えば軽いけど重たい。それにさっきみたいにいきなり動いたりしてくるかもしれないし……。
「……そろそろ、退いてくれないかな」
「ごめんなさい」
「いや、謝らなくても良いけど、さ……。まず、ここから離れない? なんか、怖いし」
「はい……」
ちょっと残念そうな顔しててもムリだから。もうホント、帰りたい。イヤだ。ホントに。なんでこんな事になった──って、そうだった。お金だ。病院代。……でも、死んじゃったら意味、ないよね。妹よ。スマン。こりゃあちゃんとコツコツ働かないとムリそう。
「……あの、ニンジャさん」
「ん……? ニンジャ……? あ、確かに忍者みたいだけど……」
「──に、おかあさんを……」
「……そう。それは、悲しかったんだろうね。だけどね、私にも私の都合があるの。アナタに構うよりも重要なこと。分かる?」
うわぁ……。後ろ、怖い。逃げたい。それに辛辣だぁ、私……。
「私は生きて帰らないといけない。その為だったら誰の手でも借りるつもりだしこんな怖い奴からも逃げる。例えどんな人を囮にしても」
最低だな。私は。
「だから、私を面倒事に巻き込まないで……?」
あぁぁあああぁあぁぁぁ……。だいぶ酷いこと言ったよ。でもさ、命あっての『ほにゃららら』……だったよね。ほにゃらららの所忘れたけど。もうこんなの、私なんかが居ても意味なんて無いし。
「──だから、退いてくれないかな?」
悔しそうな、泣きそうな顔をしてるけども、私は協力してあげれないの。どうやっても、ムリ。
「ごめんなさい……」
「謝る前に、退いてね」
やっと退いてくれたぁ……。
「まあ、その? 手伝って欲しい理由はなんとなく分かったよ? けどさ、私、アナタの事もアナタのお母さんの事も何も知らないし知る気も無いし、なんなら私は自分の事のほうが大事。だから、手伝えない。ごめんね」
今更だけど、案外小さい……。八歳とか、十歳とか、そのくらいかな。お腹の所くらいまでしかないし。
「……べつに、いいです」
「じゃあね」
──なんか、悪い事した気分。だけど、ぶっちゃけこれしかなくない? 早く逃げよ。……ああ、展望台。見られてるって──頼んでみようかな。
あっ……。なんで……、
「マっ──!」
目の前に、大きな暗闇が広がっていく。
──巨大な蛇が、現れた。
※※※
悲鳴を上げて横たわる木々、黒光りする鱗に鋭い眼光。あれだけ勢い良く飛び出したのに対して、今は全く音を立てずに尻もちをつく二人の前で首を持ち上げる
「へへっ──へび……ッ!」
「はっ? はっ──ハハハ……な、なに、これ……。マジっ──! ないって……! こんなの、現実に居るはずない……。だって、だって、こんなの……!」
鋭利な双眸が二人を射貫き──子供二人、見えない何者かに縛られてそれから目を背けられない。蛇に睨まれ、既に両の瞳を濡らしているチィを蛇は見下して舌を出し入れしている
「ああ、アンタのせい! どどっ! どうにか! してよッ!」
「ぁ、の……えっと……その……」
「私はっ! 帰らないといけないのッ! だから、だから! ──ッ!」
泣き出した。大きな声で。目尻から溢れ落ちる大粒の雫は緑の草花を巻き込んでその重さで折り曲げ、少女の涙は手の甲に落ちて流れていく
言葉にすら出来ない濁った涙は地面の上で落ち合い、表面張力の壁を破壊しながら地面の上を広がっていき、異臭を放つ水液と混ざり合うといとも簡単に着色されてしまった
「っ。ふ、ふざけないで! アンタのせいでこんな事になったんだから、私を、助けてよ! 泣いたって、漏らしたって、なんの解決にもならないじゃない! なんで私がこんな──」
蛇の顔が、真横にあった。最初、私は、臭いと思った。変な臭いがする。──と。だけど、それに気付いた今はもう──
「うわあああああああああああああああああああ──!!」
──必死で駆け出していた。あんな子なんかに構っている時間なんてない。あの子が囮になって、もしかしたら逃げられるかもしれない。それに最初はあの子が来たせいなんだからあの子が悪い。そうだ。私は何も悪くない。私は巻き込まれただけ。なんにもしていない。人も殺していない。早く帰りたい。帰ろう。こんなのはもう嫌だ。
「ぁディ──ッ!?」
いッッッッだぁぁぁぁぁあああああ! 木に、チガっ。上っ、尻尾!? し、死ぬっ!?
「ぁ……ぁぁぁぁ……──」
世界が、マジでゆっくりになった。
空から尻尾が降って来る。怖い。お腹痛い。何これ。死ぬ。嫌だ。助けて。──ああ、終わる。
…………────────。
0
あなたにおすすめの小説
三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~
杵築しゅん
ファンタジー
戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。
3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。
家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。
そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。
こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。
身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主
雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。
荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。
十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、
ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。
ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、
領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。
魔物被害、経済不安、流通の断絶──
没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。
新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
金の羊亭へようこそ! 〝元〟聖女様の宿屋経営物語
紗々置 遼嘉
ファンタジー
アルシャインは真面目な聖女だった。
しかし、神聖力が枯渇して〝偽聖女〟と罵られて国を追い出された。
郊外に館を貰ったアルシャインは、護衛騎士を付けられた。
そして、そこが酒場兼宿屋だと分かると、復活させようと決意した。
そこには戦争孤児もいて、アルシャインはその子達を養うと決める。
アルシャインの食事処兼、宿屋経営の夢がどんどん形になっていく。
そして、孤児達の成長と日常、たまに恋愛がある物語である。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる