料理人になるはずが何がどうしてこうなった?

安野穏

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エレン(公爵令嬢エセル)とアル(王太子アルヴィン)の偽物生活

閑話 神様との出会い(エセルの場合)○

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 よく転生者のラノベとかでよく聞く白い世界。

 そこにエセルはいた。

 これはエセルが転生する前のことである。そして、エセルはこの記憶をすっかり忘れている上にたぶん思い出すこともないはずだ。要するにエセルは自分に都合の悪いことはきれいさっぱりと忘れるタイプだからだ。


 

 こ、これは話に聞く、警察の取り調べ室。

 と私が思ったのは、テーブルと言うよりも机と言った方がいいところに一つだけぽつんとあるデスクライト、しかもLEDではなく白球の古いタイプ。昭和のレトロ感満載だ。あ、机の上にあるのは事務机に必ずある緑のデスクマット透明なカバー付き。職員室に行くとよくあった机のタイプと思われる。座らされている椅子はひじ掛けなしの普通タイプの椅子。反対側の男の子が座っているのはひじ掛け付きのドラマでよく見る重役タイプがよく座る椅子。この差にちょっとイラッとする。

「いや、一応僕は神様見習いだし、このくらいの贅沢はしてもいいよね」

 っていいわけするなあ!!

「いやいや、神様見習いなのにこれが贅沢なの、ね、ね、こんな最低な贅沢って一体………」

 ちょっと目からしょっぱいものが出そうになった。神様って豪華な部屋で優雅に過ごすこともできるんじゃないのかな?神様見習いにはこれが贅沢なん?たった、ちょっと良い椅子に座っているのが?何この切ない気持ちになるのは?ちょっとくすんだ灰色のロープを着てため息ばかり吐く男の子がかわいそうになる。



「いや、神様見習いって言ってもさ、ランクがあるんだよね。僕ってさ、最近できた神様の見習いなんで、まだ力が弱くて、しかも君みたいに勝手にこっちに世界にやってくる輩が多くてさ、僕の世界なんて滅茶苦茶だよ。もう神様見習いなんて辞めたい」

 項垂れる男の子に何も言えずにいる。



 男の子が手をさあってすると眩しい光が現れて、大型テレビが現れた。

「見てよ。これひどすぎるだろう」

 どこの局が放送しているのか、それはそれはあまりにもできの悪い恋愛ドラマだ。中世くらいの設定で、恋愛脳とまで言われるいわゆるお花畑満載の主人公とその攻略対象たち。いわゆる逆ハーレム?あ、あれ、それに対抗して悪役令嬢まで逆ハーレムを築こうとしている?何?この展開。気持ち悪い。それでこんな奴らが国のトップの息子や娘なら、交代したとたんに国は潰れるわ。最低。

 あ、あれ、この話どっかで見たことがある。これはいわゆる乙女ゲームではないだろうか?

「そうなんだよ。僕って最近生まれたって言ったでしょ。ぼくの管轄するのは乙女ゲームの世界なんだよね。でもさ、乙女ゲームの神様の見習いだって、これは酷すぎると思わない?毎回、僕の世界に勝手にやってくる君のいた世界の転生者が滅茶苦茶にしてくれるし、最近じゃ、もうヒロインと悪役令嬢と両方でヒロイン気取りで逆ハーレムを作ろうとしたりして最悪なんだよね。笑えるよね」

 男の子は自嘲めいた笑いで死んだ目をしている。いわゆる腐った魚の目だ。南無阿弥陀仏とあと知っているおばあちゃんに教わった般若心経を唱えてみる。一応は生前は仏教徒だからな。でも、なんちゃって仏教徒だからおばあちゃんに教わったこれしか知らないがな。神様の世界も似たようなもんだろう。

「この国が潰れるのも時間の問題。っていうか、僕の世界って国ができてもすぐに潰れるわけ。それって最悪だと思わない。お蔭でこの世界の人類は成長できないんだよ。つまり僕はいつまで経っても見習いのままなんだよ。最悪でしょ」

 グチグチと愚痴をこぼしてばかりの自称神様見習い君。哀れだ。



 そこで私は提案してみた。元いた世界から強引にこの世界にやってくるなら少しもまともな元の世界からの転生者を中心とした国を作り、この世界の警察みたいな役目を与えるのはと。そうすれば、元の世界から来るお馬鹿な転生者が来ても、その国を監視して乙女ゲームの国を滅ぼさないようにしてみてはと。

「それってどうすればいい?」

 真剣な目で尋ねる神様見習い君に私は前世で大好きだった忍者を転生させることをお勧めする。おばあちゃんが時代劇大好きだったので、一緒によく見ていたのさ。水○黄門の風車の○七とかかげろうの○銀とか柘植の○猿とか、ああいうのがいっぱいいたら、早めに危機を乗り越えられるんじゃないだろうか?だってさ、特に風○の弥七が一番格好よくて最高だったし、お色気担当のかげ○うのお銀も最高だったわ。

 すたたたたたっと気配を隠して走り去り、主の危機にはさっそうと現れて助ける忍者最高。あの風車がどこからともなく飛んできてポスッと突き刺さった時はスカッとするじゃん。毎回、あちこちで情報収集してくるし、全部の悪だくみをあぶりだして、その証拠集めと悪人の証人まで連れてくる。もう忍者に惚れるやん。できれば、戦国時代に生きて生の忍者を見たかったくらいだ。



 ということでなぜか私が神様見習い君のアドバイザーになり、元の世界の戦国時代から性格のいいくノ一さんを異世界転移させて、やはり元の世界からの性格のいい転生者を集めて一つの国を作り彼女が女王となり、いろいろとがんばって彼女の国の国民全体が忍者になった。彼らは怪しまれないように各国を商人として巡る。

 問題なのは、どこをどう間違えたのか?元くノ一の女王が侍女は冥土、執事は羊となぜか間違えてくれたせいで、国が作った冥土養成学校と羊養成学校とつけそうになったので、昭和時代の某プロレスマンガ好きの転生者が侍女養成学校(別名冥土の虎の穴)と執事・従僕などの養成学校(別名羊の虎の穴)と命名したという逸話がある。最近は児童相談所にランドセルを送る人として有名な名前らしいが、なんとそのプロレスラーがプロレスを学んだ場所が虎の穴というらしい。なので、忍者として過酷な修行をする場所の命名に一番だと一押ししていた。というのは余談だが。

 う~~ん、これはやはりいわゆる異世界転移によるすべての言語を理解できるという特典が障害を起こした結果と思いたい。戦国時代の言葉使いなど現代ではほとんど理解できないだろうし、たぶん、古語が嫌いだった私はそう理由付けた。




 そうして作り上げた国はディフェイン王国と名付けられて、これもまた英語を知らない女王が聞き間違えてこうなったらしい。防御する国という意味にしたかったらしいんだが、異世界言語事情は複雑だとテレビを見ながらお茶を飲む。ここまでくるまでになんとか神様見習い君からやっと見習いが取れたらしく、元の世界の一般庶民並のリビングにまで白い部屋は進化した。

 時々、今自分の世界でどんな乙女ゲームの世界が繰り広げられるのか見て楽しむ余裕も出てきたようだ。隣で一緒に煎茶を飲みながらせんべいをかじっている。ここにいれば食べ物を食べることも必要ないらしいが、やはりドラマを見るならお茶菓子が必要だよねと主張したら、こうして用意してくれたのだ。意外と神様見習い君改め初級神様は面倒見がいいらしい。



 そこでまた問題が起きた。いわゆる乙女ゲーム世界の攻略対象者である王子は要するに浮気者ってことだよね。もともと親が決めた婚約者がいるくせに、他の男たちと一緒になって一人の女の子を取り合った挙句に元の婚約者がその子をいじめたとか何とかいいがかりを付けて大勢の前で恥をかかせるかの如く、婚約破棄の断罪を行い、元婚約者を親もろとも没落させたり、国外追放だの死罪だのってやっていることって最低な男なわけで、こんな男がのちに国王になったら国は潰れるよね。

 しかもその後を見ていると真実の愛とやらに目覚めたと言いながらもやっぱりたくさんの側室や愛妾を抱えるのが当たり前でさらに言うと子だくさん故に後継者争いでまた国が潰れる原因になる。

 脳内がお花畑の攻略対象者どもは本当にどうしようもない。これってお馬鹿な転生者云々もあるけれども、そもそもが乙女ゲームの攻略対象者も馬鹿どもが多いというわけだ。そもそもがなんで一人の女を国の重要人物の息子たちが取り合う?それで逆ハーレムでみんなで仲良くっておかしくない?ゲームだから許されることでもリアルでこれってないわ~~。そんなこともわからない転生者もないわ~~。

 ラノベとかで悪役転生者だとヒロインが魅了の魔法を使っているとか精神系の魔法の使い手とかいろいろな説もあるけれどね。やっぱりないわ~~。




 ということで、国を潰さない方法その2。

 正妃の第一王子を王太子とするという一文を各国の法律に混ぜ込む。そして、必ず乙女ゲームの世界になった国には国を潰さないためにディフェイン王国の王女との婚姻を義務付ける。そうすれば、たぶんまともな王子が育つ。なので、ディフェイン王国は女王を頂点とする国にしておく。だってさ、男だと誰の子かわからないでしょう。DNAとかまだ理解できない世界だもの。万が一ということもあるので、女系にしておくのが一番なのさ。あ、でも、魔法で血筋がわかるようにするっていうのもいいかもしれない。いや、それよりもこういうお馬鹿な奴は去勢できるような魔法を浸透させるっていうのもありかも。そうすれば、子供がそいつの子じゃないと一目瞭然じゃない。って言ったら、何故か、初級神様にドン引きされた。なぜだ?

 

 となんやかんやで最初に来た白い部屋がどんどん居住環境がよくなり、初級神様もやっと初級が取れた頃、私は転生することにした。彼とは仲良く楽しく過ごしてきたけれども、やはり神様とずっとこうしているよりも、せっかくの機会だから剣と魔法の世界を堪能したかったんだよね。

 だってほら、前の世界に魔法なんてなかったし、魔法を使ってみたいじゃん。いろいろと冒険もしてみたいじゃんって、おねだりしてやっと転生の許可をもらった。



 さて、どんな人生を今度は歩めるのか楽しみ~~。前の人生は女子高生で終わったから今度は長生きしたいな。

 ずっと一緒にいた彼には神様家業も大変だろうけれど、がんばれ~~って応援しつつ、私は転生することになる。




 そして、この世界に干渉したことなど都合よく一切合切忘れて、私はとある国の公爵令嬢に生まれ変わりエセルという名前になった。まさか、神様がお礼にと特典をいっぱいつけて転生させたとは知らずに………。

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