やばい彼氏にご注意を

＊＊番外編＊＊ ｢とんでもない正月｣

＊＊3＊＊

玄関に辿り着く前に二度目のチャイムが鳴った。

「はいはぁい……んな何回も押さなくてもでるっつーの……」
ヤル気のない返事をしながらぼやきながらドアを開けた。

「何かの勧誘ならお断りです……が─────」
足元を見ながらそんな事を言って視線をあげた。
薄汚れた茶色のスーツを着て風で乱れただろうか、ロマンスグレーの髪の毛の男性が一人。
「あぁ……えっと……どちら様、ですか？」
穏やかそうな表情の裏に隠れた罪悪感的なオーラが見えるのはなんでだろう。
目の前の人物はドアを押して体身を斜めにしている俺を見降ろしたまま、話そうとしない。

(誰だ？)

首をかしげて相手の出方を見ていると「りぃん？大丈夫？」母さんがしびれを切らして玄関の方まで来た。
「あぁ、母さん」
身体を捻り隙間ができて向かいにいる人物が見えた途端、母さんの目の色が変わった。

「りん？お前、倫太郎か？」
目の前の人物も驚いた顔をしながら俺を呼び捨てた。
その言葉に若干の嫌悪感を抱きながら目を細めていると母さんが突然悲鳴めいた声を上げて尻もちをついた。

「こ、こ、こ、幸太郎さん？！」

幸太郎？？

「ん？誰？」
増々誰なのかわからない。
尻もちをついた母さんの手を取り、滑らかに立たせその手を腰に回しながら「やぁ久しぶりだね。元気にしてたかい？」
俺を挟んで二人は見つめ合い手を取り合っている。

何？この状況。