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第一章
おしまい
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馬鹿を言うな、と言いかけて、わたしは何も言えずに無言を貫きました。
魔王の魔力の源を折ったのは、間違いなく勇者です。
それが魔王をこの家に呼び込むためなのだとしたら、この猫の言っている事もあながち間違いではないのではないかと、思ってしまったからです。
しかし、自分からそんな事をするメリットは勇者にはないのではないかと思うのです。
わざわざいつ裏切るか分からない魔王を呼び込むなどというリスキーなことを、あの勇者が打算も計算もなしにするものでしょうか。
そう思いはしますが、最近の勇者のおかしな様子を思い出すとやはり何も言えませんでした。
最近勇者は、常とは違う様子であったと、わたしは思っておりました。
それは間違いなくエードラムが家に来てからの事で、それまでは何の違和感ももっていなかったのです。
でも、まさか。
そういう気持ちが、わたしにはあります。
エードラムも同じであるのか、無言で猫を見詰める瞳には戸惑いがありました。
勇者がエードラムを理由もなく受け入れたこと、生活を共に出来るように最低限の知識を与えて委ねたこと、エードラムの生活環境がよくなるように勤めたこと。
それらは確かに、勇者という存在が魔王に与えるべきではないものの数々でした。
しかし、でもまさか……
「……何のために?」
『さぁ? そこまでは我は知らぬよ。本人に聞いてみてはどうかな』
飼い慣らされた犬であり続けるならばそれでもいいが、と嘲るように言いながら、猫はひょいと壁を下りてどこかへと走り去ってしまいました。
後には、穏やかな冬の陽気の下には不釣合いな我々が残されるのみ。
しかし我々は互いに無言で、何を言うべきか分からないまま立ち尽くすのみでありました。
真実など、今の我々には分かりません。知りたければ勇者に聞けばいいだけだという事もわかっているのですが、混乱している頭は正常な判断を中々下してはくれませんでした。
あまり、深く考えた事はなかったのです。
気まぐれな勇者のこと、このエードラムを迎え入れたのもまた気まぐれであるのではないかと、そう思うだけだったのです。
この半月あまりの穏やかな生活に、このままでもいいかと、思ってしまっていたのです。
エードラムは暫く無言でそのまま立ち尽くしていましたが、少ししてやっと動きを取り戻しわたしをリビングへと戻しました。
その後のことは、分かりません。
時折二階で布団を取り込んだり洗濯物を取り込んだりという小さな音は聞こえていましたが、エードラムがリビングのある一階に姿を現す事はなかったのです。
昼食もそうでしたが、手洗いを使った様子もありません。
かろうじて勇大のお迎えは行ったようですが、夕飯のときにも口数は少なく、勇大が心配そうに様子を伺ってしまうくらいにはエードラムは何かを思い悩むように目を細めておりました。
折り悪く、と申すべきなのか、その日は勇者の帰宅もとにかく遅く、リビングに置かれているノートパソコンに勇者からエードラムへのメッセージが受信されるのみで、勇者は夜半を過ぎても家に戻る事はありませんでした。
帰宅も一体いつであったのか分からず、わたしとエードラムが気付かぬうちに帰宅をしていたらしい勇者は、翌日また勇大と共に家を出て、やはりまた戻っては来ませんでした。
忙しい、と一言だけ聞きはしましたが、具体的に何が忙しいかは聞いてはいません。
勇者はそもそも秘密主義であるのか、それとも言う意味を見出せないのか、わたしにもあまり目的などを話しては下さらない方でした。
でも、だからといってこれはないのではないかと、つい思ってしまいます。
『最近夜には、何処にお出掛けなのですか』
「ん? 魔物退治だけど」
聞いてもさらりと返されます。
その様子はいつもと別段変わったようではないのですが、しかしその顔色はあまり冴えません。
そりゃあそうでしょう。連日のように夜間に魔物退治をしているとなれば疲れないはずがありません。
それも、わたしを置いての魔物退治です。一日出ただけでも日中にぐったりと眠っていたというのに、それが連日ともなればどうなるかは想像出来ます。
『……エードラムが』
「うん?」
『これからのことについて、少し話をしたいようですよ』
あぁ、そう。
と返す勇者は、やはりいつも通りで変わりはないように見えました。
これからのことについて、というのは嘘です。エードラムはあの猫との会話からこっちずっと悩んでいるようでしたし、勇者と何かを話すことで現状を打開出来ればと思っただけのことです。
ほんの二日ばかりとはいえエードラムの様子の変化に勇大は敏感に気付いておりますし、やはり少しばかり様子はよろしくないように思いますので。
決してエードラムのためなどではなく、あくまでも勇者のための提案ではありますが。
けれどこの会話をした日から、勇者は毎晩一人で出かけるようになってしまったのです。
勇者は、日中の外出にはわたしも多少は付き添わせてはくれましたが、夜間になるといつの間にか家の中から消えて朝方に帰って来るという行動を繰り返すようになりました。
時にはそのまま大学へ足を運び、彼が家に居るのは勇大が居る間だけという有様の日もありました。
エードラムが注意をしても、わたしが苦言を呈してもそれは変わらず、勇大を寝かしつけた後に窓から外に出るという日すらもありました。
勇者の行動の意味が、わたしにはわかりません。
いくら家にエードラムが居るとはいえ無用心ですし、このままでは勇者が倒れてしまいそうです。
日に日に勇者の顔色は青白くなり、疲労が濃い事は一目見るだけで分かる状況になっていたのです。
時にはエードラムが勇大の寝かし付けに付き添って勇者を監視する事もありました。わたしが扉という扉のロックを閉めたままにした事もありました。
しかしそれでも、勇者は魔術を駆使して抜け出してしまうのです。
そこまでして家を出て行く理由もわかりませんでしたし、以前は魔物が出現する日は保育園を休ませていたというのにそれもなくなりました。
この生活が始まって半月と少しが経過し、エードラムが共に暮らすようになって一ヶ月が過ぎても、勇者の行動は変化しませんでした。
元々感情が読み取り難い人ですが、何がしたいのかがさっぱり分かりません。
エードラムもまた自分の悩みどころではなくなってしまったのか勇大の面倒はよく見るようには戻りましたが、しかし徐々に勇者との関係が険悪になっていくのはわたしには止めようがありませんでした。
まるで、勇者はエードラムとの会話を避けているかのように、見えてしまって。
そして、エードラムが来てひとつきと半の後。
あの猫と話をしてひとつきの後に、その日は来てしまいました。
その日勇者は、またいつの間にか帰宅をして、いつの間にか自室のベッドで眠っておりました。
いつ戻ってきたのかはわたしにも分からず、しかしセンサーを起動させれば勇者の部屋の様子ははっきりと見てとれました。
勇者は毛布もかけず、服も着替えずにぐったりとベッドに沈んでおりました。
服は破れ、腕に乱暴に巻かれた包帯には血が滲んでいるのにそれも放置したまま、目の下の隈が色濃いその顔は失神するように眠りに落ちておりました。
こんなになってまで、何のために戦っているのでしょうか。
わたしすら置いて、あんなに慈しんで来た愛し子をエードラムに任せてまで。
またぐるぐると考え込みそうになっていると、不意に勇者の部屋のドアが開いてエードラムが姿を現しました。
エードラムはベッドで寝ている勇者を無言で見下ろすと、何か考え込むように眉間をぎゅうと揉んでいるようでした。
勇者はエードラムが脇に立っていても起きる気配はなく、それほどまでに疲れているのか油断をしているのかは、見ているだけでは分かりません。
「おい、起きろ」
その勇者を、エードラムが肩を揺すって起こそうとしました。
しかし勇者は起きる気配はなく、むずがるように寝返りを打つだけでろくな反応すら返しません。
エードラムは寝返りを打ち自分に背を向け丸くなった勇者を無言で見詰め、もう一度その肩を掴んで強く揺すりましたが、やはり勇者は体勢を崩す事はありませんでした。
何とも奇妙な、お互いの顔すら見ないままの睨み合いが続きます。
たとえ勇者が目覚めたとしても、これでは話し合いにならないのではないでしょうか。かといって、眠っている時以外に勇者と接触出来る時間は限られています。
まったく、どうしようもありません。
「……おい」
「いいよ」
「あ?」
しかし三度、エードラムが声を掛けると、背を向けている勇者から前触れもなく返答が投げられました。
「殺しに来たんでしょ?」
「……なんだと」
「いいよ。今なら抵抗するのも面倒だし」
何を、言っているのでしょうか。
驚き慌てますが、しかしリビングに居るわたしに出来る事なんかはありません。
自分で動く事も出来ないのですから、不穏な話をする勇者と魔王の間に割って入る事すらできないのです。
エードラムは言葉を失い、じっと勇者を見詰めています。勇者もまたエードラムに視線を戻す事もなく、背を向けたままで。
「気付かないと、思ってた?」
「……いつからだ?」
「半月くらい前?」
つまりそれは、最初からだという、事なのでしょうか。
魔王が勇者との距離を詰め、勇者の部屋がビシビシと、まるでポルターガイスト現象が起きているかのような不自然な音をたてます。
それが何なのかは分かりませんが、わたしの中の闇を感知するセンサーがアラートを鳴らし始めました。
あれはいけない、いけないのだ、と。
わたしは大いに焦り、何か出来る事はないものかと必死に自分の中の機能の検索を始めました。
しかしわたしは勇者の剣。自分単体で出来る事なぞ、高が知れておりました。
「あのねぇ、エードラム」
「なんだ」
「これだけは知っておいてね」
エードラムの手が、勇者の頭に乗せられました。
勇者の頭はエードラムの手で簡単に包めそうなくらいに小さく、ふわふわとした猫毛が魔王の指の間からこぼれていて、まるで魔王の指から血が出ているかのように、見えました。
「ぼくはねぇ、ただ君と離れたくなかっただけだったんだ」
あぁ、またダメだったかぁ、と、口を閉ざす直前に勇者の溢した言葉の意味は、わたしにはさっぱりわかりませんでした。
魔王の魔力の源を折ったのは、間違いなく勇者です。
それが魔王をこの家に呼び込むためなのだとしたら、この猫の言っている事もあながち間違いではないのではないかと、思ってしまったからです。
しかし、自分からそんな事をするメリットは勇者にはないのではないかと思うのです。
わざわざいつ裏切るか分からない魔王を呼び込むなどというリスキーなことを、あの勇者が打算も計算もなしにするものでしょうか。
そう思いはしますが、最近の勇者のおかしな様子を思い出すとやはり何も言えませんでした。
最近勇者は、常とは違う様子であったと、わたしは思っておりました。
それは間違いなくエードラムが家に来てからの事で、それまでは何の違和感ももっていなかったのです。
でも、まさか。
そういう気持ちが、わたしにはあります。
エードラムも同じであるのか、無言で猫を見詰める瞳には戸惑いがありました。
勇者がエードラムを理由もなく受け入れたこと、生活を共に出来るように最低限の知識を与えて委ねたこと、エードラムの生活環境がよくなるように勤めたこと。
それらは確かに、勇者という存在が魔王に与えるべきではないものの数々でした。
しかし、でもまさか……
「……何のために?」
『さぁ? そこまでは我は知らぬよ。本人に聞いてみてはどうかな』
飼い慣らされた犬であり続けるならばそれでもいいが、と嘲るように言いながら、猫はひょいと壁を下りてどこかへと走り去ってしまいました。
後には、穏やかな冬の陽気の下には不釣合いな我々が残されるのみ。
しかし我々は互いに無言で、何を言うべきか分からないまま立ち尽くすのみでありました。
真実など、今の我々には分かりません。知りたければ勇者に聞けばいいだけだという事もわかっているのですが、混乱している頭は正常な判断を中々下してはくれませんでした。
あまり、深く考えた事はなかったのです。
気まぐれな勇者のこと、このエードラムを迎え入れたのもまた気まぐれであるのではないかと、そう思うだけだったのです。
この半月あまりの穏やかな生活に、このままでもいいかと、思ってしまっていたのです。
エードラムは暫く無言でそのまま立ち尽くしていましたが、少ししてやっと動きを取り戻しわたしをリビングへと戻しました。
その後のことは、分かりません。
時折二階で布団を取り込んだり洗濯物を取り込んだりという小さな音は聞こえていましたが、エードラムがリビングのある一階に姿を現す事はなかったのです。
昼食もそうでしたが、手洗いを使った様子もありません。
かろうじて勇大のお迎えは行ったようですが、夕飯のときにも口数は少なく、勇大が心配そうに様子を伺ってしまうくらいにはエードラムは何かを思い悩むように目を細めておりました。
折り悪く、と申すべきなのか、その日は勇者の帰宅もとにかく遅く、リビングに置かれているノートパソコンに勇者からエードラムへのメッセージが受信されるのみで、勇者は夜半を過ぎても家に戻る事はありませんでした。
帰宅も一体いつであったのか分からず、わたしとエードラムが気付かぬうちに帰宅をしていたらしい勇者は、翌日また勇大と共に家を出て、やはりまた戻っては来ませんでした。
忙しい、と一言だけ聞きはしましたが、具体的に何が忙しいかは聞いてはいません。
勇者はそもそも秘密主義であるのか、それとも言う意味を見出せないのか、わたしにもあまり目的などを話しては下さらない方でした。
でも、だからといってこれはないのではないかと、つい思ってしまいます。
『最近夜には、何処にお出掛けなのですか』
「ん? 魔物退治だけど」
聞いてもさらりと返されます。
その様子はいつもと別段変わったようではないのですが、しかしその顔色はあまり冴えません。
そりゃあそうでしょう。連日のように夜間に魔物退治をしているとなれば疲れないはずがありません。
それも、わたしを置いての魔物退治です。一日出ただけでも日中にぐったりと眠っていたというのに、それが連日ともなればどうなるかは想像出来ます。
『……エードラムが』
「うん?」
『これからのことについて、少し話をしたいようですよ』
あぁ、そう。
と返す勇者は、やはりいつも通りで変わりはないように見えました。
これからのことについて、というのは嘘です。エードラムはあの猫との会話からこっちずっと悩んでいるようでしたし、勇者と何かを話すことで現状を打開出来ればと思っただけのことです。
ほんの二日ばかりとはいえエードラムの様子の変化に勇大は敏感に気付いておりますし、やはり少しばかり様子はよろしくないように思いますので。
決してエードラムのためなどではなく、あくまでも勇者のための提案ではありますが。
けれどこの会話をした日から、勇者は毎晩一人で出かけるようになってしまったのです。
勇者は、日中の外出にはわたしも多少は付き添わせてはくれましたが、夜間になるといつの間にか家の中から消えて朝方に帰って来るという行動を繰り返すようになりました。
時にはそのまま大学へ足を運び、彼が家に居るのは勇大が居る間だけという有様の日もありました。
エードラムが注意をしても、わたしが苦言を呈してもそれは変わらず、勇大を寝かしつけた後に窓から外に出るという日すらもありました。
勇者の行動の意味が、わたしにはわかりません。
いくら家にエードラムが居るとはいえ無用心ですし、このままでは勇者が倒れてしまいそうです。
日に日に勇者の顔色は青白くなり、疲労が濃い事は一目見るだけで分かる状況になっていたのです。
時にはエードラムが勇大の寝かし付けに付き添って勇者を監視する事もありました。わたしが扉という扉のロックを閉めたままにした事もありました。
しかしそれでも、勇者は魔術を駆使して抜け出してしまうのです。
そこまでして家を出て行く理由もわかりませんでしたし、以前は魔物が出現する日は保育園を休ませていたというのにそれもなくなりました。
この生活が始まって半月と少しが経過し、エードラムが共に暮らすようになって一ヶ月が過ぎても、勇者の行動は変化しませんでした。
元々感情が読み取り難い人ですが、何がしたいのかがさっぱり分かりません。
エードラムもまた自分の悩みどころではなくなってしまったのか勇大の面倒はよく見るようには戻りましたが、しかし徐々に勇者との関係が険悪になっていくのはわたしには止めようがありませんでした。
まるで、勇者はエードラムとの会話を避けているかのように、見えてしまって。
そして、エードラムが来てひとつきと半の後。
あの猫と話をしてひとつきの後に、その日は来てしまいました。
その日勇者は、またいつの間にか帰宅をして、いつの間にか自室のベッドで眠っておりました。
いつ戻ってきたのかはわたしにも分からず、しかしセンサーを起動させれば勇者の部屋の様子ははっきりと見てとれました。
勇者は毛布もかけず、服も着替えずにぐったりとベッドに沈んでおりました。
服は破れ、腕に乱暴に巻かれた包帯には血が滲んでいるのにそれも放置したまま、目の下の隈が色濃いその顔は失神するように眠りに落ちておりました。
こんなになってまで、何のために戦っているのでしょうか。
わたしすら置いて、あんなに慈しんで来た愛し子をエードラムに任せてまで。
またぐるぐると考え込みそうになっていると、不意に勇者の部屋のドアが開いてエードラムが姿を現しました。
エードラムはベッドで寝ている勇者を無言で見下ろすと、何か考え込むように眉間をぎゅうと揉んでいるようでした。
勇者はエードラムが脇に立っていても起きる気配はなく、それほどまでに疲れているのか油断をしているのかは、見ているだけでは分かりません。
「おい、起きろ」
その勇者を、エードラムが肩を揺すって起こそうとしました。
しかし勇者は起きる気配はなく、むずがるように寝返りを打つだけでろくな反応すら返しません。
エードラムは寝返りを打ち自分に背を向け丸くなった勇者を無言で見詰め、もう一度その肩を掴んで強く揺すりましたが、やはり勇者は体勢を崩す事はありませんでした。
何とも奇妙な、お互いの顔すら見ないままの睨み合いが続きます。
たとえ勇者が目覚めたとしても、これでは話し合いにならないのではないでしょうか。かといって、眠っている時以外に勇者と接触出来る時間は限られています。
まったく、どうしようもありません。
「……おい」
「いいよ」
「あ?」
しかし三度、エードラムが声を掛けると、背を向けている勇者から前触れもなく返答が投げられました。
「殺しに来たんでしょ?」
「……なんだと」
「いいよ。今なら抵抗するのも面倒だし」
何を、言っているのでしょうか。
驚き慌てますが、しかしリビングに居るわたしに出来る事なんかはありません。
自分で動く事も出来ないのですから、不穏な話をする勇者と魔王の間に割って入る事すらできないのです。
エードラムは言葉を失い、じっと勇者を見詰めています。勇者もまたエードラムに視線を戻す事もなく、背を向けたままで。
「気付かないと、思ってた?」
「……いつからだ?」
「半月くらい前?」
つまりそれは、最初からだという、事なのでしょうか。
魔王が勇者との距離を詰め、勇者の部屋がビシビシと、まるでポルターガイスト現象が起きているかのような不自然な音をたてます。
それが何なのかは分かりませんが、わたしの中の闇を感知するセンサーがアラートを鳴らし始めました。
あれはいけない、いけないのだ、と。
わたしは大いに焦り、何か出来る事はないものかと必死に自分の中の機能の検索を始めました。
しかしわたしは勇者の剣。自分単体で出来る事なぞ、高が知れておりました。
「あのねぇ、エードラム」
「なんだ」
「これだけは知っておいてね」
エードラムの手が、勇者の頭に乗せられました。
勇者の頭はエードラムの手で簡単に包めそうなくらいに小さく、ふわふわとした猫毛が魔王の指の間からこぼれていて、まるで魔王の指から血が出ているかのように、見えました。
「ぼくはねぇ、ただ君と離れたくなかっただけだったんだ」
あぁ、またダメだったかぁ、と、口を閉ざす直前に勇者の溢した言葉の意味は、わたしにはさっぱりわかりませんでした。
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