勇者のフリして異世界へ? 〜この世界は勇者インフレみたいです〜

あおいー整備兵

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第18話 ハイ、出ましたニューワード!

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「……」
「どうしました義雄様?」
「ん~、ちょっと考え事をね……」

 今日は大霊廟にエイブル麾下のメイド達全員、エイブルメイド隊を招き入れた訳なんだが……
 正直、目の前に居並ぶ四十八名のメイドにいきなり、俺の世話をします! と言われてどうしろと言うのだろう。勇者として魔王を倒すとかは、この世界的に俺は戦力外通告をされているので、今のところは関わる気は無い。かといって神の爺さんから受けた依頼を進めるには俺一人ではどうにもならないくらい世界は混沌としているわけだが、そんな厄介ごとにはたしてか弱いメイドさん達を巻き込んでいいんだろうか?

 とりあえずはこの世界の問題点を整理してみようか。

①魔王がいて勇者を召喚するぐらいに切羽詰まっている。

 魔王軍の方が戦力的に強いらしい。この状況は国家間の思惑を優先するあまり、根本的な解決を先延ばしにしてきたツケが回ってきたとしか思えない。魔王が現れるたびに勇者が魔王を倒すという場当たり的な解決をダラダラと繰り返している。これでいいのか? 良いわけないけど……まあ、今のところ関わる必要はないか。

②勇者召喚しすぎて、この世界に転送者が数万人いる。

 本来、切り札的な存在であったはずの勇者の株は大暴落。都合の良い道具と化し、そんな中で転送被害者と言える【ハズレ】の人たちの境遇が気になる。また、手に入れた異世界の力を為政者がマトモに使えるのだろうか? まあ勇者リセマラとか既にマトモな考えを持っているとは到底思えないが。……こんな僻地でどうこう出来る事ではないが、対策は立てておいた方が良くないか? と、思いつつも保留で。


③この世界の管理者たる二柱の神のうち一柱は行方不明。

 古伝などから人族の関与が疑われる。ソルティア教とか怪しい事この上ない。たまたま? 魔王が現れた為、被害者面をしているが、真に受けるとカナリ痛い目にあう気がする。現存しているであろうソルティア神も管理者として機能不全の疑いがあるのは、その教義がいびつなあたりから想像がつく。すでに人族の傀儡に落ちたと考えるべきか。一度本人、いや、本神に会わなきゃ……とはいえ下手に動くと宗教がらみはヤバイな。当面スルーで行こうか。

④魔法の使えない者の存在と置かれた境遇。

 名称を忌み子から巫女へと変えただけでのこれまでの非人道的な扱いは、単純な差別問題で片付けていいものだろうか? もっと根深い意図、悪意の存在が感じられる。それに、これが一番身近な問題かな。正直、なんとかならないものか。下世話な話、婚期を逃しかねない48人の娘さんを抱えた訳で、時間的に一番早急な解決が求められるのだ。ハーレム展開? ないない、どこのラノベだよ。


 これらを踏まえて、この世界をどうする事が世界を救う事になるのだろう? 手をつけるなら④かな? なまじ年を食った分、物事に思い切り良く当たれないのはおっさんたる俺の悪いクセだ。ホント勇者に向かない性格だよな。いや、勇者じゃなくて良かっというべきか……

 とにかく、世界情勢を考えれば大量転送者からのアーティファクトのみならず知識チートの流出は時間の問題であり脅威だ。これらの影響を受けた人族の勝利がこの世界の崩壊を防ぐ解決策と単純に言えない。魔族も然りだ。俺独自の答えを見出すために、今、与えられた状況を最大限に生かすーーその為にはやはり彼女達の存在は好意的、かつ積極的に受け入れるべきだろう。ならばーー何から始めるかは決まっているか。



「大霊廟の整理と研究のため、全員の大霊廟内での活動を制限しない。何をしてもいい。ただし報告、連絡、相談はこまめにする事。技術、アーティファクトを外に出すには俺、もしくはエイブルの判断を仰ぐ事。いいね」
「その……よろしいのですか?」

 流石にエイブルさんには事の重大さがわかったようで、俺の意図を伺うかのように言葉を返してきた。

「構わない。ここにある物に触れる事で、その意味を考えて欲しい。それにいざという時何も出来ないって事は避けたいんだよね。俺一人では手に余るのも事実だしさ」

 元王族としてこの中身の重要性、危険性を理解しているエイブルさんなら間違いもないだろう。

「あと、直接手伝ってもらう事があるかもしれないんで、主だった者の名前と役割を教えてくれるかな?」
「わかりました。それでは……」

 こうしてエイブルさんにより六人のメイドさんが紹介された。名前と外見の印象はこんな感じだ。三行でまとめてみたぞ。


ナカノ(エルフ)
身長はエイブルよりやや高い。エイブルの身長を10エイブルとすると11エイブル。細身の体、整った顔立ちに金髪ストレートの髪から覗き出ている耳は長く尖っている。瞳は金色。うん。エルフだよね。見た目有能な秘書って感じ。やっぱり数百歳とかなのか?

サイガ(獣人:狼)
身長は10、5エイブル。筋肉質なのは彼女の二の腕を参考。軽量級アマレスの選手みたいな体格に元気系美少女な顔立ち。小麦色の肌。髪色、瞳は焦茶でワイルドな感じ。獣耳はエルフ耳がふさふさになった感じだ。エイブルとは獣耳が違うのな。

グリセンティ(人族)
身長は10エイブル。平均的な体型。総じて普通の体型。こっちを基準値にすれば……いや、決して普通という訳ではないんですよ。メイドさんが皆総じて高水準の為と、なんか意識的に目立とうとしてないと言うか……赤髪にややつり目、瞳は濃い橙。

ルイス(人族)
身長は9、5エイブル。ゆるふわ癒し系なんだが、スタイルが攻撃型原潜だ。搭載兵装の破壊力が……ゲフン。髪色と瞳は薄桃色。天然でウエーブの入ったセミロングと少し目尻が下がった感じは多少あざとくないか? 普段から笑顔を絶やさない感じはもう、隣のおねいさんだわ。

ヴィラール&ペロサ(人族)
双子かよ!! 身長は二人とも8エイブル。ぶっちゃけ中学生。ヴィラールがポニテで、ペロサがツインテ。髪色、瞳は薄茶色。スタイル? 見た目中学生に何を求めよと言うのだろう。まあ将来頑張れ。髪型以外で区別するのは今のところ鑑定以外では不可能。本人には区別がつくとか言ってるけど、ソレ当たり前だろ。



「それぞれの簡単な自己紹介と答えられるなら能力的なものを教えてほしい。今後、それに合わせた業務を割り振るつもりなので」
「はい」

 最初に進み出たのはナカノだ、白金寮でもエイブルを庇ったエルフだ。
「ナカノです。メイド業務はエイブル様の補佐をしております。氏族からは出奔しておりますので出自に関してはご容赦を。特技は弓術と森林地帯でのサーチ&デストロイ、情報収集です。年齢は18歳でスリーサイズはーー」
「ちょっと待て!」
「スリーサイズは不要ですか?」
「いや、年齢ーー「18歳です」

 食い気味に答えるナカノ。いやいや、ほかにもツッコミどころがあるけど、俺の世界の知識ではエルフは長命だと認識しており18歳とかエルフ的には幼児ではないだろうか?

「……『18歳ですが!』
「……『18歳ですが!』

 ナカノの有無を言わせない雰囲気に押され気味の俺に、エイブルが背後からそっと耳打ちしてきた。

「人族に換算した年齢です。義雄様の世界でも異種族は人族年齢に換算すると聞いてますが」
「そりゃ犬猫はそう言う表現するけどさ、エルフってーー」
「それ以上は……過去にそこをいじって二度ほど戦争が」
「……」
『あと二十年は18歳です』
「あ、うん、分かった。次行こうか……」

 ナカノの成人式は一体、何十年後なのだろう……



「サイガです! 人狼族です! 業務はお部屋の手入れで特技は近接格闘! メイン武器は素手です! メイド隊の戦技教官をしています! 」
「戦技教官って……メイドだよね? それいる?」
「へっ? メイドですから必要ですよ!」
「……そうなの?」

 サイガの自信に満ちた物言いに、思わずエイブルに確かめるように振り返ると、さもあらんと言う顔でフォロー?がはいる。

「王宮内では魔法が使えませんし、武器の携行も制限されます。王族の警護はどうしても徒手空拳が基本ですから」

 前提から間違ってないか? メイドの仕事なの? ここのメイドさんは全員アレか、ステゴロ上等ってことかよ?

「趣味は森林浴とピクニックです!」
「へえ、森ガールか、お洒落な趣味だな」

 おお、意外に女の子らしい趣味だな。木漏れ日を浴びながら森を散策する少女か、絵になる風景が頭をよぎる。
 軽めの妄想に浸る俺に、エイブルが耳元で囁く。

「大森林地帯での魔獣討伐です」

 浴びるもんが違うわ! 血生臭いわ!!
 返り血を浴びて森の中で殺戮の限りを尽くす人狼メイドを想像してみた。フツーに怖いわ!

「あ、私も好きです。森林浴とピクニック」と、ナカノも乗っかってきた。

 ナカノもかい!! そういやあさっき、サーチ&デストロイとか言ってたな。だけどこの世界の生き物は魔法とか使うんじゃないだろうか? 対して彼女達は魔法が使えない。それって戦いで不利じゃないか?

「魔獣も魔法とか使うんじゃないのか? その、危険じゃないか?」

 魔法が使えない彼女達に気を使って少し遠回しになってしまった質問にあっけらかんとした表情でサイガが答えた。

「所詮、獣ですから魔法を使うって言ってもたかが知れてますよ!」
「そうです。まあ、基本的に単純な生き物なんで、モーションさえ見極めれば回避もカウンターも取れます」

 うんうんとうなづき合う二人。いやいや、普通のメイドさんはそんな事言わないと思うぞ。

「それに私達、【称号】持ちですから」
「へ?」

 ハイ、出ましたニューワード! なんだよ称号持ちって?
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