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「ッ…ハァハァハァ…ハァ」
どんどん火照りを増す体に荒い呼吸。看病する者が誰一人としておらず、自分一人で動かなければならない。
 ズキズキと痛む頭を抑えながら俺は起き上がり、外の様子を見に行った。
ガラッと扉を開けると、そこには菊助が立っていた。
「よっ!」と呑気に声をかけてきた菊助。
「!?!?」俺は、驚きのあまり後ろに倒れかけた。
そして、倒れる寸前のところで菊助に支えられた。
「おっと……大丈夫か?体が火照ってるし、呼吸が荒いぞ?」
「っ…。大丈夫だ、今日は喜介を探しに行く…の…無…理」
 ガクンッ
「おわっ!?…宗介?…宗介!?」
俺は菊助に支えられながら、意識を手放した。


久し振りに夢を見た。
暖かくて誰かに包まれているような、そんな夢を見た。そして、俺はもう一度夢の中で目を瞑った。


「ーー………。」
薄らと目を開けると、が俺の看病をしていた。額に水で濡らして絞られた布を置かれ、汗ばんだ体を拭いてくれる。
 思わず相手の袖をキュッと軽く握り、ハァハァと荒い呼吸を繰り返しながら「母さ…ん……。」と呼んだ。顔は、ぼやけて見えなかったが、面影が母さんと似ていたのでそう呼んだ。
 俺の声に反応した相手は、動かしていた手を止め、俺の頬へ静かに接吻を落とした。
相手の「おやすみ」と言う言葉に俺は反応し、重たい瞼を静かに下ろし、眠りについた。

 次に目を覚ました時は、次の日の朝方だった。
「ん………。」まだ明るさに慣れていない目を必死に擦った。
 昨日、誰かが看病してくれたお陰で体が楽になっていた。それに、あんなに温かい夢を見たのは何時ぶりだろうか…。と、そんな事を思いながら横へ寝返りをうつと、隣で誰かが寝ていた。

「え…。」俺は驚いた。
俺が必死に探していた喜介が、隣で俺に抱きつきながら寝ていた。喜介の顔は、何故か幸せに満ちていた。
 そして、喜介が隣にいる事を意識した途端ドキドキと胸が高鳴った。
 「っ…。…喜介…」俺は、喜介の手をとり自分の頬へ持っていった。昨日もし、喜介が俺の看病をしていたのなら頬へ接吻が落とされたのを覚えている。
 俺は、恥ずかしくなり顔を紅潮させ、後ろへ寝返りをうち、丸まった。

「……宗介さん」後ろから名前を呼ばれ、ビクッと肩が大きく揺れた。
「……み…見てた…のか?/////」と喜介の方を振り向かず聞いた。
「実は…ずっと起きてました…。」と言われ、俺の顔は更に紅潮した。
「…っ…わ…忘れろ…/////」と弱々しく吐き捨てると、喜介が突然後ろから俺を抱きしめてきた。
「っ…!?」俺は驚きのあまり、かたまった。
「どうしたら僕の事、好きになって貰えますか…?」と喜介に耳元で囁かれた。
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