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「ハァハァハァハァ…ハァ……ッ」
荒い呼吸を繰り返していると、喉が渇いてくる。
「み……ず…」
水を外までみに行かないと…。と頭の中では思うが、体の自由が効かず俺は、そのまま、布団から起き上がれずに突っ伏した。


「ゴホッゴホッ…」
翌日の日は、咳が激しく酷かった。
 俺は、ふと以前熱を出して倒れた時、喜介に看病されたのを思い出した。
「こんな貧弱な体になっても1番に思い出すのは、喜介の事なんだな…」と自身を嘲笑いながら、目を閉じる。
 喜介に会いたい…と思う自分が憎らしく思った。今頃、喜介は遊女達と戯れているんだろうな…。と独り想像をして、何故か悲しくなった。
「ゴホッゴホッ…」
咳と共に、涙が出てくる。
1度、出た涙はもう止まらない…。ずっと、雫が俺の頬を伝った。

ドンドンッ
「ん…」
ドンドンドンドンッ
「ん………ぁ…」
戸を叩く音で俺は、目を覚ました。上体を起こし、目を擦りながら「いつの間に、寝ていたんだ…?」と呟いた。
 涙はもう、止まっていた。だが、目が腫れたような感覚が残っている。
「情けねぇ…」と呟きながら、立ち上がる。
そして、俺は、戸の前に立ち「誰だ?」と言う。
 戸の向こうでは、誰かの気配がした。
「ゴホッゴホッ…誰だ?」
もう一度問う。
「俺だ!宗介、」
「浅黄さん……?」
「あぁ!」
「何の用で来たんだ…?」
「宗介に会いに来たんだ!」
「………。」
「宗介、開けてくれるか…?」
「今日は、無理だ…。悪いが浅黄さん、帰って貰ってもいいか?……ゴホッゴホッ」
「宗介……、風邪か?」
「…なんでもない…」
「嘘はつかない方がいいぞ?」と浅黄さんに指摘され、俺は、咳を我慢しながら、浅黄さんに言う。
「別に…嘘はー」俺の言いかけた言葉を浅黄さんが遮る。
「その掠れた声は、一体どうしたんだ?」と言われると俺も無言でいるしかいられなくなる。
「……。」
そして、今度は優しい口調で浅黄さんは、
「宗介…戸を開けてくれるか?」と言われ、俺は、開けざるおえなかった。

ガラガラガラー
 戸が勢いよく、開けられると外の寒い空気が俺の肌の汗を冷やす。
「宗介ー!!!」と今にも目眩、吐き気で倒れそうな俺を一目散で支えてくれた。
「宗介、大丈夫か?」と浅黄さんが心配する。
「ちょっと寝込んだだけだから大丈…ゴホッゴホッ」
「大丈夫じゃないじゃないか!無理をするな!」と言い、浅黄さんは俺を布団まで担いでくれた。
「ありがとう…浅黄さん。」
「どうって事ないさ!冬だから、風邪は一番注意しないとな…。」と言って、水汲みに行った浅黄さん。
 俺は、浅黄さんに「ありがとう」と呟いて、目を閉じた。
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