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春画の表紙をめくると、男と女がくっついている絵が描いてあった。
猥画わいがか……。」
描かれている女に対し、俺はあまり興奮をしなかった。
「興奮するのか……?」と呟きながら、パラパラと流して見ていると、ある描かれた絵に目が止まった。
 そこには男同士の絵があった。美男子といえる青年たちの行為が生々しく描かれている。
 絵をよくよく見てみれば、奥には細長い棒のような物が描かれていた。
「なんだ……?これ…」
子供が使うものか?なんの玩具だ?と不思議に思い、マジマジと考えを凝らしていると、「お?何読んでるんだ?」と隣で声がした。
「ッッッーーーーー!?!?!?」
驚きのあまり、俺は勢いよく立ち上がり後ずさった。
「そんなに驚かなくてもいいだろー?」と相手が頬をふくらませて怒っている。
「なんだ、菊助か……」
俺はホッと胸を撫で下ろすと、「どこから入ってきたんだ?」と尋ねた。
「宗助も不用心だな~、扉の固定もしないなんてー」と呆れた様子で話す。
「玄関の扉、固定し忘れていたのか」と呟くと、俺は玄関へ行き木の棒で扉を固定した。
 そして、火鉢の所へ戻ると、菊助が俺と春画を交互に見ながらニヤニヤと笑っていた。
「何笑ってんだよ…」と冷めた瞳で菊助を見下ろす。
「俺は喜んでいるんだよ、宗助」と心底嬉しそうに話す。
「何にだよ?」
「んー?遂に、宗助も春画に手を出す日が来るとはな~…」
「それは玄さんが…」
「しかも男色に興味を持っていたとは~」と理由を聞かず、勝手に話を進める菊助。
俺はハァとため息を着くと菊助の隣に座り、菊助の顔をクイッと俺の方へ向ける。
「あのな、これは玄さんから無理やり渡されたんだ…!」
菊助は口を尖らせながら「何本気になってるんだ?」と聞いてきた。
「お前が先々話を進めるからだろ…」と言い、菊助の顔を放した。
「だが、この絵ばかり見ていたでは無いか…」と青年たちの行為を指さした。
「それは……、、、奥に描かれている細長い棒が気になったんだよ」と説明すると、菊助は俺を見てニヤリと笑う。
「菊助は知ってるのか?その子供が使う様な玩具は…」と尋ねると菊助は一瞬目を丸くし、大笑いをした。
「ハハハハッ」
「何笑ってんだ?」と俺は訳が分からず、困惑した。
「いや~、宗助!それは子供が使う玩具じゃないよ!!……四ツ目屋で売られている肥後ずいきというものだ!!」
「肥後ずいき……?」
「男女の行為に使われるものだなー」
「だが、この中に描かれているのは男だけだが、男でも使えるのか?」
「あぁ!使えるとも!」
「へぇ、」と肥後ずいきという道具を見る。
「媚薬も張形も長命丸も売っているぞ?」
「媚薬…?」疑問に思い、聞いてみる。
「宗助……媚薬…知らないのか?」と菊助に驚かれた。
「あぁ、幼い頃危険なものだと浅黄さんから教わった。」
「え…???……じゃー長命丸も張形も知らないのか?」と聞かれたので俺はこくんと頷いた。
「ぇぇぇぇぇぇ!?!?」と部屋に響き渡るほど菊助に驚かれた。
「そっか、宗助は…言いつけを守るいい子だもんな~」と子供のように扱われ、俺はイラッとした。
「子供扱いすんな…早く教えろよ、媚薬とか長寿丸とかいうやつを…」
「宗助、長寿丸じゃなくて長丸な…、」

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