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第一部 ライアス編
リナ
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ライアス達はトーラの村の広場に案内され、歓迎を受けた。
「旅の方達、凶悪な魔族達をよく追い払ってくれましたね。心から御礼申し上げます。」
そう言ってくれたのはトーラの村の村長だ。まだ若いエルフ…といってもエルフは長命である。本当の年齢は分からないが…
「いえ、僕達はこの村に向かう途中でしたし間に合って良かったです。」ライアスがかしこまって話す。
「この村には、どうしてお越しになったのですか?」
「私達は聖林寺を目指しています!」
「な、なんと!聖林寺に向かわれるのですか!?」
「僕達は魔王を倒すためにエルド王国から旅立ちました。」
「そんな事が…」
「たった3人で魔族を!?」
「いや、しかし先程の戦いぶりをみると…」
村人達はざわついていた。無理もない…魔族を倒そうとするのだから…
「皆、静かに。この方々は本気で世界を救ってくださるのです。しかし…」
村長が急に顔を曇らせた。
「実は、この森に少し前から怪物が住みついてしまいまして…聖林寺に向かう途中に出くわしてしまいます。だから迂回して森を抜けた方が…」
と村長が話している途中にライアスが
「でしたら、その怪物を僕達が倒します!」
「なんと!?しかし…奴は巨大な大蛇バジリスクです。力は強く鋭い牙を持ち…何より賢い。大森林の地形を上手く生かしているのです。」
「まぁ~そんな蛇に勝てないようなら魔王討伐なんて目指すのは無理だろうねぇ。ここは任せときなよ。」
クラウドがライアスを見て立ち上がった。
「クラウドさんの言う通りです。ここで怖じ気づいていたら魔王討伐なんて夢物語です。それに皆さんを放っては置けません!」
力強くライアスが応えた。
三人の意見が一致しバジリスク退治に向かおうとした時…
この会議の片隅に参加していたエルフの少女が立ち上がる。
先程の戦いで援護をしてくれた女の子だ。
彼女は何も言わずに真っ直ぐにライアスを見つめている。
「あ、あの?」マリアが女の子に話し掛けようとする…すると
「リナ!そなたも参るのですか?バジリスク退治に?」村長が話し掛けると
コクっと小さくうなずいた。
「ライアス殿…すみませぬが、このリナもバジリスク退治に連れて行ってはくれませぬか?」
村長がライアスに頼み込んだ。
「それは心強いです!先程の戦いでも見せてもらいましたから!」
「強い仲間は多い方がいいからねぇ~」
「よろしくね。リナさん。」マリアがリナに握手を求めた。
だがリナは小さくうなずいて、お辞儀をして村長の部屋から立ち去った…。
「私、何かしたかな…?」
村長がマリアに向かって話した。
「マリア殿、許してやってくれないか?あの娘は声を失ってしまったのです…。」
「えっ!?」
「あれはリナがまだ5才の時だった。突然、バジリスクが現れてな…多くの村人が襲われたのです。」
「魔族もやって来てな…それに立ち向かったのがリナの両親のレンとリッカであったのです。」
村長は語った。あの日、バジリスクと魔族の攻撃から村の皆を守る為、魔法と弓に長けているレンとリッカが壮絶な戦いを行ったこと…。迫りくる魔族に弓矢で撃退し、バジリスク相手にも強力な魔法を繰り出しては、仲間を逃がす為に必死で食い止めた。しかし、魔法にも弓矢にも限りはあった。村人達を無事に逃がしたものの、魔力と矢が尽きた二人には抗える術は残って無かった。捕らえられたレンとリッカは魔族に凄惨にもなぶられリッカは散々に魔族に弄ばれ生き絶えた…レンは手足から順番に切り取られ最後はバジリスクに二人とも飲み込まれた…。
ただ見ているしかなかった。力の足りないトーラの村人達では、命を掛けて逃がしてくれた二人に対しては魔族の侵入を防ぐ為に結界を張り守りを固める事だけだった…。
「それからです。リナは悲しみとショックのあまり、声を発する事が出来なくなったのです。」涙ながらに村長は話してくれた。
マリアは悲しみで瞳からは大粒の涙が溢れている。
「それからリナは修行を始めました。どうかお願いです。リナを連れて行っては頂けませぬか?」
「村長様、分かりました。ですが危険な戦いです。だけど、魔族は許せない!必ずバジリスクを倒してきます!」ライアスは強く村長に誓った。
出発は明日に決まった。今日はゆっくり休んで武器やアイテムの補給を行った。
バジリスクの棲みかは北西のかつてトーラ村の休息所として使っていた場所の付近の森にいるとされている。
カルスラの森の地形では、立ち入るのが困難な未知の場所と伝えられている。
ライアスはふと気になり用意してくれた宿から抜け出し周囲を散策した。
昼間の戦いが嘘みたいに静かだ。空を見上げると綺麗な星空が見える。これなら明日は晴れるだろう。
村を歩いていて気になった方へ歩き出すと、そこにはリナがいた。こんな夜遅くに?
ライアスは申し訳ないと思いつつもリナの様子を見ていた。どうやら修行をしているようだ。大自然からのエーテルを体に収束している!
凄まじい魔力だ…。
余程の修行を重ねてきたのであろう。ここまでの魔法使いだったとは。マリアにも負けないくらいの魔力量かもしれない。
様子を見ていて気づいたのは、弓矢だけでなく剣も置かれている。エルフは基本争いを好む種族ではない。風魔法や弓矢を得意とするも、他の攻撃魔法や剣を使ったりはしない。
明日のバジリスク討伐負けられない!何としても仇を取らせてあげないとと強く自分の胸に誓ったライアスであった。
「旅の方達、凶悪な魔族達をよく追い払ってくれましたね。心から御礼申し上げます。」
そう言ってくれたのはトーラの村の村長だ。まだ若いエルフ…といってもエルフは長命である。本当の年齢は分からないが…
「いえ、僕達はこの村に向かう途中でしたし間に合って良かったです。」ライアスがかしこまって話す。
「この村には、どうしてお越しになったのですか?」
「私達は聖林寺を目指しています!」
「な、なんと!聖林寺に向かわれるのですか!?」
「僕達は魔王を倒すためにエルド王国から旅立ちました。」
「そんな事が…」
「たった3人で魔族を!?」
「いや、しかし先程の戦いぶりをみると…」
村人達はざわついていた。無理もない…魔族を倒そうとするのだから…
「皆、静かに。この方々は本気で世界を救ってくださるのです。しかし…」
村長が急に顔を曇らせた。
「実は、この森に少し前から怪物が住みついてしまいまして…聖林寺に向かう途中に出くわしてしまいます。だから迂回して森を抜けた方が…」
と村長が話している途中にライアスが
「でしたら、その怪物を僕達が倒します!」
「なんと!?しかし…奴は巨大な大蛇バジリスクです。力は強く鋭い牙を持ち…何より賢い。大森林の地形を上手く生かしているのです。」
「まぁ~そんな蛇に勝てないようなら魔王討伐なんて目指すのは無理だろうねぇ。ここは任せときなよ。」
クラウドがライアスを見て立ち上がった。
「クラウドさんの言う通りです。ここで怖じ気づいていたら魔王討伐なんて夢物語です。それに皆さんを放っては置けません!」
力強くライアスが応えた。
三人の意見が一致しバジリスク退治に向かおうとした時…
この会議の片隅に参加していたエルフの少女が立ち上がる。
先程の戦いで援護をしてくれた女の子だ。
彼女は何も言わずに真っ直ぐにライアスを見つめている。
「あ、あの?」マリアが女の子に話し掛けようとする…すると
「リナ!そなたも参るのですか?バジリスク退治に?」村長が話し掛けると
コクっと小さくうなずいた。
「ライアス殿…すみませぬが、このリナもバジリスク退治に連れて行ってはくれませぬか?」
村長がライアスに頼み込んだ。
「それは心強いです!先程の戦いでも見せてもらいましたから!」
「強い仲間は多い方がいいからねぇ~」
「よろしくね。リナさん。」マリアがリナに握手を求めた。
だがリナは小さくうなずいて、お辞儀をして村長の部屋から立ち去った…。
「私、何かしたかな…?」
村長がマリアに向かって話した。
「マリア殿、許してやってくれないか?あの娘は声を失ってしまったのです…。」
「えっ!?」
「あれはリナがまだ5才の時だった。突然、バジリスクが現れてな…多くの村人が襲われたのです。」
「魔族もやって来てな…それに立ち向かったのがリナの両親のレンとリッカであったのです。」
村長は語った。あの日、バジリスクと魔族の攻撃から村の皆を守る為、魔法と弓に長けているレンとリッカが壮絶な戦いを行ったこと…。迫りくる魔族に弓矢で撃退し、バジリスク相手にも強力な魔法を繰り出しては、仲間を逃がす為に必死で食い止めた。しかし、魔法にも弓矢にも限りはあった。村人達を無事に逃がしたものの、魔力と矢が尽きた二人には抗える術は残って無かった。捕らえられたレンとリッカは魔族に凄惨にもなぶられリッカは散々に魔族に弄ばれ生き絶えた…レンは手足から順番に切り取られ最後はバジリスクに二人とも飲み込まれた…。
ただ見ているしかなかった。力の足りないトーラの村人達では、命を掛けて逃がしてくれた二人に対しては魔族の侵入を防ぐ為に結界を張り守りを固める事だけだった…。
「それからです。リナは悲しみとショックのあまり、声を発する事が出来なくなったのです。」涙ながらに村長は話してくれた。
マリアは悲しみで瞳からは大粒の涙が溢れている。
「それからリナは修行を始めました。どうかお願いです。リナを連れて行っては頂けませぬか?」
「村長様、分かりました。ですが危険な戦いです。だけど、魔族は許せない!必ずバジリスクを倒してきます!」ライアスは強く村長に誓った。
出発は明日に決まった。今日はゆっくり休んで武器やアイテムの補給を行った。
バジリスクの棲みかは北西のかつてトーラ村の休息所として使っていた場所の付近の森にいるとされている。
カルスラの森の地形では、立ち入るのが困難な未知の場所と伝えられている。
ライアスはふと気になり用意してくれた宿から抜け出し周囲を散策した。
昼間の戦いが嘘みたいに静かだ。空を見上げると綺麗な星空が見える。これなら明日は晴れるだろう。
村を歩いていて気になった方へ歩き出すと、そこにはリナがいた。こんな夜遅くに?
ライアスは申し訳ないと思いつつもリナの様子を見ていた。どうやら修行をしているようだ。大自然からのエーテルを体に収束している!
凄まじい魔力だ…。
余程の修行を重ねてきたのであろう。ここまでの魔法使いだったとは。マリアにも負けないくらいの魔力量かもしれない。
様子を見ていて気づいたのは、弓矢だけでなく剣も置かれている。エルフは基本争いを好む種族ではない。風魔法や弓矢を得意とするも、他の攻撃魔法や剣を使ったりはしない。
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