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怪しすぎる義兄弟
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野上理玖には、高校に入ってから親しくなった唯一無二の親友がいる。花岡悠だなんて可愛い名前の彼は、名前通りどうしてか可愛く思えてしまう不思議な存在だった。同じ苗字を持つ後輩のように特段美しい見た目というわけでもないのに、関わっているとどうしてか可愛く思えてしまう。本人としては自分に自信を持てずにいるようだけれど、そんなところでさえも好ましく思えるのだから不思議だった。
昼休みの終わり、悠と他愛のない話をしながら音楽室に向かう。音楽の時間は割と好きだけれど、高校生にもなってクラス全員で歌うだなんて恥ずかしいなというのが正直な気持ちだ。それでも悠はいつでも一生懸命に歌ってて、そんなところが理玖には尊敬できる。二年になったある時素直にそう言ってみたら、「昔は弟によく子守唄を歌ったからね」と言われたことを思い出した。昔子守唄を歌ったことと現在一生懸命に歌うことのどこに因果関係があるのだろうかと思ったけれど、そんなことより弟がいるだなんて知らなかったから驚いたものだ。
そんなことを思い出していたら、音楽室まで後少しのところで、廊下に人だかりができていることに気がついた。中央には、この高校で一番の人気者である花岡蓮。そしてその周りを女子生徒が囲んでいる。珍しい光景では無いけれど、理玖には少し思うことがあって、チラリと隣の悠をみた。彼はその集団を全く気にしていないようで、今日の夕食の献立の話をしている。そろそろキャベツを使い切らないといけないらしく、そんな平和な話なのにあまりにも深刻そうな顔は少し面白い。そんな悠相手に、少し試してみようと理玖はガバリと悠の肩を抱いた。
「そんな顔するなって。キャベツはスープにしたらカサが減るよ」
そう言いながら今度は集団をチラリとみると、中央の花岡蓮と目が合った。恐ろしいほどの無表情なのに、ギラギラと光る目が恐ろしい。ああ、やっぱりなと思う。
「やっぱスープだよね。昨日もスープだったから弟が嫌がるかもしれないけど、仕方ないね」
呑気にキャベツの消費方法について話す悠の傍、花岡蓮と数秒間睨み合う。「蓮くん?」という女子生徒の呼びかけに我に返った花岡蓮に、なぜだか勝ち誇ったような気持ちになった。悠と肩を組んだまま音楽室に入り、名簿順に席につく。そして後ろに座った悠を振り返り、手招きして、少しだけ顔を寄せた。
「あのさ」
「ん?なになに」
「悠の弟って、花岡蓮?」
小さな声で聞いてみると、悠が驚いたような顔をして、わかりやすく慌て始めた。
「ち、違うよ。全然、違う」
「今、嘘ついてる時の顔してるよ」
「嘘なんてついてないもん」
「ふーん。そっか」
理玖の中では十中八九正解だろうと思うのだけれど、もし蓮との関係を隠しているのなら、それなりの理由があるのだろう。今までもそれとなく弟の話題を振ると、意図的にはぐらかされてしまうことには気がついていた。親友として隠し事は少し寂しいけれど仕方がない。それ以上何も言わずにいたら、悠が数秒黙った後、意を決したように口を開いた。
「みんなには内緒にしてね」
「……やっぱり弟なんだ」
「義理のね」
そう言われてから、途端に申し訳ない気持ちになった。事情があって隠していたかもしれないのに、興味本位で聞くべきではなかった。後悔して次の言葉を探していたら、悠が顔の前で手をブンブンと振ってきた。
「でもめっちゃ仲良いよ。昨日も一緒に寝たし」
「……え?」
「恥ずかしいけど、ちゃんと朝はチューもしてさ。本当、だから気にしないでね。顔は似てないけどさ」
顔が似てないことなんて気にしたことがなかった。それよりも、一緒に寝ていることとか、チューとか、なんだそれは。とりあえず冷静になって、まず問題を一つずつ解決しようと悠の右肩に手を置いた。
「待って。一緒に、寝てんの?」
「うん。弟が勝手に布団に入ってくるだけだけどね」
「チューもしてるんだ」
「ほっぺだけどね。だから、他の普通の兄弟と一緒だよ」
平然と話す悠に意識が遠くなる。普通の兄弟のことをなんだと思っているのだろう。でも、悠にとっての日常を真っ向から否定するのは気が引けて、精一杯言葉を探す。
「確かに、外国人はほっぺにキスくらいするもんな」
「そうそう。だから、義理でも仲良くやってるよ」
仲が良すぎて不安だなんて、どうやって悠に伝えたら良いのだろうか。確かに、悠と理玖が絡んだ時の蓮の様子は、強い嫉妬と執着を感じて普通ではないと思っていたけれど、ただブラコンなんだと思っていたのだ。面白がっていたのに、それどころではなくなってしまった。でも、悠のためにも、やっぱり放置するのはいけない気がする。
「一緒に寝たり、チューしたり、嫌じゃないの?」
「義理とはいえ兄弟だから、それくらい普通だよ」
「非常に言いづらいんだけど、少なくとも俺はね。兄貴とも弟とも一緒に寝ないし、チューもしないよ」
「……えぇっ!」
教室に響き渡るほどの驚愕に、「ちょっと、声が大きいよ」と、理玖は慌てて悠の口を両手で塞いだのだった。
昼休みの終わり、悠と他愛のない話をしながら音楽室に向かう。音楽の時間は割と好きだけれど、高校生にもなってクラス全員で歌うだなんて恥ずかしいなというのが正直な気持ちだ。それでも悠はいつでも一生懸命に歌ってて、そんなところが理玖には尊敬できる。二年になったある時素直にそう言ってみたら、「昔は弟によく子守唄を歌ったからね」と言われたことを思い出した。昔子守唄を歌ったことと現在一生懸命に歌うことのどこに因果関係があるのだろうかと思ったけれど、そんなことより弟がいるだなんて知らなかったから驚いたものだ。
そんなことを思い出していたら、音楽室まで後少しのところで、廊下に人だかりができていることに気がついた。中央には、この高校で一番の人気者である花岡蓮。そしてその周りを女子生徒が囲んでいる。珍しい光景では無いけれど、理玖には少し思うことがあって、チラリと隣の悠をみた。彼はその集団を全く気にしていないようで、今日の夕食の献立の話をしている。そろそろキャベツを使い切らないといけないらしく、そんな平和な話なのにあまりにも深刻そうな顔は少し面白い。そんな悠相手に、少し試してみようと理玖はガバリと悠の肩を抱いた。
「そんな顔するなって。キャベツはスープにしたらカサが減るよ」
そう言いながら今度は集団をチラリとみると、中央の花岡蓮と目が合った。恐ろしいほどの無表情なのに、ギラギラと光る目が恐ろしい。ああ、やっぱりなと思う。
「やっぱスープだよね。昨日もスープだったから弟が嫌がるかもしれないけど、仕方ないね」
呑気にキャベツの消費方法について話す悠の傍、花岡蓮と数秒間睨み合う。「蓮くん?」という女子生徒の呼びかけに我に返った花岡蓮に、なぜだか勝ち誇ったような気持ちになった。悠と肩を組んだまま音楽室に入り、名簿順に席につく。そして後ろに座った悠を振り返り、手招きして、少しだけ顔を寄せた。
「あのさ」
「ん?なになに」
「悠の弟って、花岡蓮?」
小さな声で聞いてみると、悠が驚いたような顔をして、わかりやすく慌て始めた。
「ち、違うよ。全然、違う」
「今、嘘ついてる時の顔してるよ」
「嘘なんてついてないもん」
「ふーん。そっか」
理玖の中では十中八九正解だろうと思うのだけれど、もし蓮との関係を隠しているのなら、それなりの理由があるのだろう。今までもそれとなく弟の話題を振ると、意図的にはぐらかされてしまうことには気がついていた。親友として隠し事は少し寂しいけれど仕方がない。それ以上何も言わずにいたら、悠が数秒黙った後、意を決したように口を開いた。
「みんなには内緒にしてね」
「……やっぱり弟なんだ」
「義理のね」
そう言われてから、途端に申し訳ない気持ちになった。事情があって隠していたかもしれないのに、興味本位で聞くべきではなかった。後悔して次の言葉を探していたら、悠が顔の前で手をブンブンと振ってきた。
「でもめっちゃ仲良いよ。昨日も一緒に寝たし」
「……え?」
「恥ずかしいけど、ちゃんと朝はチューもしてさ。本当、だから気にしないでね。顔は似てないけどさ」
顔が似てないことなんて気にしたことがなかった。それよりも、一緒に寝ていることとか、チューとか、なんだそれは。とりあえず冷静になって、まず問題を一つずつ解決しようと悠の右肩に手を置いた。
「待って。一緒に、寝てんの?」
「うん。弟が勝手に布団に入ってくるだけだけどね」
「チューもしてるんだ」
「ほっぺだけどね。だから、他の普通の兄弟と一緒だよ」
平然と話す悠に意識が遠くなる。普通の兄弟のことをなんだと思っているのだろう。でも、悠にとっての日常を真っ向から否定するのは気が引けて、精一杯言葉を探す。
「確かに、外国人はほっぺにキスくらいするもんな」
「そうそう。だから、義理でも仲良くやってるよ」
仲が良すぎて不安だなんて、どうやって悠に伝えたら良いのだろうか。確かに、悠と理玖が絡んだ時の蓮の様子は、強い嫉妬と執着を感じて普通ではないと思っていたけれど、ただブラコンなんだと思っていたのだ。面白がっていたのに、それどころではなくなってしまった。でも、悠のためにも、やっぱり放置するのはいけない気がする。
「一緒に寝たり、チューしたり、嫌じゃないの?」
「義理とはいえ兄弟だから、それくらい普通だよ」
「非常に言いづらいんだけど、少なくとも俺はね。兄貴とも弟とも一緒に寝ないし、チューもしないよ」
「……えぇっ!」
教室に響き渡るほどの驚愕に、「ちょっと、声が大きいよ」と、理玖は慌てて悠の口を両手で塞いだのだった。
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