編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?

灯息めてら

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第8話 魔王様に謁見ですー!

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「いよいよ明日、魔王陛下に謁見か」

アス様が少し緊張した面持ちで言った。

「大丈夫かな……私、ちゃんとできるかな……」

不安で手が震える。魔王様といえば、魔族の頂点に立つ存在。きっとすごく怖い方に違いない。

「心配するな。私がついている」

アス様が優しく頭を撫でてくれた。でも、その手も少し震えている?

「もしかして、アス様も緊張してる?」
「……少しな。陛下に君を紹介するのは、重要なことだから」

最近、私の編み物魔法は領地で評判になっているらしい。

星空の編み物で子供たちに絵本の世界を見せたり、温かい魔法の毛布で病人を癒したり。魔族の民衆は「編み物魔法のお嬢様」と呼んで、喜んでくれているそうだ。

「ニニィアネ様の魔法で皆幸せそうですからね~! きっと魔王様もベタ褒めですよっ!」

リリスが励ましてくれる。

「この前の収穫祭でも、光る星飾りを見て、子供たちがきゃあきゃあ喜んでましたし!」
「そう、だね……!」

少し自信が湧いてきた。私の編み物が、誰かを笑顔にできているなら。

翌日、魔王城への転移魔法陣の前に立った。

特別製の、淡いピンクのドレスを着せてもらった。そして、アス様と一緒に作ったあの星空のケープも。

「今日もケープが似合うな」
「えへへ、着てると安心するの」

少しの緊張ののち、転移した先は、想像を絶する巨大な城だった。

「ひぃ……!」

廊下を歩くだけで恐ろしい。壁には巨大な魔物の彫刻、天井からは不気味な形のシャンデリア。床には血のように赤い絨毯が敷かれている。

「こ、怖い……かも、です……」

思わずアス様の手を握った。チューベエも私の肩でガタガタ震えている。アス様は優しい声音で言う。

「大丈夫だ。陛下は……まあ、見た目は恐ろしいが」
「んええ!?」

廊下の先に控える衛兵たちも、皆恐ろしい姿をしていた。牙をむき出しにした狼の魔族、翼を持つ巨大な鳥人、角だらけの鬼のような姿の者まで。

でも不思議なことに、私たちを見ると皆優しく微笑んでくれた。

「おお、噂の編み物のお嬢様!」
「俺の娘も、あんたの作った光る髪飾りで毎晩でかけてんだぜ!」

え? この怖い人たちも、私のことを知ってる?

「あ、ありがとう……!」

恐る恐るお礼を言う。

「さぁ、ここが王の間だ。あけるぜ」

玉座の間に通されると、そこには——

「っ!」

思わず息を呑んだ。
玉座に座っているのは、見上げるほど巨大な魔族。漆黒の鎧に身を包み、頭には角が四本。真っ赤な瞳が、じろりと私を見下ろしている。顔には無数の傷跡。

怖い。
すごく、怖い。

「ほう……これが噂の人間の娘か」

地響きのような低い声。膝がガクガク震える。

「は、はじめまして……! に、ニニィアネと申します!」

精一杯大きな声で挨拶したけど、震え声になってしまった。

「ふん。ちっぽけな娘だな」

魔王様が立ち上がった。その巨体に、さらに恐怖が増す。

「本当にこんな小娘が、失われし魔法陣を編み、民を楽しませているというのか?」

そして、魔王様の視線が私のケープに向けられた。

「ほう? そのケープは……」

鋭い眼光が、さらに鋭くなる。

「陛下、それは私とニニィアネの——」

アス様が説明しようとしたけど、魔王様が手で制した。

「分かっている。魔力の流れで分かる。悪いものではないな」

ズンズンと近づいてくる。逃げたい。でも、足が動かない。

「おい、小娘」
「は、はい!」
「お前、本当にアスタロトの嫁になりたいのか?」

鋭い瞳が、私を射抜く。

「アスタロトは我が国の重要な公爵だ。その妻となれば、責任は重大である」
「わ、私……」
「ふん、人間風情が、魔族の世界で生きていけると思うか?」

怖い。でも——

「で、できます!」

震えながらも、大声で答えた。

「私、アス様が大好きです! ずっと一緒にいたいです! それに……」

勇気を振り絞って続けた。

「魔族の皆さんも、優しくしてくれます! 私の編み物で笑ってくれます! だから、ここが好きです!」
「ほう?」

魔王様の眉が少し上がった。

「陛下……彼女をあまり脅さないでいただきたい」

アス様が一歩前に出た。その顔は、見たことがないほど真剣だ。

「ニニィアネは私の大切な人です。もし彼女に危害を加えるというなら——」
「なんだ? 私に逆らうか?」
「その覚悟はあります」

ピリピリとした空気が流れる。
そ、そんな!?
アス様が私のせいで魔王様と戦う!?

「あ、あの! 大丈夫です! アス様!」

必死で止めようとしたその時——

「ぶははははははは!」

魔王様が、突然大笑いした。

「……え?」
「いやー、久しぶりに見たぞ! アスタロトのその顔!」

魔王様が涙を拭きながら笑っている。

「覚悟、か。ははは! お前、本当にこの小娘に惚れ込んでいるんだな!」
「へ、陛下……?」

アス様は少し安心したように息を吐き出した。私は変わらずぽかんとしたままだ。

「なんだその顔は。冗談に決まっているだろう」

魔王様がニヤリと笑った。その顔は、さっきまでの恐ろしさが嘘のよう。

「じょ、冗談!?」
「いやー、二人がどれだけ本気か試してみたくてな!」
「ええ!?」
「うむうむ、お前たちの噂は聞いているとも。編み物で魔法陣を作る天才少女と、彼女にデレデレの公爵の話はな!」

魔王様が私を見下ろした。今度は、優しい光が瞳に宿っている。

「それに、民からの報告も聞いておる。癒しの毛布、星空の編み物……子供たちが大喜びしているそうじゃないか」
「あ、ありがとうございます……?」
「礼を言うのはこちらの方だ。民を幸せにしてくれて、感謝する」

魔王様が私のケープを指差した。

「そのケープも見事だ。二人の魔力が完璧に調和している。まるで一つの存在のようだな」
「陛下……」

アス様が嬉しそうに目を閉じた。

「ニニィアネといったな」
「は、はい」
「よくぞアスタロトを射止めた。あいつは頑固でな、まさか結婚する気になるとは思わなかった」

そして、大きな手を差し出した。

「魔族の地へ、ようこそ。お前のような才能と優しさを持つ者を、我が国は歓迎する」
「あ……ありがとうございます!」

震える手で、握手をした。魔王様の手は、意外と温かかった。

「さあ、正式に宣言しよう!」

魔王様が大きく腕を広げた。

「ニニィアネ・リーセンブルクは、我が国の宝であると認定する! その才能は、国を挙げて守るべきものであり、公爵はその任をしかと果たすべし!」
「え、ええっ!?」
「さらに! アスタロトとの婚約を、正式に認める! 二人の結婚は、国の慶事として祝福しよう!」

あまりの言葉に、顔が真っ赤になる。ついアス様の後ろに隠れてしまった。

「おい、小娘」
「は、はい!」
「結婚式には呼べよ?」

魔王様がニヤリと笑った。横でアス様が呆れたように苦笑していた。

「少し気がはやいのでは?」
「なにを言う。おまえもわかるだろう。人間の数年なんてあっという間だ。ふふ、今から楽しみにしているぞ!」

私はこくこくと頷いた

「は、はい!」
「ああ、それと、民のために編み物を続けてくれ。お前の魔法は、皆を幸せにする」
「もちろんです!」

心から頷く。魔王様が満足そうに笑った。

「では、今日は祝宴だ! 国の宝と、その婚約者を祝して!」
「しゅ、祝宴ー!?」

魔王様はニヤリといたずらっ子のように笑った。

「我が国の宝と、彼女を射止めた公爵に乾杯!」
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