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第17話 締め付けられる現実
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新入部員が入り一週間後、私とアイナは帰りのホームルームが終わった後、2人で部室へ向かっていた。
「そろそろ、出てもいい頃なんだけどなぁ。」
本日はインターハイ地区予選のトーナメント表が公式サイトで公開される日だった。
ただし、何時に公開という詳細な情報はないため、今日は朝から授業の合間に公式サイトを頻繁にリロードして、まだかまだかと画面を眺めていた。
それは放課後になり、部室にアイナと向かう最中であった。
「あ、あ!出た出た!」
そわそわして早口になったアイナは、スマホの画面を私に向けながら言った。
ちょうど部室の扉の前まで来ていたので、そそくさと中に入り、ベンチに座って二人で画面を覗き込む。
「ん?どうしたんだ?」
もうすでに部室にいて着替えていたリカさんは、私たちがあまりにも素早く、ベンチに座ったものだから気になって尋ねた。
しかし、私たちは画面を食い入るように見ており、リカさんに対してはリアクションしなかった。
その様子を見て、リカさんも画面を覗き込み、インターハイのトーナメント表だと気づく。
「……あ、あった!私たちここだ!」
「1回戦は明商か。ここは勝てるだろうね。で、次の2回戦は……。え……。」
私の目に飛び込んできたのは、”国立第一”という文字だった。
「…うそ、ミズキちゃんのところだ…。」
私は茫然としてしまった。
「お、ミズキと戦うのか!?面白そうじゃん!」
私とは正反対に楽しそうな声をあげるリカさん。
「ミズキのところって、強くなってるんだよな。この前のウィンターカップの予選なんて、4回戦負けだし。成績で言えばうちとそこまで差がないよな。」
そして、私たちを後ろから勢いよくがばっと肩を抱き寄せ続ける。
「でも、うちの方が強いから大丈夫だよ!」
確かにリカさんが言うと頼もしいのだが、私は勝ち負けがどうこうという考えがなく、あんなに一緒に全国大会に出たかったミズキちゃんと対戦するということについて今まで一度も想像したことがなく、現実味がなかった。
ミズキちゃんと対戦してしまうことがわかってからは、「私はどうしたいのだろうか?」と寝る前などにふと思ってしまう。
バスケだから多くの点を取り勝利を目指すという明確な目標がある競技なだけに、やるべきことはわかっているはずだが。
どうしても、小さい頃から一緒に同じリングに向かってバスケをしてきただけに、仲間であるミズキちゃんしか思い描けない。
自分に整理がつかない状態で、インターハイの地区予選が始まった。
初戦は3年生に混じる中で、私とアイナもスタメンで出場した。
危なげなく試合は進行し、点差が開いた頃には、スタメンの体力温存や経験を積ませる意味合いで、アオイやノリちゃんも交代で出場した。
アオイは公式戦もよく出ていたのであろう、試合感があった。
緊張する様子は見られたが、持ち前のドリブルの技術を発揮し相手を翻弄していた。
ノリちゃんは見てる側にもわかりやすく緊張していて、すぐに息をきらせて、両膝に手をつき肩で息をするシーンが見られた。
さらに、ミスが多いため、表情は今にも泣きそうであった。
ベンチからリカさんの声がノリちゃんに届く。
「大丈夫、大丈夫!自信持ってシュート打って!」
「は、はい!」
ノリちゃんは最後の最後でようやく1本シュートを決めて、顔は明るくなった。
これで少しは自信がついたはずだ。
まずは無事初戦を突破した。
私たちが身支度して会場を出ようとした頃には、他会場の結果をSNSで知ることができ、予想通り国立第一との対戦が決まった。
◇
翌日の放課後、バスケ部員は視聴覚室に集合した。
「国立第一は初めて対戦するチームだから、偵察に行ってもらってたのよ。」
ユウコさんが視聴覚室に集合した理由を説明していると、大型のスクリーンには昨日の国立第一の試合映像が流れ、私たちはしばらくその試合を一心に見ていた。
「ほっほー、また3P決めてるじゃん。」
驚きと関心が混ざった声でリカさんが呟く。
確かに1回戦の国立第一チームの3P決定率は50%に迫る数値になっていて、驚きは隠せなかった。
全体的に身長が低く身体能力が高いわけではないが代わりに戦術を遂行することに徹底しているようだった。
ディフェンスはハードに動き回り、オフェンスの時はスローペースからのセットオフェンスに持ち込み長距離シュートを得点の軸にしている。
さらには、試合中選手がよく交代しているがプレイの精度に余り差がないため、スタミナの心配ごとが少ない。
この戦術のための練習を徹底的にしているのが伝わる。
そのようなチームの中でも異彩を放っていたのはミズキちゃんであった。
「やっぱりミズキは上手だよね。的確に指示したり、スクリーン(味方選手がフリーになるために、相手選手の進路を邪魔するように止まって立つ)かけて味方をフリーにしてシュート打たせる泥臭いこともやってるね。もうゲームを支配している感じ。」
「3Pもきっちり沈めるね。ここまででもう3/3だよ。」
ユウコさんとリカさんの言う通り、ミズキちゃんのプレイには誰もが釘付けになっていた。
いざこうして、ミズキちゃんの姿を見てしまうと試合をすることが現実味を帯び、今週末に対戦するのかと思うと手が震えてきた。
試合を見た後はコーチと共に弱点の分析をし、戦術面をああだこうだと議論を交わしながら、国立第一を打ち破るための練習に費やした。
このような日々が過ぎていく中、私は試合が近づくに連れて緊張が増し、寝付けない日々を過ごした。
「そろそろ、出てもいい頃なんだけどなぁ。」
本日はインターハイ地区予選のトーナメント表が公式サイトで公開される日だった。
ただし、何時に公開という詳細な情報はないため、今日は朝から授業の合間に公式サイトを頻繁にリロードして、まだかまだかと画面を眺めていた。
それは放課後になり、部室にアイナと向かう最中であった。
「あ、あ!出た出た!」
そわそわして早口になったアイナは、スマホの画面を私に向けながら言った。
ちょうど部室の扉の前まで来ていたので、そそくさと中に入り、ベンチに座って二人で画面を覗き込む。
「ん?どうしたんだ?」
もうすでに部室にいて着替えていたリカさんは、私たちがあまりにも素早く、ベンチに座ったものだから気になって尋ねた。
しかし、私たちは画面を食い入るように見ており、リカさんに対してはリアクションしなかった。
その様子を見て、リカさんも画面を覗き込み、インターハイのトーナメント表だと気づく。
「……あ、あった!私たちここだ!」
「1回戦は明商か。ここは勝てるだろうね。で、次の2回戦は……。え……。」
私の目に飛び込んできたのは、”国立第一”という文字だった。
「…うそ、ミズキちゃんのところだ…。」
私は茫然としてしまった。
「お、ミズキと戦うのか!?面白そうじゃん!」
私とは正反対に楽しそうな声をあげるリカさん。
「ミズキのところって、強くなってるんだよな。この前のウィンターカップの予選なんて、4回戦負けだし。成績で言えばうちとそこまで差がないよな。」
そして、私たちを後ろから勢いよくがばっと肩を抱き寄せ続ける。
「でも、うちの方が強いから大丈夫だよ!」
確かにリカさんが言うと頼もしいのだが、私は勝ち負けがどうこうという考えがなく、あんなに一緒に全国大会に出たかったミズキちゃんと対戦するということについて今まで一度も想像したことがなく、現実味がなかった。
ミズキちゃんと対戦してしまうことがわかってからは、「私はどうしたいのだろうか?」と寝る前などにふと思ってしまう。
バスケだから多くの点を取り勝利を目指すという明確な目標がある競技なだけに、やるべきことはわかっているはずだが。
どうしても、小さい頃から一緒に同じリングに向かってバスケをしてきただけに、仲間であるミズキちゃんしか思い描けない。
自分に整理がつかない状態で、インターハイの地区予選が始まった。
初戦は3年生に混じる中で、私とアイナもスタメンで出場した。
危なげなく試合は進行し、点差が開いた頃には、スタメンの体力温存や経験を積ませる意味合いで、アオイやノリちゃんも交代で出場した。
アオイは公式戦もよく出ていたのであろう、試合感があった。
緊張する様子は見られたが、持ち前のドリブルの技術を発揮し相手を翻弄していた。
ノリちゃんは見てる側にもわかりやすく緊張していて、すぐに息をきらせて、両膝に手をつき肩で息をするシーンが見られた。
さらに、ミスが多いため、表情は今にも泣きそうであった。
ベンチからリカさんの声がノリちゃんに届く。
「大丈夫、大丈夫!自信持ってシュート打って!」
「は、はい!」
ノリちゃんは最後の最後でようやく1本シュートを決めて、顔は明るくなった。
これで少しは自信がついたはずだ。
まずは無事初戦を突破した。
私たちが身支度して会場を出ようとした頃には、他会場の結果をSNSで知ることができ、予想通り国立第一との対戦が決まった。
◇
翌日の放課後、バスケ部員は視聴覚室に集合した。
「国立第一は初めて対戦するチームだから、偵察に行ってもらってたのよ。」
ユウコさんが視聴覚室に集合した理由を説明していると、大型のスクリーンには昨日の国立第一の試合映像が流れ、私たちはしばらくその試合を一心に見ていた。
「ほっほー、また3P決めてるじゃん。」
驚きと関心が混ざった声でリカさんが呟く。
確かに1回戦の国立第一チームの3P決定率は50%に迫る数値になっていて、驚きは隠せなかった。
全体的に身長が低く身体能力が高いわけではないが代わりに戦術を遂行することに徹底しているようだった。
ディフェンスはハードに動き回り、オフェンスの時はスローペースからのセットオフェンスに持ち込み長距離シュートを得点の軸にしている。
さらには、試合中選手がよく交代しているがプレイの精度に余り差がないため、スタミナの心配ごとが少ない。
この戦術のための練習を徹底的にしているのが伝わる。
そのようなチームの中でも異彩を放っていたのはミズキちゃんであった。
「やっぱりミズキは上手だよね。的確に指示したり、スクリーン(味方選手がフリーになるために、相手選手の進路を邪魔するように止まって立つ)かけて味方をフリーにしてシュート打たせる泥臭いこともやってるね。もうゲームを支配している感じ。」
「3Pもきっちり沈めるね。ここまででもう3/3だよ。」
ユウコさんとリカさんの言う通り、ミズキちゃんのプレイには誰もが釘付けになっていた。
いざこうして、ミズキちゃんの姿を見てしまうと試合をすることが現実味を帯び、今週末に対戦するのかと思うと手が震えてきた。
試合を見た後はコーチと共に弱点の分析をし、戦術面をああだこうだと議論を交わしながら、国立第一を打ち破るための練習に費やした。
このような日々が過ぎていく中、私は試合が近づくに連れて緊張が増し、寝付けない日々を過ごした。
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