19 / 65
拳が砕く、魔法の常識
しおりを挟む
鉄心の声が闘技場に響いた直後、空気が変わった。
石壁に反射する魔力光が、青白い冷気に塗り替えられていく。汗が肌の上で凍りつくような、鋭い寒気。
「——舐めるな」
マルクスの杖先から放たれた氷壁が、鉄心の眼前に出現した。高さ三メートル、厚さ一メートルはあろうかという、純白の氷塊。表面に刻まれた魔法陣が蒼く脈動している。
「へえ、でっかい氷だな」
鉄心は笑った。そして、走った。
拳甲を纏った右拳が、氷壁の中心を貫いた。
ドゴォンッ!
氷の破片が闘技場に降り注ぐ。朝陽を受けて七色に輝く氷片の中を、鉄心が駆け抜ける。その姿はまるで、硝子の雨の中を走る獣だった。
「ば——馬鹿な! 氷獄壁は上位魔法ですのに……!」
リリアーナが席から身を乗り出した。隣の生徒が何か言ったが、耳に入らない。
マルクスの額に汗が浮いた。杖を振り上げ、雷撃を放つ。紫電の束が鉄心の全身に絡みつき、拳甲の表面を走る。
だが——拳甲が光った。
星鉄鋼の銀白色の輝きが一瞬膨れ上がり、雷の魔力を吸い込むように散らした。ビリビリという振動が鉄心の腕を駆け上がり、歯の奥まで響いた。腕の筋肉が一瞬痙攣し、拳が開きかける。
——痛え。
鉄心は唇を引き結んだ。前世で落雷の近くにいた時の記憶が蘇る。あの時は足が竦んで動けなかった。だが今は——体が覚えている。こういう時こそ、歯を食いしばって前に出る。
拳を握り直した。何も言わず、一歩踏み出した。
客席の最前列で、セレナが記録用の羊皮紙にペンを走らせた。その手が、震えている。
「……やはり。レクスの時と同じ現象。あの拳甲——いえ、あの肉体自体が魔力を分散・吸収している……?」
理論では説明がつかない。だが、目の前で起きている。二度目の、同じ現象。偶然では片付けられなかった。
「くっ——ならば、これでどうだ!」
マルクスが杖を地面に突き立てた。紫黒の魔法陣が展開し、闘技場の石畳が軋む。重力魔法。鉄心の肩に、見えない巨人の手が押しかかった。
ズゥン、と鉄心の膝が沈む。
片膝が石畳につき、地面にヒビが入った。両肩に圧し掛かる重圧に、さすがの鉄心も歯を食いしばる。
マルクスが口角を上げた。
「どうした、筋肉馬鹿。重力の前では腕力など——」
「——おお」
鉄心の声は、苦しげではなかった。むしろ、目を輝かせていた。
両手を地面につけた。そのまま——腕立て伏せの姿勢に入る。
「重力トレーニングか! いいな、これ! 普段の三倍くらいか?」
一回。二回。三回。
重力魔法の中で、腕立て伏せを始めた。
闘技場が静まり返った。
四回。五回。六回。
額に血管が浮き、腕の筋繊維が膨張していく。だが、鉄心の顔には笑みが浮かんでいた。体育教師時代の筋トレの記憶が、体に染みついている。この程度の負荷は——トレーニングの範疇だ。
七回目で、鉄心は跳ねた。
重力魔法を押し返すように立ち上がり、石畳を踏み砕きながら一歩を踏み出す。
「——は?」
マルクスの声が裏返った。杖を持つ手が震える。魔力の残量を示す杖先の輝きが、明らかに弱まっていた。
◇
空気が、変質した。
闘技場を包んでいた朝の陽光が遮られ、肌を刺すような冷気とは異質の——粘つくような暗闇が膨れ上がる。鉄心の肌が粟立った。本能が告げている。これまでの魔法とは、質が違う。
「見せてやる……レーゲンスブルク家に伝わる、闇属性の秘術を……!」
マルクスの目が据わっていた。額に脂汗を浮かべ、唇を噛み締めている。追い詰められた獣の目。プライドが、理性を上回った目。
闇が、闘技場全体を飲み込んだ。
視界が消える。観客席から悲鳴が上がった。
鉄心は目を閉じた。もともと見えないなら、目を開けている意味はない。体育教師時代の記憶が蘇る。生徒たちに人気だった、あの遊び。
「目隠しドッジボールってのを、昔やったんだ」
空気の流れ。石畳を踏む微かな足音。闇の中で魔力が移動するときに生じる、かすかな空気の揺らぎ。
——左、三メートル。後退しながら杖を構えている。
鉄心が踏み込んだ。
バキィッ!
闇を引き裂くような風圧。鉄心の右拳が、マルクスの顔面——その一寸手前で止まった。
衝撃波だけが、マルクスの髪を後方に吹き飛ばした。前髪が逆立ち、ローブの裾がはためく。頬を風が切り、マルクスの目が限界まで見開かれた。
闇が晴れた。
マルクスの杖が、手から滑り落ちた。石畳に当たって硬い音を立てる。その目は鉄心の拳を——正確には、鼻先一センチに迫った星鉄鋼の拳甲を見つめて、凍りついていた。
「あ——」
声にならない声が、マルクスの喉から漏れた。
鉄心が、拳を引いた。
笑顔は、浮かべなかった。
拳甲を外した右手を見下ろす。赤く腫れた火傷の跡。雷撃の痺れがまだ残る指先。重力魔法に押し潰された膝が、微かに震えている。
——強かったな、こいつ。
前世で体育教師をしていた時、全力で挑んでくる生徒が好きだった。勝っても負けても、全力のぶつかり合いには、言葉にできない何かが残る。
この世界に来て——こういう相手と、初めて出会えた気がした。
「……いい勝負だった」
声は静かだった。笑顔でも、おどけた調子でもない。ただ、相手の全力に応えた者だけが持つ、穏やかな重みがあった。
◇
審判の老魔導士が、震える声で宣告した。
「し——勝者、剛田鉄心!」
一瞬の静寂。
それから——闘技場が割れた。
歓声。怒号。困惑のざわめき。感情の種類はばらばらだったが、誰もが声を上げずにはいられなかった。魔法の天才が、筋肉に負けた。その事実が、この世界の常識を根底から揺さぶっている。
「やったな、鉄心!」
カイルが客席から身を乗り出して叫んだ。隣の生徒に肘が当たったが、気にもしていない。
マルクスは膝をついていた。石畳の冷たさも感じない。目の前の男を見上げて——何を言えばいいのか分からなかった。今まで「筋肉馬鹿」と嗤っていた相手。侮蔑していた相手。その相手に、全力で挑んで、禁じ手すれすれの闇属性まで使って——届かなかった。
侮蔑は、とうに消えていた。代わりに胸の底を占めていたのは、純粋な悔しさだった。認めたくない。認めたくないが——あの最後の拳は、自分を殺すためではなく、止まった。寸止めだった。手加減ではない。あの男なりの——敬意だったのだろうか。
その考えを、マルクスは頭を振って振り払った。だが振り払いきれないものが、喉の奥に引っかかっていた。
マルクスの視線が、鉄心の背中を追った。離せなかった。
セレナは客席の端で羊皮紙を閉じた。記録は取り終えた。だが、ペンを置く手がなかなか定まらない。
「……理論的に、説明できない。無理ですよね。知ってます」
誰に言うでもなく呟いて、深い溜息を吐いた。
リリアーナは、立てなかった。
握りしめた手の爪が掌に食い込んでいる。痛みは感じない。代わりに胸の奥が熱く、苦しかった。認めたくないのか、認めたいのか。自分でも分からない。分かるのは、あの男の背中から目が逸らせないということだけ。
◇
貴賓席。
ヴァルターが、静かに立ち上がった。
周囲の来賓が声をかけようとしたが、その目を見て口を閉ざした。白髪の大魔導士の表情は——無だった。怒りでも、失望でも、驚きでもない。ただ、何かを押し殺した、空白の顔。
背を向けて歩き出す。長衣の裾が石畳を掃いた。
「が、学院長」
教務主任が小走りについてきた。額に汗を浮かべている。
「あの生徒の処分は——裁定戦で禁じ手に近い闇属性を使用したのはマルクスの方ですが、そもそも魔力なしの生徒が——」
「……裁定戦は学院の正式な制度だ」
ヴァルターは振り返らなかった。
「結果は覆らん」
それだけ言って、歩き続けた。教務主任はそれ以上追えなかった。学院長の背中が、追いかけることを許さない何かを纏っていた。
ヴァルターの拳は、白くなるほど握りしめられていた。
◇
学院長の書斎。夕刻。
西日が、古い書棚の一角を照らしていた。
ヴァルターは窓辺に立ち、沈む夕陽を見つめていた。右手を開き、掌を見る。皺だらけの、老いた掌。だがその指の付け根には——何十年経っても消えない胼胝の跡があった。拳を握り続けた者だけに残る、硬い皮膚。
あの男の拳を見た瞬間、自分の掌が疼いた。忘れたはずの感覚。魔法に頼らず、肉体だけで証明しようとした——愚かな青年の頃の記憶。
「あの時の儂と、同じ目をしておる……」
声は掠れていた。
ヴァルターは拳を握った。胼胝の跡が、掌の中に押し潰される。右手に微かな震えが走り——詠唱なしで灯した指先の魔力灯が、一瞬揺らいだ。
大陸最強の大魔導士が、魔力を乱した。
些細な乱れ。誰にも気づかれない程度の。だがヴァルター自身は、その意味を知っていた。
長い沈黙の後、ヴァルターは窓を背に机へ歩み寄り、明日の学院運営の書類に目を落とした。
だが——その夜、書斎の灯りは深更まで消えなかった。
石壁に反射する魔力光が、青白い冷気に塗り替えられていく。汗が肌の上で凍りつくような、鋭い寒気。
「——舐めるな」
マルクスの杖先から放たれた氷壁が、鉄心の眼前に出現した。高さ三メートル、厚さ一メートルはあろうかという、純白の氷塊。表面に刻まれた魔法陣が蒼く脈動している。
「へえ、でっかい氷だな」
鉄心は笑った。そして、走った。
拳甲を纏った右拳が、氷壁の中心を貫いた。
ドゴォンッ!
氷の破片が闘技場に降り注ぐ。朝陽を受けて七色に輝く氷片の中を、鉄心が駆け抜ける。その姿はまるで、硝子の雨の中を走る獣だった。
「ば——馬鹿な! 氷獄壁は上位魔法ですのに……!」
リリアーナが席から身を乗り出した。隣の生徒が何か言ったが、耳に入らない。
マルクスの額に汗が浮いた。杖を振り上げ、雷撃を放つ。紫電の束が鉄心の全身に絡みつき、拳甲の表面を走る。
だが——拳甲が光った。
星鉄鋼の銀白色の輝きが一瞬膨れ上がり、雷の魔力を吸い込むように散らした。ビリビリという振動が鉄心の腕を駆け上がり、歯の奥まで響いた。腕の筋肉が一瞬痙攣し、拳が開きかける。
——痛え。
鉄心は唇を引き結んだ。前世で落雷の近くにいた時の記憶が蘇る。あの時は足が竦んで動けなかった。だが今は——体が覚えている。こういう時こそ、歯を食いしばって前に出る。
拳を握り直した。何も言わず、一歩踏み出した。
客席の最前列で、セレナが記録用の羊皮紙にペンを走らせた。その手が、震えている。
「……やはり。レクスの時と同じ現象。あの拳甲——いえ、あの肉体自体が魔力を分散・吸収している……?」
理論では説明がつかない。だが、目の前で起きている。二度目の、同じ現象。偶然では片付けられなかった。
「くっ——ならば、これでどうだ!」
マルクスが杖を地面に突き立てた。紫黒の魔法陣が展開し、闘技場の石畳が軋む。重力魔法。鉄心の肩に、見えない巨人の手が押しかかった。
ズゥン、と鉄心の膝が沈む。
片膝が石畳につき、地面にヒビが入った。両肩に圧し掛かる重圧に、さすがの鉄心も歯を食いしばる。
マルクスが口角を上げた。
「どうした、筋肉馬鹿。重力の前では腕力など——」
「——おお」
鉄心の声は、苦しげではなかった。むしろ、目を輝かせていた。
両手を地面につけた。そのまま——腕立て伏せの姿勢に入る。
「重力トレーニングか! いいな、これ! 普段の三倍くらいか?」
一回。二回。三回。
重力魔法の中で、腕立て伏せを始めた。
闘技場が静まり返った。
四回。五回。六回。
額に血管が浮き、腕の筋繊維が膨張していく。だが、鉄心の顔には笑みが浮かんでいた。体育教師時代の筋トレの記憶が、体に染みついている。この程度の負荷は——トレーニングの範疇だ。
七回目で、鉄心は跳ねた。
重力魔法を押し返すように立ち上がり、石畳を踏み砕きながら一歩を踏み出す。
「——は?」
マルクスの声が裏返った。杖を持つ手が震える。魔力の残量を示す杖先の輝きが、明らかに弱まっていた。
◇
空気が、変質した。
闘技場を包んでいた朝の陽光が遮られ、肌を刺すような冷気とは異質の——粘つくような暗闇が膨れ上がる。鉄心の肌が粟立った。本能が告げている。これまでの魔法とは、質が違う。
「見せてやる……レーゲンスブルク家に伝わる、闇属性の秘術を……!」
マルクスの目が据わっていた。額に脂汗を浮かべ、唇を噛み締めている。追い詰められた獣の目。プライドが、理性を上回った目。
闇が、闘技場全体を飲み込んだ。
視界が消える。観客席から悲鳴が上がった。
鉄心は目を閉じた。もともと見えないなら、目を開けている意味はない。体育教師時代の記憶が蘇る。生徒たちに人気だった、あの遊び。
「目隠しドッジボールってのを、昔やったんだ」
空気の流れ。石畳を踏む微かな足音。闇の中で魔力が移動するときに生じる、かすかな空気の揺らぎ。
——左、三メートル。後退しながら杖を構えている。
鉄心が踏み込んだ。
バキィッ!
闇を引き裂くような風圧。鉄心の右拳が、マルクスの顔面——その一寸手前で止まった。
衝撃波だけが、マルクスの髪を後方に吹き飛ばした。前髪が逆立ち、ローブの裾がはためく。頬を風が切り、マルクスの目が限界まで見開かれた。
闇が晴れた。
マルクスの杖が、手から滑り落ちた。石畳に当たって硬い音を立てる。その目は鉄心の拳を——正確には、鼻先一センチに迫った星鉄鋼の拳甲を見つめて、凍りついていた。
「あ——」
声にならない声が、マルクスの喉から漏れた。
鉄心が、拳を引いた。
笑顔は、浮かべなかった。
拳甲を外した右手を見下ろす。赤く腫れた火傷の跡。雷撃の痺れがまだ残る指先。重力魔法に押し潰された膝が、微かに震えている。
——強かったな、こいつ。
前世で体育教師をしていた時、全力で挑んでくる生徒が好きだった。勝っても負けても、全力のぶつかり合いには、言葉にできない何かが残る。
この世界に来て——こういう相手と、初めて出会えた気がした。
「……いい勝負だった」
声は静かだった。笑顔でも、おどけた調子でもない。ただ、相手の全力に応えた者だけが持つ、穏やかな重みがあった。
◇
審判の老魔導士が、震える声で宣告した。
「し——勝者、剛田鉄心!」
一瞬の静寂。
それから——闘技場が割れた。
歓声。怒号。困惑のざわめき。感情の種類はばらばらだったが、誰もが声を上げずにはいられなかった。魔法の天才が、筋肉に負けた。その事実が、この世界の常識を根底から揺さぶっている。
「やったな、鉄心!」
カイルが客席から身を乗り出して叫んだ。隣の生徒に肘が当たったが、気にもしていない。
マルクスは膝をついていた。石畳の冷たさも感じない。目の前の男を見上げて——何を言えばいいのか分からなかった。今まで「筋肉馬鹿」と嗤っていた相手。侮蔑していた相手。その相手に、全力で挑んで、禁じ手すれすれの闇属性まで使って——届かなかった。
侮蔑は、とうに消えていた。代わりに胸の底を占めていたのは、純粋な悔しさだった。認めたくない。認めたくないが——あの最後の拳は、自分を殺すためではなく、止まった。寸止めだった。手加減ではない。あの男なりの——敬意だったのだろうか。
その考えを、マルクスは頭を振って振り払った。だが振り払いきれないものが、喉の奥に引っかかっていた。
マルクスの視線が、鉄心の背中を追った。離せなかった。
セレナは客席の端で羊皮紙を閉じた。記録は取り終えた。だが、ペンを置く手がなかなか定まらない。
「……理論的に、説明できない。無理ですよね。知ってます」
誰に言うでもなく呟いて、深い溜息を吐いた。
リリアーナは、立てなかった。
握りしめた手の爪が掌に食い込んでいる。痛みは感じない。代わりに胸の奥が熱く、苦しかった。認めたくないのか、認めたいのか。自分でも分からない。分かるのは、あの男の背中から目が逸らせないということだけ。
◇
貴賓席。
ヴァルターが、静かに立ち上がった。
周囲の来賓が声をかけようとしたが、その目を見て口を閉ざした。白髪の大魔導士の表情は——無だった。怒りでも、失望でも、驚きでもない。ただ、何かを押し殺した、空白の顔。
背を向けて歩き出す。長衣の裾が石畳を掃いた。
「が、学院長」
教務主任が小走りについてきた。額に汗を浮かべている。
「あの生徒の処分は——裁定戦で禁じ手に近い闇属性を使用したのはマルクスの方ですが、そもそも魔力なしの生徒が——」
「……裁定戦は学院の正式な制度だ」
ヴァルターは振り返らなかった。
「結果は覆らん」
それだけ言って、歩き続けた。教務主任はそれ以上追えなかった。学院長の背中が、追いかけることを許さない何かを纏っていた。
ヴァルターの拳は、白くなるほど握りしめられていた。
◇
学院長の書斎。夕刻。
西日が、古い書棚の一角を照らしていた。
ヴァルターは窓辺に立ち、沈む夕陽を見つめていた。右手を開き、掌を見る。皺だらけの、老いた掌。だがその指の付け根には——何十年経っても消えない胼胝の跡があった。拳を握り続けた者だけに残る、硬い皮膚。
あの男の拳を見た瞬間、自分の掌が疼いた。忘れたはずの感覚。魔法に頼らず、肉体だけで証明しようとした——愚かな青年の頃の記憶。
「あの時の儂と、同じ目をしておる……」
声は掠れていた。
ヴァルターは拳を握った。胼胝の跡が、掌の中に押し潰される。右手に微かな震えが走り——詠唱なしで灯した指先の魔力灯が、一瞬揺らいだ。
大陸最強の大魔導士が、魔力を乱した。
些細な乱れ。誰にも気づかれない程度の。だがヴァルター自身は、その意味を知っていた。
長い沈黙の後、ヴァルターは窓を背に机へ歩み寄り、明日の学院運営の書類に目を落とした。
だが——その夜、書斎の灯りは深更まで消えなかった。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!
転生幼女の国家級チート図書館~本を読むだけで技術が進化する世界で、私だけ未来知識持ちでした~
ハリネズミの肉球
ファンタジー
目が覚めたら、私は5歳の幼女だった。
しかもそこは――
「本を読むだけで技術が進化する」不思議な異世界。
この世界では、図書館はただの建物じゃない。
本を理解すればするほど、魔道具も、農業も、建築も“現実にアップデート”される。
だけど。
私が転生した先は、王都から見捨てられた辺境の廃図書館。
蔵書は散逸、予算ゼロ、利用者ゼロ。
……でもね。
私は思い出してしまった。
前世で研究者だった私の、“未来の知識”を。
蒸気機関、衛生管理、合金技術、都市設計、教育制度。
この世界の誰も知らない未来の答えを、私は知っている。
だったら――
この廃図書館、国家級に育ててみせる。
本を読むだけで技術が進化する世界で、
私だけが“次の時代”を知っている。
やがて王国は気づく。
文明を一段階進めたのは――5歳の幼女だったと。
これは、最弱の立場から始まる、知識による国家再設計の物語。
※本作品は、人工知能の生成する文章の力をお借りしつつも、最終的な仕上げにあたっては著者自身の手により丁寧な加筆・修正を施した作品です。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
ゴミ捨て場領主のクラフト無双 ~最弱魔法【分解と合成】で領地を黄金郷に変えたら、俺を見下していた大貴族令嬢たちが掌を返してすり寄ってきた件~
namisan
ファンタジー
東西南北の大貴族から「毒の川」「凶暴な魔獣」「莫大な借金」を押し付けられ、王国の『ゴミ捨て場』と化したローゼンベルク領。
父と兄を謀殺され、その絶望の領地を押し付けられた無能貴族のアークは、領地の分割を企む高慢な令嬢たち(王女、公爵令嬢、姫将軍など)に嘲笑われていた。
だが、彼には現代の知識と、隠された最強チート能力があった!
触れたものを瞬時に素材に戻し、全く別のモノに作り変える神の御業――【分解と合成】。
「毒の川」を分解して『超高価な宝石と純水』へ!
「魔獣の死骸」と「瓦礫」を合成して『絶対に壊れない防壁』へ!
借金取りには新素材を高値で売りつけ、逆に敵の経済を支配していく。
圧倒的なクラフト能力で、瞬く間にゴミ捨て場を「無敵の黄金郷」へと作り変えていくアーク。
己の敗北を悟り、震え上がる悪徳貴族と高慢な令嬢たち。
さらに、アークの圧倒的な知略と底知れぬ実力は、気高い令嬢たちの本能に深く刻み込まれていく。
「どうか、私をあなたの手駒としてお使いください……っ!」
プライドを完全にへし折られた最高位の美少女たちは、いつしかアークの与える『恩恵』なしでは生きられないほど、彼に絶対の忠誠と依存を誓うようになっていく――。
最弱のゴミ捨て場から始まる、爽快クラフト内政&ざまぁファンタジー、堂々開幕!
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
無限在庫チートで異世界を買い占める〜窓際おじさんが廃棄予定のカップ麺で廃村エルフと腹ペコ魔王を救済したら最強商会ができました〜
黒崎隼人
ファンタジー
物流倉庫で不良在庫の管理に追われるだけの42歳、窓際サラリーマンのタケシ。
ある日突然、彼は見知らぬ森の中へと転移してしまう。
彼に与えられたのは、地球で廃棄される運命にあったあらゆる物資を無尽蔵に引き出せる規格外のスキル「無限在庫処分」だった。
賞味期限間近のカップ麺、パッケージ変更で捨てられるレトルトカレー、そして型落ちの電動工具。
地球ではゴミとされるこれらの品々が、異世界では最強のチートアイテムと化す!
森で倒れていたエルフの少女リリアをカップ麺で救ったタケシは、領主の搾取によって滅亡寸前だった彼女の村を拠点とし、現代の物資と物流ノウハウを駆使して商会を立ち上げる。
美味しいご飯と圧倒的な利便性で異世界の人々の胃袋と生活を掴み、村は急速に発展。
さらには、深刻な食糧難で破綻寸前だった美少女魔王ルビア率いる魔王軍と「業務提携」を結び、最強の武力を物流の護衛として手に入れる!
剣も魔法も使わない。武器は段ボールと現代の知識だけ。
窓際おじさんが圧倒的な物量で悪徳領主の経済基盤をすり潰し、異世界の常識を塗り替えていく、痛快・異世界経営スローライフ、開幕!
王宮侍女は穴に落ちる
斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された
アニエスは王宮で運良く職を得る。
呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き
の侍女として。
忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。
ところが、ある日ちょっとした諍いから
突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。
ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな
俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され
るお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる