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春の物語
春と風と彗
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扉を開けると温かい風が顔に当たる。
今日から中学生になる。
「歌花行くわよ。」
お母さんは私の隣に立ちながら、言った。
先にお兄ちゃんとお父さんは行ってる。
私とお母さんは後で行くことにした。
桜の花びらが舞い散る今日。
本当ならこの景色はきれいだと皆は言う。
だけれど私はきれいと思わない。
何をしても悲しいとか嬉しいと思えない。
あの日から私は空っぽのお人形。
ただ無駄にニコニコ笑ってるだけ。
学校に向かって歩きながら私は今日も思う。
もう何もかもどうでもいい。
たとえ近くに誰かいたとしても私は永遠に一人だけ。
一人だけ同じ道を歩いて、一人だけ色のない景色を見る。
「歌花――!写真撮るぞーーー!!」
私より先にきているお父さんとお兄ちゃん。
歌えなくなった日。
お父さんは私以上に落ち込んでいた。
ご飯もまともに食べずに、お母さんとお兄ちゃんは色々なことをしていた。
そんなことをぼんやりと思い出す。
入学式に出ても私は何も思わない。
ただ時間が流れてくだけ。
教室で自己紹介を聞いてる時も何も思わない。
「春風歌花です。よろしくお願いします。」
いつもと変わらない笑顔の仮面をかぶって挨拶する。
あの日以来‟本当の私”が死んだ。
「じゃあ、学級委員決めるなー。」
先生がそう言うと
「えぇ~!めんどくせぇ!」
「そんなの先生が決めてよ!」
クラスの皆がそれぞれ愚痴を言う。
「先生もめんどくせぇよ。だけどな周りの先生がうるさいんだよなぁ。」
先生も同じダルそうな顔をする。
なんだそれ!しっかりしろよ!などと笑い声が聞こえる。
私はただ皆に合わせて笑っていた。
「推薦でもいいぞー?」
名案だ!と、言わんばかりに言う先生。
「はい。深谷がいいでぇす!」
男の子がてを上げていった。
「えぇ!めんどくせぇよ!」
先生は聞いた瞬間黒板に名前を書いていた。
「よーし、決まりだな。」
皆はそれを聞いて笑った。
「まじかー。せんせー。」
「この調子でジャンジャン決めるぞー。」
私には関係ないと思って窓の外を見ていると
「相手は春風がいいでぇす!」
急に呼ばれて前を向くと深谷君がニコニコと笑っていた。
「春風決まり!これでホームルーム終わるぞー。」
先生はそう言うと教室を出ていこうとした。
いや、適当すぎでしょ!!
しかも何、「でぇす!」って!!
ふと何かを思い出したらしく言った。
「学級委員。後で渡すものがあるから職員室に来てくれ。」
私はとりあえずニコリと笑って
「はい。」
と言った。
クラスの皆が帰った後、深谷君と一緒に職員室に行く。
職員室に行く途中ナイフを持った人に会った。
「お前が春風歌花。お前のせいで俺の。俺の娘は…。」
ナイフを持った手が震える。
いや、何で校舎に不審者いるの!?
この学校危なすぎない??
しかも、いろいろ展開についていけない。
「俺の娘は優勝できなかったんだ!」
男の人はそう言うとナイフを私に向けてきた。
「歌花危ない!」
目の前に深谷君が表れて男の人のナイフを掴んでいた。
彼の手から赤い血が滴り落ちる。
う、そでしょ?
彼は痛いと顔に出さずに男の人を睨んでいた。
「おっさん。そんなことは彼女に言っても意味がない。」
ゆっくりと諭すように言いながら深谷君は私を背中に隠しながら続ける。
「優勝を決めるのは、審査員なんだ。」
そこまで言い今度は私の方を向きながら言う。
「彼女の歌声は。春風歌花はその場にいる人の心をつかんで離さない。」
私に微笑むとまた顔を前に戻していった。
「声が透き通っててきれいで。歌う時に俺ら聞く人、それぞれの感情にする。」
まるで私の歌を聞いたかのように言う彼はなんだか知らない別の人に感じた。
「彼女はただ好きなことをしているだけなんだ。
あんたの娘もただ好きなことをした。ただそれだけだろ?」
まるで歌うことに重要な意味がないと言っているようだった。
ただ私は好きなことをしているだけ。
皆それぞれ自由に生きている。
彼の。深谷君の言葉は男の人に届いたみたいで、ナイフから手が滑り落ちた。
「うぅ。ごめんよ。ごめんよ。」
男の人は泣きながら私に謝る。
たくさんの人が何事かと集まってきた。
私は男の人には何も言わなかった。
そっとしておくのがいいと思ったから。
私はスカートのポケットから白いハンカチを取り出した。
「深谷君、右手、貸して。」
差し出された手をなるべくきつく縛る。
「ちょ、ハンカチ汚れるよ!?」
深谷君は驚いて手を引っ込めようしたけれど、私は終わるまで離さなかった。
「このままじゃ貧血になるし、バイ菌が入っちゃうから。」
私の手に少し血が付いたけれど気にせずに続ける。
「後、もう少しだから我慢してね。」
少し手が震えたけれど気づかないふりをして続ける。
「なぁ、春風。」
上から深谷君の声がする。
「うん。何?」
私は顔を上げずに言うと予想もしないことを言われる。
「どうして泣いてるんだ?」
その言葉に驚いて思わず顔を上げた。
目から涙が落ちる。
あ。
私は気づかない内に泣いていたんだ。
私はこらえきれずに涙が目から溢れた。
肩を震わせながらうずくまり泣く私。
「そんなに怖った?」
深谷君は優しく私に話しかける。
その言葉が声が私の心を少しずつ満たしていく。
私は何度も何度も首を小さく振った。
「ちが、うの。違うの。けがまでして助けてくれたのが嬉しくて。」
息が少し途切れて整える。
一生懸命に言葉を探すけれど見つからなくて迷っていると
「春風。大丈夫。俺がここにいる。迷ったら俺のもとに来い。
怖くなったら来い。今度こそ俺が守るから。」
そう言いながら深谷君は指で私の涙をぬぐった。
そこまで言うと彼はいつもの笑顔を見せた。
初めて真正面から見る彼の笑顔はとてもまぶしくてキラキラしていた。
「俺は春風の味方だよ。いつでも俺の所においで、待っているから。」
気づいたら私は深谷君に抱きしめられていた。
驚いて最初は固まっていた。
でも深谷君の優しくて暖かい手が背中をさすると落ち着く。
「ずっとずっと、そばにいる。何があっても。」
と言われて体から力が抜け始める。
そして私は気づかない内に深谷君の腕の中で寝ていた。
今日から中学生になる。
「歌花行くわよ。」
お母さんは私の隣に立ちながら、言った。
先にお兄ちゃんとお父さんは行ってる。
私とお母さんは後で行くことにした。
桜の花びらが舞い散る今日。
本当ならこの景色はきれいだと皆は言う。
だけれど私はきれいと思わない。
何をしても悲しいとか嬉しいと思えない。
あの日から私は空っぽのお人形。
ただ無駄にニコニコ笑ってるだけ。
学校に向かって歩きながら私は今日も思う。
もう何もかもどうでもいい。
たとえ近くに誰かいたとしても私は永遠に一人だけ。
一人だけ同じ道を歩いて、一人だけ色のない景色を見る。
「歌花――!写真撮るぞーーー!!」
私より先にきているお父さんとお兄ちゃん。
歌えなくなった日。
お父さんは私以上に落ち込んでいた。
ご飯もまともに食べずに、お母さんとお兄ちゃんは色々なことをしていた。
そんなことをぼんやりと思い出す。
入学式に出ても私は何も思わない。
ただ時間が流れてくだけ。
教室で自己紹介を聞いてる時も何も思わない。
「春風歌花です。よろしくお願いします。」
いつもと変わらない笑顔の仮面をかぶって挨拶する。
あの日以来‟本当の私”が死んだ。
「じゃあ、学級委員決めるなー。」
先生がそう言うと
「えぇ~!めんどくせぇ!」
「そんなの先生が決めてよ!」
クラスの皆がそれぞれ愚痴を言う。
「先生もめんどくせぇよ。だけどな周りの先生がうるさいんだよなぁ。」
先生も同じダルそうな顔をする。
なんだそれ!しっかりしろよ!などと笑い声が聞こえる。
私はただ皆に合わせて笑っていた。
「推薦でもいいぞー?」
名案だ!と、言わんばかりに言う先生。
「はい。深谷がいいでぇす!」
男の子がてを上げていった。
「えぇ!めんどくせぇよ!」
先生は聞いた瞬間黒板に名前を書いていた。
「よーし、決まりだな。」
皆はそれを聞いて笑った。
「まじかー。せんせー。」
「この調子でジャンジャン決めるぞー。」
私には関係ないと思って窓の外を見ていると
「相手は春風がいいでぇす!」
急に呼ばれて前を向くと深谷君がニコニコと笑っていた。
「春風決まり!これでホームルーム終わるぞー。」
先生はそう言うと教室を出ていこうとした。
いや、適当すぎでしょ!!
しかも何、「でぇす!」って!!
ふと何かを思い出したらしく言った。
「学級委員。後で渡すものがあるから職員室に来てくれ。」
私はとりあえずニコリと笑って
「はい。」
と言った。
クラスの皆が帰った後、深谷君と一緒に職員室に行く。
職員室に行く途中ナイフを持った人に会った。
「お前が春風歌花。お前のせいで俺の。俺の娘は…。」
ナイフを持った手が震える。
いや、何で校舎に不審者いるの!?
この学校危なすぎない??
しかも、いろいろ展開についていけない。
「俺の娘は優勝できなかったんだ!」
男の人はそう言うとナイフを私に向けてきた。
「歌花危ない!」
目の前に深谷君が表れて男の人のナイフを掴んでいた。
彼の手から赤い血が滴り落ちる。
う、そでしょ?
彼は痛いと顔に出さずに男の人を睨んでいた。
「おっさん。そんなことは彼女に言っても意味がない。」
ゆっくりと諭すように言いながら深谷君は私を背中に隠しながら続ける。
「優勝を決めるのは、審査員なんだ。」
そこまで言い今度は私の方を向きながら言う。
「彼女の歌声は。春風歌花はその場にいる人の心をつかんで離さない。」
私に微笑むとまた顔を前に戻していった。
「声が透き通っててきれいで。歌う時に俺ら聞く人、それぞれの感情にする。」
まるで私の歌を聞いたかのように言う彼はなんだか知らない別の人に感じた。
「彼女はただ好きなことをしているだけなんだ。
あんたの娘もただ好きなことをした。ただそれだけだろ?」
まるで歌うことに重要な意味がないと言っているようだった。
ただ私は好きなことをしているだけ。
皆それぞれ自由に生きている。
彼の。深谷君の言葉は男の人に届いたみたいで、ナイフから手が滑り落ちた。
「うぅ。ごめんよ。ごめんよ。」
男の人は泣きながら私に謝る。
たくさんの人が何事かと集まってきた。
私は男の人には何も言わなかった。
そっとしておくのがいいと思ったから。
私はスカートのポケットから白いハンカチを取り出した。
「深谷君、右手、貸して。」
差し出された手をなるべくきつく縛る。
「ちょ、ハンカチ汚れるよ!?」
深谷君は驚いて手を引っ込めようしたけれど、私は終わるまで離さなかった。
「このままじゃ貧血になるし、バイ菌が入っちゃうから。」
私の手に少し血が付いたけれど気にせずに続ける。
「後、もう少しだから我慢してね。」
少し手が震えたけれど気づかないふりをして続ける。
「なぁ、春風。」
上から深谷君の声がする。
「うん。何?」
私は顔を上げずに言うと予想もしないことを言われる。
「どうして泣いてるんだ?」
その言葉に驚いて思わず顔を上げた。
目から涙が落ちる。
あ。
私は気づかない内に泣いていたんだ。
私はこらえきれずに涙が目から溢れた。
肩を震わせながらうずくまり泣く私。
「そんなに怖った?」
深谷君は優しく私に話しかける。
その言葉が声が私の心を少しずつ満たしていく。
私は何度も何度も首を小さく振った。
「ちが、うの。違うの。けがまでして助けてくれたのが嬉しくて。」
息が少し途切れて整える。
一生懸命に言葉を探すけれど見つからなくて迷っていると
「春風。大丈夫。俺がここにいる。迷ったら俺のもとに来い。
怖くなったら来い。今度こそ俺が守るから。」
そう言いながら深谷君は指で私の涙をぬぐった。
そこまで言うと彼はいつもの笑顔を見せた。
初めて真正面から見る彼の笑顔はとてもまぶしくてキラキラしていた。
「俺は春風の味方だよ。いつでも俺の所においで、待っているから。」
気づいたら私は深谷君に抱きしめられていた。
驚いて最初は固まっていた。
でも深谷君の優しくて暖かい手が背中をさすると落ち着く。
「ずっとずっと、そばにいる。何があっても。」
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