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春の物語
私の目に映る君は
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「ウカ、どうする?」
サラが私の後ろから言った。
「うん、とりあえず今日は帰っても大丈夫だよ。男の子が起きて皆がいたらきっと警戒しちゃうから。
私1人で大丈夫。」
私はそう言うと男の子を腕に抱える。
「ちょ、ウカ運ぶなら俺が。」
「大丈夫だよ。これからは私がこの子を守らないといけないから、このくらいできなきゃ。」
ぐっすりと寝ている男の子はさっきまで暴れて威嚇してたのとは思えないくらい寝顔が天使だった。
「ウカがそういうなら分かった。でも何かあったらすぐに言えよ。夜中でも俺もサラも駆けつけるから。」
サムは心配そうに眉間にしわを寄せながら言った。
「うん、ありがとう。あ、2人にお願いがあるんだけどいいかな?」
私は2人が帰る前に慌てて言った。
「うん、何?」
「なんでも頼れ!」
2人は優しく笑って言ってくれた。
「この子を連れてきてくれた人を村の外まで案内してくれないかな?」
「いいよ!」
「ウカは外に出れないから当たり前にするわ。」
2人の即答に私は笑った。
「案内してくれるんですか?それはとても助かります。ではウカさん、その男の子をお願いします。」
男性はそう言うと敬礼してからサラとサムに連れられて村から出て行った。
次の日。
私が男の子をこっそりと見に行くとまだ寝ているようだった。
(良かった。私が寝ている間にいなくなるかと思った。)
私は寝ている男の子をそっとそのままにしておいて朝食を作ることにする。
昨日掃除しておいたおかげもあってキッチンがかなり使いやすい。
野菜を切ってお鍋に水を入れ火をつける。
「・・・あんた、何してるの。」
後ろから威嚇され思わず苦笑してしまう。
予想はしてたけど、ここまで信用されないのは悲しいかな。
「見ての通りご飯を作ってるんだよ。椅子に座ってて。もう少ししたら出来るから。」
後ろを振り返ると男の子は木の棒を持って立っていた。
・・・うん、その棒、昨日サムが変な人が来たらこれ使えって言っておいてったやつだね。
「その棒で私を叩くつもりなの?それともただの威嚇するためのもの?」
男の子は怯えたように私を睨みながら棒を持っている。
(本当は怖いんだ。)
何となくわかる。
ジョナさんと初めて会ったとき。
私が初めて人を攻撃したとき、体が弱いのもあったけど、何よりも誰かを気づつけるのは怖かった。
もし、私のせいでこの人が死んでしまったら?
もし、私のせいで誰かが苦しんでしまったら?
そう思うだけで怖かった。
私はあの時、きっとこんな目をしてたんだろう。
ジョナさんの目に映っていた私はどんな風に見えたんだろう。
私にはわからない。分からないけれど。
「今の私にはただ苦しんでいるだけにしか見えない。君は一体何と戦っているの。
私にはただ、君が弱く醜くあがいてるだけにしか見えない」
冷たく見えるかもしれない。
悪魔のように見えるかもしれない。
それでもいいから、この子に生きる希望を持ってほしい。
「もし、君が私を攻撃するなら好きにすればいい。でもね、私も君に負けるほど弱くない。私にはどうしても会いたい人がいるから。だから君には負けないよ。」
男の子は何かに耐えるようにぽつりと言った。
「あんたは俺を、、、俺を救ってくれるのか。」
それは弱弱しくて儚い一人の少年の訴えだった。
「私は君を救えるほど強くもないよ。君を救えるとしたら君自身か、君を必要としてる人しかいないでしょ?」
私はできた料理を机に並べながら笑った。
「ほら、お腹すいてるでしょ?一緒に食べよ。」
男の子は涙を流しながらも何も言わずに笑った。
その笑顔は子供らしい無邪気な笑顔であったけれどどこか清々しかった。
今、私の目に映っている君は。
とても強くて丈夫な人になるんだろうね。
サラが私の後ろから言った。
「うん、とりあえず今日は帰っても大丈夫だよ。男の子が起きて皆がいたらきっと警戒しちゃうから。
私1人で大丈夫。」
私はそう言うと男の子を腕に抱える。
「ちょ、ウカ運ぶなら俺が。」
「大丈夫だよ。これからは私がこの子を守らないといけないから、このくらいできなきゃ。」
ぐっすりと寝ている男の子はさっきまで暴れて威嚇してたのとは思えないくらい寝顔が天使だった。
「ウカがそういうなら分かった。でも何かあったらすぐに言えよ。夜中でも俺もサラも駆けつけるから。」
サムは心配そうに眉間にしわを寄せながら言った。
「うん、ありがとう。あ、2人にお願いがあるんだけどいいかな?」
私は2人が帰る前に慌てて言った。
「うん、何?」
「なんでも頼れ!」
2人は優しく笑って言ってくれた。
「この子を連れてきてくれた人を村の外まで案内してくれないかな?」
「いいよ!」
「ウカは外に出れないから当たり前にするわ。」
2人の即答に私は笑った。
「案内してくれるんですか?それはとても助かります。ではウカさん、その男の子をお願いします。」
男性はそう言うと敬礼してからサラとサムに連れられて村から出て行った。
次の日。
私が男の子をこっそりと見に行くとまだ寝ているようだった。
(良かった。私が寝ている間にいなくなるかと思った。)
私は寝ている男の子をそっとそのままにしておいて朝食を作ることにする。
昨日掃除しておいたおかげもあってキッチンがかなり使いやすい。
野菜を切ってお鍋に水を入れ火をつける。
「・・・あんた、何してるの。」
後ろから威嚇され思わず苦笑してしまう。
予想はしてたけど、ここまで信用されないのは悲しいかな。
「見ての通りご飯を作ってるんだよ。椅子に座ってて。もう少ししたら出来るから。」
後ろを振り返ると男の子は木の棒を持って立っていた。
・・・うん、その棒、昨日サムが変な人が来たらこれ使えって言っておいてったやつだね。
「その棒で私を叩くつもりなの?それともただの威嚇するためのもの?」
男の子は怯えたように私を睨みながら棒を持っている。
(本当は怖いんだ。)
何となくわかる。
ジョナさんと初めて会ったとき。
私が初めて人を攻撃したとき、体が弱いのもあったけど、何よりも誰かを気づつけるのは怖かった。
もし、私のせいでこの人が死んでしまったら?
もし、私のせいで誰かが苦しんでしまったら?
そう思うだけで怖かった。
私はあの時、きっとこんな目をしてたんだろう。
ジョナさんの目に映っていた私はどんな風に見えたんだろう。
私にはわからない。分からないけれど。
「今の私にはただ苦しんでいるだけにしか見えない。君は一体何と戦っているの。
私にはただ、君が弱く醜くあがいてるだけにしか見えない」
冷たく見えるかもしれない。
悪魔のように見えるかもしれない。
それでもいいから、この子に生きる希望を持ってほしい。
「もし、君が私を攻撃するなら好きにすればいい。でもね、私も君に負けるほど弱くない。私にはどうしても会いたい人がいるから。だから君には負けないよ。」
男の子は何かに耐えるようにぽつりと言った。
「あんたは俺を、、、俺を救ってくれるのか。」
それは弱弱しくて儚い一人の少年の訴えだった。
「私は君を救えるほど強くもないよ。君を救えるとしたら君自身か、君を必要としてる人しかいないでしょ?」
私はできた料理を机に並べながら笑った。
「ほら、お腹すいてるでしょ?一緒に食べよ。」
男の子は涙を流しながらも何も言わずに笑った。
その笑顔は子供らしい無邪気な笑顔であったけれどどこか清々しかった。
今、私の目に映っている君は。
とても強くて丈夫な人になるんだろうね。
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