歌の光花

古川優亜

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まぶしい笑顔と明るい夏

レイの為に

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「なかなか下がらないなぁ。」
私はレイの頭にのせたタオルを変える。
「ウカ姉さん。レイ、大丈夫?」
ラムが心配そうに小さな声で言った。
「医者に見せたほうがいいかもしれないね。」
私はレイの汗を拭う。
息遣いが荒いなぁ。
「ちょっと、私医者呼んでくる!」
「ウカ姉さん、待って!!」
子供たちの呼び止める声を無視して大雨の中外に出る。
強い雨が体を強く叩く。
前がよく見えないなぁ。
なるべく早く戻らないと。
レイの為に。
森の中を一生懸命走る。
薬草を取ろう。
熱が下がるだろうし食欲も戻るだろうから。
体調が戻り始めたら医者を呼ぼう。
どこだっけ。
確かこの辺にあったはずなんだけど。
周りがよく見えない。
雨邪魔!!
「きゃ!!」
勢いよく転んで服が泥だらけになる。
「痛い。」
手のひらがジンジンする。
(あーあ。血が出ちゃった。)
思わず自嘲的に笑う。
仰向けに寝てから、頭を冷やす。
冷静になれ。冷静に。
「・・・。冷静に考えれば、ここじゃないじゃん!!」
わー、わー!!!
恥ずかしい!!
慌てて立ち上がり、目的の場所まで行く。
「!あった!!!」
その場で飛び跳ねたいのをこらえる。
今ここで飛び跳ねたら足を滑らせて落ちちゃう。
ともかく、これをもって急いで戻らないと!!
私は慎重にでもなるべく早く走った。
「お姉ちゃん!!」
ラムが安心したように笑った。
そして次の瞬間
「このアホ!!!!!」
と、安心した顔から鬼のような顔で怒られた。
「え。え?え?」
私は一瞬理解できずに混乱する。
いつも無表情のラムが怒った!?
「無駄に心配かけんな!」
うん、夢でも幻覚でもなかった。
「ぼーとしてないで、さっさと家に入れ!!」
「は、はいぃ!!」
ラムはお母さんか何か!?
私より6歳年下とは思えないくらいしっかりしてるし、怖い!
慌てて家に入れば、ランにタオルを渡される。
心なしかランの顔も怖く見える。
「ウカ姉さん!おかえりなさい。」
アンの可愛い笑顔に癒される~(泣)
「ところで、それ何の草なの?」
チョコが興味津々とみてくる。
「あぁ、これ?」
私は薬をすり潰すために擦り棒を持ってくる。
細かくすり潰して、お水と一緒に飲ませる。
「レイ、お薬だよ、飲んで。」
少しづつ、飲ませてまた眠らせる。
「姉さん。あの草は薬だったの?」
アンが眠そうな顔で呟いた。
「みんな、とりあえず寝ようか。さ、それぞれのベットに入って。」
私がそういえば皆目をこすりながらも素直にベットに戻った。
さて、と。
私は次の仕事に取り掛からないと。
  




翌日。
朝ごはんを作っていたらサムの怒鳴り声が聞こえた。
「ウカ!!医者連れてきたぞ!!」
あちゃー。
サムに頼んだの間違いだったかな。
「姉さん。サム兄がなんかドアの前で怒鳴ってる。」
チョコが戸惑ったように私の所にきた。
「ウカ姉さん。サムお兄ちゃんなんか白い服を着たおじさんを連れてきたよ。」
不安そうに子供たちも扉を見ている。
「大丈夫だよ。みんなはお客様の為にお茶とかお菓子を用意してて。勿論、礼儀も忘れずにね。」
私は一人一人の頭を撫でてから玄関に向かう。
「おやまぁ。本当に綺麗な髪のお嬢さんだ。しかも、水色!とても美しい。」
髭のはやした、いかにもな感じの医師を見つけてきたな。
「ウカ、一応連れてきたけどよ、金ないのにどうすんだよ?」
私を見るサムの目がとても冷たい。
でもね、それでも私は動くしかない。
「!!ウカ、やめろ!!!」
あぁ、サムの声が頭に響くなぁ。
「これだけあれば、高い薬は買えますよね?」
私は片手いっぱいの髪を医師に渡す。
医師もサムも信じられないという顔で私を見る。
「どうして、そこまで・・・。」
サムがかすれるような声で言う。
この世界では女性は髪を切ることはそうそうない。
元から短い人はいないし。
「サムは薬を買えるような経済がないのは知ってるでしょ。レイの体の弱さは私の力じゃどうにもできない。」
私は髪と薬を交換しながらサムに説明をする。
「お嬢さん。魔力が限界を迎えようとしているようだが。」
あ~あ。
初めて会った人にばれるくらい私の魔力はなくなってるのかな。
「ウカ!!」
サム、その目やめてよ。
私は大切な子供たちのためならなんだってするよ?
今は、レイの為に、だけどね。
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