63 / 69
第8章 明かされた真実
第61話 『地母神』
しおりを挟む
ついに明かされた『母』の正体————そのあまりのスケールの大きさにジャン・リンファの二人は眼を大きく見開き、あたかも言葉を忘却したかのように口を半開きにしたまま固まった。
「……『母』の正体が『地球』だと……⁉︎ 本当なのか、ミロワ……⁉︎」
「…………」
いまだ信じられないといったタスクの声にミロワは無言でうなずき、次いでジゼルへと顔を向けた。
「……ジゼルさん、どうして分かったのです……?」
『母の子』とも言える存在のミロワに尋ねられたジゼルはどこか嬉しそうな様子で口を開く。
「どうしてと問われると、消去法と願望かな」
「消去法と……願望?」
「そう。私は『晄石獣』を観察する中で常々疑問に思っていた。『このような奇妙な生物はいったいどこから産まれてきたのだろう』とね」
「…………」
「最初はジャンくんと同じく国や軍が産み出したものかとも考えたが、現状の人類の科学力では人間のみをターゲットとする生物兵器を量産化するなんて到底無理だと思い、アプローチを変えてみたんだ」
「そこから消去法で人類以外の存在が浮かび上がったと……?」
ミロワの声にジゼルはうなずいて続ける。
「神が人を造ったとよく言われるだろう? 『母』というキーワードから『地母神』という概念が思い浮かんだんだ」
「どっちが想像力豊かなんだよ。学者のくせにアンタの方がよっぽどブッ飛んでんじゃねえか」
「学者のくせに、か。私に言わせれば想像力の乏しい学者に魅力は感じないね。人間は想像することで進化してきた種なのだから」
「…………」
食って掛かったジャンを黙らせたジゼルは続けて意見を述べる。
「それに私が言っている『神』とは人々の心の中に存在する偶像的なものじゃないよ。言うなれば『システム』といったところかな」
「システム……⁉︎」
「地球というものは生態系も含めて絶妙なバランスで成り立っているんだ。それを管理する超常の存在がいたとしても不思議ではないと昔から漠然と思っていたんだよ」
「————あ……! アンタが論文で発表しようとしてた『地球を一つの生命体と考える』ってヤツか……‼︎」
以前見た手記の内容を思い出したジャンにジゼルは笑みを浮かべる。
「その通り。ヒトを産み出したのが『地球』なら、ヒトを捕食する生物を産み出すのもまた『地球』だと考えたというわけさ」
「……それが願望っていうことか。どっちにしろ、おかしな奴じゃな」
今まで黙って聞いていたリンファが不意にツッコミの声を上げたが、ジゼルは楽しそうに笑みを浮かべた。
「リンファ嬢、私がこの結論に至ったのはキミやタスクくんのおかげでもあるんだよ」
「ウチと……」
「俺の……?」
リンファとタスクが同時に声を上げた。
「ああ。リンファ嬢の見せてくれた『内功』に、タスクくんの『神降ろし』という不思議な技法のおかげで私の想像力の幅が広がったんだ。感謝するよ、二人とも……‼︎」
「ち、力になれたんなら良かったわ……」
「そ、そうか……、それはなにより……」
眼がバキバキのその様子にリンファとタスクが一歩引くと、ジゼルはミロワに向き直って腕を広げた。
「————以上が私の考察だね。では、私からも質問したいんだが良いかね?」
「どうぞ」
「ありがとう。大凡の予想はついているが、『母』————いや、いつまでも『母』だとママと混同して紛らわしいな……」
言葉の途中でなにやら考え込む仕草を見せたジゼルは数秒の後、ポンと手を叩いた。
「よし! これからは『地母神』と呼称しよう! 何か異論はあるかね⁉︎」
『…………』
室内に立ち込めるもう好きにしてくれという空気に気付かず、ジゼルは満足げにうなずいた。
「異論なしということで今後『母』の呼称は『地母神』に決定! それでミロワ嬢、『地母神』は何故人類を滅ぼそうとしているのかね?」
『…………‼︎』
この質問はこの場にいる誰もが聞きたいと思っていたものである。皆、固唾を呑んでミロワの答えを待った。
「『母』————いえ、『地母神』が人類を滅ぼそうと決めた理由————それは人類が地球に害を及ぼす生物へと成り果てたと結論付けたからです……‼︎」
「…………」
その恐るべき答えにジゼルは予期していた様子でうなずいたが、残りの三人はそうではなく、とりわけジャンの動揺は激しかった。
「…………な、なんでだよ! なんで人類が地球に悪い生物なんだよ‼︎」
「それは…………」
口に出すことを躊躇するミロワに代わって、ジゼルが口を開いた。
「ジャンくん。キミたち『晄石狩り』が血眼になってかき集めている『晄石』とはそもそも何なのか考えたことがあるかね?」
「な、なんだよ、急に……、そんなの知らねえよ。カネになる燃料みてえなモンじゃねえの……?」
「燃料……そうだね。だが、そのエネルギーはどこから生まれていると思う?」
「どこって……そりゃ、『晄石獣』を産み出してんのが『地母神』なんだから…………ッ⁉︎」
何かに気付いた様子で言葉を止めたジャンにジゼルが続ける。
「————そう、『晄石』とは恐らく地球を構成するエネルギーの結晶体。我々人類は繁栄を求めるあまりに、母なる地球を食い潰す『害獣』とでも判定されたのだろうね……!」
「……『母』の正体が『地球』だと……⁉︎ 本当なのか、ミロワ……⁉︎」
「…………」
いまだ信じられないといったタスクの声にミロワは無言でうなずき、次いでジゼルへと顔を向けた。
「……ジゼルさん、どうして分かったのです……?」
『母の子』とも言える存在のミロワに尋ねられたジゼルはどこか嬉しそうな様子で口を開く。
「どうしてと問われると、消去法と願望かな」
「消去法と……願望?」
「そう。私は『晄石獣』を観察する中で常々疑問に思っていた。『このような奇妙な生物はいったいどこから産まれてきたのだろう』とね」
「…………」
「最初はジャンくんと同じく国や軍が産み出したものかとも考えたが、現状の人類の科学力では人間のみをターゲットとする生物兵器を量産化するなんて到底無理だと思い、アプローチを変えてみたんだ」
「そこから消去法で人類以外の存在が浮かび上がったと……?」
ミロワの声にジゼルはうなずいて続ける。
「神が人を造ったとよく言われるだろう? 『母』というキーワードから『地母神』という概念が思い浮かんだんだ」
「どっちが想像力豊かなんだよ。学者のくせにアンタの方がよっぽどブッ飛んでんじゃねえか」
「学者のくせに、か。私に言わせれば想像力の乏しい学者に魅力は感じないね。人間は想像することで進化してきた種なのだから」
「…………」
食って掛かったジャンを黙らせたジゼルは続けて意見を述べる。
「それに私が言っている『神』とは人々の心の中に存在する偶像的なものじゃないよ。言うなれば『システム』といったところかな」
「システム……⁉︎」
「地球というものは生態系も含めて絶妙なバランスで成り立っているんだ。それを管理する超常の存在がいたとしても不思議ではないと昔から漠然と思っていたんだよ」
「————あ……! アンタが論文で発表しようとしてた『地球を一つの生命体と考える』ってヤツか……‼︎」
以前見た手記の内容を思い出したジャンにジゼルは笑みを浮かべる。
「その通り。ヒトを産み出したのが『地球』なら、ヒトを捕食する生物を産み出すのもまた『地球』だと考えたというわけさ」
「……それが願望っていうことか。どっちにしろ、おかしな奴じゃな」
今まで黙って聞いていたリンファが不意にツッコミの声を上げたが、ジゼルは楽しそうに笑みを浮かべた。
「リンファ嬢、私がこの結論に至ったのはキミやタスクくんのおかげでもあるんだよ」
「ウチと……」
「俺の……?」
リンファとタスクが同時に声を上げた。
「ああ。リンファ嬢の見せてくれた『内功』に、タスクくんの『神降ろし』という不思議な技法のおかげで私の想像力の幅が広がったんだ。感謝するよ、二人とも……‼︎」
「ち、力になれたんなら良かったわ……」
「そ、そうか……、それはなにより……」
眼がバキバキのその様子にリンファとタスクが一歩引くと、ジゼルはミロワに向き直って腕を広げた。
「————以上が私の考察だね。では、私からも質問したいんだが良いかね?」
「どうぞ」
「ありがとう。大凡の予想はついているが、『母』————いや、いつまでも『母』だとママと混同して紛らわしいな……」
言葉の途中でなにやら考え込む仕草を見せたジゼルは数秒の後、ポンと手を叩いた。
「よし! これからは『地母神』と呼称しよう! 何か異論はあるかね⁉︎」
『…………』
室内に立ち込めるもう好きにしてくれという空気に気付かず、ジゼルは満足げにうなずいた。
「異論なしということで今後『母』の呼称は『地母神』に決定! それでミロワ嬢、『地母神』は何故人類を滅ぼそうとしているのかね?」
『…………‼︎』
この質問はこの場にいる誰もが聞きたいと思っていたものである。皆、固唾を呑んでミロワの答えを待った。
「『母』————いえ、『地母神』が人類を滅ぼそうと決めた理由————それは人類が地球に害を及ぼす生物へと成り果てたと結論付けたからです……‼︎」
「…………」
その恐るべき答えにジゼルは予期していた様子でうなずいたが、残りの三人はそうではなく、とりわけジャンの動揺は激しかった。
「…………な、なんでだよ! なんで人類が地球に悪い生物なんだよ‼︎」
「それは…………」
口に出すことを躊躇するミロワに代わって、ジゼルが口を開いた。
「ジャンくん。キミたち『晄石狩り』が血眼になってかき集めている『晄石』とはそもそも何なのか考えたことがあるかね?」
「な、なんだよ、急に……、そんなの知らねえよ。カネになる燃料みてえなモンじゃねえの……?」
「燃料……そうだね。だが、そのエネルギーはどこから生まれていると思う?」
「どこって……そりゃ、『晄石獣』を産み出してんのが『地母神』なんだから…………ッ⁉︎」
何かに気付いた様子で言葉を止めたジャンにジゼルが続ける。
「————そう、『晄石』とは恐らく地球を構成するエネルギーの結晶体。我々人類は繁栄を求めるあまりに、母なる地球を食い潰す『害獣』とでも判定されたのだろうね……!」
0
あなたにおすすめの小説
氷結の夜明けの果て (R16)
ウルフィー-UG6
ファンタジー
Edge of the Frozen Dawn(エッジ・オブ・ザ・フローズン・ドーン)
よくある異世界転生?
使い古されたテンプレート?
――そうかもしれない。
だが、これはダークファンタジーだ。
恐怖とは、姿を見せた瞬間よりも――
まだ見えぬまま、静かに忍び寄るもの。
穏やかな始まり。ほのかな優しさ。
だが、石の下には、眠る獣がいるかもしれない。
その時が来れば、闇は牙を剥く。
あらすじ
失われた魂――影に見つめられながら。
だが、英雄とは……本当に常に“光”のために戦う者なのか?
異国の大地で、記憶のないまま、見知らぬ身体で目を覚ます。
生き延びようとする本能だけが、彼を前へと突き動かす。
――英雄か、災厄か。それを分けるのは、ただ一つの選択。
冷たく、謎めいた女戦士アリニアと共に、
彼は武器を鍛え、輝く都市を訪れ、古の森を抜け、忘れられた遺跡へと踏み込んでいく。
だが、栄光へと近づく一歩ごとに、
痛みが、迷いが、そして見えない傷が刻まれていく。
光の道を歩んでいるかのように見えて――
その背後で、影は静かに育ち続けていた。
――これは、力と希望、そして自ら築き上げる運命の物語。
🔹 広大で容赦のない世界が、挑む者を待ち受ける。
🔹 試練と沈黙の中で絆を深めていく、二人の仲間。
🔹 「居場所」を探す旅路の果てに待つものとは――。
ヴェイルは進む。
その選択はやがて、一つの伝説を生み出すだろう。
それが光か、闇か。――決めるのは、あなた自身だ。
異世界国盗り物語 ~戦国日本のサムライ達が剣と魔法の世界で無双する~
和田真尚
ファンタジー
戦国大名の若君・斎藤新九郎は大地震にあって崖から転落――――気付いた時には、剣と魔法が物を言い、魔物がはびこる異世界に飛ばされていた。
「これは神隠しか?」
戸惑いつつも日本へ帰る方法を探そうとする新九郎
ところが、今度は自分を追うように領地までが異世界転移してしまう。
家臣や領民を守るため、新九郎は異世界での生き残りを目指すが周囲は問題だらけ。
領地は魔物溢れる荒れ地のど真ん中に転移。
唯一頼れた貴族はお家騒動で没落寸前。
敵対勢力は圧倒的な戦力。
果たして苦境を脱する術はあるのか?
かつて、日本から様々なものが異世界転移した。
侍 = 刀一本で無双した。
自衛隊 = 現代兵器で無双した。
日本国 = 国力をあげて無双した。
では、戦国大名が家臣を引き連れ、領地丸ごと、剣と魔法の異世界へ転移したら――――?
【新九郎の解答】
国を盗って生き残るしかない!(必死)
【ちなみに異世界の人々の感想】
何なのこの狂戦士!? もう帰れよ!
戦国日本の侍達が生き残りを掛けて本気で戦った時、剣と魔法の異世界は勝てるのか?
これは、その疑問に答える物語。
異世界よ、戦国武士の本気を思い知れ――――。
※「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも投稿しています。
異世界転移したら、神の力と無敵の天使軍団を授かったんだが。
猫正宗
ファンタジー
白羽明星は気付けば異世界転移しており、背に純白の六翼を生やした熾天使となっていた。
もともと現世に未練などなかった明星は、大喜びで異世界の大空を飛び回る。
すると遥か空の彼方、誰も到達できないほどの高度に存在する、巨大な空獣に守られた天空城にたどり着く。
主人不在らしきその城に入ると頭の中にダイレクトに声が流れてきた。
――霊子力パターン、熾天使《セラフ》と認識。天界の座マスター登録します。……ああ、お帰りなさいルシフェル様。お戻りをお待ち申し上げておりました――
風景が目まぐるしく移り変わる。
天空城に封じられていた七つの天国が解放されていく。
移り変わる景色こそは、
第一天 ヴィロン。
第二天 ラキア。
第三天 シャハクィム。
第四天 ゼブル。
第五天 マオン。
第六天 マコン。
それらはかつて天界を構成していた七つの天国を再現したものだ。
気付けば明星は、玉座に座っていた。
そこは天の最高位。
第七天 アラボト。
そして玉座の前には、明星に絶対の忠誠を誓う超常なる存在《七元徳の守護天使たち》が膝をついていたのだった。
――これは異世界で神なる権能と無敵の天使軍団を手にした明星が、調子に乗ったエセ強者を相手に無双したり、のんびりスローライフを満喫したりする物語。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
本当の外れスキルのスロー生活物語
転定妙用
ファンタジー
「箱庭環境操作」という外れスキルしかないエバンズ公爵家の長男オズワルドは、跡継ぎの座を追われて、辺境の小さな土地を与えられて・・・。しかし、そのスキルは実は・・・ということも、成り上がれるものでもなく・・・、スローライフすることしかできないものだった。これは、実は屑スキルが最強スキルというものではなく、成り上がるというものでもなく、まあ、一応追放?ということで辺境で、色々なことが降りかかりつつ、何とか本当にスローライフする物語です。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
サディストの私がM男を多頭飼いした時のお話
トシコ
ファンタジー
素人の女王様である私がマゾの男性を飼うのはリスクもありますが、生活に余裕の出来た私には癒しの空間でした。結婚しないで管理職になった女性は周りから見る目も厳しく、私は自分だけの城を作りまあした。そこで私とM男の週末の生活を祖紹介します。半分はノンフィクション、そして半分はフィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる