天使と悪魔

猫幸世

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天使と悪魔

第3話

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蒼(そう)は樹(いつき)の胸ぐらを掴み顔を殴り倒すと怒った口調で口にした。

「陽菜に近づくな」

「……」

無言で樹は立ち上がり蒼に向かって口を開いた。 

「お前から陽菜さんを奪い取ってやる」

「……」

その場から去っていく樹を睨み付けると蒼はドアを閉めた。

その後、蒼は振り返り全裸で眠っている陽菜の身体に脱いだスーツをかけ靴を脱ぐと陽菜をお姫様抱っこし玄関を離れ寝室に向かい中に入った。 

蒼は無言でベッドに近づき陽菜を仰向けで寝かせるとタンスに近づき上下の衣類を取り出しベッドに運んだ。 

陽菜が寝ている間に上下の衣類を陽菜に着せると蒼は脱いだ自分のスーツを着た。 

その後、蒼は立ったまま眠っている陽菜を見つめ口を開いた。 

「陽菜…」

手を伸ばし陽菜の頬に触れると蒼は顔を近づけ唇を重ねた。 

その後、蒼が唇を離すと手首に着けている黒い羽が黒い光で蒼を包み込んだ。 

5秒後、黒い光が消え蒼の姿が黒一色の長い服に黒い長い髪そして背中には黒い羽が生えた。 

「黒い光、何だったんだ」

「……」

無言で目を覚まし横に目を向けた陽菜は悪魔姿に驚き身体を起こした。 

「蒼さん?」

「驚いた顔をしてどうしたんだ」

「自分の姿、見てないんですか」

「姿?」

「……」

ベッドからおり机に置いてある鏡を掴むとそのまま蒼に向けた。 

「嘘だろ」

悪魔姿に蒼が驚くと陽菜が口を開いた。 

「最初は驚いたけど今は懐かしい気持ちです」

「俺も懐かしい気持ちだよ」

「それはそうとどうしてここに来たんですか?」

鏡を机に置き陽菜が目を向けると蒼が口を開いた。 

「凛が俺に好きだと告白したんだ、俺は好きな人がいるから凛とは付き合えないと言ったら凛が言ったんだ樹が君を…」

「……」

「助けないとと思って来たんだ」

「全裸だったはずなのに服を着てる、蒼さんが着せてくれたんですか?」

「寝ている間に」

「ありがとうございます」

陽菜がお礼を口にしたその時、悪魔姿の蒼に抱きしめられた。 

「蒼さん?」

「陽菜さんは俺が守る」

「蒼さん」

「陽菜さん」

蒼が見つめると陽菜は目を閉じた。 

蒼は顔を近づけ唇を重ねた。 

その頃、樹は喫茶店で凛と合流していた。 

「なぜ、蒼を逃がした」

「すみません」

「凛、今度は逃がすなよ」

「わかってます」

「陽菜を…」

「……」

樹と凛が座っている席の近くで仕事をしていた陽菜の友達の詩(うた)は2人の会話を聞き驚いた。 

それから暫くして樹と凛が喫茶店を出ていくと詩はスマホを取り出し仕事が終わったら陽菜の家に行くと陽菜にメールを送った。 

ー陽菜の家、寝室ー 

ベッドに座りながら悪魔姿の蒼に陽菜が寄り添っているとスマホが鳴った。

「すみません」

蒼から離れ机に置いてあるスマホを掴むとメールを見た。 

「仕事が終わったら詩が家に来るって」

「俺の姿を見たら驚くだろうな」

「元に戻れないんですか?」

「どうやってやれば元に戻るのかわからない」

「仕事にも影響しますね」

「あぁ」

「蒼さんはここに居てください、今から詩に会ってきます」

「1人で大丈夫か」

「すぐ戻りますから」

そう言って陽菜が出かけると悪魔姿の蒼はベッドに座り黒い羽を見つめた。

その頃、陽菜は詩が働いている喫茶店に向かっていた。 

1時間後、喫茶店に着くと陽菜は中に入り働いている詩に近づいた。 

「詩」

「陽菜」

「仕事中にゴメン、メール見た」 

「奥の席に座って待ってて」

「わかった」

陽菜が奥の席に向かうと詩は店長の元に近づいた。 

「店長」

「何だい」

「休憩しても良いですか?」

「良いよ」

「ありがとうございます」

そう言って店長から離れると詩は奥の席で座っている陽菜に近づいた。 

「お待たせ」

「良いのか?」

「店長が休憩しても良いって」

「そうか」

「陽菜にメールしたのはこの人達が話してた内容が気になって」

口にしながら詩がスマホで撮った樹と凛の写真を見せると陽菜は驚いた。

「……」

「陽菜、この2人、知ってる?」

「……」

「陽菜?」

「ゴメン、帰る」

席を立ち陽菜が出入り口に向かうと詩は追いかけ口を開いた。 

「明日は家から出ないで」

「わかった」

陽菜が背を向けたまま返事をすると詩は仕事に戻り陽菜は喫茶店を出た。 

その後、陽菜は家に向かって歩かず公園に向かって歩いた。 

30分後、公園に着いた陽菜は公園の中に入りベンチに近づくと座りうつ向いた。 

「……」

それから時間が過ぎ空が暗くなり雨が降りだした。 

傘をさしながら公園の近くを歩いているとホストがスーツ姿の蓮(れん)に声をかけた。 

「雨に濡れながら何をしてるんですかね」

「先に店に戻れ」

「はい」

傘をさしながらホストが走って離れていくと蓮は公園の中に入りベンチに近づき立ったまま陽菜に傘をさした。

「……」

無言で陽菜が目を向けると蓮が口を開いた。 

「風邪を引きますよ」

「今から帰ります」

そう言ってベンチから立ち上がると陽菜はふらつき倒れかけたその時、蓮は傘を離し陽菜を抱き止めた。 

「大丈夫ですか?」

陽菜のおでこに手を当て熱があることを知ると蓮は陽菜をお姫様抱っこし歩き出すと店に向かった。 

ーホストクラブー 

1人のホストが開店準備をしていると蓮が陽菜をお姫様抱っこしたまま店の中に現れた。

「蓮さん!」

「野崎、店は休みだ」

「わかりました」

「……」

陽菜をお姫様抱っこしたままオーナー室に向かい陽菜をソファーに寝かせると蓮はクローゼットから大きなタオルを取り出し陽菜の髪を拭いた。

そこへ野崎が現れた。

「蓮さん」

「閉店準備が終わったら帰れ」

「わかりました」

オーナー室を出ていき野崎がドアを閉めると蓮は陽菜の濡れた上下の衣類を脱がせタオルで身体を拭くとクローゼットからスーツを取り出し着せた。 

その後、蓮もスーツを脱ぎ濡れた髪と身体をタオルで拭くと新しいスーツを着た。 

「熱をさげないと」

ハンカチを濡らしにオーナー室を蓮が出ていくと黒い羽のブレスレットが床に落ちた。 

それから暫くして濡れたハンカチを持ってオーナー室に戻ると蓮は黒い羽のブレスレットに築き拾った。 

「さっきまで無かったのに」

そう言って黒い羽のブレスレットをズボンのポケットに入れると蓮は陽菜に近づき濡れたハンカチをおでこに置いた。 

その後、蓮はクローゼットから大判ブランケットを取り出すと陽菜の身体にかけた。 

その後、蓮は陽菜の熱がさがるまで看病し続けた。 
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