天使と悪魔

天使と悪魔

第4話

蓮（れん）の看病によって熱もさがり元気になった陽菜（ひな）は身体を起こしまわりを見て驚いた。

「ここは…」

まわりを見ながら陽菜はソファーで寝ている蓮に目を向けた。 

「誰？」

大判のブランケットを退かせソファーから立ち上がるとハンカチが床に落ち陽菜が拾うと蓮が声をかけた。

「起きて大丈夫？」

そう言って蓮はソファーから立ち上がり陽菜のおでこに手をあてた。 

「……」

陽菜の胸がドキドキ高鳴っていると優しい顔で「熱はさがったね、もう大丈夫」とおでこに手をあてながら蓮が口にするとドアが開き詩（うた）が現れた。

「詩！」

驚いた顔で陽菜が見ると陽菜のおでこから手を離す蓮に詩が近づき口を開いた。 

「どうして陽菜がここに」

「昨日、雨が降ったろ公園のベンチに座りながら雨に濡れてたから声をかけたんだそしたら熱で倒れてここで看病したんだ」

「昨日のこと覚えてなくてすみません」

「元気になって良かったね」

「ありがとうございました」

お礼を言い頭をさげすぐに顔をあげると蓮が口を開いた。 

「君が着てた服なんだけど濡れてたからスーツに着替えさせたよ」

「その服は？」

「捨てたけど、大丈夫だった？」

「大丈夫です、スーツは洗って返しますね」

「いつでも良いから」

「それじゃ俺、帰ります」

「熱がさがっても無理しない方が良いから仕事、休んだ方が良いよ」

「はい…お世話になりました」

そう言って陽菜がオーナー室を出ていくと詩は蓮に抱きついた。 

「詩、どうした」

「俺が熱を出して寝込んだら看病してくれますか？」

「もしかして詩、嫉妬してんのか」 

「陽菜、美しいから蓮さん惚れるんじゃないかって」

「心配するな、俺の心はお前のものだ」

そう言って蓮は詩の唇に唇を重ねた。 

その頃、陽菜はハンカチを握ったまま家に向かって歩いていた。 

「あ、ハンカチ」

足を止め陽菜がハンカチを見つめていると凛（りん）が現れた。 

「陽菜」

「……」

名前を呼ばれ前方に目を向けると陽菜は驚いた顔で近づいてくる凛を見た。

「凛！」

「今から俺に付き合ってくれないかな」

「忙しいんだ」

そう言って陽菜が歩き出すと凛は陽菜を追いかけ手首を掴んだ。 

「凛、手を離せ」

「スーツなんて着るんだ」

「俺がスーツを着ても良いだろ、それより手を離せ」

「手を離してやれ」

「……」

「……」

無言で凛と陽菜は声の方に目を向け立っている悪魔姿の蒼を見た。

「蒼さん…」 

「蒼さん？」

陽菜の言葉に凛が驚いた顔で見つめると蒼が口を開いた。 

「凛、陽菜さんから手を離せ」

「嫌だと言ったら」

「樹（いつき）が連れてこいと言ったのか」

「そうです」

「悲劇を繰り返させない」

そう言って手首に着けている黒い羽のブレスレットに触れると悪魔の黒い剣を出現させ掴んだ。

「蒼さん」

驚いた顔で陽菜が見つめると凛が口を開いた。 

「それで俺の命を奪う訳じゃないですよね」

「手を離せば命を奪わない」

「嫌です、陽菜は樹さんのところに連れていきます」

「凛…」

陽菜が凛に目を向けると蒼が剣を握りしめた。 

危ないと感じた陽菜は剣を構えながら向かって来る蒼から陽菜は凛を庇い剣にやられた。 

驚いた顔で凛と蒼が見つめると陽菜はうつ伏せで倒れた。 

「陽菜…」

黒い剣を手から離すと悪魔姿の蒼は悲しみで空を飛び青い空を暗闇の空に変えると叫んだ。 

「うああー」 

「蒼さん」

叫びながら黒い光線を放ち続ける蒼の姿に凛は涙を流した。 

「やめて…やめてー」

凛が叫んだその時、消滅したはずの悪魔姿のソウが現れた。

ソウは暴走する蒼を魔法で止め姿をスーツ姿に戻すと気絶している蒼をお姫様抱っこし凛の前に降り立った。

その後、ソウは無言で蒼を地面に寝かせ陽菜に近づくと陽菜をお姫様抱っこした。 

「あの？」

凛が声をかけるとソウが口を開いた。 

「陽菜は大丈夫だ、お前は蒼を心配しろ」

そう言って陽菜をお姫様抱っこしたままソウが飛んでいくと暗闇の空が青い空に戻った。 

凛は蒼に近づき身体を支えると蒼の家に向かってゆっくりゆっくりと歩き始めた。  

その頃、ソウは陽菜をお姫様抱っこしたまま空を飛び陽菜の家に向かっていた。