5 / 74
第1章 フェンリル
05 専属侍女
しおりを挟む
バスティーアに連れられ謁見の間を出た功助は先ほどとは違う部屋にいた。
今日からここが功助の部屋になるとのことだ。
最初に通された部屋よりかなり広く、大きな窓からは遠くの山々がよく見える。空は淡い紺色となっていてもうすぐ星が輝く時間になりそうだ。
「もうこんな時間になっていたのか」
呟く声にバスティーアがうやうやしく一礼する。
「お疲れ様でしたコースケ様。少しの間ソファーに掛けてお待ちください。侍女を連れてまいります」
と部屋を出て行こうとした。
「あっ、ちょっと待ってください」
「はい、なんでしょうか?」
「あの、黄金の竜…じゃなかった姫様はどうしているんですか?さっきの謁見の間でしたっけ、そこにもいなかったし」
「姫様でございますか?姫様は今は自室におられます。といっても人化時の部屋ではなく竜化時の大きな部屋におられます」
「そうですか。あのぅ、会えますか?」
「はい。今からでもお会いになることは可能です。お会いになられますか?」
「はい。できればお願いします」
「わかりました。それでは少しお待ちください」
バスティーアはそう言って一礼すると部屋を出て行った。
待つことしばし。ドアをノックする音がした。
「はい」
「失礼いたします」
そう言って入ってきたのは侍女を連れたバスティーアだった。
「コースケ様。紹介いたします。ここにいるのがコースケ様専属の侍女です。さ、自己紹介しなさい」
「はい」
といって侍女は一歩前に出た。
水色の髪には緑色のカチューシャをつけ、薄紫の瞳は少し垂れ気味のその侍女はスカートを少し摘み一礼しほんの少しぎこちなく笑顔を向けた。
「はじめましてコースケ・アンドー様。コースケ様の専属侍女を拝命いたしましたミュゼリア・デルフレックと申します。全身全霊を持ってコースケ様にお仕えさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます」
と言うと自分でも気づかないような小さなため息をつくとまた一礼した。
「は、はい。あ、あの…安藤…じゃない、コースケ・アンドーです。こちらこそよろしくお願いします」
一礼を返す功助。しかしバスティーアがそのようなことはしなくてもかまいませんよと少し苦笑気味だった。
「それではミュゼリア。コースケ様はシオンベール王女様にお会いになられたいとのこと。案内さしあげてください」
「はい、わかりましたバスティーア様。さ、コースケ様おいでください。私がシオンベール王女様のところまでご案内させていただきます」
「あ、お願いします」
そうして功助は専属侍女のミュゼリアについて部屋を出た。
しばらく無言で歩いてたが、いくつかの角を曲がったとこでミュゼリアが意を決し話かけてきた。
「あ……、あの、コースケ様」
「は、はい、何ですかミュ、ミュゼリアさん」
思い切って話かけたミュゼリアだったが、功助の返事に緊張していた身体の力がスッと抜けていくのがわかった。
「うふっ。私のことはミュゼリアもしくはミュゼとお呼びください」
功助の方を見て笑顔のミュゼリア。
「あ、はい。ミュゼリアさん」
「敬称もいりませんよコースケ様」
そう言って口に手を当ててクスクス笑っている。
「あ、ああ。でもなんか言いにくいな」
「なぜですか?」
少し首を傾けるとこの世界にはほとんどいない黒い瞳を見る。
「俺の故郷では会ったばかりの人を呼び捨てにすることはあまりないんで」
「へえ、そうなんですか。でも私のことは気にせずにミュゼリアもしくはミュゼとお呼びください。できればミュゼで」
最後は小さな声になったが聞き取れた。
「ああ、えーと、コホン。で、なんですかミュ、ミュ、…ミュゼ」
「へ?」
「いや、さっき俺のこと呼んだでしょ」
「あ、ああ。そうそう。いいですか少しお聞きしたいことがありまして」
「あ、はい。いいですよ。なんでも聞いてください」
「はい、ありがとうございます。その前に私に敬語などは必要ありませんので普通にお話ください」
「あ、はい。わかりました。じゃなくわかったよ」
「はい。ありがとうございます」
少し会釈するミュゼリア。なんとなくうれしそうだ。
「それでですねコースケ様。コースケ様はどのような魔法をお使いになられるんですか?」
「へ?魔法?いや、それがその…。さっきも俺の魔力…だったかな、それが強いらしいことを言われたんだけど、俺には実感がなくて。ほんとに魔力があるのかも自分ではわからないんだ」
「え?!そ、そうなんですか?魔力があるかどうかわからないんですか?」
「うん、そうなんだ」
「……信じられないです。コースケ様からは強い魔力を感じるのですが……。自覚なされてないんですね……。こんなにすごいのに、うわあ」
口に手を当ててまじまじと功助を見つめるミュゼリア。
「あの、そんなにじっと見つめられると恥ずかしいんだけど。それになんだその’うわあ’ってのは’うわあ’ってのは」
頬をポリポリかきながら苦笑する功助。
少し笑いながらミュゼリアにツッコミを入れる功助。
「あっ!す、すみません。申し訳ございません。大変失礼なことを言ってしまい。どうかお許しください」
深々と頭を下げるミュゼリア。
「へ?えと、あのちょっとちょっと待って、そんなに頭を下げなくてもいいから、な、頭を上げてくれないかな。ただのツッコミだから、な」
慌てる功助。
「へ?……あ、はい。でも、申し訳ございませんでした」
と言って再び頭を下げた。
「ま、まあいいけど……。コホン。えと、さあ、それより早く姫様のとこに行こう」
「あ、はい」
再びペコリと頭を下げると功助を先導しシオンベールの部屋に向かった。
長い廊下をまだかなあと思いながら歩いているとミュゼリアが急に振り向いた。
「あの、コースケ様。バスティーア様がおっしゃられてたのですが、コースケ様ってここの世界の人族じゃなぃって本当ですか?こことは違う世界からこられたって…」
「えっ?そ、そんなことをバスティーアさんが…」
立ち止まる功助。ミュゼリアも功助に合わせ立ち止まる。
「はい。なので魔力も桁違いに強いのだともおっしゃられてました。私もそう思いますよ」
「うーん……。たぶん、違う世界から来たと思うけど……」
「やはりそうでしたか」
と功助を見つめるミュゼリア。だが功助はミュゼリアをただ見ているだけで何も言わない。
「(それに、魔力なんてものが無い世界から来たからなあ。魔力がなんで多いのかなんて聞かれてもわからないぞ。でも、こっちの世界の人たちは他人の魔力量がわかるんだろうか。でも、あのガマガエルはわからなかったみたいだし……。それに、魔力があるとしてどうするのか。掃除のおっちゃんは自分の魔力で王女を助けられると言っていたけど、どうすればいいのか……)」
腕を組み眉間に皺を寄せミュゼリアを見ながら考える功助。
「も、申し訳ございません。お聞きすることではなかったようです。本当にすみません。どうかお許しください」
功助に向かい深々と頭を下げるミュゼリア。それを見た功助はこれはまずいとまたオロオロしてしまう。
「へ?あ、ごめん、違うから、何も怒ってないから。だからミュゼは悪くないよほんと。ボーッと考え事してしまってた俺が悪いんだからそんなに謝らないで」
「しかし…。先ほども失言があったばかりで……」
シュンとするミュゼリア。
「大丈夫だって。ミュゼはなにも悪くないから。な。ほんとだって、な、だから頭を上げてくれないか?」
「そ、そうですか。すみません」
といって一礼した。
「掃除のおっちゃんにさ」
「はい?」
「二度目に待ってた部屋に掃除のおっちゃんが入ってきてさ、掃除手伝わされたんだけどね」
「えっ?も、もしかしてその方って金髪ではなかったですか…」
「ああそうだったよ。それにくたびれた帽子と服で、確かブルーの目でボサボサの金髪のおっちゃんだったよ」
「……」
口に手を当ててなんか目が泳いでるように見えるミュゼリア。
「どうしたんだミュゼ?」
ミュゼリアの顔を覗き込むとはっとなって半歩後ろに下がった。
「す、すみません。そ、そそそれでその掃除の方は…」
「うん。そのおっちゃんが俺の魔力なら姫様を助けられるかもって言ってたんだけど、どうしたら助けられるのかなって考えてたんだ」
「そ、そ、そうですか…」
「どうしたんだ? 掃除のおっちゃんがどうかしたのか?」
「い、いえ、だ、大丈夫ですよ。はい。さ、早く行きましょう。姫様がお待ちだと思いますので」
といって前を向いて歩き出した。ただ右足と右手が同時に前に出てたが。
そしていくつもの長い廊下を通りいくつもの角を曲がりいくつもの階段を昇降しようやく大きな扉の前に着いた。
その扉の両側には青色の鎧を身に着けた兵士が微動だにせず立っていた。まるで置物のようだと思った瞬間ギロッと睨まれ背中に一筋汗が流れた。
「コースケ・アンドー様をお連れいたしました。シオンベール王女様に拝謁ご希望でございます」
深々と一礼するミュゼリア。
「うむ。ハイデス殿から連絡がきておりシオンベール王女様の許可もいただいておる。中へ入られよ」
そして閉じた扉に向かって「コースケ・アンドー様ご入室」と叫びその大きな扉を両側へ静かに開いた。
扉が大きく開き二人は中に入った。入ったとたん目の前には大きな口があった。
「わっ!」
「キャッ!」
同時に一歩後ろに下がる功助とミュゼリア。
「び、びっくりした」
目の前にはあの黄の竜の顔があった。
「ピッギャーピッギャー!」
いたずらを成功させてとてもうれしそうに手足をばたつかせる黄金の竜。
「ははは。ひさしぶり。まだ数時間しかたってないけどな」
功助が苦笑しながらそういうと竜もピギャピギャとうれしそうだ。そしてその大きな口から長い舌を出して頬をペロペロ舐めだした。
「わっわっ、おいこらそんなに舐めるなよ」
はははと笑う功助、ピギャピギャと笑う黄金の竜。横を見るとミュゼも口に手を当てて笑っている。
そして唐突に思い出した。この黄の竜はこの国の王女様だということを。王女様相手にこの態度はないんじゃないかと直立不動になる功助。
「あ、あの…。す、すみません。お前、じゃないあなたはこの国の王女様だったんですね。知らなかったとはいえ無礼をお許しください。え、えーと…、そうそう、シオンベール王女様」
といって頭を下げようとするとその鼻先が功助の顎を持ち上げた。そして目をじっと見るとピギャと一声泣いた。
続けてピギャパーギャピピーギャと竜語でしゃべっている。
竜の言葉がわからない功助は隣で両膝をついて頭を下げているミュゼに尋ねた。
「はい。姫様はこうおおせです。姫様はコースケ様だけには頭を下げて欲しくないとのことです。これまでどおり接して欲しい、普通に話してほしい。それと姫様はシオンと呼んで欲しいとおっしゃられてます」
「い、いや、でも…」
竜をじっと見る。竜も目をじっと見かえす。
「……わかったよ。これまで通りでいいんだなシオン」
「パギャーーーッ!!」
といって功助にその大きな口を近づけると…パクッ……口の中におさめられてしまった。
「わぁーーーっ!!ココココココースケ様ぁぁああ!!ちょちょちょちょっと姫様ぁぁああ、コースケ様を食べちゃダメですよぉぉ!早く吐き出してくださぁぁぁい!」
おろおろしてシオンベールの口を叩くミュゼ。本来なら一国の王女を叩くなどと無礼千万、不敬罪で手討ちにされても文句は言えないだろうがそんなことは今は関係ないと必死に叩いて功助を助けようとしている。
「ピギャ?」
と鳴いて……目を見開いてガバッと口を開けた。その口の中からヘニャヘニャとずり落ちる功助。
「コースケ様ぁ!大丈夫ですかっ!!」
あわてて功助の下に駈け寄るミュゼリア。全身唾液まみれでびしょ濡れの功助は咳き込みながらも大丈夫だと言うのがやっとだった。
「ピギャピギャピギャ」
「えっ、そ、それは…、姫様お待ちくだ…」
全部言い終わる前に二人の頭の上に大量の水が降り注いだ。
「キャアアア!!」
「うわっ!」
一瞬のうちに二人は水浸し。唾液はほとんど洗い流されたが、……全身ずぶ濡れだ。
「あーんもう姫様ぁ。酷いですよぉこれは。びしょびしょになっちゃったじゃないですかぁ。ほんとにもう、待ってくださいって言おうとしたのにぃ」
ミュゼリアはぶつぶつ文句を言っているがシオンベールはまったく悪びれた素振りもなく羽根と足をバタバタさせている。おまけに長い首も左右に振って楽しそうだ。
ミュゼリアの方を見ると、ぐっしょり濡れた侍女服がピッタリと身体に貼りつき、なんとも扇情的な姿態になってしまっている。
思わず目が釘付けになってしまう功助。服の上からだとわからなかったが濡れたことでボディラインがはっきりでてしまっている。出るとこはひかえめだが引っ込むとこは引っ込んでとなかなかのナイスバディだ。
「ん?もう!コースケ様どこ見てるんですかっ!」
両手で自分を抱くようにして睨んでいるが上目遣いなので迫力はない。
「あっ、いや、ご、ごめん」
と言って後ろを向き頭をかく。後ろからほんとにもうとため息が聞こえた。
「いいですよもうこっちを向いて」
はいとミュゼリアの方に向くとさっきのまま自分を抱くようにして少し顔を赤らめていた。
「な、なあミュゼ。どうするこれ」
「このままだと風邪ひいちゃいますよ。乾かしましょうか。一時しのぎなので後でちゃんと着替えないとですが」
そう言ってミュゼリアが手を振ると二人の周りに風の渦が現れた。二人を包むその風は暖かく見てる間に服や髪が乾いていった。
乾くといっても少し変だと感じる。着ている服からどんどんと水分が抜けていっているようだ。霧吹きのような細かい水滴がそこら中に浮いている。それが少し離れたところで一つになり大きな水の球になった。
「すごいなこれは。ミュゼの魔法なのか?」
「はいそうです。生活魔法なんですが便利な魔法でしょ。といってる間にほらほとんど乾きましたよ」
少しドヤ顔のミュゼリア。魔法って便利だなと感心する功助。
「で、あれはどうするんだ」
空中には水の球がプカプカ浮いている。けっこうな大きさで部屋の光を反射してきれいに輝いている。まるでミラーボールのようだが汚水には違いない。
「あっ、えーとえーと」
何も考えてなかったようだ。
「す、捨てましょう」
といって開いている窓を指差した。それに従うように水球は窓の外に飛んでいった。
「ギャーー!」
誰かの叫び声が聞こえた。
「「あっ」」
顔を見合わせる二人。運悪く外には誰かがいたようだ。
「誰だ無礼者、出てこい!手討ちにしてやる」
ギャーギャーと男の声が聞こえたが、聞こえなかったふりをする二人。
コホンとわざとらしく咳をしてシオンベールの方に顔を向けた。
「なあシオン」
「パギャ?」
目の前でお座りをして少し頭を傾けるシオン。
「しばらくの間この城で世話になることになったよ。よろしくな」
「パギャーーー!」
翼をひろげて喜んでいるシオンベール。そして顔を近づけてくるとその鼻先をこすりつけてきた。
功助はその鼻先を撫でるともう一度よろしくなと言ってポンポンと叩いた。
「コースケ様。もうそろそろお時間となります。陛下をはじめ王妃様たちとの会食が予定されています。服も着替えないといけませんので自室へお戻りください」
とミュゼリア。
「えっ、そうなの。会食が。知らなかった。けど、そんなとこに行ってもいいのかな俺」
「何をおっしゃいます。コースケ様は主賓なんですよ。そんなことお考えにならなくても大丈夫です」
「そ、そうなのか。うーむ、でもシオンは参加できるのか?」
シオンベールの方を見ると
「パギャピギャ」
と言っている。
わからないのでミュゼリアに尋ねた。
「ご列席されるそうですが一緒に食事はとれないだろうとおおせです」
「そうか。でもこられるんなら俺もちょっとは気が楽だな」
「それじゃシオン。あとでな」
といって二人はシオンベールの部屋を後にした。
今日からここが功助の部屋になるとのことだ。
最初に通された部屋よりかなり広く、大きな窓からは遠くの山々がよく見える。空は淡い紺色となっていてもうすぐ星が輝く時間になりそうだ。
「もうこんな時間になっていたのか」
呟く声にバスティーアがうやうやしく一礼する。
「お疲れ様でしたコースケ様。少しの間ソファーに掛けてお待ちください。侍女を連れてまいります」
と部屋を出て行こうとした。
「あっ、ちょっと待ってください」
「はい、なんでしょうか?」
「あの、黄金の竜…じゃなかった姫様はどうしているんですか?さっきの謁見の間でしたっけ、そこにもいなかったし」
「姫様でございますか?姫様は今は自室におられます。といっても人化時の部屋ではなく竜化時の大きな部屋におられます」
「そうですか。あのぅ、会えますか?」
「はい。今からでもお会いになることは可能です。お会いになられますか?」
「はい。できればお願いします」
「わかりました。それでは少しお待ちください」
バスティーアはそう言って一礼すると部屋を出て行った。
待つことしばし。ドアをノックする音がした。
「はい」
「失礼いたします」
そう言って入ってきたのは侍女を連れたバスティーアだった。
「コースケ様。紹介いたします。ここにいるのがコースケ様専属の侍女です。さ、自己紹介しなさい」
「はい」
といって侍女は一歩前に出た。
水色の髪には緑色のカチューシャをつけ、薄紫の瞳は少し垂れ気味のその侍女はスカートを少し摘み一礼しほんの少しぎこちなく笑顔を向けた。
「はじめましてコースケ・アンドー様。コースケ様の専属侍女を拝命いたしましたミュゼリア・デルフレックと申します。全身全霊を持ってコースケ様にお仕えさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます」
と言うと自分でも気づかないような小さなため息をつくとまた一礼した。
「は、はい。あ、あの…安藤…じゃない、コースケ・アンドーです。こちらこそよろしくお願いします」
一礼を返す功助。しかしバスティーアがそのようなことはしなくてもかまいませんよと少し苦笑気味だった。
「それではミュゼリア。コースケ様はシオンベール王女様にお会いになられたいとのこと。案内さしあげてください」
「はい、わかりましたバスティーア様。さ、コースケ様おいでください。私がシオンベール王女様のところまでご案内させていただきます」
「あ、お願いします」
そうして功助は専属侍女のミュゼリアについて部屋を出た。
しばらく無言で歩いてたが、いくつかの角を曲がったとこでミュゼリアが意を決し話かけてきた。
「あ……、あの、コースケ様」
「は、はい、何ですかミュ、ミュゼリアさん」
思い切って話かけたミュゼリアだったが、功助の返事に緊張していた身体の力がスッと抜けていくのがわかった。
「うふっ。私のことはミュゼリアもしくはミュゼとお呼びください」
功助の方を見て笑顔のミュゼリア。
「あ、はい。ミュゼリアさん」
「敬称もいりませんよコースケ様」
そう言って口に手を当ててクスクス笑っている。
「あ、ああ。でもなんか言いにくいな」
「なぜですか?」
少し首を傾けるとこの世界にはほとんどいない黒い瞳を見る。
「俺の故郷では会ったばかりの人を呼び捨てにすることはあまりないんで」
「へえ、そうなんですか。でも私のことは気にせずにミュゼリアもしくはミュゼとお呼びください。できればミュゼで」
最後は小さな声になったが聞き取れた。
「ああ、えーと、コホン。で、なんですかミュ、ミュ、…ミュゼ」
「へ?」
「いや、さっき俺のこと呼んだでしょ」
「あ、ああ。そうそう。いいですか少しお聞きしたいことがありまして」
「あ、はい。いいですよ。なんでも聞いてください」
「はい、ありがとうございます。その前に私に敬語などは必要ありませんので普通にお話ください」
「あ、はい。わかりました。じゃなくわかったよ」
「はい。ありがとうございます」
少し会釈するミュゼリア。なんとなくうれしそうだ。
「それでですねコースケ様。コースケ様はどのような魔法をお使いになられるんですか?」
「へ?魔法?いや、それがその…。さっきも俺の魔力…だったかな、それが強いらしいことを言われたんだけど、俺には実感がなくて。ほんとに魔力があるのかも自分ではわからないんだ」
「え?!そ、そうなんですか?魔力があるかどうかわからないんですか?」
「うん、そうなんだ」
「……信じられないです。コースケ様からは強い魔力を感じるのですが……。自覚なされてないんですね……。こんなにすごいのに、うわあ」
口に手を当ててまじまじと功助を見つめるミュゼリア。
「あの、そんなにじっと見つめられると恥ずかしいんだけど。それになんだその’うわあ’ってのは’うわあ’ってのは」
頬をポリポリかきながら苦笑する功助。
少し笑いながらミュゼリアにツッコミを入れる功助。
「あっ!す、すみません。申し訳ございません。大変失礼なことを言ってしまい。どうかお許しください」
深々と頭を下げるミュゼリア。
「へ?えと、あのちょっとちょっと待って、そんなに頭を下げなくてもいいから、な、頭を上げてくれないかな。ただのツッコミだから、な」
慌てる功助。
「へ?……あ、はい。でも、申し訳ございませんでした」
と言って再び頭を下げた。
「ま、まあいいけど……。コホン。えと、さあ、それより早く姫様のとこに行こう」
「あ、はい」
再びペコリと頭を下げると功助を先導しシオンベールの部屋に向かった。
長い廊下をまだかなあと思いながら歩いているとミュゼリアが急に振り向いた。
「あの、コースケ様。バスティーア様がおっしゃられてたのですが、コースケ様ってここの世界の人族じゃなぃって本当ですか?こことは違う世界からこられたって…」
「えっ?そ、そんなことをバスティーアさんが…」
立ち止まる功助。ミュゼリアも功助に合わせ立ち止まる。
「はい。なので魔力も桁違いに強いのだともおっしゃられてました。私もそう思いますよ」
「うーん……。たぶん、違う世界から来たと思うけど……」
「やはりそうでしたか」
と功助を見つめるミュゼリア。だが功助はミュゼリアをただ見ているだけで何も言わない。
「(それに、魔力なんてものが無い世界から来たからなあ。魔力がなんで多いのかなんて聞かれてもわからないぞ。でも、こっちの世界の人たちは他人の魔力量がわかるんだろうか。でも、あのガマガエルはわからなかったみたいだし……。それに、魔力があるとしてどうするのか。掃除のおっちゃんは自分の魔力で王女を助けられると言っていたけど、どうすればいいのか……)」
腕を組み眉間に皺を寄せミュゼリアを見ながら考える功助。
「も、申し訳ございません。お聞きすることではなかったようです。本当にすみません。どうかお許しください」
功助に向かい深々と頭を下げるミュゼリア。それを見た功助はこれはまずいとまたオロオロしてしまう。
「へ?あ、ごめん、違うから、何も怒ってないから。だからミュゼは悪くないよほんと。ボーッと考え事してしまってた俺が悪いんだからそんなに謝らないで」
「しかし…。先ほども失言があったばかりで……」
シュンとするミュゼリア。
「大丈夫だって。ミュゼはなにも悪くないから。な。ほんとだって、な、だから頭を上げてくれないか?」
「そ、そうですか。すみません」
といって一礼した。
「掃除のおっちゃんにさ」
「はい?」
「二度目に待ってた部屋に掃除のおっちゃんが入ってきてさ、掃除手伝わされたんだけどね」
「えっ?も、もしかしてその方って金髪ではなかったですか…」
「ああそうだったよ。それにくたびれた帽子と服で、確かブルーの目でボサボサの金髪のおっちゃんだったよ」
「……」
口に手を当ててなんか目が泳いでるように見えるミュゼリア。
「どうしたんだミュゼ?」
ミュゼリアの顔を覗き込むとはっとなって半歩後ろに下がった。
「す、すみません。そ、そそそれでその掃除の方は…」
「うん。そのおっちゃんが俺の魔力なら姫様を助けられるかもって言ってたんだけど、どうしたら助けられるのかなって考えてたんだ」
「そ、そ、そうですか…」
「どうしたんだ? 掃除のおっちゃんがどうかしたのか?」
「い、いえ、だ、大丈夫ですよ。はい。さ、早く行きましょう。姫様がお待ちだと思いますので」
といって前を向いて歩き出した。ただ右足と右手が同時に前に出てたが。
そしていくつもの長い廊下を通りいくつもの角を曲がりいくつもの階段を昇降しようやく大きな扉の前に着いた。
その扉の両側には青色の鎧を身に着けた兵士が微動だにせず立っていた。まるで置物のようだと思った瞬間ギロッと睨まれ背中に一筋汗が流れた。
「コースケ・アンドー様をお連れいたしました。シオンベール王女様に拝謁ご希望でございます」
深々と一礼するミュゼリア。
「うむ。ハイデス殿から連絡がきておりシオンベール王女様の許可もいただいておる。中へ入られよ」
そして閉じた扉に向かって「コースケ・アンドー様ご入室」と叫びその大きな扉を両側へ静かに開いた。
扉が大きく開き二人は中に入った。入ったとたん目の前には大きな口があった。
「わっ!」
「キャッ!」
同時に一歩後ろに下がる功助とミュゼリア。
「び、びっくりした」
目の前にはあの黄の竜の顔があった。
「ピッギャーピッギャー!」
いたずらを成功させてとてもうれしそうに手足をばたつかせる黄金の竜。
「ははは。ひさしぶり。まだ数時間しかたってないけどな」
功助が苦笑しながらそういうと竜もピギャピギャとうれしそうだ。そしてその大きな口から長い舌を出して頬をペロペロ舐めだした。
「わっわっ、おいこらそんなに舐めるなよ」
はははと笑う功助、ピギャピギャと笑う黄金の竜。横を見るとミュゼも口に手を当てて笑っている。
そして唐突に思い出した。この黄の竜はこの国の王女様だということを。王女様相手にこの態度はないんじゃないかと直立不動になる功助。
「あ、あの…。す、すみません。お前、じゃないあなたはこの国の王女様だったんですね。知らなかったとはいえ無礼をお許しください。え、えーと…、そうそう、シオンベール王女様」
といって頭を下げようとするとその鼻先が功助の顎を持ち上げた。そして目をじっと見るとピギャと一声泣いた。
続けてピギャパーギャピピーギャと竜語でしゃべっている。
竜の言葉がわからない功助は隣で両膝をついて頭を下げているミュゼに尋ねた。
「はい。姫様はこうおおせです。姫様はコースケ様だけには頭を下げて欲しくないとのことです。これまでどおり接して欲しい、普通に話してほしい。それと姫様はシオンと呼んで欲しいとおっしゃられてます」
「い、いや、でも…」
竜をじっと見る。竜も目をじっと見かえす。
「……わかったよ。これまで通りでいいんだなシオン」
「パギャーーーッ!!」
といって功助にその大きな口を近づけると…パクッ……口の中におさめられてしまった。
「わぁーーーっ!!ココココココースケ様ぁぁああ!!ちょちょちょちょっと姫様ぁぁああ、コースケ様を食べちゃダメですよぉぉ!早く吐き出してくださぁぁぁい!」
おろおろしてシオンベールの口を叩くミュゼ。本来なら一国の王女を叩くなどと無礼千万、不敬罪で手討ちにされても文句は言えないだろうがそんなことは今は関係ないと必死に叩いて功助を助けようとしている。
「ピギャ?」
と鳴いて……目を見開いてガバッと口を開けた。その口の中からヘニャヘニャとずり落ちる功助。
「コースケ様ぁ!大丈夫ですかっ!!」
あわてて功助の下に駈け寄るミュゼリア。全身唾液まみれでびしょ濡れの功助は咳き込みながらも大丈夫だと言うのがやっとだった。
「ピギャピギャピギャ」
「えっ、そ、それは…、姫様お待ちくだ…」
全部言い終わる前に二人の頭の上に大量の水が降り注いだ。
「キャアアア!!」
「うわっ!」
一瞬のうちに二人は水浸し。唾液はほとんど洗い流されたが、……全身ずぶ濡れだ。
「あーんもう姫様ぁ。酷いですよぉこれは。びしょびしょになっちゃったじゃないですかぁ。ほんとにもう、待ってくださいって言おうとしたのにぃ」
ミュゼリアはぶつぶつ文句を言っているがシオンベールはまったく悪びれた素振りもなく羽根と足をバタバタさせている。おまけに長い首も左右に振って楽しそうだ。
ミュゼリアの方を見ると、ぐっしょり濡れた侍女服がピッタリと身体に貼りつき、なんとも扇情的な姿態になってしまっている。
思わず目が釘付けになってしまう功助。服の上からだとわからなかったが濡れたことでボディラインがはっきりでてしまっている。出るとこはひかえめだが引っ込むとこは引っ込んでとなかなかのナイスバディだ。
「ん?もう!コースケ様どこ見てるんですかっ!」
両手で自分を抱くようにして睨んでいるが上目遣いなので迫力はない。
「あっ、いや、ご、ごめん」
と言って後ろを向き頭をかく。後ろからほんとにもうとため息が聞こえた。
「いいですよもうこっちを向いて」
はいとミュゼリアの方に向くとさっきのまま自分を抱くようにして少し顔を赤らめていた。
「な、なあミュゼ。どうするこれ」
「このままだと風邪ひいちゃいますよ。乾かしましょうか。一時しのぎなので後でちゃんと着替えないとですが」
そう言ってミュゼリアが手を振ると二人の周りに風の渦が現れた。二人を包むその風は暖かく見てる間に服や髪が乾いていった。
乾くといっても少し変だと感じる。着ている服からどんどんと水分が抜けていっているようだ。霧吹きのような細かい水滴がそこら中に浮いている。それが少し離れたところで一つになり大きな水の球になった。
「すごいなこれは。ミュゼの魔法なのか?」
「はいそうです。生活魔法なんですが便利な魔法でしょ。といってる間にほらほとんど乾きましたよ」
少しドヤ顔のミュゼリア。魔法って便利だなと感心する功助。
「で、あれはどうするんだ」
空中には水の球がプカプカ浮いている。けっこうな大きさで部屋の光を反射してきれいに輝いている。まるでミラーボールのようだが汚水には違いない。
「あっ、えーとえーと」
何も考えてなかったようだ。
「す、捨てましょう」
といって開いている窓を指差した。それに従うように水球は窓の外に飛んでいった。
「ギャーー!」
誰かの叫び声が聞こえた。
「「あっ」」
顔を見合わせる二人。運悪く外には誰かがいたようだ。
「誰だ無礼者、出てこい!手討ちにしてやる」
ギャーギャーと男の声が聞こえたが、聞こえなかったふりをする二人。
コホンとわざとらしく咳をしてシオンベールの方に顔を向けた。
「なあシオン」
「パギャ?」
目の前でお座りをして少し頭を傾けるシオン。
「しばらくの間この城で世話になることになったよ。よろしくな」
「パギャーーー!」
翼をひろげて喜んでいるシオンベール。そして顔を近づけてくるとその鼻先をこすりつけてきた。
功助はその鼻先を撫でるともう一度よろしくなと言ってポンポンと叩いた。
「コースケ様。もうそろそろお時間となります。陛下をはじめ王妃様たちとの会食が予定されています。服も着替えないといけませんので自室へお戻りください」
とミュゼリア。
「えっ、そうなの。会食が。知らなかった。けど、そんなとこに行ってもいいのかな俺」
「何をおっしゃいます。コースケ様は主賓なんですよ。そんなことお考えにならなくても大丈夫です」
「そ、そうなのか。うーむ、でもシオンは参加できるのか?」
シオンベールの方を見ると
「パギャピギャ」
と言っている。
わからないのでミュゼリアに尋ねた。
「ご列席されるそうですが一緒に食事はとれないだろうとおおせです」
「そうか。でもこられるんなら俺もちょっとは気が楽だな」
「それじゃシオン。あとでな」
といって二人はシオンベールの部屋を後にした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
【完結】うだつが上がらない底辺冒険者だったオッサンは命を燃やして強くなる
邪代夜叉(ヤシロヤシャ)
ファンタジー
まだ遅くない。
オッサンにだって、未来がある。
底辺から這い上がる冒険譚?!
辺鄙の小さな村に生まれた少年トーマは、幼い頃にゴブリン退治で村に訪れていた冒険者に憧れ、いつか自らも偉大な冒険者となることを誓い、十五歳で村を飛び出した。
しかし現実は厳しかった。
十数年の時は流れてオッサンとなり、その間、大きな成果を残せず“とんまのトーマ”と不名誉なあだ名を陰で囁かれ、やがて採取や配達といった雑用依頼ばかりこなす、うだつの上がらない底辺冒険者生活を続けていた。
そんなある日、荷車の護衛の依頼を受けたトーマは――
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる