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第2章 それぞれの望み
02 魔力測定、そして功助の頼み
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「いらっしゃ~~いっダーリン。待ってたわよ~~(ハート)」
「ななんですかその(ハート)っていうのは」
「愛よ。それよりほんとにもう、いつあの隠蔽の魔法を使って夜這いに来てくれるのかってずーっと待ってたのにぃ、なんでまだ来てくれないのよぉ」
「よ、夜這いって…、コースケ様」
とミュゼリアは口に手を当てて功助を見る。
「ち、違う違う。そんなことしないから。俺はそんな夜這いなんてしないからっ。な、ミュゼ信じてくれ」
「は、はい。よかった」
ふうとため息をつくミュゼリア。
「いやんダーリン、そんな恥ずかしがらなくてもいいのぉ。ミュゼちゃんにはホントのこと言ってもいいのよぉ。ねえダーリン。あたしはいつダーリンが来ても準備オッケーよ。いつもどこでも入ってきていいのよぉ。昨日だってお風呂入ってパンツはかずに待ってーーーいったぁぁぁぁぁいっ!」
バコーンという音とともにシャリーナはもんどりうって床に転がった。
「ほんとにもう、このおとぼけ淫乱女はっ!何度自制しろと言ったらわかるのですかっ!今度私の前でそんなハレンチ発言をしたら縄でグルグル巻きにしてヒエール氷河の中にぶち込んで上から氷山で埋めますからねっ!!」
「縄でグルグルって、できれば痛くないように縛ってねって…。そんなことより痛いじゃないのラナーシアっ!どうしてあんたはあたしの可愛い頭をバカスカ叩くのよっ!!」
「おだまりなさいっ!」
といってまた大きな板を振り上げようとしている。
「わっわっわっ、わかったからもうぶたないで。お、お願いしますっ!ごめんなさいっ!」
と言ってカサカサカサと部屋の隅に逃げていった。
「なんですかその逃げ方はっ!あなたはゴキブリですかっ!魔法師の隊長なら隊長らしい逃げ方をしてくださいっ!」
「たたたた隊長らしい逃げ方ってどうすんのよっ!」
「それくらい自分で考えなさいっ!」
と鼻息荒く肩で息をしているラナーシア。とても止めることはできないと冷や汗を流す功助とミュゼリア。
「コースケ殿。本当に申し訳ございません。このおとぼけ淫乱隊長にはまたきつく言っておきますので。ほんとうにすみません」
と何度も何度も頭を下げるラナーシア。
「あ、あはは。いつものことですので」
「ほんとすみません。隊長!」
「は、はいっ!」
ドスドスと足音をたてて部屋の隅で丸まってるシャリーナに近づくラナーシア。そして笑ってない目を向けて笑顔を向けた。
「さあ、コースケ殿の魔力量を見るんでしょう。早くみてあげてください。さ、早くするっ!」
「は、はいっ!」
「うー…。はむはむ…。えーと…。うんうん…。はいはい…。おおっ!」
眉間を寄せたり、下唇を噛んだり、首をひねったり、頷いたり、最後には強く手を握ったりと忙しそうなシャリーナ。
「だいたいわかったわよダーリン」
窓には厚手のカーテンがひかれテーブルの上には15センチほどの水晶の玉が黒い座布団に鎮座し、集中力があがるからとハーブ系の香りを炊いて功助の魔力量を調べている。
「で、どうでした。俺の魔力量は」
「そうねえ…。まあ、多いわよ。とーーっても。あたしたちが束になってもまったく歯が立たないくらいにね」
「隊長、それは真ですか?」
「うん。というか、合ってると思うんだけど。あたしもこれほどの魔力量の人を見たことないからねえ。今まで一番魔力量が多かったのはうちの陛下だったしねえ。でも、その陛下の魔力量もダーリンの魔力量に比べたら水浴び用の盥と4,50人入れる大浴場ぐらいの差があるとおもうわよ」
「な、なんですかそれは。コースケ殿にはそれほどの魔力量があるというのですか」
「そうよ。もしかしたら大浴場以上あるかもしれないかも……。ほんとにもう、あきれを通り越して拝みたくなるほどだわよ」
と呆然とするラナーシアと微笑するシャリーナ。
「そっ、そ、それはもしかしてけっこう凄いことなんですか…?」
と功助。
「凄いどころじゃないってダーリン。ダーリン一人でこの世界を征服できるくらいの魔力量なのよ。やってみる?手伝うわよ。ふふふ」
と黒い笑みのシャリーナ。
パコーン
スリッパを振りぬいて立つラナーシアがそこにいた。
「いったあああい!。また、殴るぅ。エッチいことは言ってないわよあたしぃ」
と頭を摩り涙目のシャリーナ。
「そんな危険な発言も鉄拳の対象ですっ!」
「あ、あはははは。い、言ってみただけよ。本当よ、本当」
「どうだか」
とラナーシア。
「ということは…、それはやっぱり……。もしかしておれってめっちゃ危険なんじゃ…」
と米噛みに一滴の汗が。
「それはご心配いりませんコースケ様。コースケ様はそのようなことをお考えになるはずありませんから。私はコースケ様を信じておりますので」
と鎖骨の前で右拳をグーにするミュゼリア。
「あ、ありがとうミュゼ」
「まあ、そんな話は置いといて……。確かにダーリンの魔力量は多いわよ。関係ないけど、白竜城で一番魔力量が多いのは陛下よ。それから陛下の次に多いのがあたし。でも今はもう陛下もお歳だしかなり減ってるとはおもうけど。それから次に多いのは姫様になるかしら。姫様もけっこう多い方なんだけど、今はおそらく半分以下になってると思うわよ。んで、その姫様の次に多いのは誰だとおもうダーリン」
「へ?そうですねえ…。ベルクリットさんかなあ」
「違いま~す、不正解でーす。姫様の次に覆いののは、なんとミュゼちゃんでーす。知らなかったでしょダーリン」
「えっ!!ミュゼが!す、すごいんだなあミュゼ」
「わ、わ、私なんか魔力量が多いだけで…あははは」
「いやあすごい侍女なんだなあミュゼは。でも…」
「でも、なんでしょうかコースケ様」
と小首をひねる。
「でも、それだけの魔力量があるのになんで魔法師隊に入らなかったんだ?もしかしてフィルに遠慮してとか」
「ち、違いますよ。フィルは関係ありません。私は魔法師隊に入ることよりお世話する方が性に合ってるんで。侍女のお仕事が私の天職だと思っています」
と胸を張るミュゼリア。
「ごめん……。そっか。侍女の方が……。そうだよな。ミュゼは侍女の方が似合うと思うよ」
「はい。ありがとうございます」
と一礼した。
「でも、もったいないのよねえ。ミュゼちゃんが魔法師隊に入ってくれてたらあたしもラナーシアにバカスカ殴られずにすんだかもしれないのにねえ」
ほんともったいないとぶつぶつ言っていた。
「さあ。これで魔力量をみるのはおしまいね」
「えっ、ちょっ、ちょっと待ってくださいシャリーナさん」
「ん?なあに」
「で、俺はどうしたらいいんでしょうか。こんなに巨大な魔力量をどうすれば…」
「ん?それは決まってるじゃない」
とシャリーナ。
「決まってる?」
「そうよ。魔力量が巨大だろうと極小だろうとそれを使うのはダーリンなのよ。ダーリンさえしっかりしてればなんの問題もないわよ。そう、ダーリンは自分の意志で英雄にもなれるし魔王にもなれる。この意味わかるわよね」
「……」
「コースケ様。私は短い間ですがコースケ様にお仕えしてきました。コースケ様の人となりは私なりにわかっているつもりです。コースケ様は心優しく誰にでも分け隔てなく接しておられました。それこそ奴隷の方々にも気さくにお声をかけたりしておられました。私はそんなコースケ様を尊敬し目標とさせていただいております。コースケ様。コースケ様は魔王になんかは絶対にならないです。そうです。英雄まっしぐらです。私が保障しますっ!!」
冷静に話をしていたが次第に力が入り最後には鼻息荒く拳を握り熱弁していた。
「あ、ありがとうミュゼ。そうだな。俺自信しっかりしてればこの世界を手に入れようなんてことは考えないよな。まあ、もともと俺にそんな征服欲なんてないし大丈夫だ」
とミュゼリアのマネをして鎖骨の前で拳を握った。
「んじゃダーリン、お昼ご飯いかない?」
「え、ああ。いいですよみんなで行きましょう。いいよなミュゼ」
「はい。みんなで行きましょう」
シャリーナのリクエストで四人は二食に向かった。
二食から出るとシャリーナを引き留める功助。二人きりで話がしたいというと快く応じるシャリーナ。ただ上目づかいで足をこすり合わせていた。あははと頭をかく功助。
「ダ、ダーリン。い、いつでもオーケーよあたし。うふん」
「シャ、シャリーナさん。ち、違いますって。俺はちょっと頼みたいことがあるんです。とても大切なことなんで」
と顔の前で手をブンブン振る。
「はいはい。わかってますよぉ。真面目な話ってなんとなーく苦手なのよねえ。でも、ダーリンの相談なら大丈夫。このシャリーナお姉さんにまかしといてね」
とその豊かな胸をドンと叩いた。”あはん”という声とともに。
「は、はい。ははは」
二人は今誰もいない庭のベンチに座っている。ミュゼリアにも二人きりで話をしたいというと少し心配そうにシャリーナを見たが、わかりましたとしぶしぶ承諾した。しかし何があってもいいようにとここから20メートルほど離れた庭の出入り口でこちらに向かって立っている。
「で、ダーリン。頼みたいことってなあに」
「はい。俺の元の世界への帰還方法は知ってますか?」
「うん。姫様の牙を使うんでしょ。聞いたわよ。でもちょっとばかし残酷よね」
と嘆息する。
「はい。それでですね、シャリーナさんに調べてもらいたいことがあるんですが……」
功助は魔法師隊の隊長であるシャリーナにしかできないだろうことを頭を下げて頼む。
「うーん。いいけど。そのお願いなら禁書も見て見ないといけないわね。でもねぇ……。でも、ここじゃ調べるのはちょっと難しいわね。ここの図書塔よりももっと大きくていかなる禁書も置いてあるという魔法都市、セントラル・マギシティーの図書島に行かないといけないでしょうね」
「セントラル・マギシティーの図書島…」
「ええ。広いわよぉ。私も仕事で何度か行ったことあるけど、大きな島ひとつがぜーんぶ図書館なのよ。何冊の本が所蔵されてるのかわからないくらいたくさんの本があるの。でも案内人が言ってたんだけど2億冊はあるって偉そうにしてたわね。まあ、本当かどうかはわからないけど」
「す、すごい。そんな島があるんですね」
日本の国立図書館では確か一千万冊くらいだったか。しかし印刷技術が発達していないこの世界で二億冊は天文学的数字であろう。
「で、ダーリン。あたしと二人きりで行くの?」
「あっ……。ど、どうしましょう」
「ふふふ。まあ、ダーリンがこの世界の図書島に行ってもなーんもおもしろくもないでしょうね。わかったわ。セントラル・マギシティーにはあたし一人で行くから。一人の方が早くみつけることができるだろうしね」
「す、すみません。ありがとうございます。で、そこまでは遠いんですか?」
人差指を顎にあてて考えるシャリーナ。
「そうねえ。、まあ陸路を歩くとして片道1週間、海路だと船で5日ほどかな。竜化した竜族に乗せてもらえれば2日ほどで着くかしら」
「そうなんですか。他には何か必要なものはありますか?」
「そうねえ。この図書島に入るのに国王の許可状がいるのよねえ。それに禁書の閲覧にはかなりのお金が必要だし。往復の旅費だって必要になるわ。お金持ってるのダーリン」
「うっ…」
この時自分が一文無しだったのを思い出した。城内では金は必要ないし、城外に出たこともないので買い物もしない。
「ど、どうしましょう。俺一文無しの貧乏人でした。誰か貸してもらえる人いませんか。それか何か稼げる仕事はないでしょうか…」
頭をかかえてうなだれる功助。
「ふふふ。だぁいじょうぶよぉダーリン。あなたは本当は大金持ちなのよ、知ってた?」
「へ?俺がですか?」
「そうよ」
と言って説明をするシャリーナ。
「懸賞金ですか?」
「そう、フェンリルには懸賞金がかかっていたのよね。それも超高額よ。陛下がかけたんだけど、姫様が襲われたのもあるでしょうけど、あんな災害急の魔物を野放しにできないからってのもあるから。それと魔族にもかかっていたわよ。これはヌーナのギルドからかけられていたもので、魔族はこの世界では危険なものだから継続的にかけられてるのよね。ということで、ダーリンはフェンリル討伐と魔族2体の討伐ね。そうそう、魔族の一人は騎士たちが倒したからダーリンの実績にはならないからね。でも、この3つあれば小さな町くらいは買えるくらいの賞金が出るわよ」
「そ、そうなんですか!で、その受け取り方法はどうすればいいんですか!?」
ズズッとシャリーナに近づく功助。おっとっとと避けるシャリーナ。
「うわっ、近いってダーリン。うふふふ。まあ、それは大丈夫よ。あたしが陛下に言っといてあげるから。ダーリンは何もしなくてもいいのよ、安心してなさいな」
「えっ、いいんですか。みんなシャリーナさんにしてもらっても」
「いいわよ。だから、私が図書島に行ってる間、ダーリンには頼みたいことがあるんだけど」
「はい。俺にできることならなんでも言ってください」
「ありがと。んじゃ、あたしがいない間、魔法師隊の臨時隊長になってね」
「へ?」
「何があるかわからないからさ。非常時は頼んだわよダーリン」
と功助の肩をパシパシ叩く。
「で、でも…。臨時とはいえ隊長なんて俺には…」
両手をパタパタするがシャリーナは苦笑い。
「大丈夫よダーリン。ラナーシアもいるし安心して。だぁいじょうぶ。あなたならできるわよ。まあ、そんな大変なことなんてなーんにも起こらないわよきっと」
「で、でも…。俺、魔法もあの魔力砲以外にできるのかどうかもわからないし、元の世界じゃケンカもしたことなくて格闘技もできる自信がないし…」
「ふーん。んじゃさ、ちょっと見せて」
シャリーナはそう言うとベンチからピョンと飛び降りるとスタスタと庭の真ん中に歩いていった。
「シャリーナさん……、見せてって……?」
「いいからいいからちょっとこっち来て」
「は、はあ…」
功助はよっこいしょとベンチから立つと庭の真ん中に立っているシャリーナと向かい合う形で正面に立った。
「はい、ダーリン」
どこから出したのか一本の細剣を功助に手渡すと自分も手渡したものと同じ細剣を構えた。
「それじゃダーリン、行くわよ!」
「へ?あっ、ちょっ…!」
静止しようとする間もなくシャリーナは右手に持った剣を横なぎにふるった。それを紙一重で避ける功助。
「わっ!シャ…」
抗議の声をあげようとするがシャリーナはそれを許さず。何度も何度も剣をふるった。少しずつ後退する功助。
「ダーリン、後退ばっかりしててもダメよ。あなたも攻撃して!」
シャリーナは少し後ろに下がると細剣を突き出した。
「で、でも…」
「問答無用!」
今度シャリーナは細剣を両手で構えると功助の頭頂部めがけ振り下ろした。
「わっ!」
それを余裕をもって横に避けたが自分の動きに自分が驚いた。
「あ、あれ?」
「いい動きしてるわね。でも、どうしたの?」
左手の掌を剣の腹でペシペシと叩いて功助を見るシャリーナ。
「えっ、あ、はい。あのシャリーナさん、今の攻撃ゆっくりと振り下ろしました?」
「へ?今の?いいえ。思いっきり振り下ろしたわよ。なんで?」
「へ…。そうですか。あ、はい。今の攻撃が滅茶苦茶ゆっくりに感じたので…」
「ふーん、そう。なら、これはどう!」
シャリーナは右薙ぎから逆袈裟切り、刺突に見せかけ袈裟切りすると再び脳天から剣を振り下ろした。
だが功助はそれらすべてを剣でいなし、そして避けた。
「わかった?ダーリン」
攻撃を止めて一歩下がるとシャリーナはうれしそうに功助に微笑んだ。
「あ、は、はあ…。でも、なんで全部避けられたのかな…」
うれしそうなシャリーナを見つめてあっけにとられる功助。
「まだわかってないのね」
ふうと大きくため息をつくと手に持っていた細剣をパッと消した。それと同時に功助が持っていた剣も消えた。
「あのね、ダーリン、あなた運動能力が劇的に向上してるのよ」
「へ?そ、そうなんですか?」
「そうなのよ。たぶんフェンリルと戦ってるうちにどんどん上がっていったんじゃないかな。だからあたしの攻撃なんて余裕で避けられたんだと思うわよ」
これでもけっこうマジだったんだけどねと両手を腰に当てて胸を張るシャリーナ。その時爆乳がブルンと揺れた。
「そ、そうなんですか…」
それを診ないように腕を組み宙を見つめる功助。
「そうよ。だから臨時隊長のことよろしくね」
「えっ、でも……」
「あああっ、いいのっかなあ」
とシャリーナは横目で功助を見る。
「す、すみません。そうですよね、無理を言っているのは俺の方ですから…。はい。わかりました。臨時隊長を引き受けます」
「オッケー。これで商談成立ねダーリン。あっ!あれは何っ!!」
「えっ」
あわててシャリーナが指差す方向を見るが何も確認できない功助。するとふいに頬に柔らかい感触が。
「チュッ」
「えっ…」
シャリーナが功助の頬にキスをしてきた。
「あ、シャリーナさん」
「えへへ」
とニコニコ笑っているがその顔は赤かった。
「シャリーナさん…」
「んじゃ引き受けたからね。ダーリンもよろしくっ!」
とパタパタ走って城の仲に入っていった。
「コースケ様ぁ!」
ドドドドドッとミュゼリアがまたもやスカートを持ち上げて走ってきた。
「コココココココ」
「鶏かミュゼは」
「ち、違いますよ私は竜族です…ってそんなことじゃなくってですね、大丈夫ですかっ。シャリーナ隊長に大事なものを奪われたんじゃありませんかっ!」
「ははは。大丈夫だよ。ただほっぺたにチューされただけだから」
「……!っ」
顔を赤くするミュゼリア。
「ほ……ほんとにもう、シャリーナ隊長はっ……!」
去って行った方を見て地団太を踏むミュゼリアだった。
「ななんですかその(ハート)っていうのは」
「愛よ。それよりほんとにもう、いつあの隠蔽の魔法を使って夜這いに来てくれるのかってずーっと待ってたのにぃ、なんでまだ来てくれないのよぉ」
「よ、夜這いって…、コースケ様」
とミュゼリアは口に手を当てて功助を見る。
「ち、違う違う。そんなことしないから。俺はそんな夜這いなんてしないからっ。な、ミュゼ信じてくれ」
「は、はい。よかった」
ふうとため息をつくミュゼリア。
「いやんダーリン、そんな恥ずかしがらなくてもいいのぉ。ミュゼちゃんにはホントのこと言ってもいいのよぉ。ねえダーリン。あたしはいつダーリンが来ても準備オッケーよ。いつもどこでも入ってきていいのよぉ。昨日だってお風呂入ってパンツはかずに待ってーーーいったぁぁぁぁぁいっ!」
バコーンという音とともにシャリーナはもんどりうって床に転がった。
「ほんとにもう、このおとぼけ淫乱女はっ!何度自制しろと言ったらわかるのですかっ!今度私の前でそんなハレンチ発言をしたら縄でグルグル巻きにしてヒエール氷河の中にぶち込んで上から氷山で埋めますからねっ!!」
「縄でグルグルって、できれば痛くないように縛ってねって…。そんなことより痛いじゃないのラナーシアっ!どうしてあんたはあたしの可愛い頭をバカスカ叩くのよっ!!」
「おだまりなさいっ!」
といってまた大きな板を振り上げようとしている。
「わっわっわっ、わかったからもうぶたないで。お、お願いしますっ!ごめんなさいっ!」
と言ってカサカサカサと部屋の隅に逃げていった。
「なんですかその逃げ方はっ!あなたはゴキブリですかっ!魔法師の隊長なら隊長らしい逃げ方をしてくださいっ!」
「たたたた隊長らしい逃げ方ってどうすんのよっ!」
「それくらい自分で考えなさいっ!」
と鼻息荒く肩で息をしているラナーシア。とても止めることはできないと冷や汗を流す功助とミュゼリア。
「コースケ殿。本当に申し訳ございません。このおとぼけ淫乱隊長にはまたきつく言っておきますので。ほんとうにすみません」
と何度も何度も頭を下げるラナーシア。
「あ、あはは。いつものことですので」
「ほんとすみません。隊長!」
「は、はいっ!」
ドスドスと足音をたてて部屋の隅で丸まってるシャリーナに近づくラナーシア。そして笑ってない目を向けて笑顔を向けた。
「さあ、コースケ殿の魔力量を見るんでしょう。早くみてあげてください。さ、早くするっ!」
「は、はいっ!」
「うー…。はむはむ…。えーと…。うんうん…。はいはい…。おおっ!」
眉間を寄せたり、下唇を噛んだり、首をひねったり、頷いたり、最後には強く手を握ったりと忙しそうなシャリーナ。
「だいたいわかったわよダーリン」
窓には厚手のカーテンがひかれテーブルの上には15センチほどの水晶の玉が黒い座布団に鎮座し、集中力があがるからとハーブ系の香りを炊いて功助の魔力量を調べている。
「で、どうでした。俺の魔力量は」
「そうねえ…。まあ、多いわよ。とーーっても。あたしたちが束になってもまったく歯が立たないくらいにね」
「隊長、それは真ですか?」
「うん。というか、合ってると思うんだけど。あたしもこれほどの魔力量の人を見たことないからねえ。今まで一番魔力量が多かったのはうちの陛下だったしねえ。でも、その陛下の魔力量もダーリンの魔力量に比べたら水浴び用の盥と4,50人入れる大浴場ぐらいの差があるとおもうわよ」
「な、なんですかそれは。コースケ殿にはそれほどの魔力量があるというのですか」
「そうよ。もしかしたら大浴場以上あるかもしれないかも……。ほんとにもう、あきれを通り越して拝みたくなるほどだわよ」
と呆然とするラナーシアと微笑するシャリーナ。
「そっ、そ、それはもしかしてけっこう凄いことなんですか…?」
と功助。
「凄いどころじゃないってダーリン。ダーリン一人でこの世界を征服できるくらいの魔力量なのよ。やってみる?手伝うわよ。ふふふ」
と黒い笑みのシャリーナ。
パコーン
スリッパを振りぬいて立つラナーシアがそこにいた。
「いったあああい!。また、殴るぅ。エッチいことは言ってないわよあたしぃ」
と頭を摩り涙目のシャリーナ。
「そんな危険な発言も鉄拳の対象ですっ!」
「あ、あはははは。い、言ってみただけよ。本当よ、本当」
「どうだか」
とラナーシア。
「ということは…、それはやっぱり……。もしかしておれってめっちゃ危険なんじゃ…」
と米噛みに一滴の汗が。
「それはご心配いりませんコースケ様。コースケ様はそのようなことをお考えになるはずありませんから。私はコースケ様を信じておりますので」
と鎖骨の前で右拳をグーにするミュゼリア。
「あ、ありがとうミュゼ」
「まあ、そんな話は置いといて……。確かにダーリンの魔力量は多いわよ。関係ないけど、白竜城で一番魔力量が多いのは陛下よ。それから陛下の次に多いのがあたし。でも今はもう陛下もお歳だしかなり減ってるとはおもうけど。それから次に多いのは姫様になるかしら。姫様もけっこう多い方なんだけど、今はおそらく半分以下になってると思うわよ。んで、その姫様の次に多いのは誰だとおもうダーリン」
「へ?そうですねえ…。ベルクリットさんかなあ」
「違いま~す、不正解でーす。姫様の次に覆いののは、なんとミュゼちゃんでーす。知らなかったでしょダーリン」
「えっ!!ミュゼが!す、すごいんだなあミュゼ」
「わ、わ、私なんか魔力量が多いだけで…あははは」
「いやあすごい侍女なんだなあミュゼは。でも…」
「でも、なんでしょうかコースケ様」
と小首をひねる。
「でも、それだけの魔力量があるのになんで魔法師隊に入らなかったんだ?もしかしてフィルに遠慮してとか」
「ち、違いますよ。フィルは関係ありません。私は魔法師隊に入ることよりお世話する方が性に合ってるんで。侍女のお仕事が私の天職だと思っています」
と胸を張るミュゼリア。
「ごめん……。そっか。侍女の方が……。そうだよな。ミュゼは侍女の方が似合うと思うよ」
「はい。ありがとうございます」
と一礼した。
「でも、もったいないのよねえ。ミュゼちゃんが魔法師隊に入ってくれてたらあたしもラナーシアにバカスカ殴られずにすんだかもしれないのにねえ」
ほんともったいないとぶつぶつ言っていた。
「さあ。これで魔力量をみるのはおしまいね」
「えっ、ちょっ、ちょっと待ってくださいシャリーナさん」
「ん?なあに」
「で、俺はどうしたらいいんでしょうか。こんなに巨大な魔力量をどうすれば…」
「ん?それは決まってるじゃない」
とシャリーナ。
「決まってる?」
「そうよ。魔力量が巨大だろうと極小だろうとそれを使うのはダーリンなのよ。ダーリンさえしっかりしてればなんの問題もないわよ。そう、ダーリンは自分の意志で英雄にもなれるし魔王にもなれる。この意味わかるわよね」
「……」
「コースケ様。私は短い間ですがコースケ様にお仕えしてきました。コースケ様の人となりは私なりにわかっているつもりです。コースケ様は心優しく誰にでも分け隔てなく接しておられました。それこそ奴隷の方々にも気さくにお声をかけたりしておられました。私はそんなコースケ様を尊敬し目標とさせていただいております。コースケ様。コースケ様は魔王になんかは絶対にならないです。そうです。英雄まっしぐらです。私が保障しますっ!!」
冷静に話をしていたが次第に力が入り最後には鼻息荒く拳を握り熱弁していた。
「あ、ありがとうミュゼ。そうだな。俺自信しっかりしてればこの世界を手に入れようなんてことは考えないよな。まあ、もともと俺にそんな征服欲なんてないし大丈夫だ」
とミュゼリアのマネをして鎖骨の前で拳を握った。
「んじゃダーリン、お昼ご飯いかない?」
「え、ああ。いいですよみんなで行きましょう。いいよなミュゼ」
「はい。みんなで行きましょう」
シャリーナのリクエストで四人は二食に向かった。
二食から出るとシャリーナを引き留める功助。二人きりで話がしたいというと快く応じるシャリーナ。ただ上目づかいで足をこすり合わせていた。あははと頭をかく功助。
「ダ、ダーリン。い、いつでもオーケーよあたし。うふん」
「シャ、シャリーナさん。ち、違いますって。俺はちょっと頼みたいことがあるんです。とても大切なことなんで」
と顔の前で手をブンブン振る。
「はいはい。わかってますよぉ。真面目な話ってなんとなーく苦手なのよねえ。でも、ダーリンの相談なら大丈夫。このシャリーナお姉さんにまかしといてね」
とその豊かな胸をドンと叩いた。”あはん”という声とともに。
「は、はい。ははは」
二人は今誰もいない庭のベンチに座っている。ミュゼリアにも二人きりで話をしたいというと少し心配そうにシャリーナを見たが、わかりましたとしぶしぶ承諾した。しかし何があってもいいようにとここから20メートルほど離れた庭の出入り口でこちらに向かって立っている。
「で、ダーリン。頼みたいことってなあに」
「はい。俺の元の世界への帰還方法は知ってますか?」
「うん。姫様の牙を使うんでしょ。聞いたわよ。でもちょっとばかし残酷よね」
と嘆息する。
「はい。それでですね、シャリーナさんに調べてもらいたいことがあるんですが……」
功助は魔法師隊の隊長であるシャリーナにしかできないだろうことを頭を下げて頼む。
「うーん。いいけど。そのお願いなら禁書も見て見ないといけないわね。でもねぇ……。でも、ここじゃ調べるのはちょっと難しいわね。ここの図書塔よりももっと大きくていかなる禁書も置いてあるという魔法都市、セントラル・マギシティーの図書島に行かないといけないでしょうね」
「セントラル・マギシティーの図書島…」
「ええ。広いわよぉ。私も仕事で何度か行ったことあるけど、大きな島ひとつがぜーんぶ図書館なのよ。何冊の本が所蔵されてるのかわからないくらいたくさんの本があるの。でも案内人が言ってたんだけど2億冊はあるって偉そうにしてたわね。まあ、本当かどうかはわからないけど」
「す、すごい。そんな島があるんですね」
日本の国立図書館では確か一千万冊くらいだったか。しかし印刷技術が発達していないこの世界で二億冊は天文学的数字であろう。
「で、ダーリン。あたしと二人きりで行くの?」
「あっ……。ど、どうしましょう」
「ふふふ。まあ、ダーリンがこの世界の図書島に行ってもなーんもおもしろくもないでしょうね。わかったわ。セントラル・マギシティーにはあたし一人で行くから。一人の方が早くみつけることができるだろうしね」
「す、すみません。ありがとうございます。で、そこまでは遠いんですか?」
人差指を顎にあてて考えるシャリーナ。
「そうねえ。、まあ陸路を歩くとして片道1週間、海路だと船で5日ほどかな。竜化した竜族に乗せてもらえれば2日ほどで着くかしら」
「そうなんですか。他には何か必要なものはありますか?」
「そうねえ。この図書島に入るのに国王の許可状がいるのよねえ。それに禁書の閲覧にはかなりのお金が必要だし。往復の旅費だって必要になるわ。お金持ってるのダーリン」
「うっ…」
この時自分が一文無しだったのを思い出した。城内では金は必要ないし、城外に出たこともないので買い物もしない。
「ど、どうしましょう。俺一文無しの貧乏人でした。誰か貸してもらえる人いませんか。それか何か稼げる仕事はないでしょうか…」
頭をかかえてうなだれる功助。
「ふふふ。だぁいじょうぶよぉダーリン。あなたは本当は大金持ちなのよ、知ってた?」
「へ?俺がですか?」
「そうよ」
と言って説明をするシャリーナ。
「懸賞金ですか?」
「そう、フェンリルには懸賞金がかかっていたのよね。それも超高額よ。陛下がかけたんだけど、姫様が襲われたのもあるでしょうけど、あんな災害急の魔物を野放しにできないからってのもあるから。それと魔族にもかかっていたわよ。これはヌーナのギルドからかけられていたもので、魔族はこの世界では危険なものだから継続的にかけられてるのよね。ということで、ダーリンはフェンリル討伐と魔族2体の討伐ね。そうそう、魔族の一人は騎士たちが倒したからダーリンの実績にはならないからね。でも、この3つあれば小さな町くらいは買えるくらいの賞金が出るわよ」
「そ、そうなんですか!で、その受け取り方法はどうすればいいんですか!?」
ズズッとシャリーナに近づく功助。おっとっとと避けるシャリーナ。
「うわっ、近いってダーリン。うふふふ。まあ、それは大丈夫よ。あたしが陛下に言っといてあげるから。ダーリンは何もしなくてもいいのよ、安心してなさいな」
「えっ、いいんですか。みんなシャリーナさんにしてもらっても」
「いいわよ。だから、私が図書島に行ってる間、ダーリンには頼みたいことがあるんだけど」
「はい。俺にできることならなんでも言ってください」
「ありがと。んじゃ、あたしがいない間、魔法師隊の臨時隊長になってね」
「へ?」
「何があるかわからないからさ。非常時は頼んだわよダーリン」
と功助の肩をパシパシ叩く。
「で、でも…。臨時とはいえ隊長なんて俺には…」
両手をパタパタするがシャリーナは苦笑い。
「大丈夫よダーリン。ラナーシアもいるし安心して。だぁいじょうぶ。あなたならできるわよ。まあ、そんな大変なことなんてなーんにも起こらないわよきっと」
「で、でも…。俺、魔法もあの魔力砲以外にできるのかどうかもわからないし、元の世界じゃケンカもしたことなくて格闘技もできる自信がないし…」
「ふーん。んじゃさ、ちょっと見せて」
シャリーナはそう言うとベンチからピョンと飛び降りるとスタスタと庭の真ん中に歩いていった。
「シャリーナさん……、見せてって……?」
「いいからいいからちょっとこっち来て」
「は、はあ…」
功助はよっこいしょとベンチから立つと庭の真ん中に立っているシャリーナと向かい合う形で正面に立った。
「はい、ダーリン」
どこから出したのか一本の細剣を功助に手渡すと自分も手渡したものと同じ細剣を構えた。
「それじゃダーリン、行くわよ!」
「へ?あっ、ちょっ…!」
静止しようとする間もなくシャリーナは右手に持った剣を横なぎにふるった。それを紙一重で避ける功助。
「わっ!シャ…」
抗議の声をあげようとするがシャリーナはそれを許さず。何度も何度も剣をふるった。少しずつ後退する功助。
「ダーリン、後退ばっかりしててもダメよ。あなたも攻撃して!」
シャリーナは少し後ろに下がると細剣を突き出した。
「で、でも…」
「問答無用!」
今度シャリーナは細剣を両手で構えると功助の頭頂部めがけ振り下ろした。
「わっ!」
それを余裕をもって横に避けたが自分の動きに自分が驚いた。
「あ、あれ?」
「いい動きしてるわね。でも、どうしたの?」
左手の掌を剣の腹でペシペシと叩いて功助を見るシャリーナ。
「えっ、あ、はい。あのシャリーナさん、今の攻撃ゆっくりと振り下ろしました?」
「へ?今の?いいえ。思いっきり振り下ろしたわよ。なんで?」
「へ…。そうですか。あ、はい。今の攻撃が滅茶苦茶ゆっくりに感じたので…」
「ふーん、そう。なら、これはどう!」
シャリーナは右薙ぎから逆袈裟切り、刺突に見せかけ袈裟切りすると再び脳天から剣を振り下ろした。
だが功助はそれらすべてを剣でいなし、そして避けた。
「わかった?ダーリン」
攻撃を止めて一歩下がるとシャリーナはうれしそうに功助に微笑んだ。
「あ、は、はあ…。でも、なんで全部避けられたのかな…」
うれしそうなシャリーナを見つめてあっけにとられる功助。
「まだわかってないのね」
ふうと大きくため息をつくと手に持っていた細剣をパッと消した。それと同時に功助が持っていた剣も消えた。
「あのね、ダーリン、あなた運動能力が劇的に向上してるのよ」
「へ?そ、そうなんですか?」
「そうなのよ。たぶんフェンリルと戦ってるうちにどんどん上がっていったんじゃないかな。だからあたしの攻撃なんて余裕で避けられたんだと思うわよ」
これでもけっこうマジだったんだけどねと両手を腰に当てて胸を張るシャリーナ。その時爆乳がブルンと揺れた。
「そ、そうなんですか…」
それを診ないように腕を組み宙を見つめる功助。
「そうよ。だから臨時隊長のことよろしくね」
「えっ、でも……」
「あああっ、いいのっかなあ」
とシャリーナは横目で功助を見る。
「す、すみません。そうですよね、無理を言っているのは俺の方ですから…。はい。わかりました。臨時隊長を引き受けます」
「オッケー。これで商談成立ねダーリン。あっ!あれは何っ!!」
「えっ」
あわててシャリーナが指差す方向を見るが何も確認できない功助。するとふいに頬に柔らかい感触が。
「チュッ」
「えっ…」
シャリーナが功助の頬にキスをしてきた。
「あ、シャリーナさん」
「えへへ」
とニコニコ笑っているがその顔は赤かった。
「シャリーナさん…」
「んじゃ引き受けたからね。ダーリンもよろしくっ!」
とパタパタ走って城の仲に入っていった。
「コースケ様ぁ!」
ドドドドドッとミュゼリアがまたもやスカートを持ち上げて走ってきた。
「コココココココ」
「鶏かミュゼは」
「ち、違いますよ私は竜族です…ってそんなことじゃなくってですね、大丈夫ですかっ。シャリーナ隊長に大事なものを奪われたんじゃありませんかっ!」
「ははは。大丈夫だよ。ただほっぺたにチューされただけだから」
「……!っ」
顔を赤くするミュゼリア。
「ほ……ほんとにもう、シャリーナ隊長はっ……!」
去って行った方を見て地団太を踏むミュゼリアだった。
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