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第3章 婚姻承諾の儀
02 気持ち
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功助とミュゼリアやトリシアたち三人を含め青の騎士の面々は今城下にある緑の騎士の詰所の休憩室にいる。
あれからここ城下の詰所に移動し一応の事情聴取を受けたのだ。
コンコン
ドアをノックし入ってきたのはベルクリットだった。
「待たせたな。もう帰っていいそうだ」
「そうか。では帰るとしようか」
とハンス。
「少しお待ちください兄上」
とミュゼリア。
「なんだミュゼリア」
「ちょっとお聞きしたいことがあるのですが」
と不機嫌そうな声のミュゼリア。
「な、なんだ?」
「今日のあの中央公園での出来事なのですが、落ち着いて考えてみればなんとも奇妙なのです」
「な、何が奇妙だと言うのかなミュゼリア」
ハンスはミュゼリアの鋭い指摘にドキッとしたようだ。
「いろいろとです。まず、兄上とベルクリット様はなぜあの公園に来られたのですか?それとテトくんを助けてくれたのは青の騎士団の方々ですよね。それも民が着るような服を着て。なんか変じゃありませんか兄上」
「うっ…」
と半歩後退るハンス。
「そうだぞハンス。俺も聞きたいんだがなぜ俺をあの公園に誘った?」
「あ、い、いや、その…」
とますますうろたえるハンス。
「それとコースケ様」
「はっ、はい!」
腰かけてる功助のそばに数歩で近づいて来るとミュゼリアはその薄紫の瞳で探るように功助の目をじっと見つめた。
「私をなぜあの公園に誘われたのですか?コースケ様のご用だとお聞きしていたのですが、どういう御用だったのでしょうか。差し支えなければお教え願えませんでしょうか」
とミュゼリアに見つめられ功助はおろおろしてしまう。
「ふむ」
ミュゼリアに見つめられている功助と目が泳いでるハンスを見て顎に手をやるベルクリット。
「どうやらなにかその二人で企んでいたようだな」
ベルクリットの目がギョロッと功助とハンスを順番に見る。
このやり取りを見ていたトリシアとリンリンは座ったまま俯いていたがその時テトがトリシアの服の裾を引っ張った。
「ねえねえ母さん。母さんもなんであの公園に行ったらお姉ちゃんがいるって知ってたの?」
それを聞いたベルクリット。
「ほお、ハンスとコースケだけではなかったようだな。で、そこの二人にも聞かないといけないようだが」
それを聞いたトリシアとリンリンは同時に功助とハンスを見ておろおろ。
「さあ白状してくださいコースケ様、兄上」
と腰に両手を当てるミュゼリア。なんとも迫力がある。
「い、いや、あ、あのな…」
「え、えーと、あのですね…」
しどろもどろのハンスと功助。
「コースケ」
「ハンスさん」
二人は互いに頷くと並んで立っているベルクリットとミュゼリアを真っ直ぐに見つめた。そしてハンスが話だした。
「ふう。仕方ないな。なあ、ベルク」
「なんだハンス」
「お前さ、昨日コースケに何か頼み事しただろ?」
「えっ、あ、い、う、な、な何かなハンスくん。ななななんの話をしてるのきゃな」
ベルクリットは顔を赤くして少し挙動不審。
「すみませんベルクリットさん。俺一人の力ではなんともできなさそうだったのでハンスさんに相談したんです。すみません」
と頭を下げる功助。
「ななな何を言っているのきゃなキョースケ君は。ははは、い、いやあ、ははは」
ますます挙動不審なベルクリット。ポケットからハンカチを取り出して流れ出る汗を拭きとる。
ミュゼリアはそれを見て首を傾げている。
「なにかあったのですかベルクリット様。コースケ様、ベルクリット様から何をお頼みされたのですか?」
と頭の上に疑問符を浮かべたミュゼリアが功助に尋ねた。
「そそそそそんなことはいいいいじゃないかミュゼリア。な、ももももういいからそろそろ城に帰らないきゃっ!」
ベルクリットはミュゼリアの顔をまともに見ずにドアに向かいノブに手をかけようとしている。
「ちょっと待てベルク!」
「な、なんだ!?」
ノブに手を伸ばしたまま固まるベルクリット。
「いいのかそれで!」
「なな何を言っているのかなハンスくんっ!」
「だから、それでいいのかと聞いている。このままでいいのかと聞いてるんだベルク!」
ハンスは睨むようにベルクリットを見る。
その目に威圧されたように身動き一つできないベルクリット。
「……」
数秒そのまま見つめあっていた二人。
「もうわかってるだろ?俺たちが仕組んだことの意味を。なあベルク、いつまでも放ってていいのか?ずっとこのままでいいのか、待たせていいのか?」
といまだ睨むようにベルクリットを見るハンス。
「そろそろ俺にも楽をさせてくれないか。両親もすでに他界し二人きりの兄妹なんだ。お前の言葉を待ってるんだぞこいつは。このままだとやはり不憫だぞ、そう思わないか?」
さっきとは違い少し寂しげにベルクリットを見る。
「…ハンス…」
ベルクリットもさっきとは違い挙動不審なところは微塵もない。
そしてミュゼリアの方に身体を向ける。
ミュゼリアはベルクリットのただならぬ雰囲気を身体に感じたのだろう。胸の前で手を組み心細そうにたった一人の兄、そして功助の方を見てから自分を見つめているベルクリットを見た。
すると、ベルクリットは一歩一歩ゆっくりとゆっくりとミュゼリアに近づく。
そしてミュゼリアの目の前に立つとしっかりと薄紫の瞳を見つめた。
ミュゼリアは何が何やらわからない様子だ。その目は目の前に立ったベルクリットの真紅の瞳を見つめているがその薄紫の瞳はベルクリットに何を言われるのかと不安そうにしている。
「ミュゼリア」
「は…、はい…」
互いの目を見つめる二人。
「…あ、あの…」
ミュゼリアが何か言おうとしたがそれをベルクリットは制する。
「ミュゼリア」
胸の前で組んでいたミュゼリアの手をその大きな手で包み込んだ。
「…えっ……!?」
ミュゼリアは驚き、大きな手で包まれた自分の手と、ベルクリットの顔を順番に見る。
「 ミュゼリア。ごたごたと細かいことは言わん。はっきりと言わせてもらう」
「…は、は…い…」
小さく頷くミュゼリア。
「俺は…、俺はお前のことが…」
「…はい…」
一度目を瞑り深呼吸を一つ。そして目を開きミュゼリアの薄紫の瞳を見てはっきりとこう言った。
「俺はお前のことが好きだ。俺と夫婦になってくれ」
「…え……」
薄紫の目を見開いて驚くミュゼリア。
突然のことで思考がついてこないのだろう。その小さな唇は微かに震えている。
「ミュゼリア、俺の嫁さんになってくれないか?!」
微笑むベルクリット。
「…ベ、ベルクリット様…」
少し垂れ目気味のその大きな目がだんだんと潤んでいく。
「私も…、私もベルクリット様をお慕い申し上げておりました」
ミュゼリアも微かに微笑みを返す。
「ミュゼリア。では…」
「はい。不束者ですがよろしくお願いいたします」
潤んだ瞳から、ついに涙がその大きな垂れ目気味の目からこぼれ落ちた。頬を伝う大粒の涙。
「ミュゼリア」
「ベルクリット様」
ベルクリットの大きな胸の中に飛び込んで行くミュゼリア。その華奢な身体をその力強い腕で優しく抱きしめるベルクリット。
とても感動的なシーンだったが…。
ギシッ ギシギシッ
何やら妙な音がドアの方から聞こえたかと思うと、
メリメリッ バキッ
いきなりドアが倒れてきた。
「キャッ!」
「うおっ!」
ドア付近にいたベルクリットとミュゼリアだったがさすがはベルクリット。とっさにミュゼリアをお姫様抱っこするとドアとは反対の壁に一瞬で飛びのいた。
「うわっ」「いでででで」「お、押すなつったろがっ」「だ、だまれ、うげっ」
廊下から次々にむさくるしい男たちが室内に倒れこんできた。
「お、重いっ、ど、どけっ」「や、やかましい、俺も動けん」「ぐるじい、吐くぅ」
なだれ込んできたのは一般の人が着るような服を来た青の騎士団の面々だった。
「お前ら!何をしとるかあ!」
鬼の形相のベルクリットが乱入してきた男たちを一喝する。
「わわわわ!」「すすすすすみません!」
「男たちは一瞬のうちに立ち上がるとペコペコと頭を下げた。
「何をしとるかと聞いている!」
「ひゃ、は、はいっ!」
「あ、あの…」
「そ、それが…」
「だ、だから…」
としどろもどろのむさくるしい男たち。
ギロッ!
ベルクリットが睨むと一人の男が恐々声を出した。
「だ、団長。おめでとうございます!」
と少しニヤニヤ。すると他の男たちも、
「団長おめでとございます!」「よかったっすね団長」「ミュゼリアさん団長をよろしくっす」「これで少しは優しくなってくれたらいいんっすけどね団長」「やりましたね団長」「城に帰ったら宴会っすね」「早く二人の子供が見たいっす、がんばってくださいミュゼリアさん」
と口々に祝いの言葉が飛んできた。
「お、お前ら…」
とほんの少し顔を赤らめるベルクリット。ミュゼリアの顔はもうトマトみたいに真っ赤だ。
「ははははは!」
大笑いをするハンス。
功助も笑う。トリシアもリンリンも。なんとテトもニコニコしている。
「コホン。ま、まあ、そ、そういうことだ。だが、お前ら盗み見てたな。帰城したら覚えてろよ」
と青の騎士団団員を睨むベルクリット。
「ひぇぇぇぇぇぇっ!」
騎士団団員たちの悲壮な絶叫が響いた。
「ちっ!」
ベルクリットは舌を鳴らすと抱き上げていたミュゼリアを降ろし頭を下げた。
「ミュゼリアすまない。団員たちが失礼なことをした」
「あ、いえ。大丈夫ですベルクリット様。それに皆様も祝福してくださっているようなので」
まだ真っ赤な顔で両手をパタパタしている。が、深呼吸を一つすると団員達に向かい、
「あの…、皆様、ご祝福ありがとうございます」
と直立してうなだれている団員たちにペコッと頭を下げる。
「あ、いえ。お幸せにミュゼリアさん」
「よかったっすねミュゼリアさん。これで副団長も肩の荷が降りたってもんですよ」
「団長に何か言われたら俺たちに相談してください。俺たちはミュゼリアさんの味方ですぜ」
「そうだそうだ」
「ミュゼリアさんにひどいことしたら俺たちが全員でボコボコにしてやるっす」
みんなワイワイ言っている。ミュゼリアは笑いながら礼を言っている。
「貴様ら、いい加減にしろっ!早く帰城の準備してこいっ!」
ベルクリットは真っ赤な顔で怒鳴った。
「は、はっ!了解」
と青の騎士団たちはドタドタと部屋を出て行った。
「ほんと、くそっ。あいつら覚えてろよ」
ぶつぶつとベルクリットは言っていたが目は笑っていた。
「よかったなミュゼリア。おめでとう」
ハンスはニコニコ笑うミュゼリアに近づくと愛妹の水色の髪を優しく撫でた。
「兄上」
ミュゼリアはそんなハンスに、たった一人の兄に抱き付いた。
「おいおい。ベルクの前だぞ。しょうがないヤツだなお前は」
とハンスはミュゼの頭をポンポンと叩く。
「兄上。ありがとうございます」
「よかったなミュゼリア。ようやく気持ちが届いて」
「ほんと」
苦笑するミュゼリア。
「あとはあれをするだけだな。ベルクと話し合ってちゃんと決めるんだぞ」
「はい、兄上」
「その時は俺が父上と母上の代わりだ。ちゃんと見届けてやるからな」
「うん。ありがとうお兄ちゃん」
とまた涙が頬を流れた。
「コースケ様。ありがとうございました」
ハンスから離れると今度は功助の前に来て深々と頭を下げた。
「よかったなミュゼ。待ってた甲斐があったな」
「はい」
とまた頭を下げた。
「でもごめんなミュゼ。三文芝居なんかしてさ。ミュゼに危ないめに合わせてしまって」
「いえ。私は大丈夫です」
「そうか。それとごめんなテト。怖い思いさせてしまって。すみませんでしたトリシアさん」
功助はホッとした顔のトリシアとニコニコわらってるテトに近づくと頭を下げた。
「あ、いえ。お気になさらないでください。ミュゼリアさんと団長様がお幸せになっていただければ私たちもうれしいですので」
と両手をパタパタしている。
「僕も大丈夫だよ。お姉ちゃんの魔法見られてうれしかったし。ねえお姉ちゃん」
とミュゼリアを見て笑うテト。
「そうですねテトくん。また一緒に遊びましょうね」
と笑顔でテトの頭を撫でるミュゼリア。それに大きく頷くテト。
「ところでコースケ様」
「なんだ?」
ミュゼリアは功助の耳元に口を近づけると小さな声で尋ねてきた。
「昨日ベルクリット様はコースケ様に何と頼まれたのですか?」
「ん?それはな」
今度は功助がミュゼリアの耳に口を寄せた。
「『ミュゼリアに俺のことをどう思っているか聞いてくれないかっ』って頼まれたんだ」
「は…、はあ…」
ミュゼリアはそれを聞くとハンスにバシバシ叩かれているベルクリットを見た。
「人に頼まず自分で聞いてくださればいいのに」
とぼそっと呟いた。
「まあまあ。ああ見えてもシャイなんだよベルクリットさんは」
と功助は苦笑した。
あれからここ城下の詰所に移動し一応の事情聴取を受けたのだ。
コンコン
ドアをノックし入ってきたのはベルクリットだった。
「待たせたな。もう帰っていいそうだ」
「そうか。では帰るとしようか」
とハンス。
「少しお待ちください兄上」
とミュゼリア。
「なんだミュゼリア」
「ちょっとお聞きしたいことがあるのですが」
と不機嫌そうな声のミュゼリア。
「な、なんだ?」
「今日のあの中央公園での出来事なのですが、落ち着いて考えてみればなんとも奇妙なのです」
「な、何が奇妙だと言うのかなミュゼリア」
ハンスはミュゼリアの鋭い指摘にドキッとしたようだ。
「いろいろとです。まず、兄上とベルクリット様はなぜあの公園に来られたのですか?それとテトくんを助けてくれたのは青の騎士団の方々ですよね。それも民が着るような服を着て。なんか変じゃありませんか兄上」
「うっ…」
と半歩後退るハンス。
「そうだぞハンス。俺も聞きたいんだがなぜ俺をあの公園に誘った?」
「あ、い、いや、その…」
とますますうろたえるハンス。
「それとコースケ様」
「はっ、はい!」
腰かけてる功助のそばに数歩で近づいて来るとミュゼリアはその薄紫の瞳で探るように功助の目をじっと見つめた。
「私をなぜあの公園に誘われたのですか?コースケ様のご用だとお聞きしていたのですが、どういう御用だったのでしょうか。差し支えなければお教え願えませんでしょうか」
とミュゼリアに見つめられ功助はおろおろしてしまう。
「ふむ」
ミュゼリアに見つめられている功助と目が泳いでるハンスを見て顎に手をやるベルクリット。
「どうやらなにかその二人で企んでいたようだな」
ベルクリットの目がギョロッと功助とハンスを順番に見る。
このやり取りを見ていたトリシアとリンリンは座ったまま俯いていたがその時テトがトリシアの服の裾を引っ張った。
「ねえねえ母さん。母さんもなんであの公園に行ったらお姉ちゃんがいるって知ってたの?」
それを聞いたベルクリット。
「ほお、ハンスとコースケだけではなかったようだな。で、そこの二人にも聞かないといけないようだが」
それを聞いたトリシアとリンリンは同時に功助とハンスを見ておろおろ。
「さあ白状してくださいコースケ様、兄上」
と腰に両手を当てるミュゼリア。なんとも迫力がある。
「い、いや、あ、あのな…」
「え、えーと、あのですね…」
しどろもどろのハンスと功助。
「コースケ」
「ハンスさん」
二人は互いに頷くと並んで立っているベルクリットとミュゼリアを真っ直ぐに見つめた。そしてハンスが話だした。
「ふう。仕方ないな。なあ、ベルク」
「なんだハンス」
「お前さ、昨日コースケに何か頼み事しただろ?」
「えっ、あ、い、う、な、な何かなハンスくん。ななななんの話をしてるのきゃな」
ベルクリットは顔を赤くして少し挙動不審。
「すみませんベルクリットさん。俺一人の力ではなんともできなさそうだったのでハンスさんに相談したんです。すみません」
と頭を下げる功助。
「ななな何を言っているのきゃなキョースケ君は。ははは、い、いやあ、ははは」
ますます挙動不審なベルクリット。ポケットからハンカチを取り出して流れ出る汗を拭きとる。
ミュゼリアはそれを見て首を傾げている。
「なにかあったのですかベルクリット様。コースケ様、ベルクリット様から何をお頼みされたのですか?」
と頭の上に疑問符を浮かべたミュゼリアが功助に尋ねた。
「そそそそそんなことはいいいいじゃないかミュゼリア。な、ももももういいからそろそろ城に帰らないきゃっ!」
ベルクリットはミュゼリアの顔をまともに見ずにドアに向かいノブに手をかけようとしている。
「ちょっと待てベルク!」
「な、なんだ!?」
ノブに手を伸ばしたまま固まるベルクリット。
「いいのかそれで!」
「なな何を言っているのかなハンスくんっ!」
「だから、それでいいのかと聞いている。このままでいいのかと聞いてるんだベルク!」
ハンスは睨むようにベルクリットを見る。
その目に威圧されたように身動き一つできないベルクリット。
「……」
数秒そのまま見つめあっていた二人。
「もうわかってるだろ?俺たちが仕組んだことの意味を。なあベルク、いつまでも放ってていいのか?ずっとこのままでいいのか、待たせていいのか?」
といまだ睨むようにベルクリットを見るハンス。
「そろそろ俺にも楽をさせてくれないか。両親もすでに他界し二人きりの兄妹なんだ。お前の言葉を待ってるんだぞこいつは。このままだとやはり不憫だぞ、そう思わないか?」
さっきとは違い少し寂しげにベルクリットを見る。
「…ハンス…」
ベルクリットもさっきとは違い挙動不審なところは微塵もない。
そしてミュゼリアの方に身体を向ける。
ミュゼリアはベルクリットのただならぬ雰囲気を身体に感じたのだろう。胸の前で手を組み心細そうにたった一人の兄、そして功助の方を見てから自分を見つめているベルクリットを見た。
すると、ベルクリットは一歩一歩ゆっくりとゆっくりとミュゼリアに近づく。
そしてミュゼリアの目の前に立つとしっかりと薄紫の瞳を見つめた。
ミュゼリアは何が何やらわからない様子だ。その目は目の前に立ったベルクリットの真紅の瞳を見つめているがその薄紫の瞳はベルクリットに何を言われるのかと不安そうにしている。
「ミュゼリア」
「は…、はい…」
互いの目を見つめる二人。
「…あ、あの…」
ミュゼリアが何か言おうとしたがそれをベルクリットは制する。
「ミュゼリア」
胸の前で組んでいたミュゼリアの手をその大きな手で包み込んだ。
「…えっ……!?」
ミュゼリアは驚き、大きな手で包まれた自分の手と、ベルクリットの顔を順番に見る。
「 ミュゼリア。ごたごたと細かいことは言わん。はっきりと言わせてもらう」
「…は、は…い…」
小さく頷くミュゼリア。
「俺は…、俺はお前のことが…」
「…はい…」
一度目を瞑り深呼吸を一つ。そして目を開きミュゼリアの薄紫の瞳を見てはっきりとこう言った。
「俺はお前のことが好きだ。俺と夫婦になってくれ」
「…え……」
薄紫の目を見開いて驚くミュゼリア。
突然のことで思考がついてこないのだろう。その小さな唇は微かに震えている。
「ミュゼリア、俺の嫁さんになってくれないか?!」
微笑むベルクリット。
「…ベ、ベルクリット様…」
少し垂れ目気味のその大きな目がだんだんと潤んでいく。
「私も…、私もベルクリット様をお慕い申し上げておりました」
ミュゼリアも微かに微笑みを返す。
「ミュゼリア。では…」
「はい。不束者ですがよろしくお願いいたします」
潤んだ瞳から、ついに涙がその大きな垂れ目気味の目からこぼれ落ちた。頬を伝う大粒の涙。
「ミュゼリア」
「ベルクリット様」
ベルクリットの大きな胸の中に飛び込んで行くミュゼリア。その華奢な身体をその力強い腕で優しく抱きしめるベルクリット。
とても感動的なシーンだったが…。
ギシッ ギシギシッ
何やら妙な音がドアの方から聞こえたかと思うと、
メリメリッ バキッ
いきなりドアが倒れてきた。
「キャッ!」
「うおっ!」
ドア付近にいたベルクリットとミュゼリアだったがさすがはベルクリット。とっさにミュゼリアをお姫様抱っこするとドアとは反対の壁に一瞬で飛びのいた。
「うわっ」「いでででで」「お、押すなつったろがっ」「だ、だまれ、うげっ」
廊下から次々にむさくるしい男たちが室内に倒れこんできた。
「お、重いっ、ど、どけっ」「や、やかましい、俺も動けん」「ぐるじい、吐くぅ」
なだれ込んできたのは一般の人が着るような服を来た青の騎士団の面々だった。
「お前ら!何をしとるかあ!」
鬼の形相のベルクリットが乱入してきた男たちを一喝する。
「わわわわ!」「すすすすすみません!」
「男たちは一瞬のうちに立ち上がるとペコペコと頭を下げた。
「何をしとるかと聞いている!」
「ひゃ、は、はいっ!」
「あ、あの…」
「そ、それが…」
「だ、だから…」
としどろもどろのむさくるしい男たち。
ギロッ!
ベルクリットが睨むと一人の男が恐々声を出した。
「だ、団長。おめでとうございます!」
と少しニヤニヤ。すると他の男たちも、
「団長おめでとございます!」「よかったっすね団長」「ミュゼリアさん団長をよろしくっす」「これで少しは優しくなってくれたらいいんっすけどね団長」「やりましたね団長」「城に帰ったら宴会っすね」「早く二人の子供が見たいっす、がんばってくださいミュゼリアさん」
と口々に祝いの言葉が飛んできた。
「お、お前ら…」
とほんの少し顔を赤らめるベルクリット。ミュゼリアの顔はもうトマトみたいに真っ赤だ。
「ははははは!」
大笑いをするハンス。
功助も笑う。トリシアもリンリンも。なんとテトもニコニコしている。
「コホン。ま、まあ、そ、そういうことだ。だが、お前ら盗み見てたな。帰城したら覚えてろよ」
と青の騎士団団員を睨むベルクリット。
「ひぇぇぇぇぇぇっ!」
騎士団団員たちの悲壮な絶叫が響いた。
「ちっ!」
ベルクリットは舌を鳴らすと抱き上げていたミュゼリアを降ろし頭を下げた。
「ミュゼリアすまない。団員たちが失礼なことをした」
「あ、いえ。大丈夫ですベルクリット様。それに皆様も祝福してくださっているようなので」
まだ真っ赤な顔で両手をパタパタしている。が、深呼吸を一つすると団員達に向かい、
「あの…、皆様、ご祝福ありがとうございます」
と直立してうなだれている団員たちにペコッと頭を下げる。
「あ、いえ。お幸せにミュゼリアさん」
「よかったっすねミュゼリアさん。これで副団長も肩の荷が降りたってもんですよ」
「団長に何か言われたら俺たちに相談してください。俺たちはミュゼリアさんの味方ですぜ」
「そうだそうだ」
「ミュゼリアさんにひどいことしたら俺たちが全員でボコボコにしてやるっす」
みんなワイワイ言っている。ミュゼリアは笑いながら礼を言っている。
「貴様ら、いい加減にしろっ!早く帰城の準備してこいっ!」
ベルクリットは真っ赤な顔で怒鳴った。
「は、はっ!了解」
と青の騎士団たちはドタドタと部屋を出て行った。
「ほんと、くそっ。あいつら覚えてろよ」
ぶつぶつとベルクリットは言っていたが目は笑っていた。
「よかったなミュゼリア。おめでとう」
ハンスはニコニコ笑うミュゼリアに近づくと愛妹の水色の髪を優しく撫でた。
「兄上」
ミュゼリアはそんなハンスに、たった一人の兄に抱き付いた。
「おいおい。ベルクの前だぞ。しょうがないヤツだなお前は」
とハンスはミュゼの頭をポンポンと叩く。
「兄上。ありがとうございます」
「よかったなミュゼリア。ようやく気持ちが届いて」
「ほんと」
苦笑するミュゼリア。
「あとはあれをするだけだな。ベルクと話し合ってちゃんと決めるんだぞ」
「はい、兄上」
「その時は俺が父上と母上の代わりだ。ちゃんと見届けてやるからな」
「うん。ありがとうお兄ちゃん」
とまた涙が頬を流れた。
「コースケ様。ありがとうございました」
ハンスから離れると今度は功助の前に来て深々と頭を下げた。
「よかったなミュゼ。待ってた甲斐があったな」
「はい」
とまた頭を下げた。
「でもごめんなミュゼ。三文芝居なんかしてさ。ミュゼに危ないめに合わせてしまって」
「いえ。私は大丈夫です」
「そうか。それとごめんなテト。怖い思いさせてしまって。すみませんでしたトリシアさん」
功助はホッとした顔のトリシアとニコニコわらってるテトに近づくと頭を下げた。
「あ、いえ。お気になさらないでください。ミュゼリアさんと団長様がお幸せになっていただければ私たちもうれしいですので」
と両手をパタパタしている。
「僕も大丈夫だよ。お姉ちゃんの魔法見られてうれしかったし。ねえお姉ちゃん」
とミュゼリアを見て笑うテト。
「そうですねテトくん。また一緒に遊びましょうね」
と笑顔でテトの頭を撫でるミュゼリア。それに大きく頷くテト。
「ところでコースケ様」
「なんだ?」
ミュゼリアは功助の耳元に口を近づけると小さな声で尋ねてきた。
「昨日ベルクリット様はコースケ様に何と頼まれたのですか?」
「ん?それはな」
今度は功助がミュゼリアの耳に口を寄せた。
「『ミュゼリアに俺のことをどう思っているか聞いてくれないかっ』って頼まれたんだ」
「は…、はあ…」
ミュゼリアはそれを聞くとハンスにバシバシ叩かれているベルクリットを見た。
「人に頼まず自分で聞いてくださればいいのに」
とぼそっと呟いた。
「まあまあ。ああ見えてもシャイなんだよベルクリットさんは」
と功助は苦笑した。
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※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています
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夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
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