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第4章 見つけた
03 モーザの弱点 そしてフログスの経過
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03 モーザの弱点 そしてフログスの経過
・・・54日目・・・
バスティーアに白き牙のあった場所の捜索を頼んだ7日後
昼過ぎ。コンコンコンとドアをノックし入ってきたのはバスティーアだった。
「失礼いたします。コースケ様。朗報でございます。例の白い牙の屹立している場所ですが、見つかりました」
家令の礼をしたバスティーアは懐から地図を取り出すとテーブルに広げた。
「えっ?もう見つかったんですか!なんかめちゃくちゃ早いですね。それでどのあたりですか?」
地図を覗き込みバスティーアの示したところを見る。
「はい。私共の情報部は優秀でございますからな」
とドヤ顔のバスティーア。
「ははは。えーと、ここがバスティーアさんたちがシオンを迎えにきたところですよね。で、こっちが白い牙のあるところ。やはり北東でしたか。よかった。俺の言ったことにそんなに違いがなくて」
「はい。捜索班もそんなに苦労せずに捜し出せたということで総勢二十人ケガの一つもなく任務遂行できました」
「ありがとうございました」
頭を下げて微笑む功助。
「コースケ様。むやみに頭などお下げにならないようお気をつけください。コースケ様はここ白竜城をお救いくださった英雄なのです」
少しため息交じりにバスティーアが功助を見る。
「そうですよコースケ様。私にも頭などお下げになりませんようお願いいたします」
とミュゼリアも困ったなあという表情で功助を見る。
「あ、いや、でもやっぱり癖は抜けなくて。なんせ元の世界じゃただの一般人だったし」
と苦笑して頭をかく功助。
「そのうち慣れますよコースケ様」
とミュゼリアも苦笑した。
「ところでコースケ様、その牙のところに確認しに行かれますか?」
「そうですねえ。行って確かめてみようかなと思うんですが」
とテーブルに拡げた地図を見る。
「承知いたしました。それでコースケ様のご希望される日はございますでしょうか?」
「うーん。なあミュゼ、俺の予定ってどうなってた?」
「はい。魔法師隊の訓練のみで他には特にありません。なのでいつでも可能です」
「ということなんで、いつでもいいですバスティーアさん」
「そうですか。それでは2,3日後にいたしましょう。よろしいでしょうか?」
「はい。それでお願いします」
それからバスティーアは拡げていた地図を丸め懐にしまうと失礼いたしますと功助の自室をあとに下。
「ミュゼ」
「はい?」
「ミュゼも一緒に行ってくれるかな?」
「もちろんです。コースケ様の行かれるところ、このミュゼリアご一緒させていただきます」
「と微笑む。
「ありがとう。でも…」
「でも、なんでしょうか?」
首を傾げると功助を見る。
「俺があまりミュゼと一緒にいるとベルクリットさんに睨まれるかなって。ははは」
ニヤッとしながらそういうとミュゼの顔が赤くなった。
「コ、コースケ様…。もう、恥ずかしいことをいわないでくださいぃ」
ともじもじしていた。
コンコンコン
その時、ドアをノックする音に続いて最近聞きなれた声がした。
「魔法師隊見習いのモーザならびにイリスです。コースケ隊長!お迎えに参りました!」
功助の部屋まで元気な二人が迎えに来た。
「おっ、来た来た。ミュゼ」
「はい」
ミュゼリアはドアノブを静かに回すとゆっくりとドアを開けた。
「「お疲れ様ですコースケ隊長。ミュゼリアさん」」
元気な二人組が直立不動で立っていた。
「お迎えご苦労様ですモーザさん、イリスさん」
ミュゼリアは二人に一礼をすると功助に向き直る。
「コースケ様。純日はよろしいでしょうか?」
「あ、うん。いいよ」
功助はソファーから立つと二人に片手を上げる。
「お迎えありがとう」
「いえ。とんでもございません」
と頭を下げるモーザとイリス。
さあ行きましょう。コーシュケ隊長」
「イリス、また隊長の名前かんだ。失礼よ」
「あっ、すみませんコースケ隊長」
「あはは。いいよ。気にしてないから。さ、行こうモーザ、イリス」
「「はい」」
モーザとイリスが先導しそれに功助が続き功助の一歩後ろにミュゼリアが続き廊下を進んでいく。
「なあお二人さん」
前を行く二人に声をかける功助。
「はい。何でしょうかコースケ隊長」
「ふぁいっ!」
モーザは後ろを振り向き首を傾げ、イリスはビクッと身体を跳ねさせた。
「失礼なことを聞くかもしれないけど、二人の種族は何かなと」
頬を人差指でかきながら二人の少女を見る功助。見た目は人族に見えるがミュゼリアやハンスも見た目だけでは竜族には見えない。フィリシアやゼフ、食堂のスタッフのように見た目でわかる者もいるがまだ功助は見た目だけで種族を見極めることはできなかった。
「はい?あっ、はい。私は精霊族です」
「わたわた私も精霊族でしゅ。で、でも変身できましぇん」
「イリス、またかんでるし」
「えっ、ご、ごめん」
といつものボケツッコミ子ている二人。
「変身?なあ、イリス、返信したいのか?」
「はい!」
と元気に返事をするイリス。
「それで、変身できないって、変身できたら何に変身したいんだ?」
功助が笑いながらイリスに尋ねるとまたわたわたし始めた。
「あ、はい。えと、あの、その、竜かスライムかマーメイドでしゅが」
「へえ、そうなんだ。なんで竜?」
「あっ、あの、青の騎士団の方が竜になって訓練してるのを見てすごいなあって。あんなに強いのがすごいなあって。私も強くなってクワアーッて火を噴いて悪いヤツをやっつけたいんです!」
鼻息荒くなんとファイティングポーズをとるイリス。それを聞いて複雑な顔のミュゼリアは肩を竦めた。ミュゼリアをチラッと見た功助も苦笑した。
「そ、そうなんだ。ならスライムは?」
「スライムってのんびりしてそうで、そんでもってなんか涼しそうじゃないですか」
今度はへにゃぁとした顔になる。
「そ、そうか。んじゃマーメイドは?」
「マーメイドになれればきれいな歌声で魅了できて人気者になれるかなあって」
今度は少し頬を赤らめている。
「もうイリスったら。変なこと言って。コースケ体調もミュゼリアさんも笑ってらっしゃるわよ。もう恥ずかしい」
とイリスの脇をこづく。
「ははは。大丈夫だよモーザ。確かに笑わせてもらったけど。イリスって想像力豊かなんだな。なあミュゼ」
「はい。イリスさん頑張ってくださいね」
「って何を頑張るんだミュゼ?」
「あはは。何を頑張るんでしょうねえ。あはは」
と両手で口を押えるミュゼリア。
「それにしてもイリス」
と功助。
「は、はい!」
急に名前を呼ばれビクッとなるイリス。
「何に変身したいかに答えてくれた時、全然噛まずに話してくれたけど気づいてたか?」
「へ?私がですきゃ?」
「また噛んだ。コースケ隊長、イリスはですね自分の好きなことについて話しする時には全然噛まないんですよ。ほんと不思議なんですイリスって」
とイリスの肩を叩くモーザ。
「へえ。そうなんだ」
と苦笑してイリスを見る功助。イリスはなんで?と言った顔で功助を見ていた。
廊下から庭に出たとたん前を歩いていたイリスが叫んだ。
「うぎゃああああっ!」
突然叫ぶとモーザの後ろに急いで隠れた。
「どうしたんだイリス!」
「どうしたんですかイリスさん!」
功助とミュゼリアが驚いてモーザの後ろで震えているイリスを見て周囲を警戒する。
「わ、わわわわわわ、あ、あそこあそこあそこ!」
イリスが震える手で指さしたのは…、石畳の端をのんびりと歩いているイモ虫だった。
「ほんとにもう。イリスって怖がりなんだから。あれただのイモ虫じゃないの。なんであんなのを怖がるかなあ」
とため息をつくモーザ。
「で、でもでもでも、怖いんだからしょうがないでしょ。モーザだって怖いものあるでちょ!」
とまだモーザの背中で震えているイリス。
「そっか。イリスは虫が嫌いなのか。でも虫でよかった。イリスが突然怖がるから何か不信なものを見つけたのかと思ったけど、よかった」
功助がそう言いながら壁際で楽しそうに散歩しているイモ虫をひょいと摘み上げると近くの大きな葉っぱの上にそっとおろした。イモ虫は何があったのかと少しうねうねと首を動かしたがそ。こが葉っぱの上だと気づいたのだろうパリパリと葉っぱを食べ始めた。
「さあ、行こうか」
そうこうしているうちに四人は魔法師隊控室に付いた。
「それでは失礼します」
「しちゅれいします」
「ちょっとイリスまた噛んだ」
「あっ、あの、失礼します」
モーザとイリスは最敬礼をすると控室前で功助たちと別れ魔法師見習いたちが待期する広場に向かって行った。
コンコンコン
「失礼いたします」
ミュゼリアはドアを軽くノックするとそっと扉を開いた。
「お疲れ様です」
控室に入った功助とミュゼリア。
「お疲れさまですコースケ隊長」
「ダーリンお疲れ~」
とテーブルに座るラナーシアとシャリーナが出迎えた。
二人はテーブルをはさみ何やら書類を診ながら話し合いをしているようだ。
「いいとこに来たわねダーリン。これ見てちょうだい」
とテーブルの上の書類を持ち上げてひらひらさせるシャリーナ。
「なんですか?…って俺字が」
「あっ、そうだった。んじゃかいつまんで説明するわね。これはねフログス伯爵の経過報告書よ」
「えっ、フログス伯爵の?」
「はい。さきほど治癒術師長が持ってきたんです」
とラナーシア。
「そうなのよ。目が覚めて今日で二十日目だから。んじゃ読むわよ」
とシャリーナは説明をはじめた。
覚醒した次の日には離床し杖をつき歩行し、その夜には城内を歩行訓練。次の日には城外を歩行できるまでに回復。
四日目には馬車で二日行った温泉で十日滞在し湯治。そしてまた二日かけて一昨日に帰城。現在も自室で静養中。
「それからかなり身体の調子はよくなったみたいね。でもまだ精神的には辛いみたい。たまに誰かに診られてるかもとか誰かがそこにいただとか不安定みたいだけど、食欲もあるし睡眠もよくとれてるようね」
「そうですか。それはよかった」
と安堵する功助。そしてシャリーナを見て続けた。
「それでこれから先フログス伯爵の処遇はどうなるんですか?」
「陛下がおっしゃってたんだけど、たぶん数か月は牢屋行きでしょうね。本来なら伯爵が起こしたのは重大な国難だから処刑でしょうけど、魔族に操られていたことを考慮しても考えられないくらい軽い刑罰よこれは」
「そうですか」
と功助。
「やはり先王と貴族の方々の先代のフログス伯爵への愚決を考慮されたのでしょう」
とラナーシア。
「まあ、そうでしょうね。ねえダーリン」
「え、はい。…って今更ですが、俺の呼称は’ダーリン’に決定ですか…?」
と溜息をつく。
「ん?そうよ。いいじゃない。減るもんじゃなし。まあ、そんなことよりフログス伯爵からダーリンにお願いがあるんだって」
「へ?俺にですか?なんだろ」
「治癒術師長が伯爵に頼まれたんだけど。姫様に謝罪したいんだって」
「シオンに?」
と驚く功助。
「まあ伯爵の気持ちもわかるわね。自分のせいで姫様の人竜球を壊してしまったんだもの。でも姫様が会いたがらないんじゃないかなあ。ねえ」
とラナーシアと頷き合うシャリーナ。
「でも、シオンに謝罪したいのなら俺じゃなくバスティーアさんに頼んだ方がいいんじゃないかな。陛下の許可もとらないとダメだろうし」
「したらしいわよ。バスティーアさんから陛下に頼んでもらったらしいんだけど、なんと陛下は’俺には決められん、コースケに聞いてみろ’ってさ」
と小さく肩を竦めた。
「へ?な、なんで俺に?なんか無茶苦茶な気がするんですけど」
「あたしもそう思うけど、陛下がおっしゃったんだからダーリンが姫様に聞いてあげればいいんじゃない。近いうちにバスティーアさんから依頼されるわよたぶん」
「は、はあ…」
と嘆息する功助。
「わかりました。今日できるかどうかはわからないけど、シオンに聞いてみます。ミュゼ、確か今日も会食あったよな」
「はい。予定通りですが、今から私が姫様に」
「いや、会食の時に言うよ。陛下も一緒だし都合いいからね」
「そうですか。わかりました」
とミュゼリアは軽く頭を下げた。
・・・54日目・・・
バスティーアに白き牙のあった場所の捜索を頼んだ7日後
昼過ぎ。コンコンコンとドアをノックし入ってきたのはバスティーアだった。
「失礼いたします。コースケ様。朗報でございます。例の白い牙の屹立している場所ですが、見つかりました」
家令の礼をしたバスティーアは懐から地図を取り出すとテーブルに広げた。
「えっ?もう見つかったんですか!なんかめちゃくちゃ早いですね。それでどのあたりですか?」
地図を覗き込みバスティーアの示したところを見る。
「はい。私共の情報部は優秀でございますからな」
とドヤ顔のバスティーア。
「ははは。えーと、ここがバスティーアさんたちがシオンを迎えにきたところですよね。で、こっちが白い牙のあるところ。やはり北東でしたか。よかった。俺の言ったことにそんなに違いがなくて」
「はい。捜索班もそんなに苦労せずに捜し出せたということで総勢二十人ケガの一つもなく任務遂行できました」
「ありがとうございました」
頭を下げて微笑む功助。
「コースケ様。むやみに頭などお下げにならないようお気をつけください。コースケ様はここ白竜城をお救いくださった英雄なのです」
少しため息交じりにバスティーアが功助を見る。
「そうですよコースケ様。私にも頭などお下げになりませんようお願いいたします」
とミュゼリアも困ったなあという表情で功助を見る。
「あ、いや、でもやっぱり癖は抜けなくて。なんせ元の世界じゃただの一般人だったし」
と苦笑して頭をかく功助。
「そのうち慣れますよコースケ様」
とミュゼリアも苦笑した。
「ところでコースケ様、その牙のところに確認しに行かれますか?」
「そうですねえ。行って確かめてみようかなと思うんですが」
とテーブルに拡げた地図を見る。
「承知いたしました。それでコースケ様のご希望される日はございますでしょうか?」
「うーん。なあミュゼ、俺の予定ってどうなってた?」
「はい。魔法師隊の訓練のみで他には特にありません。なのでいつでも可能です」
「ということなんで、いつでもいいですバスティーアさん」
「そうですか。それでは2,3日後にいたしましょう。よろしいでしょうか?」
「はい。それでお願いします」
それからバスティーアは拡げていた地図を丸め懐にしまうと失礼いたしますと功助の自室をあとに下。
「ミュゼ」
「はい?」
「ミュゼも一緒に行ってくれるかな?」
「もちろんです。コースケ様の行かれるところ、このミュゼリアご一緒させていただきます」
「と微笑む。
「ありがとう。でも…」
「でも、なんでしょうか?」
首を傾げると功助を見る。
「俺があまりミュゼと一緒にいるとベルクリットさんに睨まれるかなって。ははは」
ニヤッとしながらそういうとミュゼの顔が赤くなった。
「コ、コースケ様…。もう、恥ずかしいことをいわないでくださいぃ」
ともじもじしていた。
コンコンコン
その時、ドアをノックする音に続いて最近聞きなれた声がした。
「魔法師隊見習いのモーザならびにイリスです。コースケ隊長!お迎えに参りました!」
功助の部屋まで元気な二人が迎えに来た。
「おっ、来た来た。ミュゼ」
「はい」
ミュゼリアはドアノブを静かに回すとゆっくりとドアを開けた。
「「お疲れ様ですコースケ隊長。ミュゼリアさん」」
元気な二人組が直立不動で立っていた。
「お迎えご苦労様ですモーザさん、イリスさん」
ミュゼリアは二人に一礼をすると功助に向き直る。
「コースケ様。純日はよろしいでしょうか?」
「あ、うん。いいよ」
功助はソファーから立つと二人に片手を上げる。
「お迎えありがとう」
「いえ。とんでもございません」
と頭を下げるモーザとイリス。
さあ行きましょう。コーシュケ隊長」
「イリス、また隊長の名前かんだ。失礼よ」
「あっ、すみませんコースケ隊長」
「あはは。いいよ。気にしてないから。さ、行こうモーザ、イリス」
「「はい」」
モーザとイリスが先導しそれに功助が続き功助の一歩後ろにミュゼリアが続き廊下を進んでいく。
「なあお二人さん」
前を行く二人に声をかける功助。
「はい。何でしょうかコースケ隊長」
「ふぁいっ!」
モーザは後ろを振り向き首を傾げ、イリスはビクッと身体を跳ねさせた。
「失礼なことを聞くかもしれないけど、二人の種族は何かなと」
頬を人差指でかきながら二人の少女を見る功助。見た目は人族に見えるがミュゼリアやハンスも見た目だけでは竜族には見えない。フィリシアやゼフ、食堂のスタッフのように見た目でわかる者もいるがまだ功助は見た目だけで種族を見極めることはできなかった。
「はい?あっ、はい。私は精霊族です」
「わたわた私も精霊族でしゅ。で、でも変身できましぇん」
「イリス、またかんでるし」
「えっ、ご、ごめん」
といつものボケツッコミ子ている二人。
「変身?なあ、イリス、返信したいのか?」
「はい!」
と元気に返事をするイリス。
「それで、変身できないって、変身できたら何に変身したいんだ?」
功助が笑いながらイリスに尋ねるとまたわたわたし始めた。
「あ、はい。えと、あの、その、竜かスライムかマーメイドでしゅが」
「へえ、そうなんだ。なんで竜?」
「あっ、あの、青の騎士団の方が竜になって訓練してるのを見てすごいなあって。あんなに強いのがすごいなあって。私も強くなってクワアーッて火を噴いて悪いヤツをやっつけたいんです!」
鼻息荒くなんとファイティングポーズをとるイリス。それを聞いて複雑な顔のミュゼリアは肩を竦めた。ミュゼリアをチラッと見た功助も苦笑した。
「そ、そうなんだ。ならスライムは?」
「スライムってのんびりしてそうで、そんでもってなんか涼しそうじゃないですか」
今度はへにゃぁとした顔になる。
「そ、そうか。んじゃマーメイドは?」
「マーメイドになれればきれいな歌声で魅了できて人気者になれるかなあって」
今度は少し頬を赤らめている。
「もうイリスったら。変なこと言って。コースケ体調もミュゼリアさんも笑ってらっしゃるわよ。もう恥ずかしい」
とイリスの脇をこづく。
「ははは。大丈夫だよモーザ。確かに笑わせてもらったけど。イリスって想像力豊かなんだな。なあミュゼ」
「はい。イリスさん頑張ってくださいね」
「って何を頑張るんだミュゼ?」
「あはは。何を頑張るんでしょうねえ。あはは」
と両手で口を押えるミュゼリア。
「それにしてもイリス」
と功助。
「は、はい!」
急に名前を呼ばれビクッとなるイリス。
「何に変身したいかに答えてくれた時、全然噛まずに話してくれたけど気づいてたか?」
「へ?私がですきゃ?」
「また噛んだ。コースケ隊長、イリスはですね自分の好きなことについて話しする時には全然噛まないんですよ。ほんと不思議なんですイリスって」
とイリスの肩を叩くモーザ。
「へえ。そうなんだ」
と苦笑してイリスを見る功助。イリスはなんで?と言った顔で功助を見ていた。
廊下から庭に出たとたん前を歩いていたイリスが叫んだ。
「うぎゃああああっ!」
突然叫ぶとモーザの後ろに急いで隠れた。
「どうしたんだイリス!」
「どうしたんですかイリスさん!」
功助とミュゼリアが驚いてモーザの後ろで震えているイリスを見て周囲を警戒する。
「わ、わわわわわわ、あ、あそこあそこあそこ!」
イリスが震える手で指さしたのは…、石畳の端をのんびりと歩いているイモ虫だった。
「ほんとにもう。イリスって怖がりなんだから。あれただのイモ虫じゃないの。なんであんなのを怖がるかなあ」
とため息をつくモーザ。
「で、でもでもでも、怖いんだからしょうがないでしょ。モーザだって怖いものあるでちょ!」
とまだモーザの背中で震えているイリス。
「そっか。イリスは虫が嫌いなのか。でも虫でよかった。イリスが突然怖がるから何か不信なものを見つけたのかと思ったけど、よかった」
功助がそう言いながら壁際で楽しそうに散歩しているイモ虫をひょいと摘み上げると近くの大きな葉っぱの上にそっとおろした。イモ虫は何があったのかと少しうねうねと首を動かしたがそ。こが葉っぱの上だと気づいたのだろうパリパリと葉っぱを食べ始めた。
「さあ、行こうか」
そうこうしているうちに四人は魔法師隊控室に付いた。
「それでは失礼します」
「しちゅれいします」
「ちょっとイリスまた噛んだ」
「あっ、あの、失礼します」
モーザとイリスは最敬礼をすると控室前で功助たちと別れ魔法師見習いたちが待期する広場に向かって行った。
コンコンコン
「失礼いたします」
ミュゼリアはドアを軽くノックするとそっと扉を開いた。
「お疲れ様です」
控室に入った功助とミュゼリア。
「お疲れさまですコースケ隊長」
「ダーリンお疲れ~」
とテーブルに座るラナーシアとシャリーナが出迎えた。
二人はテーブルをはさみ何やら書類を診ながら話し合いをしているようだ。
「いいとこに来たわねダーリン。これ見てちょうだい」
とテーブルの上の書類を持ち上げてひらひらさせるシャリーナ。
「なんですか?…って俺字が」
「あっ、そうだった。んじゃかいつまんで説明するわね。これはねフログス伯爵の経過報告書よ」
「えっ、フログス伯爵の?」
「はい。さきほど治癒術師長が持ってきたんです」
とラナーシア。
「そうなのよ。目が覚めて今日で二十日目だから。んじゃ読むわよ」
とシャリーナは説明をはじめた。
覚醒した次の日には離床し杖をつき歩行し、その夜には城内を歩行訓練。次の日には城外を歩行できるまでに回復。
四日目には馬車で二日行った温泉で十日滞在し湯治。そしてまた二日かけて一昨日に帰城。現在も自室で静養中。
「それからかなり身体の調子はよくなったみたいね。でもまだ精神的には辛いみたい。たまに誰かに診られてるかもとか誰かがそこにいただとか不安定みたいだけど、食欲もあるし睡眠もよくとれてるようね」
「そうですか。それはよかった」
と安堵する功助。そしてシャリーナを見て続けた。
「それでこれから先フログス伯爵の処遇はどうなるんですか?」
「陛下がおっしゃってたんだけど、たぶん数か月は牢屋行きでしょうね。本来なら伯爵が起こしたのは重大な国難だから処刑でしょうけど、魔族に操られていたことを考慮しても考えられないくらい軽い刑罰よこれは」
「そうですか」
と功助。
「やはり先王と貴族の方々の先代のフログス伯爵への愚決を考慮されたのでしょう」
とラナーシア。
「まあ、そうでしょうね。ねえダーリン」
「え、はい。…って今更ですが、俺の呼称は’ダーリン’に決定ですか…?」
と溜息をつく。
「ん?そうよ。いいじゃない。減るもんじゃなし。まあ、そんなことよりフログス伯爵からダーリンにお願いがあるんだって」
「へ?俺にですか?なんだろ」
「治癒術師長が伯爵に頼まれたんだけど。姫様に謝罪したいんだって」
「シオンに?」
と驚く功助。
「まあ伯爵の気持ちもわかるわね。自分のせいで姫様の人竜球を壊してしまったんだもの。でも姫様が会いたがらないんじゃないかなあ。ねえ」
とラナーシアと頷き合うシャリーナ。
「でも、シオンに謝罪したいのなら俺じゃなくバスティーアさんに頼んだ方がいいんじゃないかな。陛下の許可もとらないとダメだろうし」
「したらしいわよ。バスティーアさんから陛下に頼んでもらったらしいんだけど、なんと陛下は’俺には決められん、コースケに聞いてみろ’ってさ」
と小さく肩を竦めた。
「へ?な、なんで俺に?なんか無茶苦茶な気がするんですけど」
「あたしもそう思うけど、陛下がおっしゃったんだからダーリンが姫様に聞いてあげればいいんじゃない。近いうちにバスティーアさんから依頼されるわよたぶん」
「は、はあ…」
と嘆息する功助。
「わかりました。今日できるかどうかはわからないけど、シオンに聞いてみます。ミュゼ、確か今日も会食あったよな」
「はい。予定通りですが、今から私が姫様に」
「いや、会食の時に言うよ。陛下も一緒だし都合いいからね」
「そうですか。わかりました」
とミュゼリアは軽く頭を下げた。
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