異世界人と竜の姫

アデュスタム

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第4章 見つけた

02 シャリーナ帰還

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ドンドンと強く部屋のドアを叩く音がした。
「ミュゼリアですっ。入ります!」
と言ってミュゼリアがぜえぜえと息を乱し入ってきた。
「どうしたんだミュゼ。そんなにあわてて」
「はあ、はあ、はあ。こ、これがあわてなくてどうしますコースケ様っ」
「何があったんだ」
 功助はソファーから立つとミュゼリアの近くに行く。
 膝に手を付いていたミュゼリアは急に背筋を伸ばすとこう言った。
「隊長が、シャリーナ隊長がお戻りになられました」
「……そうか。シャリーナさんが戻ってきたか。思ったよりも早かったな、よかった。よしっ!」
 功助は左の掌に右拳をパチンと当てた。
「で、今シャリーナさんはどこに?」
 とミュゼリアの方を見ると…。
「ここにいるわよダーリーーーン!」
 バンっとドアが開くと白銀の髪をなびかせて功助に突進してくる小柄な女性。
「会いたかったわよおおおぉぉぉっ!!」
と言って飛びついてきた。
「ぅわっ!」
「うわああああああぁ!ふがっ……」
 功助はとっさに危険を感じ思わずよけた。
 シャリーナは飛びかかってきた勢いそのままに部屋の壁にダイブして顔面を強打したようだった。
「う、うぐぐぐぐ……。な、なんでよけるのよぉ。ひ、酷いわよダーリン」
と言ってこっちを向いたシャリーナ。涙目で鼻血をだらだら流していた。
「わっ鼻血が!シャリーナさん、す、すみません」
 と言って近づくとガバッと抱き着いてきた。
「むふふふふ、離さないわよぉ」
と功助の頭にしがみついて離れない。
 小柄なのになんでというくらいの爆乳に顔を挟まれ息ができずもがく功助。
「シャ、シャリーナ隊長お離れくださいっ!コースケ様が、コースケ様がっ!」
 とミュゼリアがシャリーナを功助からはがそうとしているがビクともしない。それどころか離されてなるものかとより一層しがみつく腕に力が入るシャリーナ。
「…う、シャ、シャリーナ…ひゃん…。く、苦しい…ふぐぐぐうう…、し、死ぬぅ…」
「うふふふふ。これでダーリンはあたしのものっ。このあと二人きりになってあんなことやこんなことを、イヒヒヒヒ」
 功助の意識がふぅっと薄れていきそうになった時。
  バッコーーーーン!
「いっ、いったあぁぁぁい!」
 と言って頭を抱えシャリーナは床に転がった。
「何回言えばわかるんですかぁこの淫乱バカ女はっ!!いい加減にしなさいっ!!「
 もう一度振り上げた手にはなぜか木製のトレイが。
「なななな何で叩いてんのよぉ」
「見てわかりませんか!木でできたお盆ですっ!」
「じゃなくて…」
「お黙りなさい!」
 と赤い目を怒らせシャリーナを睨む。
「すみません。大丈夫ですかコースケ隊長」
「はあはあはあ。く、苦しかった…。死ぬかと思ったぁ…。あ、ありがとうございますラナー…シア副隊長…。はあはあ…、それとありがとうミュゼ」
 ラナーシアは深々と頭を下げ、ミュゼリアは功助の背中を摩っている。
 功助は肺いっぱいに深呼吸をするとシャリーナを見た。
「だ、だってぇ、久しぶりにダーリンに会ったんだからぁ…」
と頭のてっぺんを摩り涙目でおまけに鼻血をだらだら流しながらラナーシアを見るシャリーナ。
「お黙りなさい!こうしてあげます!」
とどこから取り出したのかロープでシャリーナをあっという間にぐるぐる巻きにした。
「わっ、な、何っ。ど、どういうことよこれは。なんという早業なのっ!ラ、ラナーシア…あんたすご技の縄師だったの…!」
「ち、違いますっ!ほんとにもう。なんでいつでもどこでも淫乱バカ女なんですか!反省しなさい反省!反省しないならっ!」
 と今度は手の中の鞭を握りしめるラナーシア。
「わっ、わっ、ご、ごめんって。ねえ、そ、それはやめましょうよ。ね、ラナーシアさん。それはシャレにならないわよシャレに」
とグルグル巻きのまま後退るシャリーナ。

「それで、見つかりましたかシャリーナさん」
「ええ。見つかったわよダーリン。カレット」
「は、はい隊長っ。これですコースケ様」
 カレットとはシャリーナとともにマギシティーに行った魔法師隊新入隊員の竜族の少女だ。魔法師らしく黒いローブを着てグレーの髪に同じ色の瞳をした少しおっとりした感じの少女だ。そのカレットが手に持った鞄から数枚の紙を取り出し功助に手渡した。
「原本は無理だから複製のものよ。でも完璧な複製だからあんしんしてね。でもほんと、けっこう大変だったのよその古文書捜すの。普通に閲覧できる図書区にはないだろうと思って最初から禁書区に行って朝から晩まで調べたのよ。ねえカレット。あなたも頑張ってくれたもんね」
「え、は、はいっ。私も頑張って捜しましたっ。でもこんなに早く見つけることができるとは思ってもみませんでした。えへへ」
 と、少しはにかむ新人魔法師。
「ありがとうカレット」
「はい!」
 少しはにかむカレット。
 カレットから受け取ってしまった古文書。しかしまたこの世界の文字が読めないことを思い出しすぐに顔を上げてミュゼリアを見る功助。
「はい、お任せください、お読みいたします」
とうれしそうなミュゼリア。
「ねえねえラナーシア」
「なんですかシャリーナ隊長」
「ねえ、そろそろいいんじゃないラナーシア。もうこれほどいてくれない?」
「まだです。そのうちほどきますのでそれまで反省していてください」
「ぷうぅ!」
 と頬をふくらませて口を尖らせるシャリーナ。
「ねえラナーシア」
「はい。なんですか隊長」
「ねえねえ、ダーリンの臨時隊長はどうだった?」
 少し心配そうに、それでも自信ありげに小首を傾げる。
「え、はい。魔法師隊全員慕ってますよ。’コースケスマイル’が素敵だと言ってファンが多いです。それにコースケ隊長はお優しいですから」
「やっぱりあたしの目に狂いはなかったってことね」
 とうんうん大きく頷くシャリーナ。
「はい。そうですね。でも、あの時点で臨時隊長着任を心配する者はたぶんいなかったのではないかと」
 と横目でシャリーナを見るラナーシア副隊長。
「ふんっだ」
 そっぽを向くとまた口を尖らせた。

「コースケ様。では読みます」
「うん。頼む」
 シャリーナとカレットが一ヶ月以上もかけてようやく見つけてくれた羊皮紙をミュゼリアが代読した。

----------

 その者 白き光に導かれ異なりし界を渡りこの地に立つ。
 界を渡りし時偉大なる力覚醒す。
  黒き眼 黒き髪 優しき心に満ち溢れる者
金色の竜と契りし時その者世界を邪より護りし力得る

 界を帰還する方 これたやすく叶うなり ただし膨大な魔力失うこと必然
 この界に降り立ちし時の大地に 自らの魔力を注ぐ時願い叶うなり
 その大地四方に天の竜の白き牙屹立し処
帰還方 これ二種存在す

一つ  最初に接しし竜の鋭牙鬼神のごとく引き抜き 地に突き刺し魔力を注ぐ法 しかし牙抜かれし竜 即死必至

二つ これ手中に得ること極めて至難 ゆえに叶うこと無の如し
その触媒次第悪魔の骸なり
触媒と共に自らの拳を中心に埋没し魔力と気を注ぐ時界の門開く
 ××月の中××法成××

 この二種の帰還法生涯ただ一度の法。故に未練ありし者は苦悩終わらず

 帰還せし時 界の記憶微塵も残らず
----------

「以上です。……コースケ様…」
「あ、ああ」
 しばしの沈黙のあとシャリーナがその口を開いた。
「まずはちょっとずつ検証しましょうか。所々あたしの意見や考えも言うけどね。んじゃミュゼちゃん、最初からも一回読んでくれる?」
「あ、はい。では読みます。’ その者 白き光に導かれ異なりし界を渡りこの地に立つ 界を渡りし時偉大なる力覚醒す’」
 シャリーナをちらっと見る。
「うん。確かダーリンの世界には魔法はなかったのよね」
「はい。魔法も魔族もみんな空想上のものです」
「で、こっちの世界に来たら魔法が使えるようになったのよね」
 とシャリーナ。次いでラナーシアがふむとミュゼの持っている古文書を覗き見る。
「ではこの最初の白き光に導かれたというところはどうでしょうかコースケ隊長」
「うん。こないだふと思い出したんだけど、元の世界で気を失う直前白くて強い光に包まれたのを思い出したんだけど。それかなあ?」
「ふーむ」
 と功助をみるシャリーナ。
「ねえミュゼちゃん。あたしあんまりわからないんだけどさ、確か竜族の守護神って白い竜だったわよね」
「え、はい。白竜神様ですが…。も、もしかして…」
とあわてて古文書に目を落とす。
「’白き光に導かれ’。それと’四方に天の竜の白き牙屹立し処’。シャリーナ隊長…。これは白竜神様のことなのでしょうか…?」
 少し興奮気味にミュゼリアがシャリーナを見る。
「うーん。わかんないけどそうじゃないかなあってあたし思うんだけどね。でもただの推測だからあまり気にすることはないと思うのよ」
「そうですか…」
 と少し残念そうなミュゼリア。
「で、次読んでミュゼちゃん」
「はい。えーと、’  黒き眼 黒き髪 優しき心に満ち溢れる者’です。これは絶対にコースケ様のことですよ。間違いありません!」
 と鼻息荒くミュゼリアが力説する。
「あたしもそう思うわ。ね、ラナーシア」
「はい。私もそう思います。黒い髪の人族はコースケ隊長以外にはいませんから」
 と頷くラナーシア。
「で、次、次読んで」
「はい。’金色の竜と契りし時その者世界を邪より護りし力得る’です」
 と読んだとたんシャリーナがくねくねしだした。
「いやぁん。契りしだなんてぇ。契るのはあたしにしてぇん。うふっ。いったいぃぃぃぃぃっ!!」
 スパコーンッという乾いた音をたてたのはラナーシアの手に握られたハリセンだった。
「痛いじゃないのラナーシア!縄でぐるぐる巻きで頭摩れないのよお!」
 と身もだえするシャリーナ。大粒の涙が目尻に溜まっていた。
 そこにすかさずカレットが近づきシャリーナの頭を撫でる。
「ありがとカレット。やっぱりあたしのことわかってるのはカレットだけよねえ。ということで契るのはやっぱりあたし…」
 とラナーシアをジトッと見る。
「お黙りなさい!このすっとこどっこい淫乱エロ女!」
「だ、だってえ。契るって書いてあるんだもーん。だから契るならあたしとって…。わっわっわっ、や、やめてやめてラナーシア。それで頭叩かれたら死ぬって、ねえ、ラナーシア。あたしが悪かったから。ねっ、ゆるして、ねえねえねえ!!」
 サーッと顔面蒼白になるシャリーナ。
。「ふん!」
 と言ってラナーシアは手に持っていた一抱えもある岩を部屋の隅にドンッと置いた。
「な、なあミュゼ。なんでこんなところに岩があるんだ?ここ、俺の部屋だよな?」
「はい。私にもわかりかねますが…。気にしたら負けのような気がします」
「そ、そうだよな。見なかったことにしよう」
 とこそこそ話をする功助とミュゼリア。
「それで、コースケ隊長。話を勧めましょう」
 と笑顔のラナーシア。
「あ、はい。えーと、ミュゼもう一度読んでくれる?」
「はい。’金色の竜と契りし時その者世界を邪より護りし力得る’です。この金色の竜は絶対姫様ですよ!そうですよ間違いありません!」
 とまたまた鼻息荒いミュゼリア。
「私も姫様だと思います。そして契る相手も姫様かと。おそらく契るというのは契約するということだと思いますよコースケ隊長」
 と顎に手をやるラナーシア。
「ということは俺がシオンと契約…ですか?」
「はい。そうだと思います。でも今はそのことは置いといてですね。そのあとの’世界を邪より護りし力得る’ですが、邪を抱いた者が現れてくるってことでしょうか?」
「それを姫様と契約したコースケ様が倒して世界を守るってことではないでしょうか!」
 とまだ鼻息荒いミュゼリア。
「ははは。まあこれも今は置いといてだな。次は?」
 功助が次を促す。
「はい。’ 界を帰還する方 これたやすく叶うなり ただし膨大な魔力失うこと必然 この界に降り立ちし時の大地に 自らの魔力を注ぐ時願い叶うなり’です。簡単だけど魔力がたくさん必要のようですね」
「そのようね」
 とシャリーナ復活。
「で、ミュゼちゃん、次読んでちょうだい」
「はい。’ その大地 四方に天の竜の白き牙屹立し処 帰還方 これ二種存在す’です」
「白い牙が四本あるとこみたいね。ダーリンがこの世界に着いた大地のことだと思うけど、覚えてる?」
「はい。覚えてますよ。俺が目覚めた時倒れてた四方に牙みたいなツノみたいなのが生えてました。白くて艶々していましたよ」
「その場所わかる?」
「さあ…。なんせ目覚めてすぐにシオンに追いかけられましたから…」
 とその時を思い出して頬をかく功助。
「ふーん。まああとでバスティーアさんにでも捜すように手配しましょうか。で、大地に魔力注ぐ方法が二つあるようね。んじゃ次読んでミュゼちゃん」
 ミュゼリアをちらっと見る。
「えーと。’一つ  最初に接しし竜の鋭牙神のごとく引き抜き 地に突き刺し魔力を注ぐ法 しかし牙抜かれし竜 即死必至’です。これは牙を引き抜くって方法ですよね」
「そうだな。できればこれはしたくないし」
 と眉間を寄せる功助。
「そうよね。これがしたくないからあたしにたのんだんですものねダーリン」
「え、はい」
「そして二つ目の方法はと」
 シャリーナが険しい顔でミュゼリアの持つ古文書を見つめる。
「’二つ これ手中に得ること極めて至難 ゆえに叶うこと無の如し その触媒次第魔族の骸なり’…」
「よりによって四大魔族とはねえ。でも、もう三つはそろってるわよ」
「へ?そうなんですか?」
「そうよダーリン。忘れたのあのマピツ山の魔族」
 と少しあきれの目を功助に向ける。
「あっ、そうか」
 と功助。
 マピツ山でダンニンとムダン、そしてデイコックを討伐している。
「でも骸って?」
 と首をひねる功助。
「んもうダーリン。魔族が倒れたあとはどうだったか思い出してよ」
 と苦笑するシャリーナ。
「えーと。あ、ああ。なんかあとに残りましたね。なんだったかな?」
 とまた首を捻る。
「いい。ダンニンは透明な石、ムダンはひからびた蛇みたいなの、そしてデイコックは金貨のようなものが残ったでしょう。忘れた?」
「はいはい。そうでした。で、それが保管されてるんですか?」
「そうよ。バスティーアさんに聞けばわかるわよ。でも、残りの一つが…、ねえ…」
 残りはゼドンだが、ゼドンは次第魔族の頂点に君臨する魔族の長。古文書のとおり手に入れることは至難の業だ。
「…叶わないって書いてありますね」
 と功助が古文書を見つめた。
「で、でもわからないですよ」
 とミュゼリア。
「だって’その者世界を邪より護りし’ってあるんですよ。四大魔族のうちの三人だけってことはないと思います」
「ということは」
 今度はラナーシアがそう言うと全員を見る。
「また魔族が攻めてくるってことでしょうか?」
 全員が無言になる。するとミュゼリアがなぜか胸を張る。
「そこでです!そこで姫様と契約したコースケ様の登場です。せめて来たゼドンをコースケ様がこてんぱんにやっつけてくれるんです。そうです、絶対そうです。だからゼドンの骸も手に入れることができるんです!」
 ドヤ顔のミュゼリア。
「ふふふ。あはははは。そうね、そうよねミュゼちゃん。大丈夫ダーリン。手に入るわよ四大魔族の骸!」
 とシャリーナ。
「は、はあ。でもゼドンでしょ。どんな奴か知りませんが、俺に勝ち目なんてあるんでしょうか?魔族の長なんですよね。勝てるかなあ」
「ふふふ。ダーリンにはあの魔力砲があるから大丈夫。マピツ山で放ったのってあまり魔力量はそれほどでもなかったんでしょ?」
 それを聞くとミュゼリアもフェンリルの攻撃を思い出す。
「そうですよコースケ様。フェンリルに撃ったコースケ砲も最大出力じゃなかったんじゃないですか?」
「ミュゼちゃん。あれってコースケ砲っていうの?」
「はい。姫様が命名されました。なかなか強そうな名前ですよねコースケ砲」
「そうね。コースケ砲か。ダーリン最大出力のコースケ砲なら楽勝よたぶん。だからゼドンが来てもあたしたち安心ね。ゼドンが攻めてきてもあたしたちはお茶でも飲みながらダーリンの応援してればいいんじゃない」
 とシャリーナは縄でぐるぐる巻きなのにピョンピョン跳ねながらうれしそうにしている。
「ちょっ、ちょっとシャリーナさん」
 と功助は苦笑するしかないようだった。
「はいはい。それはそれで、古文書に戻りましょう」
 とラナーシア。
「えっ。あ、はい。では読みます」
 と古文書を両手に持ち直すミュゼリア。
「’触媒と共に自らの拳を中心に埋没し魔力と気を注ぐ時界の門開く’です。シャリーナ隊長。この’気’ってなんですか?」
「’気’ねえ……。魔力とともに’気’を注ぐって…。何かしらね。ラナーシアわかる?」
「さあ。私も’気’については全くわからないのですが、なんなのでしょう?」
 と二人して首を傾げた。
「あの。’気’ってあの’気’かも」
「ダーリン。それじゃまったくわかんないわよ。でも、’気’って知ってるのダーリン?」
「えと、知ってると言うか、具体的にはよくは知らないんですが。そうですね。この世界では体内には魔力があるって言うんですよね」
 シャリーナを見る功助。
「そうよ。この世界の生きとし生けるものには多かれ少なかれ体内に魔力があるわよ。それこそそこらにいる虫や木や草に至るまですべてね。で?」
「はい。俺のいた世界では体内には’気’が流れてるっていうんです。体調が崩れたり病気になったりするのはこの’気’の流れが滞って身体のバランスが崩れてなるって」
「ふーん。ということはダーリンの身体の中には魔力とその’気’が流れてるってこと?」
 と功助を指さすシャリーナ。
「うーん。まあ、そういうことになるのかなあ。でも、俺に’気’が操作できるかどうかはわかりませんが」
 と腕を組む功助。
「大丈夫だと思います!」
 大きな声でミュゼリアが手を挙げる。
「コースケ様ならその’気’を扱えると思います。なぜならあのコースケ砲もフェンリルに対しその場ですぐに使えたのですから!間違いありません!コースケ様は無敵です!!」
 とまたまたまたまた鼻息荒くブンブンと手を振りながらガッツポーズをとるミュゼリア。
「あ、あははは。わかったよミュゼ。ミュゼが言うならたぶんできると思うぞ俺。まあ、これから気の鍛練もしないとな」
「はいっ!」
 と鎖骨の前でグーをするミュゼリア。
「ふふふ。さて、それじゃ次読んでくれるミュゼちゃん」
「あ、はい、えーと’ ××月の中××法成××’ですけど…、シャリーナ隊長これは?」
「うん。そうなのよねえこの部分は虫が喰っててて穴が空いてたのよね。だから何が書いてあったのかわからないのよ」
 と悔しそうに古文書を見つめる。
「しかし、まったく意味がわかりませんねこれ」
 とラナーシア。
「まあ、わかんないものは仕方ないわよ。でも気になるわねぇこの部分。それじゃ次読んで」
「はい。’ この二種の帰還法生涯ただ一度の法。故に未練ありし者は苦悩終わらず’です」
「これによるとこの二つの方法は生涯に一度しか使えないようね。それに悩むっていうことか。まあ悩むでしょうねえ。次の文を読めば。ミュゼちゃん」
「は、はい。次が最後で’ 帰還せし時 界の記憶微塵も残らず’です」
 全員が口をつぐんだ。それを破ったのはやはりシャリーナだった。
「うーん。なかなか悩むわよねダーリン」
「…は…い…」
 ミュゼリアの持つ古文書をジッと見る功助。
「はっきり言うわよ。ダーリン、元の世界に戻ったらこちらの世界のことはすべて忘れてしまうようね。あたしのこともラナーシアやミュゼちゃん、ここにいるカレットや魔法師隊隊員、青の騎士団。陛下や王妃様のことも。そして…」
 功助の目をジッと見るシャリーナ。
「シオンベール王女様のことも」
「うっ……」
 功助の視線がだんだんと下を向きついには床を見つめた。
「でも、古文書のとおりになるとは限らないけどね。もしかしたら元の世界に戻ってもみーんな覚えてるかもしれないしさ。ね、みんな」
 とシャリーナはラナーシアたちを見渡した。
「そうですよコースケ様!コースケ様が忘れてしまうわけありません!」
「私もそう思いますよコースケ隊長」
「わ、私もそう思います!」
 とミュゼリア、ラナーシア、そしてカレットも大丈夫だと功助を見つめた。
「ねっ、ダーリン。あたしも大丈夫だと思うわよ。なんせダーリンの魔力量は桁違いも桁違い。一桁や二桁どころじゃないんだから。忘れるわけないわよ。もしかしたらその魔力量なら向こうとこっちと行き来ができるかもしれないわよ」
「そ、…そうでしょうかシャリーナさん…」
 と寂しそうにシャリーナを見る。
「…ふふ。だぁいじょうぶ。ぜぇったい悪いようにはならないと思うわよあたし。そうよねみんな」
「はい!」
 三人の声が重なり功助の心に届いた。
「う、うん。そうだよな。そうだよ、俺は俺を信じる。これから先も絶対にうまく行く。なあみんな。だから」
 功助は四人の顔を順番に見る。
「俺に力を貸してくれ」
「はい!おまかせくださいコースケ様!コースケ様専属侍女の私ミュゼリア・デルフレックがついておりますのでご安心ください!」
 やはり最初に声を出したのはミュゼリアだ。
「私にもお任せください。このラナーシア・サラマンディスも微力ながらご支援させていただきます」
 と左胸に右拳を当てるラナーシア。
「わ、私も何かお手伝いさせてください」
 とカレット。
「あたしもダーリンのためならどんなことでもしてあげるわ。だから、さあ、この私の身体を好きなだけ存分に心行くまで辱めて弄んでくださ……。うぎゃあぁぁぁぁっ!」
ズバコーン!という音とともにシャリーナは壁に張り付いた。
 そして、ラナーシアの腕の中には木製の頑丈そうなテーブルがあった。
「あ、…あぐっ、…ふぐっ…、はにゃ…、し、死ぬ…ぅ…」
 ロープでぐるぐる巻きのまま壁にめり込み両足をピクピクさせ白目を剥いているシャリーナ・シルフィーヌ。彼女は魔法師隊隊長…のはずだ…。

「ふう。酷い目に合った。ほんと死ぬかと思ったわよ。目の前に死んだはずのおじいちゃんが出てきて連れて行かれそうになったわよ、抵抗したけど。ほんと、ありがとうダーリン」
 壁に張り付いたシャリーナを剥がして功助が治癒魔法で傷を治したが、まだロープでぐるぐる巻きだ。ラナーシアがほどくのを許可しなかったのだが。
「自業自得です。しかしコースケ隊長がいてよかったですねシャリーナ隊長」
 とシャリーナを見下ろすラナーシア。
「ふんっだ!」
 とそっぽを向くシャリーナ。
「ははは。まあラナーシア副隊長、そろそろそのへんで許してあげてください」
 と功助。
「そうですね。そろそろですかねえ」
 とシャリーナをチラッと見るラナーシア。
「それとみんなにお願いがあるんだけど」
 と功助。
「このことはシオンにはまだ知られたくないんです。だからシオンにはまだ黙っててください」
 とみんなを見る。
「いいわよいいわよ。わかってるからさ。ねえみんな」
「はい。そうですよコースケ隊長。お気持ちはわかりますのでご安心ください」
「私も絶対に他言しませんのでご安心くださいっ」
 シャリーナもラナーシア副隊長もカレットも約束してくれた。
「わかってますよコースケ様」
とミュゼリアは笑顔で頷いた。
ありがとう」
 頭をさげる功助。
「ダーリン。ダーリンが頭下げなくてもいいのよ。あたしたちよっくわかってるんだからさ」
「はい」
 再びみんなの顔を見た。

「さあ、ではコースケ隊長。そろそろ午後の訓練の時間です。私は先に行って準備してきますので」
 とラナーシア副隊長がソファーから立つと功助に一礼をして部屋を出て行こうとする。
「ちょ、ちょっと待ってよラナーシア。これほどいてから行ってよ!」
 とあわてるシャリーナ。
「あ、ああ。忘れてました。が、どうしましょう?」
 と人差指を顎にあてると首をひねる。
「そうですね。ここにいるとコースケ隊長にご迷惑がかかりますので」
 と言ってシャリーナに近づくとおもむろに小柄なその身体を肩に担いだ。
「うぎゃっ。いきなり何すんのよあんた!あたしは荷物じゃないわよっ!」
 とラナーシア副隊長の肩の上でじたばたする。
「似たような物ですシャリーナ隊長。今日はそのままでいてください。大丈夫安心してください。ちゃんとご飯も食べさせてあげますし、ちゃんとトイレもさせてあげますから。ではコースケ隊長後ほど」
 とラナーシア副隊長は一礼するとギャーギャーわめきじたばたともがくシャリーナを担いで部屋を出て行く。
「あ、わ、私も失礼しますっ!」
 とカレットもあわてて立つと深々と一礼をしてラナーシア副隊長の後を追って部屋を出て行った。
「シャリーナさんがいるとやっぱり騒がしいというか楽しいというか。まあ、シャリーナさんだよな」
「うふふ。コースケ様。何を言おうとしてるのかわかりますが、やはりわかりにくいですよ」
 と口に手を当てて笑うミュゼリア。
「あはは。やっぱりそうか。自分でもわかりにくいかなと思ったんだけどな」
 功助とミュゼリアは顔を見合わせて笑った。

 午後からの魔法師隊見習いの鍛練を終え功助は城内の自室でバスティーアと話をしている。
「はい。姫様とコースケ様を見つけた場所なら覚えております。ここ白竜城より北西でございます」
「よかった。場所がわかって。でもそこからが大変なんだけど。あの時シオンに追いかけられて、たぶん30分は走って逃げてたと思う。なんとなく走ってきた方向はわかるけど」
 と眉間を寄せる。
「ならば手わけし捜すまででございます。わが白竜城には優秀な者が多くおりますからご安心ください。それでだいたいどの方向が可能性高いでしょうか?」
 バスティーアは地図を取り出しシオンベールと功助を見つけた場所を指で示した。
「そうですねえ」
 と功助もその地図を見る。
「地平線まで川も岩も低木も何もない草原だったから。えーと、こっちの方向の可能性が高いかな」
「ふむ。森よりも北東の方向のようですね。わかりました。こちらの方面を中心に捜索範囲を絞ってみましょう。ご心配いりません、必ずや白き四本の牙の場所を特定しご報告させていただきます」
 と一礼をするバスティーア。
「ありがとうございます。あのバスティーアさん。このことはシオンには内密でお願いしたいんですが。特にあのことは」
「はい。承知しております」
 バスティーアは柔らかに微笑んだ。
 早速準備してきますとバスティーアは功助の部屋を出て行った。
「早く見つかるとよろしいですねコースケ様」
「ん。ああそう、だな」
 窓の外に目をやるとオレンジ色の空が広がっていた。

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