異世界人と竜の姫

アデュスタム

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第6章 何故

04 楽しいですね

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・・・66日目・・・


  コンコンコン。
 朝8時。元気よくドアを叩く音で功助はよしっとソファーから立ち上がった。
 ミュゼリアがドアを開けると黒いローブにみを包んだ見習い魔法師隊の少女が二人立っていた。
「おはようございますコースケ隊長!」
「お迎えに参りました!」
 二人の少女は緊張しながらも右拳を左胸に当てた敬礼をした。
「おはよう。今日はネモアとロレールが来てくれたのか。ありがとう」
 功助はにこやかに二人に片手をあげて迎えのねぎらいをした。
「「はいっ!」」
 ネモアとロレールはうれしそうに返事をすると功助の後ろに控えているミュゼリアに視線を向けた。
「おはようございますミュゼリアさん」
「本日もよろしくお願いします」
 二人は同時に頭をペコリと下げる。
「おはようございますネモアさん、ロレールさん」
 ミュゼリアもペコリと侍女の礼をした。
「さ、行こうかネモア、ロレール」
「「はいっ」」
 四人は雑談をしながら魔法師隊控室に向かった。

 昼休憩。
「なあミュゼ」
「はい、コースケ様」
 風魔法で涼風を送っていたミュゼリアは何かあるのかと姿勢を正した。
「確か明日トリシアさんたちトリー村に帰るんだったよな」
「はい。日の出前に出立されると聞いています」
「だよな。でさ、明日の見送りは朝早いから無理だから今日会いに行っておきたいんだけど今から行こうと思うんだけどどうだろ?」
「今からですか?うーん。たぶん大丈夫だと思いますが」
 と壁の時計を見上げるミュゼリア。
 現在時刻は11時50分。昼休憩は14時までとまだ2時間10分の時間がある。
「はい。大丈夫ですよコースケ様。時間もまあまあありますし、カモメ亭で食事もできそうです」
「そっか。ならすぐに行こうか」
「はい」
 二人はシャリーナとラナーシアに外出する旨を告げ城下に向かったのだった。

「こんにちは」
「いらっしゃいませ」
 功助とミュゼリアがカモメの図柄の暖簾をくぐるとトリシアの声が出迎えた。
「あっ、コースケ様、ミュゼリアさん。いらっしゃいませ。さ、どうぞこちらへ」
 トリシアはカウンターに近いテーブルに二人を案内すると厨房に声をかける。
「女将さん、コースケ様とミュゼリアさんが来店されました」
「おおそうか。いらっしゃい」
 厨房から顔をちょっと出したマギーはニコリと微小すると「ゆっくりしていきぃや」とまた調理に戻った。
「お久しぶりですトリシアさん。元気そうですね」
「はい。ありがとうございますコースケ様」
 トリシアは水の入ったコップをコトンと二人の前に置いた。
「お忙しそうですねトリシアさん」
 とミュゼリア。
「はい。繁盛していてうれしいんですが……」
 と少し暗い顔。
「でも村に帰らないと……。でもカモメ亭が心配で……」
 と言うと俯いてしまった。
「はあ…。何言うてんのトリシア」
 マギーが厨房から顔を出してため息をついた。
「女将さん……」
「あんたが村に帰らへんかったらどうすんのん?村の人らはあんたが帰ってくるの待ってはるんやで。私のことは気にせんでええさかい」
「はい。でも……」
「はあ…」
 マギーはまたため息。
「トリシアのおかげでほんま繁盛させてもろたわ。心配せんでもええよ。ちゃんとトリシアの後釜は決めたぁるさかいな」
「えっ。そうなんですか……。それなら安心ですが……。どなたなんですか?」
 トリシアはホッとした顔をマギーに向けた。
「あんたも知ってる人やで」
「そうなんですか?どなたなんですか?」
 と、その時岬のカモメ亭の暖簾をかき分けて一人の女性が入ってきた。
「ただいまです女将さん、手続き終わりました」
 トコトコとカウンターの前に来てマギーにそう言ったのは茶色い髪の小柄な女性だった。見た目は二十代半ば、あまり背は高くなくほっそりとしている。そしてその頭には長い耳がピョコンと立っている。どうやらウサギの獣人のようだ。
「おお、帰ってきたか。手続き終わったんやったら手伝うてくれるか?トリシア、仕事教えたってえな」
「えっ・あれコネットさん?え?仕事を?」
 マギーにコネットに仕事を教えてくれと言われおろおろするトリシア。
「あ、はい。よろしくお願いしますトリシアさん」
 その兎の獣人コネットはトリシアにペコリと頭を下げる。
「え?え?え?」
 いまだに状況をつかめてないトリシア。
「あははは。おもろいなトリシアは。あんな、コネットはあんたの後に働いてもらうことになったんや」
「え?そ、そうなんですか…。で、でもコネットさん……」
「はい。トリシアさんに教えていただくのは今日だけですが一生懸命頑張りますのでよろしくお願いします」
 とまた頭を下げるコネット。
「あ、はい。あの……、確か三日前にお客さんとしてカモメ亭に来られたのですよね。でも、なぜ?」
「それは私から話しよか」
とトリシアの疑問にマギーが答えた。
「コネットは三日前うちに食事しに来たわな。昼時が過ぎて少し余裕のある時やった。もうすぐあんたが田舎に帰ることを私と話してたんを聞いてたんやて。で、あんたがおらんようになったら大変やて私が言うたんも聞いてたんやなこれが。それであんたが二階に上がった時にあんたの後に住み込みで使ってくれって売り込みに来たんや。自分の国でも給仕の仕事してたから自信あるって言うててな、それやったらそうしよかと思て。でも」
 とまだ話は続く。
「でも、ここ王都の職業ギルドに就業許可取ってへんちゅうてたさかいな。許可取ったら使うわって言うてたんや。でも思たよりかなり許可とれたんが遅なったみたいやけどな。勝手に話進めてわるかったなトリシア」
 とすまなさそうにするマギー。
「そうだったんですか。わかりました。あのコネットさん」
「はい」
「今からお仕事教えますのでしっかり覚えてくださいね」
「はい!がんばります!」
 コネットは胸の前で握り拳をつくった。

 トリシアとコネットが店内をあっちにこっちにと動き回っているのを見ながら功助とミュゼリアはランチを食べていた。時々マギーとトリシアとテトの話をしながらおいしく食事をする二人。
「あのマギーさん。テトは今どこにいるんです?」
「テトか?あの子は今二階で勉強してるで。あの子賢いさかいな。あんたな、もっと勉強したらトリシアの、お母さんの力になれるでって言うたらめっちゃ勉強し始めたんや。私もトリシアももうびっくりや」
 とニコニコしながらお玉をブンブン振っている。
「そうなんですか、そんなことが。テトくんえらいですね。勉強することはいいことです」
 とミュゼリアも持ったスプーンをブンブン振っていた。
 トリシアは時々功助のテーブルに来てはこれまでのことを感謝し頭を下げたり、私からのサービスですと言ってフルーツの盛り合わせを持ってきたりした。そしてそろそろ功助たちが城に戻ろうかと思った時。
「あっ!コースケ様とお姉ちゃんだ!」
 二階から降りてきたテトがうれしそうにパタパタと二人に駆け寄った。
「こんにちはテトくん」
 ミュゼリアは視線を合わせるためにしゃがむとテトの頭を撫でた。
「こんにちはお姉ちゃん」
「よっ、テト」
 功助は椅子に座ったままテトの頭を撫でた。
「こんにちはコースケ様」
 とテーブルの上を見てもう一度功助を見る。
「もうご飯食べたんだ。それでもうお城に帰っちゃうの?」
 と少し寂しそうな目を功助とミュゼリアに向けた。
「あ、うん。そろそろ帰らないと訓練があるからな」
「ごめんねテトくん」
 二人がそう言うとそっかあと寂しそうに二人を見て俯いてしまった。
「……明日……」
 テトは下を向いたまま小さな声で言った。
「僕たち明日トリィ村に帰るんだ。たぶんもう王都には来ないと思う……」
 俯いたままのテトの目から大粒の涙が一粒落ちた。
「……テト……」
「テトくん……」
 功助とミュゼリアは声を出さずに涙をこぼすテトに近づき目線を合わせるためにしゃがんだ。
 少し顔を挙げたテトはこれ以上泣かないぞとばかり歯を食いしばっていた。
「……テトくん。短い間だったけどテトくんに会えて私うれしかったです。私、兄はいますが弟がいないのでテトくんが弟のような気がして……。でもねテトくん。一生のお別れじゃないんですよ。会おうと思えば会える距離なんですよ。いつかまた会いましょうねテトくん」
「うん。……ありがとうお姉ちゃん」
 袖でゴシゴシと涙を擦るとミュゼリアを少し赤くなった目で見つめた。
「ねえ、お姉ちゃん」
「はいなんですかテトくん」
「あのさお姉ちゃん。お願いがあるんだけど」
「お願いですか?私にできることならなんでも言ってくださいね」
「う、うん。あのさ……」
 となぜか少し顔を赤くするテト。それを見て微笑むミュゼリア。
「あのさ……。僕のこと……。テトくんじゃなく、テトって呼んでくれる?」
「え?」
 恥ずかしそうに少し俯きミュゼリアをチラチラ見るテト。
「……」
「テトくん…。わかりました。これから私は君のことをテトって呼びますね。いいですかテト」
 それを聞いたテトは満面の笑顔となりミュゼリアに笑顔を見せた。
「うん!ありがとうお姉ちゃん!僕、お姉ちゃんのこと大好き!」
「テト!」
 その笑顔にミュゼリアは思わずムギュッとテトを抱きしめた。
「むぐっ!」
「テト!ありがとう。ありがとうテト!私も大好きですよテトのこと」
「むぐぐぐぐ」
 力いっぱいテトを抱きしめるミュゼリア。
「お、おいミュゼ!テトがテトがテトが!」
 テトがミュゼリアのその控えめな胸に顔を埋もれてムグムグ言っている。
「わ、わああああ!テト、テト、テト!大丈夫ですかテト!」
 テトから離れたミュゼリアははあはあ言っているその小さな両肩を持ち顔を覗き込んだ。
「あは、あはは。苦しかったぁ。お姉ちゃんの大きなおっぱいで息できなかったぁ。あはは。でも、なんかうれしかった」
 とうれしそうなテト。
「あ、あはは。ごめんねテト。そ、そう、私の大きな胸で苦しかったけどうれしかったのね……。なんか複雑」
 少し顔の赤いテトとミュゼリアに功助は苦笑した。
「よかったなテト、それにミュゼリアも弟ができてよかったな」
「うん!」
「あはは。はい。ありがとうございますコースケ様。かわいい弟ができました」
 テトは元気よく返事をし、ミュゼリアは微笑んだ。

「ありがとうございましたコースケ様、ミュゼリアさん」
「ありがとうございましたコースケ様、お姉ちゃん」
 岬のカモメ亭の玄関の外までミュゼリアとテトは出てきて二人に深々と頭を下げた。
「トリィ村に戻っても頑張ってくださいねトリシアさん。そしてお母さんを助けてあげてくれよテト」
「トリシアさん、お体にご留意ください。テト、勉強を頑張ってお母さんを助けてあげてね。そしていつの日か再びこの王都で逢いましょうね」
「はい。ご心配ありがとうございます」
「うん。僕頑張る!そしてまたお姉ちゃんに逢いにここに来るね!」
 二人が見送る中功助とミュゼリアは城に戻った。
 その戻る途中……。
「そういえばコースケ様。、いなかったですねリンリン」
「あっ、ほんとだ。ミュゼに言われるまで気づかなかったな。どうしたんだろな」
「はい。いつもならコースケ様にまとわりつきに来ていたのに、今日は姿も見せませんでしたね」
「うん。……たぶん」
「たぶん?なんですか?」
 小首を傾げるミュゼリア。
「なんかしたんだろうなあ」
「……?ははは、そうでしょうね。何したんでしょうね」
「何したんだろうな」
「うふふふふ」
 苦笑するミュゼリア。
 その時カモメ亭の二階……。
「うぅ。なかなか修理できないですぅ」
 身体がなまるかもと部屋の中でピンク色の長剣を振り回し剣の鍛錬をしているときにちょっと距離感が狂い壁をずたずたにしてしまった。今、その壁を修理しているのだが、なかなか終わらない。それもそのはず、部屋の周囲の壁には、何十か所も剣で削られていたのだから。
「明日出発なのにぃ。んもう、どうしたらいいのですぅ?!」
 木片と木づちをもってたたずむピンク髪の娘、リンリンことリンナは眉尻を下げた。


 城下から戻った功助とミュゼリアは昼からの魔法師隊訓練に戻った。
 いつものように見習いを指導し、新人には攻撃と防御のフォーメーションを身体に叩き込み、シャリーナのセクハラを華麗にスルーしたりと平凡な午後の訓練だった。
「お疲れダーリン」
「はい、お疲れ様ですシャリーナさん」
 訓練後の魔法師隊控室。いつものようにミュゼリアの起こす涼しい風に吹かれる功助たち。
「さてと。ねえダーリン、スマホの映像見せて」
「わかりました」
 懐からスマホを取り出すと慣れた手つきで動画を再生させた。
「あっ、コースケ隊長。これ、今日の訓練ですよね。いつの間にか撮ってたんですね。私気づきませんでした」
 スマホに映し出されている動画を見て苦笑するラナーシア。
「はい。なるべく誰にも気づかれないようにとシャリーナさんに言われまして」
「そうそう。撮ってるのがわかったらみんな緊張するやら逆に力入りすぎたりするでしょ。いつもの訓練状況を見たいからバレないようにしてって頼んどいたのよ」
 と功助の腕に大きな胸を押し付けてスマホを見るシャリーナ。
「ねえダーリン、これをゆっくりにしてみて」
「え、はい。スロー再生ですね」
 功助が今模擬剣で相手の胴を横なぎにするグレーの髪の少女をスロー再生させた。
「あっ、これカレットですね。ふむ。こうしてゆっくりと見るととても大振りなのがよくわかりますね。剣筋がシャープなので間に合ってますが私たち相手だと間に合わないでしょうね」
 とディスプレイを凝視するラナーシア。
「そうね。でもまだまだ伸びそうよカレットは。ねえ」
「はい。シャリーナ隊長の言われるとおりかと」
 とラナーシア。
 それから何人かの隊員や見習いの動画を見ていろいろと話し合う三人とそれを見守るミュゼリア。
 イリスが風弾を飛ばそうとしてすっころびパンツ丸見えになったり、もーざは自分の出した水壁の下敷きになったり、フランサは炎矢を出したが飛ばす前に消えてしまったり、メリアは土槍ロックランスを生み出し窪んでしまった穴に足がはまったり。
「コントみたいだなこりゃ」
 と功助も苦笑い。
 何人か見て行くと急に画面が変わった。
「ん?これは……。シャリーナ隊長?」
 今度はディスプレイにシャリーナが映っている。が、ラナーシアのジト目がシャリーナを見てため息をついた。
「あは、あははは。いや~んダーリン、こんなとこ撮っちゃいや~ん。うふっ」
「俺が撮るわけないでしょうが!いつの間にこんなの撮ったんですか?ほんとにもう。こんなの他の人には見せられませんよ、もう」
 それは自撮りしているシャリーナだった。最初カメラに向かいニコニコしたり舌を出したり変顔したりしていたが、ニヤリとするとそのままスマホをしたの方に動かしたかと思えばいきなりスカートの中へ。ディスプレイには可愛い兎さんの絵の描いた白いパンツが画面いっぱいに大写しになっていた。
「あははは。ジョークよジョーク。記念に取っ手おいてねダーリン(ハート)」
  バシッ!
「あいた!またぶつぅ」
「当たり前です。ほんとにもうあなたって淫乱ハレンチ女は!」
  バシバシバシバシバシッ!
「あでででででで!」
 シャリーナの頭を連打するラナーシア。
「ほんと困ったもんだ。えと、ラナーシア副隊長これこの部分だけ削除しますから安心してください」
「えっ、そんなこともできるの?」
 とスマホを見るシャリーナとラナーシア。
「んもう、もったいないじゃないあたしのセクシーショットなのにぃ」
 と口を尖らすシャリーナ。
「何がセクシーショットですか!コースケ隊長、早く消してくださいそんな下品なもの」
「あーっ!下品って失礼ねラナーシア!」
「お黙り!」
 ペシッ!
「あいた」
 ラナーシアの手がまたシャリーナの頭にヒットした。
「あはは。これで大丈夫。さっきの動画は削除しました」
 と功助。
「あ~ぁ、せっかくのあたしからダーリンへのプレゼントだったのにぃ」
 とまたまた口を尖らすシャリーナだった。
「うふふ。たのしいですね」
 とミュゼリアはくすっと笑った。
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