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巡回者たち
巣窟
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「戻ったぞー」
古びた遺跡の最奥層、元々神殿だったと言われている場所に【巡回者】の根城は鎮座していた。
俺たちが住んでいたスラムが一望できる、小高い断崖絶壁にえぐり込むようにして造られた神殿はやけに広くて、外の熱気が嘘のようにひんやりとしていた。
「お、お頭お帰りー…ってなんスかその【ネズミ】」
「今日から俺の奴隷だ。風呂の用意出来てっか?」
【お頭】対してかなり横柄な態度をとった男は物珍しそうに俺を見てきた。
薄茶色の色素の薄い髪の毛にジンより少しひょろっとして上背がある男。
おどけたような表情は何故か警戒心を煽ってならなかった。
「ジンってこういうのが好みだったんだー…意外」
「うるせえな…どうでもいいだろ」
苛立ったように眉間に皺を寄せてジンはその男を睨んだ。
「おーこわっ…風呂ならさっきエリルが使ってた気がするよ」
「…エリルが?…まあいい…行くぞ」
俺は腕を引かれ、ジンと共に更に神殿の奥深くに歩いていく。
「あの…さっきの人は…」
「あ?レイスの事か?ここの門番を任せてある。…逃げたらどうなるか分かるな?」
門番という事は、それなりに実力が有るという事。
しかも一人で巡回者のアジトの入口を守っている。
言いようのない警戒心はそれが原因だったのかと腑に落ちた。
足元に敷かれた神殿の名残の大理石が、急に冷たく感じ俺は自分の体を抱いた。
闇に閉ざされているアジトの中には、薄闇にこちらを見ている巡回者達が点々とたむろしていた。
ジンが連れているというだけで視線が嫌に集まっているのが分かった。
時折先程レイスが投げかけたような質問が飛んでくるが、ジンは同じように奴隷だとあしらっていく。
その度に驚いたような声や下卑た笑い声が飛んでくるがジンは気にした様子もなく前へと進んでいく。
やっと暗さに目が慣れてきたころ、一筋の光が壁から漏れている場所に行きあたった。
「エリル、居るか?入るぞ」
ほんの一声かけただけで、ジンが壁に軽く掌底を食らわすと、音もなく壁が外へと開いていく。
「やあ、ジン、お帰り。—その子は?」
まぶしさに目を細めていた俺が漸く目を開けると、真っ白な大理石と緑の草木が生い茂った神話のような神々しい景色と、銀髪の絵画から出てきたような青年が一糸纏わぬ姿で水浴びをしていた。
「新しい奴隷だ。…そういや名前聞いてなかったな。
お前、名前何ていうんだ」
エリル、と呼ばれた青年に目が釘付けになっていた俺は、ジンに小突かれて我に返った。
「あっ、お…俺…はっ…ユーリ…です…」
「ユーリか…ふーん」
家族と離れてスラムで暮らすようになっていつしか呼ばれることも少なくなっていた名前。
自分の名前だというのに、なんだか懐かしい響きだった。
「ジン、ちゃんと名前くらい聞いてから連れてきなよ」
「うるせぇな…うっかりしてたんだよ」
ばつが悪そうに頭をがしがしとかきむしるジン。
どういうわけか、エリルにはあまり強く言えないようだ。
「エリル、ユーリの体洗ってやってくれるか」
「いいよ。おいで、ユーリ」
土まみれの俺なんかが近寄ったらエリルを汚してしまいそうで躊躇していると、
ジンが焦れたように俺の背中を押した。
「さっさと入って来いよ…!」
「す、すみません…っ」
慌てて俺がエリルに近寄って行くと、ジンはそのまま扉を閉めてどこかへ立ち去って行った。
「ふふ…ジンはユーリがよほど気に入ってるみたいだね」
「え?」
ふわりと大理石の水桶の中に誘導されながら、そんな事を聞くがさっぱり理解できない。
手慣れた様子で俺の服をあっという間に脱がせてしまうと、エリルは手で水を掬って俺の腕を洗い始める。
「…ジンが昔言ってたんだ。嫁にするなら黒髪で灰色の目の腕にすっぽり収まりそうなサイズの子が良いって」
「え…っ」
それって。
嫁には無理だが俺は偶然にも性別以外のその条件すべてを満たしていた。
「あ、あのっ…奴隷って…」
「あー、ここでいう奴隷は”性的な”奴隷の方だねえ」
涼しい顔でエリルは何事もなげに言う。
あらかた俺の体の土を落としてくれたエリルは、石鹸のようなものを泡立てながら次の言葉を紡いだ。
「大丈夫だと思うよ、逃げたりしなきゃ。
…俺も昔は奴隷だったけど今もこうして生きてる」
「え?エリルさんが…?」
微妙な含み笑いをしたエリルは、急に別人のような色香を放った。
「先代のトップ…ジンの親父さんの奴隷の一人だったんだよ」
急にぐるりと視界が反転する。
「えっ!?」
腕が後ろ手に纏められているのだけはわかった。
見た目に反してすごい力で、俺の力では拘束は解けそうもない。
「エリル…さん…っ?!」
「じっとしてて…」
エリルの肌が背中に当たっている。
胸の突起がやけに背中を掠めていき、言いようのない羞恥心が俺を襲った。
「ジンに奴隷として連れてこられたんだったら…
ココでご奉仕しないといけないからね。
…力を抜いて」
膝立ちで上体をエリルに押され、否応なく脚が若干開いた。
そこに双丘から滑り込まされたエリルのしなやかな指と泡立てられた石鹸が滑りを伴って侵入してくる。
「っ!!」
「暴れない」
平手で双丘を激しく打たれる。
怯んだ隙に指が、体の中に押し入ってくる。
抉じ開けられる感覚に、体が強張り、息が出来なくなる。
「っあ…!」
ぐち、と嫌な音を伴いながら、本来何かが入ってくる場所ではない窄まりがエリルの指の形に開かれた。
そのまま、ぐぐ、と根元までエリルの形の良い指が其処を暴いていく。
「…—ッ…!」
「まだ一本しか入ってないよ?
…諦めて。ユーリは巡回者の長、ジンの奴隷になったんだから」
―凄絶な笑みを浮かべたエリルが目の端に見えた。
古びた遺跡の最奥層、元々神殿だったと言われている場所に【巡回者】の根城は鎮座していた。
俺たちが住んでいたスラムが一望できる、小高い断崖絶壁にえぐり込むようにして造られた神殿はやけに広くて、外の熱気が嘘のようにひんやりとしていた。
「お、お頭お帰りー…ってなんスかその【ネズミ】」
「今日から俺の奴隷だ。風呂の用意出来てっか?」
【お頭】対してかなり横柄な態度をとった男は物珍しそうに俺を見てきた。
薄茶色の色素の薄い髪の毛にジンより少しひょろっとして上背がある男。
おどけたような表情は何故か警戒心を煽ってならなかった。
「ジンってこういうのが好みだったんだー…意外」
「うるせえな…どうでもいいだろ」
苛立ったように眉間に皺を寄せてジンはその男を睨んだ。
「おーこわっ…風呂ならさっきエリルが使ってた気がするよ」
「…エリルが?…まあいい…行くぞ」
俺は腕を引かれ、ジンと共に更に神殿の奥深くに歩いていく。
「あの…さっきの人は…」
「あ?レイスの事か?ここの門番を任せてある。…逃げたらどうなるか分かるな?」
門番という事は、それなりに実力が有るという事。
しかも一人で巡回者のアジトの入口を守っている。
言いようのない警戒心はそれが原因だったのかと腑に落ちた。
足元に敷かれた神殿の名残の大理石が、急に冷たく感じ俺は自分の体を抱いた。
闇に閉ざされているアジトの中には、薄闇にこちらを見ている巡回者達が点々とたむろしていた。
ジンが連れているというだけで視線が嫌に集まっているのが分かった。
時折先程レイスが投げかけたような質問が飛んでくるが、ジンは同じように奴隷だとあしらっていく。
その度に驚いたような声や下卑た笑い声が飛んでくるがジンは気にした様子もなく前へと進んでいく。
やっと暗さに目が慣れてきたころ、一筋の光が壁から漏れている場所に行きあたった。
「エリル、居るか?入るぞ」
ほんの一声かけただけで、ジンが壁に軽く掌底を食らわすと、音もなく壁が外へと開いていく。
「やあ、ジン、お帰り。—その子は?」
まぶしさに目を細めていた俺が漸く目を開けると、真っ白な大理石と緑の草木が生い茂った神話のような神々しい景色と、銀髪の絵画から出てきたような青年が一糸纏わぬ姿で水浴びをしていた。
「新しい奴隷だ。…そういや名前聞いてなかったな。
お前、名前何ていうんだ」
エリル、と呼ばれた青年に目が釘付けになっていた俺は、ジンに小突かれて我に返った。
「あっ、お…俺…はっ…ユーリ…です…」
「ユーリか…ふーん」
家族と離れてスラムで暮らすようになっていつしか呼ばれることも少なくなっていた名前。
自分の名前だというのに、なんだか懐かしい響きだった。
「ジン、ちゃんと名前くらい聞いてから連れてきなよ」
「うるせぇな…うっかりしてたんだよ」
ばつが悪そうに頭をがしがしとかきむしるジン。
どういうわけか、エリルにはあまり強く言えないようだ。
「エリル、ユーリの体洗ってやってくれるか」
「いいよ。おいで、ユーリ」
土まみれの俺なんかが近寄ったらエリルを汚してしまいそうで躊躇していると、
ジンが焦れたように俺の背中を押した。
「さっさと入って来いよ…!」
「す、すみません…っ」
慌てて俺がエリルに近寄って行くと、ジンはそのまま扉を閉めてどこかへ立ち去って行った。
「ふふ…ジンはユーリがよほど気に入ってるみたいだね」
「え?」
ふわりと大理石の水桶の中に誘導されながら、そんな事を聞くがさっぱり理解できない。
手慣れた様子で俺の服をあっという間に脱がせてしまうと、エリルは手で水を掬って俺の腕を洗い始める。
「…ジンが昔言ってたんだ。嫁にするなら黒髪で灰色の目の腕にすっぽり収まりそうなサイズの子が良いって」
「え…っ」
それって。
嫁には無理だが俺は偶然にも性別以外のその条件すべてを満たしていた。
「あ、あのっ…奴隷って…」
「あー、ここでいう奴隷は”性的な”奴隷の方だねえ」
涼しい顔でエリルは何事もなげに言う。
あらかた俺の体の土を落としてくれたエリルは、石鹸のようなものを泡立てながら次の言葉を紡いだ。
「大丈夫だと思うよ、逃げたりしなきゃ。
…俺も昔は奴隷だったけど今もこうして生きてる」
「え?エリルさんが…?」
微妙な含み笑いをしたエリルは、急に別人のような色香を放った。
「先代のトップ…ジンの親父さんの奴隷の一人だったんだよ」
急にぐるりと視界が反転する。
「えっ!?」
腕が後ろ手に纏められているのだけはわかった。
見た目に反してすごい力で、俺の力では拘束は解けそうもない。
「エリル…さん…っ?!」
「じっとしてて…」
エリルの肌が背中に当たっている。
胸の突起がやけに背中を掠めていき、言いようのない羞恥心が俺を襲った。
「ジンに奴隷として連れてこられたんだったら…
ココでご奉仕しないといけないからね。
…力を抜いて」
膝立ちで上体をエリルに押され、否応なく脚が若干開いた。
そこに双丘から滑り込まされたエリルのしなやかな指と泡立てられた石鹸が滑りを伴って侵入してくる。
「っ!!」
「暴れない」
平手で双丘を激しく打たれる。
怯んだ隙に指が、体の中に押し入ってくる。
抉じ開けられる感覚に、体が強張り、息が出来なくなる。
「っあ…!」
ぐち、と嫌な音を伴いながら、本来何かが入ってくる場所ではない窄まりがエリルの指の形に開かれた。
そのまま、ぐぐ、と根元までエリルの形の良い指が其処を暴いていく。
「…—ッ…!」
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…諦めて。ユーリは巡回者の長、ジンの奴隷になったんだから」
―凄絶な笑みを浮かべたエリルが目の端に見えた。
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