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1552年 10月 ある城の屋敷
「上杉様、北への道は開けておりまする。いつでもお戻りになれまするぞ。」
関東大決戦の際に敗れた上杉憲政を監禁する屋敷では風魔が厳しい監視をしていたが、その中でもやはり抜け道というのは存在しており、火の種を広げるために野にもう一度放とうとする動きが存在した。また、北条によって土地を召し上げられた国人達の中には前の方が好き勝手にやれてよかったと感じるもの達も少なくはなくその協力もあったのだ。
「うむ、お主達の良き時に行動を起こすが良い。我は必ずこの地を奪還して見せようぞ。」
上杉憲政は何度も反抗心を煽るような甘美な言葉に当てられ、元の権勢で好き勝手やっていた時の記憶もありなんとかなると思い込むようになっていた。その様子を確認した忍びはいつものように何事もなかったかのように屋敷を出て仲間が待っている場所へと戻っていった。
「首尾はどうであった?」
棟梁であろう人物と目線を合わせず、夜半に焚き火をして影に話しかける。
「はっ、餌にしっかりと掛かっている様子です。いつでも動けるでしょう。」
「分かった。お主はそのまま任を果たせ。我は御屋形様に報告をしに行く。」
短いやり取りをした後に闇夜に消えた者を気にすることも無く男はそのまま浅い眠りに入っていった。一方、報告を聞いた男はできる限り急いで風魔のもの達に気づかれないように甲斐の方向へと向かっていったのであった。
~~~
同時期 今川義元
「ふん、尾張のうつけが頭角を表し始めたか…」
義元は手に持っている扇子をパチリパチリともう片方の掌に当てながら脇息にもたれ掛かり考えに耽っていた。その側には師である太原雪斎、寿桂尼、息子であり鍛えている最中の今川氏真がいた。
「東海道一の弓取と呼ばれる父上ならば尾張のうつけなど一捻りにございましょう!」
氏真は意気軒昂に父義元を褒めちぎる。その態度に気をよくすることなく眉間に皺を寄せながら義元はじっと何かを考えていた。
「奴が目をかけていると知り調べさせてはいたが、やはり奴は虎の子よ。あっという間に尾張を手中に収め、今では尾張で信長に従わないものの方が少ない。」
「確かにそうでございまするな。我らも元々は弟である信勝を煽ることで内乱を起こし、地盤を揺るがせてから一気呵成に尾張を踏み潰すつもりでしたが…。危ない所でしたな。」
太原雪斎が自分たちが同じことをやろうとして失敗していたらと思い安堵していた。今は三河の地盤が固まっていないのは明白であり、こちらも人のことは言ってはいれないからである。
「やはり、竹千代を三河に戻す必要があるか。」
義元としてもそれは分かっていたため三河の武将達に厳しく当たっていた。それが余計な反発を生むことになっていたのはやはり知らず知らずに彼等達の気位が高いのが伝わるように振る舞っていたからであろう。
「奴は私の教えをしっかりと吸収して成長しておりまする。将来では三河を取りまとめ私の代わりに御屋形様や、氏真様の副将となってくれることでしょう。」
義元は師である雪斎の言葉を反芻し、少し黙したあと目を見開き言葉を放った。
「よし!決めたぞ!竹千代を元服させ三河へ戻す!そして三河衆を取り込んだ後、尾張へと侵攻するぞ!」
「「「はっ!」」」
1552年 10月 ある城の屋敷
「上杉様、北への道は開けておりまする。いつでもお戻りになれまするぞ。」
関東大決戦の際に敗れた上杉憲政を監禁する屋敷では風魔が厳しい監視をしていたが、その中でもやはり抜け道というのは存在しており、火の種を広げるために野にもう一度放とうとする動きが存在した。また、北条によって土地を召し上げられた国人達の中には前の方が好き勝手にやれてよかったと感じるもの達も少なくはなくその協力もあったのだ。
「うむ、お主達の良き時に行動を起こすが良い。我は必ずこの地を奪還して見せようぞ。」
上杉憲政は何度も反抗心を煽るような甘美な言葉に当てられ、元の権勢で好き勝手やっていた時の記憶もありなんとかなると思い込むようになっていた。その様子を確認した忍びはいつものように何事もなかったかのように屋敷を出て仲間が待っている場所へと戻っていった。
「首尾はどうであった?」
棟梁であろう人物と目線を合わせず、夜半に焚き火をして影に話しかける。
「はっ、餌にしっかりと掛かっている様子です。いつでも動けるでしょう。」
「分かった。お主はそのまま任を果たせ。我は御屋形様に報告をしに行く。」
短いやり取りをした後に闇夜に消えた者を気にすることも無く男はそのまま浅い眠りに入っていった。一方、報告を聞いた男はできる限り急いで風魔のもの達に気づかれないように甲斐の方向へと向かっていったのであった。
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同時期 今川義元
「ふん、尾張のうつけが頭角を表し始めたか…」
義元は手に持っている扇子をパチリパチリともう片方の掌に当てながら脇息にもたれ掛かり考えに耽っていた。その側には師である太原雪斎、寿桂尼、息子であり鍛えている最中の今川氏真がいた。
「東海道一の弓取と呼ばれる父上ならば尾張のうつけなど一捻りにございましょう!」
氏真は意気軒昂に父義元を褒めちぎる。その態度に気をよくすることなく眉間に皺を寄せながら義元はじっと何かを考えていた。
「奴が目をかけていると知り調べさせてはいたが、やはり奴は虎の子よ。あっという間に尾張を手中に収め、今では尾張で信長に従わないものの方が少ない。」
「確かにそうでございまするな。我らも元々は弟である信勝を煽ることで内乱を起こし、地盤を揺るがせてから一気呵成に尾張を踏み潰すつもりでしたが…。危ない所でしたな。」
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「やはり、竹千代を三河に戻す必要があるか。」
義元としてもそれは分かっていたため三河の武将達に厳しく当たっていた。それが余計な反発を生むことになっていたのはやはり知らず知らずに彼等達の気位が高いのが伝わるように振る舞っていたからであろう。
「奴は私の教えをしっかりと吸収して成長しておりまする。将来では三河を取りまとめ私の代わりに御屋形様や、氏真様の副将となってくれることでしょう。」
義元は師である雪斎の言葉を反芻し、少し黙したあと目を見開き言葉を放った。
「よし!決めたぞ!竹千代を元服させ三河へ戻す!そして三河衆を取り込んだ後、尾張へと侵攻するぞ!」
「「「はっ!」」」
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