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(20) 息抜きにギルドのお仕事

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何時までも遊んでいられないとアンジェラは考えた。窮屈な令嬢生活だと身体が鈍る。というより、ウズウズしていた。


(モンスター退治やりたい。ストレスを発散させなきゃ。)


どうやったら、自由の身になれるのか。婚約しても、まだ、13歳だから結婚にはならない(中身はヤリ直し前の17歳)。


(忘れてた、誕生日が過ぎてるじゃない!)


何年も居なかった令嬢の誕生日を誰も覚えてなかったらしい。それが分かると寂しくなる。誰も祝ってくれない14歳だった。では、バースデー記念に1暴れしよう。

この付近にあるギルドへ登録。SSレベルの勇者は大歓迎。


「王様に要請しても、兵士をよこしてくれなくて困ってたんだ。強い勇者は、隣国のインベルへ行っちゃってるし。」

「インベルに?ああ、内戦ね。」


隣国では、大臣が反乱を起こして内紛が続いていた。その為に兵士が足りず国外から人を集めている。辺境では、それほどでも無かったのに。どうして、足りないのか?


「王様は、兵士や勇者に低い報酬を出すだけだからな。怪我をしても何の手当ても無いときたら他へ行くよ。」


成る程、そういう事か。ここは、王家の領地内だ。害獣駆除の費用も出し惜しみするのだろう。でも、バースデー記念のストレス発散だから気にしないわ。


「え、こんな料金設定でもいいの?ありがとう!」


ギルドのカウンターの職員は大喜び。人助けも、出来そうです。一石二鳥!








ギルド依頼「害獣駆除」、バルーンコーンが森に増殖して入れない。薬草の採集や木の実取りが出来なくなっていた。


「わー、凄い。山盛りだし!」


森の中の木という木に風船のようなバルーンコーンが色とりどりに張り付いている。

様々な色で綺麗なのだが、木の樹蜜を吸うから大量だと枯れてしまうのだ。おまけに攻撃すると汁を吐く。これがベタベタして臭いから困る。


「皆んなを困らせたら、駄目じゃない。さー、行くわよ。魔法スキル「転送」!」


魔法を使って人の来ない土地の山奥に飛ばしてしまう。数分で全て送ってしまった。

「ギルド依頼の仕事「バルーンコーン退治」。土地の領主に確認してもらいました。害獣駆除の料金、10万円。安いけどサービスです。

ギルドへ戻って次の依頼を受ける。片付けては、次の依頼を受ける繰り返し。

「ゴブリンが悪戯ばかりするから駆除」「ムカデゴザルスの卵駆除」「マミーが屋根裏に居るので駆除」の以上で報酬は25万円と大した事は無かった。でも、運動不足解消。


「感謝されて、お土産をもらったから。家に届いたかしら。」


アンジェラは、家に顔を出す事にした。家といっても、エドウィン公爵家では無い。自分の家だ。別荘へ戻って隠し部屋から移動すると下男のダレンが迎える。


「おかえりなさいませ、お嬢様。野菜や果物が届いてました。お客様にもお出しします。」

「お客様が泊まってるの。私の知ってる人?」

「はい、エドワード様です。ギルドのチームを連れて。」

「ギルドの仕事をしたのね、挨拶に行かなくちゃ。」


エドワードは、勇者だ。闘う事が大好きで辞められないらしい。まだ、日が沈んでいないのに連れて来た勇者達と酒を飲んでいる。アンジェラを見ると立ち上がって抱き締めた。


「アンジェラ、会いたかった!」


こんな風にされたら、誰だって勘違いしてしまう。でも、この美しい人は本心を出したりしない。それをアンジェラは知っていた。


(好きになってなくて、良かったわ。そうでないと泣く事になるから。)


誰にでも親切でスキンシップする美男子。もしかしたら、たった1人の為に心は捧げているのかもしれない。

凄く大好きな人がいて、結ばれる事の無いと分かっていたら。忘れられない相手だと悲し過ぎる。







エドウィン家の別荘では、侍女がアンジェラの食事を見守っていた。あまり、食が進まない。お嬢様は食欲が無いようだ。


(ある時と無い時の差が激しいわ。医者を呼んだ方が良いのかも。)


都を立つ時に公爵から命令されている。健康面に気をつけろと。病気にでもなられたら、首になるかもしれなかった。


「ごちそうさま。」

「お嬢様、ご気分でも。料理が、お口に合いませんか?」

「食べたくないの、休みたいわ。」

「では、寝室の支度を致します。」


アンジェラは、表情も変えない。ここへ来て滅入ってしまったのか。口数も少なくなり座ったまま過ごすだけだ。都へ戻りたいのだろうか。

着替えさせて寝台へ横になるのを無届けて寝室を出る侍女。途端に寝室の中の令嬢は木偶人形に変わった。アンジェラの身代わり人形である。


「こんばんは、アンジェラさん?おや、人形が寝てますね。何処へ出かけたのでしょうか。」


やって来たアグアニエベは残念そうに姿を消した。アンジェラから作品のネタを手に入れようと思って来たのだ。 また、小説の締め切りが迫っていた。

天使のお手伝いをしている悪魔ですから、嘘は御法度。嘘をついたら、バレた時に罰を受けてしまいますから。


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