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(19) 婚約者の価値

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アンジェラを心配してアグアニエベが来てくれた。別荘のアンジェラの部屋にも隠し部屋を付けてくれる。


「パパちゃま、ありがとう!」

「いいんだよ、君は娘のように思ってるから。ところで、好きな人は出来ましたか?」

「好きな人?いいえ、何故?」

「いや、学園にはイケメンが多いから。アンジェラさんも、お年頃だし。彼氏が欲しいはず!」


何時になく、押しが強い。きっと、自分を心配してくれてるのだとアンジェラは良い方にとった。まさか、自分を利用しようとしているとは思ってない。


「学園で、何も無かったですか?パパは心配でねえ。」

「揉め事は、あったわ。」

「教えて教えて。君は娘のように思ってるから(ネタを下さい)」

「王子がね、怒ったのよ。それに、婚約者候補だった令嬢がね呼び出して・・・」


話しを聞いたアグアニエベは喜んで帰って行った。勿論、それは小説の1部になったのだ。バレても知らないぞ。








ステファン王子は、王城の自分の部屋で「アビゲイルは泣かない」の新刊を読んでいた。取り巻きの1人からのお薦めだったのだが、今は作品のファンになっている。


「なんだ、アビゲイルは都から命を狙われて避難するのか?私の婚約者と似ておるな。」


多分、偶然だろう。アンジェラは体調を崩したので療養すると父親の公爵から報告されていたから。


「この婚約者の王子は、駄目だ。婚約者なのなら守ってやるのが男だ!」


それは、あなたの事がですけど。自分の事は分からないものですね。おやつを運んで来た王子の世話役が話かけるのだが邪魔だ。読書中だぞ。


「ステファン王子様、聞いておられますか?」

「うんー(勝手にやっておけ)」

「どういたしましょう?」

「何を?」

「だからー、アンジェラ・エドウィン公爵令嬢様のお誕生日プレゼントですよ!」

「誕生日?まだ、先だろ。3ヶ月も後だ。」

「それは、最近に婚約解消されたお相手でございますって!」

「なんだとー?」


ステファン王子は、手から本を落とした。婚約者の誕生日を忘れていたのか、私が?顔から血の気が引く。アンジェラの顔が目の前に浮かんだ。



『私、ゴニナル病になったら婚約解消されるーんでしょ。病気にならないよーに、気をつけてるのにー。』



あの、わざとらしい喋り方は意味があったのか。婚約者になったのに誕生日を忘れられて婚約破棄をされるのかと内心は怯えている。それを教えていたのだ。


「そうか、婚約破棄をされたくないんだ。私が好きだから!」


どうして、そうなるのか。ステファン王子は、目をキラキラと輝かせた。あの頭の悪そうなアンジェラ令嬢は言いたい事も言えずに我慢していたのだろう。


「私は、罪な男だ。彼女を泣かせた、もてるからな。」


どうして、こんなに男前に産まれてしまったのだろう。神さまは、私に贈り物を与え過ぎた。だから、アンジェラを悩ませてしまうのだ。罪な王子なのだ。

アンジェラは寒気がして身震いした。嫌な感じがしたが誰かが悪口を言っているのかも。きっと、学園の女子生徒たちだわ。嫌われても構わない。王子との婚約が破棄されたら勘当されて居なくなるもの。


「でも、この話って似てない?私と!」


偶然なのだろうか。手にしている「アビゲイルは泣かない」のヒロインは刺客から逃げて都を出た。アンジェラも、表向きは静養だが身の危険に逃げて来たのだ。


「誰かが私を見ていてストーリーにしたりして。まさか、ね。」


いいえ、その通りです。あなたの親しい方がネタにしました。







エドウィン公爵家に届いた大きな薔薇の花束と誕生日プレゼント。それは、ステファン王子からのものであった。王城の召し使いが馬車に乗って参上。それを、母親が恭(うやうや)しく頂戴いたしました。

召し使いが帰ると直ぐにプレゼントの箱を開ける。娘のアンジェラへの物だから母親が開けるのは当然。


「アンジェラは、誕生日でしたのね。忘れてましたわ。王子様も忘れてらしたのね。今頃、慌てて贈るなんて。」


箱の中には、王家御用達の宝石店のネックレスであった。母親は、しげしげと眺めて箱を閉じる。


「安く見られたものねえ。王子様が前の婚約者へ昨年の誕生日に送った宝石は特注で手に入りにくい石を使ってましたのに。これは、今年流行りの店の商品。アンジェラは格下に見られたという事だわ。」


エドウィン公爵夫人は、ご機嫌斜め。ネックレスは金庫に治めました。見たくありません。

宝石店の関係者から話しが流れて、明日の夜には貴族達が知ってしまうでしょうよ。ステファン王子が婚約者の誕生日プレゼントに店のショーウインドーの商品の1つを贈った。

婚約者になったエドウィン公爵家の令嬢は、それだけの価値なのだと。

何も知らないアンジェラは、今日も元気に庭で素振りをしていました。

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